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歩行時の腕の振りは、誰しもが歩行をすると自然と出てきます。ただ、なぜ上肢を振る必要があるのか答えられますか?

また、脳卒中後の患者さんや、パーキンソン病の患者さんは一様に上肢の振りが少なく、体幹固定で歩いているような印象です。何故なんでしょうか?

言われる事としては、、、

「ヒトが上肢を振って歩く理由は、主に歩行時のエネルギー消費を抑えるためと、歩行時の安定性を保つためと考えられている。」

「同じ速度での歩行において、自然な上肢の振りをした場合は、上肢を振らずに歩いた場合に比べて約8%エネルギー消費量が減少する。」

とあります。

実際に上肢を振って歩くのと、振らずに歩くのでは振って歩いた方が確かに楽に歩けるような気がします。

どういうことが起こっているかというと、、、

「自然歩行では左右交互に振り出される下肢の動きによって、身体の鉛直軸周りに回転運動が生じる。それに対して上肢は、下肢の動きとは拮抗する方向に左右交互に振られ、身体全体の角運動量を限りなくゼロに近づけている。それにより、余分な筋力の発生が抑えられ、エネルギー消費も抑えられる。」

とあります。

つまり「でんでん太鼓」みたいなイメージですよね。

バイオメカニクス的には、下肢・体幹の回旋の動きをキャンセルする役目が上肢の振りにはあると言われていますが、まさにその通りであると言えますね。

実際に、上肢を振っている時の上肢の筋活動はどうなのかというと、、、

「上肢の振りは主に肩関節屈伸で行われているが、肩関節周囲筋の収縮はほとんど認められないか、三角筋や広背筋、僧帽筋にわずかに認められるのみである。したがって歩行時の上肢の振りは、肩甲帯の回旋や慣性力、重力などの作用により主に受動的に行われている。」

ということです。

イメージ通りで、上肢は自分で振ろうとして振っているわけではなく、受動的に上肢を振っている訳ですね。

ということは逆に言えば、下肢の振り出しが少なく、歩行時の体幹の回旋が少ない方は自然と上肢の振りが少なくなると言えますね。

また、

「歩行時の安定性については、自然歩行における腕の振りは限定的であるが、歩行時に外乱が加わった時などは上肢の動きを利用してバランスを回復する。そのため、腕を拘束した歩行では安定性が低下すると言える。」

とあります。

確かに、綱渡りをするように歩行するときはバランスを取るために、いつもより大きく上肢を動かして歩いていく印象です。安定性を取るための上肢の動きとして利用できる場合もあるということですね。

上肢は歩行中に振ることが出来て損はなく、安定性にも良いと言えますね。

(市橋 則明:身体運動学−関節の制御機構と筋機能:メジカルビュー社:2017)

脳卒中の患者さんに対して回復期においては、どうのようにリハビリを計画していけばいいのでしょうか?

回復期といえば急性期の不安定な身体状況から回復し、リハビリテーションに専念して機能回復をどんどん行っていく時期になりますが、結局色々なリハビリがある中でどのようなリハビリをしていけば、患者さんのADLを最大限まで引き出すことができるのでしょうか?

特に言われているのが、、、

「集中的な理学療法の実施時間を増やすこと。上肢のCI療法や下肢への課題反復型の練習が推奨される。また、有酸素運動能力や下肢筋力の増強を目指す介入、応用歩行能力に通じる二重課題を課した介入も推奨される。なお、行わない事が強く推奨される事項は無い。」

とにかく、麻痺の回復を促すためにも、ADL向上のためにも、どんどん反復して動かして訓練時間をしっかり多くとれという事に尽きますね。

「脳卒中による機能障害は運動機能であれば3ヶ月、動作能力であれば6ヶ月まで回復の幅が大きい」とあります。

⇨ステージ理論による脳卒中後の回復過程

ステージ理論においてもこのような経過をたどるため、発症3ヶ月を過ぎて6ヶ月になっても歩行時の下肢の振り出しでつま先が引っかかるのは足関節背屈が出ないからだと一生懸命それだけを訓練で頑張るのではなく、3ヶ月を過ぎる頃にはどちらかというと今ある残存機能を元にどうやって動作の効率を高めていくか、つまり動きやすく動くためにはどうやって工夫したらいいかを少しずつ考えていかねばいけないという事ですね。

具体的には、適切な下肢装具を処方したり、骨盤の引き上げによる代償をある程度許容する中で局所に負担のかかりにくいような動作の仕方を考えたり、ハムストリングスの強化により膝関節屈曲の代償をある程度許すようにしていったり、、、。

