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ウェルニッケマン肢位

臨床において、脳卒中後の片麻痺患者さんは典型的な「ウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位」となる事が非常に多いです。なぜなのでしょうか?

「ウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位」となってしまう原因も諸説ありますが、皮質-網様体脊髄路の活動が関与しているとされています。

そもそもウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位とは、病変対側の上肢が屈曲位、下肢が伸展位となる状態の事を言います。脳幹より上の外側皮質脊髄路の損傷で痙性麻痺が強いほどこの肢位が誘発されます。

脳卒中発症直後は、外側皮質脊髄路の損傷によって下行路の支配が消失すると、運動細胞の興奮も低下します。この急性期の状態は弛緩性麻痺の状態です。

そして徐々に慢性期に移行するにあたり、運動細胞の興奮性が上昇してくると痙性麻痺が出現してきます。この時に、上肢では屈曲運動細胞群に、下肢は伸筋細胞群に興奮が顕著となりやすい傾向にあります。これにより、「上肢屈曲パターン、下肢伸展パターン」が誘発されやすくなってしまうのです。

ただ、この「ウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位」を自ら保っているのではなく、「情動や感情が高揚する時や、随意運動を開始する際に”先行”してこの肢位が誘発されている」という事なのです。前者の場合は大脳辺縁系・視床下部から網様体への投射、そして後者では皮質-網様体投射が寄与すると考えられています。

これらの投射系によって網様体脊髄路系が賦活されると、興奮性が亢進している麻痺側の上肢屈筋運動細胞と下肢伸筋運動細胞は、非麻痺側の運動細胞よりもより強く活動するため、麻痺側の上肢屈曲位と下肢伸展位が誘発されます。

つまり、先行性姿勢制御を誘発する皮質-網様体脊髄路の活動が、運動麻痺におけるウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位の発現に関与すると考えられるのです。

(鈴木 恒彦:脳卒中の臨床神経リハビリテーション―理論と実践:市村出版:2016)


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皆さんご存じとは思いますが、「川平法」として提唱されている促通反復療法は、川平和美先生が考案した促通手技であり、「促通手技によって随意運動を実現し、それを反復する事によって随意運動を実現するために必要な神経路を再建・強化する事を目的とした、神経路強化的促通療法」です。

つまり麻痺そのものを改善させる事を促す手技で、テレビでも取り上げられている有名な手技ですね。

今回は、ここで述べられている神経路の結合強化に必要な要素である「誤りなき学習」「コンソリデーション」について記していきます。

①「誤りなき学習」特定神経路への反復興奮伝導

「誤りなき学習」とは、健忘症例に新しい事を記憶させる有効な方法の一つです。

例えば、AとBの名前を、2人の顔写真と名前を書いたカードを用いて記憶させる場合です。顔写真Aを提示して名前カードをそれぞれ出して「Aですか?」「Bですか?」と質問を繰り返しながら名前を記憶させようとすると「顔細胞Aの興奮」→「名前細胞Aの興奮」で正答時の反応と、「顔細胞Aの興奮」→「名前細胞Bの興奮」の誤答の反応を繰り返すために、正答時の「顔細胞A→名前細胞A」のシナプス強化が難しく、なかなかAの名前を覚える事が困難となります。

一方、「誤りなき学習」ではAの顔写真を提示して名前カードAを指して、「Aですね?」と再認させる事を反復します。そうすると、「顔細胞A→名前細胞A」のシナプス結合だけが強化されてAの名前を憶えやすくなるのです。

これと同じことを片麻痺の神経路の再建・強化に用いるのです。

つまり、下図のように肘関節屈曲の指示を出した際に、共同運動によって肘屈曲に加えて前腕回外を生じて患者さんの場合、「肘屈曲」を命じると同時に、促通手技によって神経路の興奮水準を高めて正しい「肘屈曲」を実現した運動を反復する事によって、分離した肘屈曲の神経回路を強化していきます。

