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半側空間無視

脳卒中患者さんで、半側空間無視が出現している方のリハビリテーションを行う際、この症状はどのくらい良くなって、いつまで回復が続くのか答えられますか?

半側空間無視に関しては、現時点では明確な発現メカニズムは解明されておらず、責任病巣も多様であり、プロトタイプな運動療法というのはなかなか設定できない状態かと思われます。

運動療法においてはそれぞれの患者さんにあったアプローチを設定されていると思われますが、予後は現在までにどのように言われているのでしょうか?

○半側空間無視の予後

・脳卒中発症後最初の数ヶ月で部分的な回復を示す。

・脳卒中発症後3.4週で29%が消失し、平均13.7週間の入院期間中に87%が消失する。

・半側空間無視が4週間以上続くと、障害として残りやすく様々なADL阻害因子となるとされる。

・被殻出血において、血腫量が20mlを超えると半側空間無視の出現リスクが増大し、40ml以上では残存する事が多いとされる。

・脳卒中の自然回復は発症後2~3カ月までに起こるものであるが、その時点でも視空間無視は患者の約1/3に残存し、慢性状態に陥る。

・視空間無視の回復曲線は12~14週でフラットになり、無視の神経学的自然回復は変化しなくなるとの報告がある。

・無視の回復に影響を与える因子としては、一般的に病巣の大きさと病巣と病巣周辺の血流量のほか年齢、病前知的能力(教育歴)などが報告されているが、症例差が大きいために予測が困難である。

以上となりますが、臨床的にみる半側空間無視の患者さんの状態に合っている様な気がします。

患者さんによって半側空間無視の回復を阻害する因子もいろいろあるのではないかと思いますが、大まかにこれくらいを目途にという予測を持ちながら、運動療法を進めていくことが重要になってくるのではないかと思われます。

(阿部 浩明:高次脳機能障害に対する理学療法:文光堂:2016)


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脳卒中

脳卒中後の患者さんで、この方は歩行が自立になるだろうか?と考えた時に何を根拠に予後予測をしていますか?

現時点で、もの凄く正確に予測できるツールは存在しませんが、予後に影響を与える因子にどれだけ当てはまるかで、おおよその予後が見えてきたりもするものです。

今回は、「歩行自立に影響を与える因子」として言われているものを列挙してみます。

○歩行自立に影響を与える因子

●背景因子

・年齢
・既存疾患(認知症、変形性関節症、心疾患、脳卒中)
・小刻み歩行
・パーキンソン歩行


●障害の重症度

・運動麻痺
・体幹機能障害
・感覚障害
・失調症状
・不随意運動
・意識障害
・高次脳機能障害(半側空間無視、病態失認、Pusher症候群、無為、歩行失行)


●回復過程で起こってくる問題

・廃用による障害(体力低下、筋力低下、知的障害)
・精神症状
・疼痛(視床症候群、脳卒中後疼痛、足趾屈曲反射による痛み)
・正常圧水頭症
・転倒、骨折


●医療的管理に関わる問題

・訓練法
・合併・付随疾患の治療
・装具、補助具の処方


以上が影響する因子となります。どれもそりゃあ影響するだろうなと納得できる様なものばかりですが、もう一度患者さんの病態や、背景を確認し、もっと上を目指せるものなのかここでゴールとすべきなのかを見極めていく必要があります。

(道免 和久:脳卒中機能評価・予後予測マニュアル:医学書院:2013)


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脳卒中は動脈硬化を基礎とする疾患であり、今回発症した部位以外の動脈にも硬化を生じている可能性があり、再発しやすい疾患だと認識しておく必要がある。


○1458例の虚血性脳卒中の調査で60例(4.1%)で90日以内に再発したとしている。

再発を予測する因子として大血管のアテローム(10.65)、時期の異なる多発病巣(4.27)、1カ月以内のTIA(一過性脳虚血発作)や脳卒中の既往(3.86)、多発する新鮮梗塞(3.65)、異なる血管支配領域の同時発症(3.16)、単発性皮質梗塞(2.07)が脳卒中再発の危険を増大する因子となっている。