こうも言われています。

「回復期理学療法の治療効果は重症度によって異なり、最重症と軽症よりも中等症での変化の幅が大きい。機能的予後は脳画像の病巣部位と大きさから脳の機能的可塑性が予測され、ADL自立の予測のポイントは年齢、脳損傷の大きさ、神経症候や麻痺の重症度、病前ADLとなる。なお、疫学的に見ると機能的予後は脳梗塞の方が良い。」

臨床的にも、そうだよなあという感じがします。

発症直後から歩行が十分に可能で、手の動きも良い方は特に変化に乏しいですし、逆にあまり重症な脳卒中の患者さんが劇的に改善する例はほとんど見たことがありません。変化の率が一番大きいのはやはり中等症の方で、じっくり時間をかけてだんだん良くなっていくイメージですね。

機能的予後が良い人はやはり、脳画像を見ても錐体路を全体的に直撃しているような病巣の人は少ないですし、特に大きく予後を分けるのは、年齢と発症前ADLだと個人的は感じています。これはなんとなくですが、、、。

個人差はあると思いますが、脳梗塞の方が全体的には予後がいいんですね、、、。

これらの考えを元に現在推奨される治療・介入の方法をまとめていきます。

①介入時間の確保(推奨グレードB)
移動・セルフケア・嚥下・コミュニケーション・認知などの複数領域に障害が残存した例では、より専門的かつ集中的に行う回復期リハを実施することが推奨される。

⇨グレードBになっていますが、個人的にはかなり重要なことであると思っています。ただ、時間をかければいいかというとそうではなく、専門的な介入時間の絶対的な量を増やしていく必要はあるかと考えています。

リハビリ時間以外でもただ、食堂で車椅子に患者さんが座ったままになるのではなく、看護師などの介入によって担当セラピストが指導した自主訓練をして過ごすだけでも大分違うと思います。

②麻痺側上肢への課題反復(推奨グレードA〜B)
上肢に対する運動負荷を積極的に繰り返し、特定の動作の反復を行うことが大切で、CI療法、ミラーセラピー、手関節背屈に対する電気刺激、随意運動介助電気刺激、ロボット装置を使った感覚運動トレーニング、促通反復療法などが上肢機能向上に有効である。

⇨脳卒中後の肩の痛みに注意しながら、上肢もどんどんいろんな介入をしていくのがいいと思います。特定の治療に固執せず、様々な手段で患者さんに課題をチャレンジしていただくのが良いのではないでしょうか?

③痙縮(推奨グレードA〜B)
痙縮による関節可動域制限に対してはボツリヌス療法が強く勧められ、高頻度の経皮的電気刺激も勧められる。

⇨やはり痙縮は悪です。リハビリを行う上で阻害因子になるので、しっかりと痙縮に対する介入も必要となってくると思います。

④麻痺側肩(推奨グレードB)
麻痺側肩の可動域制限に対する関節可動域運動や、亜脱臼に対する機能的電気刺激、肩痛の予防に対するスリングの使用も視野に入れる。

⇨脳卒中後の肩の管理については注意していく必要があると思います。

脳卒中後の合併症~肩関節の亜脱臼

⑤立位動作(推奨グレードA)
起立・着座や歩行練習の量を多くすることが強く推奨される。

⇨今の回復期病棟でのリハビリテーションでの運動量は十分に確保されているのか?という問題点に対し、警鐘を鳴らされている方もおられます。実際、起立・着座訓練、歩行訓練の量は思ったよりもまだ量的に少ないのではないでしょうか?もっとこういった訓練量をリハビリテーション時間でも病棟でも増やしていいのではないかと個人的には思います。(リスク管理はしながら)

ちょっとマッサージして筋緊張を是正して、感覚の訓練と可動域の訓練をして、最後の10分だけ歩行練習みたいな感じになっていませんか?できる人であれば、もっと負荷をかけていいと思います。

⑥歩行練習(推奨グレードB)
内反尖足に対する短下肢装具、筋電バイオフィードバック、免荷歩行器を使ったトレッドミル上での歩行練習、機能的電気刺激療法、歩行補助ロボットを使用した歩行練習、サーキットトレーニングが求められる。

⇨医療機器が揃っている施設・病院では積極的に取り組んでもらったらいいと思いますし、十分に機器の使用方法や効果を理解したスタッフがやっていただきたいと思います。

⑦ADL課題の練習(推奨グレードA)
ADL能力向上のために、集中的な理学療法や作業療法を行い、その時間を増やすことで課題反復型の練習が効果的で、強く勧められる。歩行課題では、屋外での歩行の推進につなげるために、様々な路面形状で必要距離を歩行する経験や、周辺環境に対処しながら歩行を遂行する二重課題処理能力がポイントとなる。