神経路の強化

要は、求める運動パターンを促通手技によって実現して、それを反復する事で特定の神経路や神経細胞に運動プログラムを記憶させるという事です。

正しい動作を促通しながら反復しまくれという事ですね。神経路を強化させるにはかなり回数をこなさなければいけませんが・・・


しかし、麻痺の回復に関してはこの考え方は非常に大切だと思われます。中枢神経系は基本的に「やった事しか覚えない」ので、共同運動や痙縮の影響を少なくした状態で、必要な運動パターンを反復していく。川平法に限らず、これが麻痺改善の近道であると思われます。

②興奮伝導後のシナプスとコンソリデーション

シナプスは興奮が伝わると伝達効率が上がるため、興奮伝導を繰り返すと興奮がさらに伝わりやすくなり、神経回路の機能的結合が強まります。この伝達効率の向上による機能的結合強化の事をコンソリデーションと言います。

まだ組織学的な変化を伴う結合強化を生じていない状態で、運動学習を阻害する課題や結合強化を妨害する刺激があると、ちゃんと組織学的な結合強化を生じません。

コンソリデーションを持続させるためには練習と阻害課題との間隔が5分を超えると、ある程度の学習効果が残ると言われています。つまり、促通手技パターンを反復した後は、次のパターンの反復との間に少なくとも5分程度の休憩を入れる事で訓練効果を増大させる可能性が大きいと言われています。

しかし、実際に川平法を臨床で用いた場合、治療時間が限られている事と、反復促通で用いる運動パターンは学習阻害を招く内容ではないことから30秒~1分の休憩で十分であろうとされています。

また、コンソリデーションは睡眠中に大きく進むと言われています。毎日の練習効果をしっかり蓄積していくためには、良質な睡眠が大切です。

出来事の記憶にはREM睡眠が、運動学習にはnon-REM睡眠が関与すると考えられています。寝ている間も運動学習は進んでいるのです。

という事で、練習ばっかりではなく休憩も大事という事ですね。当たり前の事ですが十分にできているかどうかで、確かに臨床でも麻痺の改善度にかなり違いが出る様な印象があります。

(川平 和美:片麻痺回復のための運動療法―促通反復療法「川平法」の理論と実際:医学書院:2010)


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理学療法士が臨床上、良く遭遇する「関節可動域制限」ですが、制限を確認した際に、その後どうのようなアプローチをしていけば良いのでしょうか?

関節可動域制限を確認した際に、どのように評価・治療を行っていくのかは下図の通りになります。

関節可動域制限の評価と治療

関節可動域の分類として、Cyriaxは「収縮要素」「非収縮要素」に分けられるとしています。

「収縮要素」としては、筋、腱、それらの骨への付着部が制限となっている場合です。収縮要素が原因となっている場合は、マッサージやストレッチング、筋筋膜リリース、神経系モビライゼーションを実施します。

また、併用して温熱療法、電気刺激療法、超音波療法、光線療法などの物理療法を行うと効果的です。

「非収縮要素」としては、関節包、靱帯、滑液包、筋膜、硬膜、神経根などが制限を生じている場合です。非収縮要素が原因となっている場合は、関節モビライゼーションや関節マニピュレーションを実施します。

軟部組織モビライゼーションや関節モビライゼーションを行い、その後獲得できた可動域を筋でコントロールできるよう、十分にエクササイズを行います。

(高橋 哲也:“臨床思考”が身につく 運動療法Q&A (理学療法NAVI):医学書院:2016)


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筋トレの負荷量

「筋力トレーニングの負荷量ってどのようにして設定したらいいですか?」こういった疑問をまず、学生は考えると思います。

皆さんは、どのように筋力トレーニングの負荷量を設定していますでしょうか?

