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歩行時の腕の振りは、誰しもが歩行をすると自然と出てきます。ただ、なぜ上肢を振る必要があるのか答えられますか?

また、脳卒中後の患者さんや、パーキンソン病の患者さんは一様に上肢の振りが少なく、体幹固定で歩いているような印象です。何故なんでしょうか?

言われる事としては、、、

「ヒトが上肢を振って歩く理由は、主に歩行時のエネルギー消費を抑えるためと、歩行時の安定性を保つためと考えられている。」

「同じ速度での歩行において、自然な上肢の振りをした場合は、上肢を振らずに歩いた場合に比べて約8%エネルギー消費量が減少する。」

とあります。

実際に上肢を振って歩くのと、振らずに歩くのでは振って歩いた方が確かに楽に歩けるような気がします。

どういうことが起こっているかというと、、、

「自然歩行では左右交互に振り出される下肢の動きによって、身体の鉛直軸周りに回転運動が生じる。それに対して上肢は、下肢の動きとは拮抗する方向に左右交互に振られ、身体全体の角運動量を限りなくゼロに近づけている。それにより、余分な筋力の発生が抑えられ、エネルギー消費も抑えられる。」

とあります。

つまり「でんでん太鼓」みたいなイメージですよね。

バイオメカニクス的には、下肢・体幹の回旋の動きをキャンセルする役目が上肢の振りにはあると言われていますが、まさにその通りであると言えますね。

実際に、上肢を振っている時の上肢の筋活動はどうなのかというと、、、

「上肢の振りは主に肩関節屈伸で行われているが、肩関節周囲筋の収縮はほとんど認められないか、三角筋や広背筋、僧帽筋にわずかに認められるのみである。したがって歩行時の上肢の振りは、肩甲帯の回旋や慣性力、重力などの作用により主に受動的に行われている。」

ということです。

イメージ通りで、上肢は自分で振ろうとして振っているわけではなく、受動的に上肢を振っている訳ですね。

ということは逆に言えば、下肢の振り出しが少なく、歩行時の体幹の回旋が少ない方は自然と上肢の振りが少なくなると言えますね。

また、

「歩行時の安定性については、自然歩行における腕の振りは限定的であるが、歩行時に外乱が加わった時などは上肢の動きを利用してバランスを回復する。そのため、腕を拘束した歩行では安定性が低下すると言える。」

とあります。

確かに、綱渡りをするように歩行するときはバランスを取るために、いつもより大きく上肢を動かして歩いていく印象です。安定性を取るための上肢の動きとして利用できる場合もあるということですね。

上肢は歩行中に振ることが出来て損はなく、安定性にも良いと言えますね。

(市橋 則明:身体運動学−関節の制御機構と筋機能:メジカルビュー社:2017)

ヒマワリ 歩行

歩行に必要なMMTっていくらだと思いますか?

我々は普段の歩行では、筋力はそんなに使って歩いてはいません。そもそも、MMTは0~5の6段階で評価されますが、歩行に必要とされる筋肉はMMTで3+程度とされています。

3+とは、軽く抵抗をかけても動かせるぐらいの程度であり、MMT5での筋力を100とすると3+は10~20程度だと言われています。

つまり、正常の5分の1程度の筋力があれば歩行は可能という事です。

セラピストの中でも歩行に必要な筋力はあるのに、「歩けない」=「筋力が無い」と判断して筋トレを指導している場面はありませんか?

筋力訓練の後、患者さんが歩けない場面を見た時、もう一度筋力による影響なのか、それ以外の影響なのかを再考してみる必要があります。

(國津 秀治:図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book):秀和システム:2013)


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メディアルコラプス

皆さんは「メディアルコラプス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

「メディアルコラプス」とは歩行時の荷重応答期に見られる下肢の特徴的な肢位の事です。

正常歩行においては、荷重応答期において股関節は軽度外旋位を保持しています。この時、外旋筋である大殿筋や、内旋筋である中殿筋や小殿筋が同時収縮していますが、これらの機能が不足している場合、特に大殿筋が働かない場合は、股関節は屈曲・内旋位へ偏移してしまいます。

コラプスとは「つぶれる」とか、「崩れる」という意味があります。

股関節の主に大殿筋の機能不全により、上図のような特徴的な下肢の肢位となります。

臨床でもこんな患者さんたくさんおられますよね。

(畠中 泰彦:姿勢・動作・歩行分析 (PT・OTビジュアルテキスト):羊土社:2015)


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「stiff-knee gait」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?直訳すると「硬い膝の歩行」です。

「stiff-knee gait」は脳血管障害や脳性麻痺、膝関節疾患患者などによく見られる特徴的な歩行です。立脚期・遊脚期ともに膝関節の屈曲の運動が減少している状態です。

stiff knee gait


※イメージとしてはこんな感じです。(極端かもしれませんが・・・)

運動学的な特徴として以下の通りです。

①立脚終期から前遊脚期において股関節の伸展が少ない。
②立脚期を通して膝関節の屈曲がほとんど認められない。
③遊脚期の膝関節屈曲が少ない。
④立脚終期の足関節背屈が大きいが、前遊脚期の底屈が少なく、前遊脚期に入ると背屈が早期に起こる。

立脚終期~前遊脚期において、股関節伸展足関節底屈が少ないと、前方への推進力が低下してしまいます。

通常歩行では、前遊脚期の際には足関節が十分に底屈し、床をしっかり蹴る事で床反力を利用し、前への推進力につなげていきますが、「stiff-knee gait」においては、前遊脚期において十分に足関節底屈せず前足部荷重が不十分なまま、下肢の振り出しに移行し、上に引き上げる様な形で下肢を振り出すような歩行様式となってしまいます。合わせて、立脚側において前足部への荷重が不足しているため、十分なステップ長が確保できずに股関節伸展の減少となってしまいます。

つまり蹴り出しと、ステップ長の減少により、非効率的な歩行となってしまいます。

この「stiff-knee gait」を改善させるためには何が必要なのでしょうか?