⇨運動療法で、大殿筋や大腿四頭筋、前脛骨筋の筋力が向上したら立ち上がれるようになるかといえば、そんなことはなく、立ち上がれるようになるためには立ち上がりの動作の練習をしっかりしないといけません。ADLにつなげていくには課題反復型の練習は必須です。また、歩くときも日常生活ではただ歩くだけでなく、話したり物を持ったり、周りの環境に注意したりといろんなことを考えながら歩かないといけないので、二重課題処理能力も重要です。

⑧体力の向上(推奨グレードA)
トレッドミルや自転車エルゴメーターでの有酸素運動と下肢筋力増強を組み合わせたプログラムで、最大酸素摂取量や歩行能力を優位に改善させることができる。

⇨脳卒中片麻痺患者さんは健常者に比べて、最大酸素摂取量や乳酸性作業域値などが低いと言われています。確かに、ちょっと杖歩行したら「疲れました」と言われますし、体力の低さを感じます。やはり、片麻痺になってからは、かなり健側の下肢での立位コントロールが求められますし、両側の体感機能が低下した状態で、感覚情報が入ってこないまま同時収縮を高めた歩き方は、ただただ疲れるイメージがします。自分でやってみたらよくわかります。

ベースの体力をしっかり向上させていくことは、日常生活自立のためにもかなり重要なことであるとも思います。

⑨低栄養の評価(推奨グレードA)
嚥下障害に関連した低栄養状態が多く認められ、他職種で連携することが勧められる。栄養は血清アルブミン値や、体重減少率から把握する。

⇨今盛んに言われている栄養の問題ですね。アルブミン値が低い方は結構おられると思います。どの時期の栄養状態を反映している数値なのか注意しながら、しっかり栄養管理もしていくことも大事だと思います。

⑩認知障害の把握(推奨グレードB)
半側空間無視、注意障害、遂行機能障害、情緒行動障害、うつ状態などについて評価を行うことが勧められる。

⇨これらについて把握することは、時によっては運動機能を見ることよりも優先される場合があります。運動機能は向上してきても、高次脳機能障害や、認知障害が原因でADLの自立が困難になることは臨床上非常に多く感じます。何ができて、何ができないのか。どういう時に注意しないといけないのか。詳細を把握し、対策・手段を考えていくことが重要になります。

(内山 靖:エビデンスに基づく理学療法 クイックリファレンス:医歯薬出版:2017)

記事更新が久しぶりですが、少しずつ更新していきます。

臨床上多い変形性膝関節症の痛みですが、痛みの訴えから原因がどこにあるのかアセスメントしていくことが重要です。

まず、膝の痛みを生じるときはどんな時に膝が痛いか確認します。

どんな時に痛いか?

1.平地歩行時
→荷重時や歩行時の痛みであれば、膝伸展位での圧刺激の反応である為、大腿脛骨関節由来の疼痛である可能性があります。

2.階段昇降時
→階段昇降時に膝が痛い場合、膝屈曲位での圧刺激に反応がある為、膝蓋大腿関節由来の疼痛の可能性が高いです。

3.夜間痛
→夜間時の痛みがある場合、化学物質による炎症が生じていたり、夜間に膝関節にストレスが生じるような姿勢をし続けている可能性があります。

4.安静時痛(臥位・座位)

5.立ち上がり時
→階段昇降時と同じです。

どのような痛みか問診をし、痛みの種類から何が原因なのかを判断していきます。

どのような痛みか?

筋由来
鈍い・疼く・締め付けられる

神経由来
鋭い・光が走るような・火がつくような

骨由来
深い・しつこく苦しい・鈍い

骨折由来
鋭い・激しい・耐えられない

血管由来
脈打つ・拡がる

(Magee DJ:Orthopedic physical assessment 2003)



圧痛による評価

①膝蓋下脂肪体由来の疼痛
→膝蓋下脂肪体の部分に圧痛があれば、膝蓋下脂肪体由来の疼痛の可能性が高いです。
この痛みの主訴としては、階段昇降の特に降りで疼痛を訴えるケースが多いです。また、起立・着座にて疼痛を生じ、膝前面に鋭痛を生じます。
ROMでは完全伸展が不足し、筋力では膝伸展力不足の所見が見られます。
この部位への治療介入での治療効果は即効で、治療後すぐ痛みが軽減したりします。2週〜1ヶ月程度で疼痛は消失します。


