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筋トレの負荷量

「筋力トレーニングの負荷量ってどのようにして設定したらいいですか?」こういった疑問をまず、学生は考えると思います。

皆さんは、どのように筋力トレーニングの負荷量を設定していますでしょうか?

まず、負荷量を考える上で重要となるのは、「1RM」です。

そもそもRMとは、Repetition Maximumの略です。つまり最大挙上重量です。

1RMとは、1回挙上(反復)可能な最大の負荷の事を言います。つまり、1回だけやって2回目は「もう無理!できない!」となる負荷量の事です。10回まで繰り返す事ができれば、それは10RMの負荷量です。

実際に、1RMの負荷量を調べるには2つの方法があります。

一つは、実際に1回しか行えないような負荷をかけてその負荷がどのくらいかを測定する方法ですが、いきなり高負荷をかける事は特に初心者では怪我のリスクも伴いますし、ましてや高齢者に対しては骨・関節系の損傷につながる可能性があるのでしない方がいいです。というよりしてはいけません。

臨床においては、二つ目の方法である最大下の負荷で反復運動を行い、最大反復回数に基づいて1RMを推定します。例えば、10kgの負荷で10回反復できた場合は、1RMの75%の負荷が10kgとなるので、1RMの負荷は約13.3kgとなります。

反復回数と1RMの関係は以下の通りです。

反復回数と1RMの関係

臨床の現場では、なかなか数値化して負荷量が設定できない場合があると思いますが、そういった場合は経験的な「手ごたえ」が重要となります。

これが60%くらいかなあ・・・、とかこれは75%くらいかなあ・・・といった具合です。

まず、1RMの負荷量がどのくらいかが分かれば、トレーニングで求められる負荷量の程度を設定しやすくなります。

対象者に応じた負荷量の設定は以下の通りです。

①筋力強化を目的とした場合

筋力強化を目的とした場合は、1RMの60~70%の負荷で、8~12回、低~中速(1~5秒かけて下ろし、1~5秒かけて挙上する)で運動を行います。これを2~3分間の休憩をはさみ、1~3セット行います。この運動を2~4回行います。

②筋肥大を目的とした場合

筋肥大を目的とした場合は、1RMの70~85%の負荷で、8~12回、低~中速で運動を行います。1~2分間の休憩を挟み、1~3セット行います。運動の頻度は週2~4回とします。

③筋持久力向上を目的とした場合

筋持久力向上を目的とした場合、低負荷で10~15回、低速(5秒かけて上げて、5秒かけて降ろす)で運動を行います。セット間の休憩は1分未満で、数セット繰り返します。この運動を週2~3回行います。

④対象者が高齢者の場合

高齢者の筋力増強や筋肥大を目的とした場合、1RMの60~80%の負荷で、低~中速の運動を8~12回、セット間の休憩1~3分で、1~3セット、週2~3回行う事が推奨されています。

以上が具体的な運動負荷になります。

やはり、高負荷の運動では速筋線維(タイプⅡ線維)を含むほとんどの筋線維が動員され、低負荷の運動ではサイズの原理より、持久力に優れた遅筋線維(タイプⅠ線維)が優先的に動員されます。

(高橋 哲也:“臨床思考”が身につく 運動療法Q&A (理学療法NAVI):医学書院:2016)


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筋肥大のメカニズム

「かっこいい体になりたい」「強くみせたい」そういった方にとって、筋肥大は求められます。特に、年齢の若い方にこのニーズはあると思います。

今回は、筋肥大のメカニズムについて考えていきます。

筋肥大を生じさせるメカニズムとしては、大きく5つからなります。

①メカニカルストレス

メカニカルストレスとは「力学的ストレス」の事を言いますが、要は何か重い物を持ち上げる時や、物を引っ張る時の伸張など、筋や腱に加わる力の事です。

筋肥大をさせるためにはこの「メカニカルストレス」を筋に十分にかけていかなければいけませんが、筋肥大を目指すためには最大筋力の70~80%の負荷が必要となってきます。筋に対してある程度強く、動作回数やトレーニングの頻度が適切であれば、筋は太くなっていきます。

これが、弱い力で回数を何回もしても筋肥大は促されません。なぜなのでしょうか?

そもそも筋線維には「速筋線維」と「遅筋線維」からなりますが、速筋線維は瞬発力に優れ、素早く収縮できる性質を持っています。筋肥大を促すためには、筋トレによってこの速筋線維を選択的に使い込まなければなりません。そのために、最大筋力の70~80%程度のウエイトでメカニカルストレスを加え、短時間で実施できる種目がほとんどとなります。

弱い力での筋トレは、遅筋線維の活動となるので持久力を上げる事となります。遅筋線維をの活動を促すことは体脂肪を落とすことが目的となり、筋肥大を目的とした場合、違ってくるという事になるのです。

②筋線維の損傷・再生

筋トレによって筋が微細な損傷を受けると、その後の修復によって筋は成長していきます。

筋トレにおいてはこの微細な損傷が起きやすい運動をしていく必要がありますが、それは遠心性収縮です。肘を曲げる筋トレの場合、曲げる動作は力を入れてやっていても、下ろす動作も丁寧に行い、微細な損傷を起こす事も意識しておくことが重要です。

③代謝環境

筋を動かすためにはATPというエネルギーが必要です。筋肥大を狙う為に速筋線維をメインに使う筋トレでは、短時間で多量のATPが必要となります。

このATPをエネルギーとして使う際に、副産物として乳酸が作られますが、この乳酸が蓄積してその情報が脳に伝わると、筋の成長を促すようなホルモンを分泌させるように指令がでます。