まず、負荷量を考える上で重要となるのは、「1RM」です。

そもそもRMとは、Repetition Maximumの略です。つまり最大挙上重量です。

1RMとは、1回挙上(反復)可能な最大の負荷の事を言います。つまり、1回だけやって2回目は「もう無理!できない!」となる負荷量の事です。10回まで繰り返す事ができれば、それは10RMの負荷量です。

実際に、1RMの負荷量を調べるには2つの方法があります。

一つは、実際に1回しか行えないような負荷をかけてその負荷がどのくらいかを測定する方法ですが、いきなり高負荷をかける事は特に初心者では怪我のリスクも伴いますし、ましてや高齢者に対しては骨・関節系の損傷につながる可能性があるのでしない方がいいです。というよりしてはいけません。

臨床においては、二つ目の方法である最大下の負荷で反復運動を行い、最大反復回数に基づいて1RMを推定します。例えば、10kgの負荷で10回反復できた場合は、1RMの75%の負荷が10kgとなるので、1RMの負荷は約13.3kgとなります。

反復回数と1RMの関係は以下の通りです。

反復回数と1RMの関係

臨床の現場では、なかなか数値化して負荷量が設定できない場合があると思いますが、そういった場合は経験的な「手ごたえ」が重要となります。

これが60%くらいかなあ・・・、とかこれは75%くらいかなあ・・・といった具合です。

まず、1RMの負荷量がどのくらいかが分かれば、トレーニングで求められる負荷量の程度を設定しやすくなります。

対象者に応じた負荷量の設定は以下の通りです。

①筋力強化を目的とした場合

筋力強化を目的とした場合は、1RMの60~70%の負荷で、8~12回、低~中速(1~5秒かけて下ろし、1~5秒かけて挙上する)で運動を行います。これを2~3分間の休憩をはさみ、1~3セット行います。この運動を2~4回行います。

②筋肥大を目的とした場合

筋肥大を目的とした場合は、1RMの70~85%の負荷で、8~12回、低~中速で運動を行います。1~2分間の休憩を挟み、1~3セット行います。運動の頻度は週2~4回とします。

③筋持久力向上を目的とした場合

筋持久力向上を目的とした場合、低負荷で10~15回、低速(5秒かけて上げて、5秒かけて降ろす)で運動を行います。セット間の休憩は1分未満で、数セット繰り返します。この運動を週2~3回行います。

④対象者が高齢者の場合

高齢者の筋力増強や筋肥大を目的とした場合、1RMの60~80%の負荷で、低~中速の運動を8~12回、セット間の休憩1~3分で、1~3セット、週2~3回行う事が推奨されています。

以上が具体的な運動負荷になります。

やはり、高負荷の運動では速筋線維(タイプⅡ線維)を含むほとんどの筋線維が動員され、低負荷の運動ではサイズの原理より、持久力に優れた遅筋線維(タイプⅠ線維)が優先的に動員されます。

(高橋 哲也:“臨床思考”が身につく 運動療法Q&A (理学療法NAVI):医学書院:2016)


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歩行持久力

高齢者の全身持久力の評価はどのようにされていますでしょうか?

高齢者においては安全性や簡便性を考慮し、歩行を運動課題として評価する事が多いと思われます。

6分間歩行テスト(6MWT)は、6分間でどのくらい歩行できるかの距離を測定するテストです。最大酸素摂取量との相関が強く、高齢者の測定においても安全性や再現性が確認されており、高齢者の全身持久力を評価する実用性の高いテストです。

年齢別の基準値は以下の通りです。

6分間歩行テストにおける年齢別基準値

また、シャトルスタミナウォークテスト(SSTw)は3分間での歩行距離を測定するテストで、これも高齢者にとって安全かつ簡便に測定できるテストです。

SSTwも最大酸素摂取量との高い相関も示されており、信頼性・妥当性が確認されています。

SSTwの年齢別基準値は以下の通りです。

スタミナシャトルウォークテストにおける年齢別基準値

患者さんによって動作レベルに違いがあり、このテストを行えない方も多くおられるとは思いますが、できる方はこういった簡便に行えるテストを用いて持久力の評価を行い、結果と照らし合わせると客観的な全身持久力を確認できます。

(市橋 則明:理学療法評価学―障害別・関節別評価のポイントと実際:文光堂:2016)


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