②半膜様筋由来の疼痛
→半膜様筋付着部での明確な圧痛所見があった場合に、半膜様筋由来の疼痛を疑います。
この痛みの主訴としては、階段昇降の特に降りで疼痛を訴えるケースが多いです。また、起立・着座にて疼痛を生じ、歩行時痛で膝の内側痛の訴えがあります。
ROMは伸展・屈曲ともに不足しており、筋力は伸展で不足しています。治療介入において平均2〜3ヶ月で疼痛消失します。


③内側側副靱帯・鵞足由来の疼痛
→内側側副靱帯(関節裂隙レベル)・鵞足(薄筋・半腱様筋)で圧痛を生じた場合、内側側副靱帯・鵞足由来の疼痛を考えます。この痛みの主訴としては、階段昇降の特に降りで疼痛を訴えるケースが多いです。また、起立・着座にて疼痛を生じ、歩行時痛で膝の内側痛の訴えがあります。アライメントとしては下腿が過外旋となっており、大腿の外側にstiffnessを生じていることが多いです。この部位への治療介入では、平均1〜2ヶ月で疼痛消失します。


④内側半月板由来の疼痛
→内側半月板後節の圧痛や、McMurray testが陽性である場合、内側半月板由来の疼痛である可能性があります。この疼痛の場合、明確な疼痛出現日を言うことができます。例えば大きな外力による外傷によって、その後痛くなったなど。この場合の疼痛は運動療法による即時効果は低く、長期的に変形性膝関節症が一気に進行すると言われています。


(八木茂典:機能解剖に基づいた変形性膝関節症の治療~3タイプ8パターンの痛みと動作の治し方~:2017)


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変形性膝関節症(膝OA)に対する運動療法


すっかり久しぶりの更新となってしまいました。また、新たにスタートしていきたいと思います。

今回は脳卒中リハを行う前に考えるべき、脳画像読影の必要性です。

広南病院の阿部先生も言われている事ですが、脳卒中の患者さんのリハを行う前に脳画像を見ないという事は、エンジントラブルの車の修理を行う際に、エンジンの状態を確認せずにタイヤなどのその他の部分を触る事と一緒だとしています。

つまり、脳画像を見て損傷部位の程度を確認して、患者さんの症状の予測や、リハビリテーションの介入の方向性、予後予測をある程度立てていく事が非常に大切になってきます。

ただ、脳卒中患者の機能障害や機能予後は、脳損傷そのものによる一時障害と、病前の機能・発症後の機能回復などの二次障害の程度によっても左右されます。

つまり、予後予測においては脳画像の判断だけでなく、患者の年齢や病前の体力、既往歴、リハビリテーション歴などを総合的に考慮する必要があります。

特に、年齢という観点はかなり大きく、高齢者と比較して若年者は体力に優れる為に、多くの運動量をこなす事ができますし、神経可塑性にも優れており、機能回復も臨床的にかなり良い傾向にあります。

実際、画像上においても皮質脊髄路が完全に遮断された片麻痺患者であっても、若年者であれば他の機能代償によって歩行可能レベルにまで到達できる事は、確かに見られています。

(大村 優慈:養成校・教科書では教えてくれない‼ 脳卒中リハの落とし穴100―成功への一歩:ヒューマン・プレス:2017)

脱臼リスク

THA(Total Hip Arthroplasty)は人工股関節全置換術であり、特に臨床でリハビリテーションを進めていく上で術後脱臼は予防していかなければなりません。

THA後の術後脱臼は、近年では1%前後(前側方進入0.7%、側方0.43%、後側方1.01%)と報告されています。

では、脱臼しやすいとはどのような状態なのか考察します。

そもそも術後脱臼の因子としては、手術因子術後因子に分けられます。理学療法士が関与が可能であるのは術後因子ですが、脱臼のリスクファクターを考える上では理学療法士も手術因子の影響も知っておかなければなりません。

整形Dr.との相談も重要になるため、そのための知識としては必要となってきます。

◎脱臼のリスクファクター

○オシレーションアングルとインピンジメント

オシレーションアングル(oscillation angle)とは、人工股関節のカップ内縁とネックのインピンジメント(衝突)が生じるまでの可動域の事です。

以下の図の角度の事です。最近の人工関節のデザインはオシレーションアングルを増大させるために改良されてきています。

オシレーションアングル

しかし、人工関節の可動域は限度があるため、オシレーションアングルを超えて可動域を求めると脱臼肢位である「屈曲・内転・内旋」、「伸展・外旋」でインピンジメントが生じて脱臼しやすくなります。