改善のためには立脚終期で足関節が十分に底屈し、前方への推進力を得る事が重要です。

ただ、股関節伸展が不足している状態での足関節底屈では、床反力ベクトルは上を向いてしまい、前への推進力としては乏しいため、股関節が十分伸展した状態での足関節底屈によって、床反力ベクトルを前方に向かわせ、推進力につなげていく必要があります。

以上より、立脚終期において股関節・膝関節伸展位で、足関節底屈の動きが必要となります。

このための治療介入について紹介します。

≪方法1≫足関節底屈運動を正確に行う事を感じる

まずは、平行棒内立位において正確にヒールライズを行う事から始めていきます。この時に膝関節・骨盤・体幹の代償運動に注意しながら動作学習していきます。

両側ヒールライズから、片脚ヒールライズへと移行し十分に腓腹筋に収縮を入れる感覚を獲得します。

≪方法2≫歩行時の母趾球・小趾球への荷重を感じる

歩行時の母趾球・小趾球への荷重を感じるために、踵上げをしながら歩行し、前足部での荷重感覚を感じてもらいます。この時にも代償動作に注意します。

≪方法3≫1歩踏み出した位置での、足関節底屈運動を正確に感じる

荷重の受け継ぎの肢位で、足関節底屈運動を行います。これによって前方へ蹴り出す感覚を獲得します。この時も体幹の代償などに気をつけます。

≪方法4≫立脚終期から前遊脚期の膝関節屈曲速度を増加させる

1歩踏み出した肢位にて後足の踵上げを行います。体幹の回旋の代償に気をつけます。

(福井 勉:ブラッシュアップ理学療法―88の知が生み出す臨床技術:三輪書店:2012)



また、stiff-knee gaitの原因の一つとして、前遊脚期から遊脚期にかけて、大腿直筋の過剰な筋張力の発揮が生じたり、活動開始のタイミングが早期化してしまいます。

これに対して、大腿直筋の過剰な収縮を抑制し、股関節屈筋である腸腰筋の活動を相対的に高め、腓腹筋と腸腰筋の協調的な活動により、下肢の振り出しができるようにしていく必要があります。

(樋口 貴広、建内 宏重:姿勢と歩行 協調からひも解く:三輪書店:2015)


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正常歩行時にはどのくらい関節の可動域が必要でしょうか?臨床では理学療法士は必要に応じて、関節可動域制限に対してどこまで治療が必要なのかを根拠をもとに判断していきます。歩行を行う上で、どこまで可動域が必要なのかは、当たり前のように知っておく必要があります。

歩行 画像

今回は、正常歩行での関節の運動の軌跡を見直していきます。

○足関節

・足関節の底屈と背屈は歩行周期の間、交互に2回ずつ起こります。

・踵接地から底屈に動き、LR(荷重応答期)にて底屈は5°でピークを迎え、背屈方向に運動していきます。

・MSt~TSt(立脚中期~立脚終期)にかけて背屈は続き、TSt(立脚終期)で背屈は10°のピーク迎え、その後底屈方向に運動が変化します。

・PSw(前遊脚期)において背屈10°から底屈15°まで底屈方向へ変化します。

・ISw~MSw(遊脚初期~遊脚中期)にかけて背屈の動きで足部が持ち上げられます。背屈2°まで背屈していきます。

・以上より、正常歩行を行う際には足関節は背屈10°~底屈15°まで必要です。

○膝関節

・膝関節の屈曲と伸展は歩行周期で、交互に2回ずつ生じます。

・踵接地時は膝関節は平均5°屈曲位で、そこからLR(荷重応答期)では20°程度まで膝関節は屈曲していきます。

・MSt~TSt(立脚中期~立脚終期)では、屈曲20°の状態から伸展方向に運動し、平均伸展5°でピークを迎え、そこから屈曲方向へ動いていきます。

・PSw~ISw(前遊脚期~遊脚初期)において膝関節は急激に屈曲していき、ISw(遊脚初期)にて屈曲60~70°のピークを迎えます。

・MSw~TSw(遊脚中期~遊脚終期)においては、膝関節は伸展していき、TSw(遊脚終期)にて完全伸展位(0°)となります。

・以上より、正常歩行で必要な膝関節の可動域は、伸展0°~屈曲60°となります。

○股関節

・踵接地時は股関節はおよそ屈曲30°で、そこからMSt~TSt(立脚中期~立脚終期)にかけて伸展していきます。

・TSt(立脚終期)からPSw(前遊脚期)の移行期に股関節伸展10°のピークを迎え、そこから屈曲方向へ運動していきます。

・ISw~MSw(遊脚初期~遊脚中期)では股関節は屈曲し続け、MSw(遊脚中期)にて屈曲30°にてピークを迎えます。

・以上より、正常歩行にて必要な股関節の可動域は、屈曲30°~伸展10°となります。

○上肢

・肩関節は最大伸展24°~最大屈曲8°まで運動します。歩行速度が速くなると、肩関節伸展角度が増大し、最大伸展31°まで上昇します。最大屈曲には変化ありません。

(Perry,Jacquelin:ペリー 歩行分析―正常歩行と異常歩行:医歯薬出版:2012)


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