このうちでオッズ比が一番最大のものは、大血管のアテロームで10.65であった。

(Ay H,Gungor L,Arsava EM,et al:A score to predict early risk of recurrence after ischemic stroke:2010)

失語症の回復は麻痺の回復と比較して長期間持続することが一般的に知られている。

ただ、その予測は困難で、実用的な予後予測の方法は確立されていない。


○失語症の回復過程において全失語、流暢型、非流暢型に分類した34例の失語症症例の回復過程

・流暢型は初期の6カ月に良好な回復を示すが、その後の回復は緩やかなものになっている。
・非流暢型の回復は比較的長時間必要とした。
・全失語の回復は不良であるが、6カ月以降も回復傾向は持続していた。

道免和久:脳卒中機能評価・予後予測マニュアル;2013



失語症の回復には半年以上の期間を要することが多く、回復は若年者で良好である。全失語や後方病巣で聴理解が障害されている場合の回復は不良だが、病巣が小さい場合や穿通枝や視床の病巣では回復が良好であると予測される。
脳卒中は発症後は基本的には予後が良好な疾患とは言い難く、経過中には様々な合併症を生じます。

直接的に合併症が生命予後に影響するだけでなく、impairmentレベルで悪影響を与えるため、合併症に対する予防策を病棟内で考える必要があると思います。

○合併症を生じる頻度(N=279:急性期脳卒中症例) 
 ・95%の症例で少なくとも1回の合併症を発生している。
 ・32%では重大な合併症を発生している。
 ・3カ月の時点で死亡していた症例は14%であった。

(Johnston KC,et al:Stroke29,1998)



○脳卒中症例に生じやすい合併症
脳に生じる合併症 
 ・脳卒中再発
 ・出血性梗塞
 ・脳血管攣縮(SHA後)
 ・水頭症
 ・意識障害
 ・痙攣
 ・うつ傾向
脳以外の臓器の合併症 
 ・深部静脈血栓症
 ・肺塞栓
 ・虚血性心疾患
 ・不整脈
 ・感染症
 ・発熱
 ・肩手症候群
 ・起立性低血圧
 ・消化管出血
 ・悪心・嘔吐
 ・便秘
 ・脱水
 ・電解質異常
併存疾患による合併症 
 ・不整脈
 ・心不全
 ・糖尿病
 ・腎不全
 ・変形性膝関節症
 ・肩関節周囲炎
 ・変形性脊椎症


病棟でも脳卒中の再発も起こりうることであり病棟内でも水分摂取を十分に行っているかリハサイドも確認していく必要があると思います。

頸動脈雑音の聴取によって動脈硬化の有無や程度などをある程度知ることができます。頸動脈雑音を予測因子とし、心筋梗塞や心原性脳梗塞の症状があればすぐ報告できる体制を整えておくことも重要になってくるかと考えます。

脳卒中後の肺炎も多く見られており、肺炎は死亡の原因となることもあり、非常に注意が必要であると思われます。


○脳卒中症例において肺炎を予測する因子
・65歳以上・・・1点
・構音障害もしくは失語症・・・1点
・mRSが4点以上・・・1点
・AMTスコアが8点未満・・・1点
・水飲みテストでの異常・・・1点
※合計点にて肺炎のリスクを予測する。5点満点であり、高得点ほど肺炎のリスクが高い。2点以上を肺炎のリスクありとしてスクリーニングすると、感度90.9 特異度75.6であったとしている。
※AMT:Abbreviated Mental Test

(Sellars C,Bowwie L,Bagg J,et al:Risk factor for chest infection in acute stroke,2007)



肺炎が予測される方においては嚥下評価に基づいた食事形態の調整や摂食指導を行い、誤嚥性肺炎の発症を予防する必要があると考えます。リハ中も、SpO2のモニタリングなど行い、注意してリハ行う事が重要だと思われます。

痙攣に関して、リハ中に生じるものは死に至るものは事態になるものは少ないが、転倒・転落の危険につながるため、注意が必要かと思われます。


 

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