THAは側方進入の術式では「屈曲・内転・内旋」、前方進入の術式では「伸展・外旋」の複合運動で脱臼が生じやすいとされていた。しかし、どちらの術式においても前述の2つの複合運動でインピンジメントが生じる可能性があり、脱臼のリスクは生じます。

また、インピンジメントはネックがカップ内縁に「カチッ」と当たり生じるインピンジメントと、骨突出部とネックのインピンジメントがあります。骨棘が残っている場合は、脱臼予防の指導は慎重に行います。

○カップの設置角度

カップの設置角度で前方開角が大きすぎる場合は脱臼のリスクが増加します。

カップの実際の角度は、姿勢の影響を強く受けるので動作中に骨盤(カップ)と大腿骨(ステム)の相対的な位置関係がどのように変化するのかをイメージする事が大切です。

○骨盤アライメント

脊柱後弯・骨盤後傾が生じている高齢者の場合は特に注意が必要となります。骨盤後傾位では、カップのヘッドに対する前外側の被覆率が低減し、後方でのインピンジメントが生じやすくなります。

また逆に、骨盤前傾が生じている場合は前方でのインピンジメントが生じやすくなります。

○股関節外転筋力

股関節外転筋を中心とした軟部組織の緊張は、カップに対してヘッドを求心位に保つように働き、こういった筋の緊張が低い患者さんの場合は脱臼の危険性が高くなります。

○ヘッド径とJumping distance

大きなヘッド径を使用した場合は、小さなヘッド径のものと比べてヘッドがカップを乗り越えるまでの距離(Jumping distance)が大きくなるので脱臼のリスクが軽減します。

(杉本 和隆、美﨑 定也、相澤 純也:人工関節のリハビリテーション 術前・周術期・術後のガイドブック:三輪書店:2015)



また、脱臼の時期についてもこのように言われています。

術後3カ月以内に生じるものを早期脱臼、3カ月以降に生じるものを晩期脱臼と呼びます。

股関節は「関節包」という強固な袋に普段は守られていますが、手術の際にはこの関節包を除去するため、再生するまでの間の3カ月は特に注意が必要です。この時に「側臥位(体位交換)中に患肢が落ちる」「不用意に上半身の捻じれが生じる」と言った不用意にとりやすい危険肢位を避けなければいけません。

一定期間(6~12カ月)経つと、関節を保護・安定化させる関節包が再生されて脱臼のリスクが大きく軽減されます。

(中川 法一:トータル・ヒップ・ケア 股関節 チームで支える人工股関節全置換術:三輪書店:2015)



時期に関してはこのようにも言われています。

THAの初回脱臼の半数は術後6週以内に起こる。1年以上経過後の新規脱臼率は低い。

早期脱臼の約1/3は習慣性脱臼となる。

(Berr DJ et al.JBJS Am 2005)



また、手術因子に関してステムとカップの位置についてこのように言われています。

ステムの前捻30°では、カップの外転角は40~45°、カップの前捻角15°程度が望ましい。

いずれもradiografic definition(X線評価)で

(Miki H Clin Biomech 26 2011)



骨頭経については以下のように言われています。

骨頭径が大きくなるとJumping distanceが大きくなり、脱臼しにくくなります。

ライナー径28mm<よりも36mm以上では10年通算脱臼率が1/4~1/2となる。

(Impingement with Total Hip Replacement 2007)



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ウェルニッケマン肢位

臨床において、脳卒中後の片麻痺患者さんは典型的な「ウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位」となる事が非常に多いです。なぜなのでしょうか?

「ウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位」となってしまう原因も諸説ありますが、皮質-網様体脊髄路の活動が関与しているとされています。

そもそもウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位とは、病変対側の上肢が屈曲位、下肢が伸展位となる状態の事を言います。脳幹より上の外側皮質脊髄路の損傷で痙性麻痺が強いほどこの肢位が誘発されます。

脳卒中発症直後は、外側皮質脊髄路の損傷によって下行路の支配が消失すると、運動細胞の興奮も低下します。この急性期の状態は弛緩性麻痺の状態です。

そして徐々に慢性期に移行するにあたり、運動細胞の興奮性が上昇してくると痙性麻痺が出現してきます。この時に、上肢では屈曲運動細胞群に、下肢は伸筋細胞群に興奮が顕著となりやすい傾向にあります。これにより、「上肢屈曲パターン、下肢伸展パターン」が誘発されやすくなってしまうのです。

ただ、この「ウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位」を自ら保っているのではなく、「情動や感情が高揚する時や、随意運動を開始する際に”先行”してこの肢位が誘発されている」という事なのです。前者の場合は大脳辺縁系・視床下部から網様体への投射、そして後者では皮質-網様体投射が寄与すると考えられています。

これらの投射系によって網様体脊髄路系が賦活されると、興奮性が亢進している麻痺側の上肢屈筋運動細胞と下肢伸筋運動細胞は、非麻痺側の運動細胞よりもより強く活動するため、麻痺側の上肢屈曲位と下肢伸展位が誘発されます。

つまり、先行性姿勢制御を誘発する皮質-網様体脊髄路の活動が、運動麻痺におけるウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位の発現に関与すると考えられるのです。

(鈴木 恒彦:脳卒中の臨床神経リハビリテーション―理論と実践:市村出版:2016)


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皆さんご存じとは思いますが、「川平法」として提唱されている促通反復療法は、川平和美先生が考案した促通手技であり、「促通手技によって随意運動を実現し、それを反復する事によって随意運動を実現するために必要な神経路を再建・強化する事を目的とした、神経路強化的促通療法」です。

つまり麻痺そのものを改善させる事を促す手技で、テレビでも取り上げられている有名な手技ですね。

今回は、ここで述べられている神経路の結合強化に必要な要素である「誤りなき学習」「コンソリデーション」について記していきます。

①「誤りなき学習」特定神経路への反復興奮伝導

「誤りなき学習」とは、健忘症例に新しい事を記憶させる有効な方法の一つです。

例えば、AとBの名前を、2人の顔写真と名前を書いたカードを用いて記憶させる場合です。顔写真Aを提示して名前カードをそれぞれ出して「Aですか?」「Bですか?」と質問を繰り返しながら名前を記憶させようとすると「顔細胞Aの興奮」→「名前細胞Aの興奮」で正答時の反応と、「顔細胞Aの興奮」→「名前細胞Bの興奮」の誤答の反応を繰り返すために、正答時の「顔細胞A→名前細胞A」のシナプス強化が難しく、なかなかAの名前を覚える事が困難となります。

一方、「誤りなき学習」ではAの顔写真を提示して名前カードAを指して、「Aですね?」と再認させる事を反復します。そうすると、「顔細胞A→名前細胞A」のシナプス結合だけが強化されてAの名前を憶えやすくなるのです。

これと同じことを片麻痺の神経路の再建・強化に用いるのです。

つまり、下図のように肘関節屈曲の指示を出した際に、共同運動によって肘屈曲に加えて前腕回外を生じて患者さんの場合、「肘屈曲」を命じると同時に、促通手技によって神経路の興奮水準を高めて正しい「肘屈曲」を実現した運動を反復する事によって、分離した肘屈曲の神経回路を強化していきます。

神経路の強化

要は、求める運動パターンを促通手技によって実現して、それを反復する事で特定の神経路や神経細胞に運動プログラムを記憶させるという事です。

正しい動作を促通しながら反復しまくれという事ですね。神経路を強化させるにはかなり回数をこなさなければいけませんが・・・


しかし、麻痺の回復に関してはこの考え方は非常に大切だと思われます。中枢神経系は基本的に「やった事しか覚えない」ので、共同運動や痙縮の影響を少なくした状態で、必要な運動パターンを反復していく。川平法に限らず、これが麻痺改善の近道であると思われます。

②興奮伝導後のシナプスとコンソリデーション

シナプスは興奮が伝わると伝達効率が上がるため、興奮伝導を繰り返すと興奮がさらに伝わりやすくなり、神経回路の機能的結合が強まります。この伝達効率の向上による機能的結合強化の事をコンソリデーションと言います。

まだ組織学的な変化を伴う結合強化を生じていない状態で、運動学習を阻害する課題や結合強化を妨害する刺激があると、ちゃんと組織学的な結合強化を生じません。

コンソリデーションを持続させるためには練習と阻害課題との間隔が5分を超えると、ある程度の学習効果が残ると言われています。つまり、促通手技パターンを反復した後は、次のパターンの反復との間に少なくとも5分程度の休憩を入れる事で訓練効果を増大させる可能性が大きいと言われています。

しかし、実際に川平法を臨床で用いた場合、治療時間が限られている事と、反復促通で用いる運動パターンは学習阻害を招く内容ではないことから30秒~1分の休憩で十分であろうとされています。

また、コンソリデーションは睡眠中に大きく進むと言われています。毎日の練習効果をしっかり蓄積していくためには、良質な睡眠が大切です。

出来事の記憶にはREM睡眠が、運動学習にはnon-REM睡眠が関与すると考えられています。寝ている間も運動学習は進んでいるのです。

という事で、練習ばっかりではなく休憩も大事という事ですね。当たり前の事ですが十分にできているかどうかで、確かに臨床でも麻痺の改善度にかなり違いが出る様な印象があります。

(川平 和美:片麻痺回復のための運動療法―促通反復療法「川平法」の理論と実際:医学書院:2010)


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有酸素運動 女性

糖尿病診療ガイドラインにて有酸素運動は週2~3回以上、20~60分行う事が一般的に勧められています。なぜこのような設定になっているのでしょうか?

そもそも「有酸素運動」とは、エネルギー産生に酸素を利用する運動の事を指し、無酸素性作業閾値(AT)以下の中等度までの強度で行い、糖や脂肪を燃やしながら行う運動の事を言います。

根拠となる効果としては、有酸素運動を20分以上行う事によって急性効果により血糖値を下げ、週2~3回以上実施して運動しない日をあまり開けすぎないようにする事で、インスリン感受性、血糖コントロール、脂質代謝改善などの慢性効果を持続させるためという理由があります。

以下に作用機序を生理学的に述べていきます。

まず、インスリンが作用するには、細胞膜のインスリン受容体に結合し、細胞内のIRS、PI3キナーゼ、Aktなどの伝達分子を活性化させる必要があります。伝達分子が活性化すると、細胞内の糖輸送担体(GLUT4)が細胞膜表面に移動し、糖を骨格筋内に取り込みます。運動はインスリン受容体や伝達分子を増加・活性化させ、インスリン感受性を亢進させる効果があります。また、GLUT4を優位に増加させるという報告があり、糖を取り込みやすくし血糖コントロールに寄与します。細胞内のミトコンドリア数も増加するため脂肪酸酸化能力も改善されます。

運動によりこういった効果が期待できるのです。

これらの慢性効果は、運動を中止しても24時間(1日)~72時間(3日)その効果が継続されるという報告があります。そのため、週2~3回以上の有酸素運動を行う事でその効果を保つことができます。

下記の図の通り、運動しない日を開けすぎると1週間で効果は消失してしまいますので、日を開けすぎないように注意は必要です。

インスリン抵抗性の改善効果

また、20分以上の有酸素運動を実施する事で、運動しない場合より血糖上昇の程度が小さくなると言われています。米糖尿病学会では糖尿病患者に対して運動は週に150分以上実施するよう推奨しています。毎日運動するとしたら日割にして1日20分程度となりますし、週3~5回の頻度であれば一日当たり30分~50分の運動時間が必要となる計算になります。また、糖質・脂質の効率良い燃焼のためには20分以上持続する事が望ましいとされます。

推奨される有酸素運動の種類は、全身の大きな筋を使った運動でウォーキング、ジョギング、サイクリングが代表的です。

運動強度に関しては、心拍数自覚症状を目安に設定します。

心拍数の目標値はKarvonen法を用い、予測最大心拍数の40~60%で設定した数値を使用します。

自覚症状の目標は、自覚的運動強度(RPE)Borg指数を使用します。RPEでは10~12の範囲、Borgスケールでは11~13の範囲が望ましいとされます。

(石黒 友康、田村 好史:理学療法士のためのわかったつもり?!の糖尿病知識Q&A:医歯薬出版:2016)


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腓骨神経麻痺は良く知られた言葉ですが、足関節の感覚障害に加え、足関節背屈障害・足趾伸展障害によって、つま先が上がらない「下垂足」の症状を呈する末梢神経障害です。

発生原因としては、手術に伴う損傷、ギプスや装具の適合不良あるいは、不良肢位による腓骨頭への圧迫、骨盤骨折、大腿骨骨折などの外傷が挙げられます。色んな事で生じてしまいますね。

長時間足を組んだ姿勢で座っていても腓骨神経が圧迫され、つま先が上がらなくなるという症状が出たりすると言われます。

まず、手術に伴う損傷は手術中に傷ついてしまう事が原因ですが、人工関節置換術や癒着の激しい方の手術操作の場合は困難を極める事がありますので、腓骨神経に損傷が起こる事も少ない事ではありません。

そして、原因としては最も多いと思われますが、総腓骨神経が直接的に圧迫を受けてしまう事で麻痺になってしまう事があります。これはベッド上背臥位で、股関節外旋位を長時間とる事によって腓骨頭近傍が常に圧迫され、腓骨神経麻痺が誘発されてしまいます。これはギプスや装具の適合不良による圧迫においても生じます。

下の図の部分です。

腓骨神経麻痺

また、支配筋についておさらいです。

深腓骨神経:前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋、短趾伸筋、短母趾伸筋、第三腓骨筋
浅腓骨神経:長腓骨筋、短腓骨筋

つまり腓骨神経麻痺が生じる事によって、動きとしては足関節の背屈、回外、足趾の伸展、回内位での足関節底屈が障害されます。

そのほかに骨盤骨折や、大腿骨骨折などでも腓骨神経麻痺が生じますが、これは総腓骨神経の上の坐骨神経が骨折によって損傷を受ける事で、麻痺の影響を受けてしまうものです。

腓骨神経麻痺に対する理学療法ですが、まず、なぜ腓骨神経麻痺になったのか原因を確認して合併症の予防と、麻痺の回復に合わせた運動機能向上が目的となります。

○ベッド上臥位のポジショニングに注意する

原因としては一番多い腓骨神経の直接的な圧迫を避ける必要があるため、臥位においては股関節内外旋が中間位になるようにクッションなどでポジショニングします。これにより直接的な圧迫を避けておきます。

また常に股関節が外旋位になっていないかチェックし、足関節背屈・足趾伸展の動きがあるかどうか日頃からチェックします。

○尖足変形を予防する

前脛骨筋が麻痺してしまうと、拮抗筋である下腿三頭筋が優位になるため、足関節は底屈位をとります。(下垂足)

下垂足を放置してしまうと、底屈筋群が短縮してしまい尖足変形を生じてしまうため、十分な足関節背屈ROMエクササイズが必要となります。

また、深腓骨神経の麻痺によって長趾伸筋や長母趾伸筋も動きが障害されている場合は、足趾屈筋優位となるため足趾伸展のROMエクササイズも重要となります。

○筋力訓練を考慮する

麻痺筋は易疲労性があるので、強すぎる負荷では逆に筋力の低下につながってしまいます。筋力訓練は段階的に麻痺の回復に合わせて負荷量を調節していかなければいけません。

筋力が次第に回復してきたら、不安定版の活用によって荷重位で足関節の内返し、外返し、底背屈を促通し、感覚入力を増やす事で筋協調性の改善につながる事が期待できます。

神経回復の可能性が低い時は、麻痺の回復に固執せずどのようにしたらADL獲得につながるか、環境設定なども考慮しながら進めていきます。

筋力増強プログラム

○装具を処方する

歩行が不安定な時や、足関節の拘縮予防が必要な時は装具の適応となります。

下垂足の症状が軽度であれば弾性包帯や弾性バンドで対応ができるかと思われます。強い固定が必要な場合はプラスチックの短下肢装具を検討します。装具装着時は腓骨頭の圧迫がないか等確認して、足趾屈曲が歩行に影響する場合は足趾までカバーできる装具を検討します。

(國安 勝司、渡邉 進、椿原 彰夫:PT・OTのための 臨床実習で役立つリハビリテーション基本実技 PT版:診断と治療社:2016)


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理学療法士が臨床上、良く遭遇する「関節可動域制限」ですが、制限を確認した際に、その後どうのようなアプローチをしていけば良いのでしょうか?

関節可動域制限を確認した際に、どのように評価・治療を行っていくのかは下図の通りになります。

関節可動域制限の評価と治療

関節可動域の分類として、Cyriaxは「収縮要素」「非収縮要素」に分けられるとしています。

「収縮要素」としては、筋、腱、それらの骨への付着部が制限となっている場合です。収縮要素が原因となっている場合は、マッサージやストレッチング、筋筋膜リリース、神経系モビライゼーションを実施します。

また、併用して温熱療法、電気刺激療法、超音波療法、光線療法などの物理療法を行うと効果的です。

「非収縮要素」としては、関節包、靱帯、滑液包、筋膜、硬膜、神経根などが制限を生じている場合です。非収縮要素が原因となっている場合は、関節モビライゼーションや関節マニピュレーションを実施します。

軟部組織モビライゼーションや関節モビライゼーションを行い、その後獲得できた可動域を筋でコントロールできるよう、十分にエクササイズを行います。

(高橋 哲也:“臨床思考”が身につく 運動療法Q&A (理学療法NAVI):医学書院:2016)


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