つまり、乳酸がたくさん出る様な運動をすれば、筋肥大を促すホルモンの分泌が多くなるという事です。

④酸素環境

最近では加圧トレーニングが良く聞きますが、これは腕や脚の基部を圧迫して血流を制限するトレーニングです。

こういった低酸素状態そのものがシグナルとなって脳に伝わり、筋肥大を促すホルモンを分泌させると考えられています。

筋肥大を促すためには、こういった酸素環境を上手に利用する事も重要です。

筋が活動するためにはエネルギー(ATP)が必要となってきますが、遅筋線維の場合は酸素が無いとATPを作る能力が低下してしまうため、活動しにくくなります。それに対し、速筋線維は低酸素環境においてもATPを作ることができるため、筋トレ中の低酸素状態においては選択的に速筋線維を使っている事となります。

また、低酸素状態は筋の力を抜いた時には血流が増え、一気に解消されます。この時、反応性の高い活性酸素種が作られ、これも筋肥大を促すシグナルとなると考えられています。

⑤ホルモン・成長因子

さらに筋肥大を狙うために、ホルモンや成長因子を上手に操る事も重要となります。

筋肥大を促す代表的な物質は、成長ホルモン、男性ホルモン(テストステロン)、IGF-I(インスリン様成長因子-I)などがあります。これらの物質の分泌量は筋トレのやり方によって差が出ます。

基本は10回×3セット(最大の75%の負荷)以上で、インターバルは60秒です。同じ負荷でもインターバルが3分とった場合、1分休憩をとるのとでは、なんと5倍の差がでます。

(石井 直方、岡田 隆:5つのコツでカラダが変わる! 筋力トレーニング・メソッド (カラダをつくる本シリーズ):ベースボールマガジン社:2011)


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正しい筋トレ

①負荷強度

一般的に「筋肉を太くしたい」とか「筋力を高めたい」という目標を達成するために、必要な負荷強度は70%と言われています。

トレーニングの際には70%程度の負荷であれば効果が出ると言われ、これが世界のスタンダードになっています。逆に、70%以下の負荷量では狙った効果はあまり期待できません。

70%の負荷で余裕が出てきた人は、80%・・・と負荷を増やしていくと良いでしょう。

②適切なスピード

筋力向上のためには70%以上の負荷が必要ですが、一人で行うエクササイズで特に自重トレーニングで行う場合は、負荷を70%までもってくる事はなかなかできません。1秒で曲げて、1秒で伸ばすといったようなリズミカルなエクササイズでは反動を使ってしまう為に、筋肉にしっかりと働きかける事ができないのです。

そこで特に自重トレーニングにおいては、4秒で曲げて、4秒で伸ばすと言ったようなゆっくりとした動きにより、少ない負荷でもよりしっかりと筋肉に働きかける事ができるのです。

③適切な時間

適切な時間とは、筋肉が出しているトータルの時間、つまり「力を出している時間(秒)×回数」の事です。

研究においては、筋肉が力を出している時間が1セットあたり、80~100秒になるように設定する事で、最もトレーニング効果を生むとされています。

④適切な量(回数)

○秒で上げて、○秒で下げるというトレーニングを何回やるかという事ですが、自重にて4秒で上げて、4秒で下げるというスピードで行う場合、10~12回を目安にすると良いと思われます。

20回以上連続で簡単に行えてしまう場合、負荷が少なく筋肉に効いていない状態となっています。

⑤適切な頻度

トレーニングを毎日するかどうかの事ですが、例えば80%の負荷で8回を3セット行う場合、毎日するとオーバーワークになると言われています。また65%の負荷を20回で3セット行う場合も強い疲労を生じます。

これだけの負荷・回数を設定する場合、筋肉の修復させる期間を作らなければならないので、週2~3回の頻度がベストとなります。

ただ、上記の負荷で1セットだけ行う場合や、負荷量は少なめに行う場合は基本的に毎日行う事がすすめられます。

⑥正しいフォーム

トレーニングを行う際には「正しい姿勢で行う」というのが大前提となります。間違った姿勢や、乱れた姿勢では狙った効果が狙えません。

正しいフォームで行わずに回数だけをこなしているばかりでは、繰り返すうちに故障につながったり、怪我の原因となったりしています。

⑦種目の選択

どの筋肉への負荷を狙ったトレーニングなのかをしっかり理解し、同じようなトレーニングでもレベルによって違う部位が働く事も注意しながら種目を選択していきます。

最も効果的なトレーニングを選ぶことが重要です。

(石井 直方:正しく効果的に鍛えるための筋トレの正解:成美堂出版:2012)


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筋の長さ張力曲線 ブログ用

「筋の長さ-張力曲線」は学校の授業で習う基礎知識だと思います。筋の生理学では特に重要な考え方ですが、以下の図の通りです。

筋の長さ-張力曲線 ブログ用

筋収縮によって得られる張力を「活動張力」と言い、自然長において最大となります。なぜこのような山なりの形になるかというと、自然長においてアクチンとミオシンの重なりが最も多いためです。

アクチンとミオシンの重なりが多ければ多いほど大きな筋収縮を促せますし、重なる部分が少なければ発揮する筋収縮も少なくなってしまいます。

一般的に自然長(静止長)の60%の長さになると、張力を発揮できなくなるとされています。

筋の長さが短い状態であると、そこから筋収縮を促そうとしてもなかなか収縮が入らない事を経験します。

これを臨床的に応用しようとするのであれば、個別的に筋トレをしようとする際に、収縮させたい筋と収縮させたくない筋が隣接している事がありますが、関節の肢位を変えることによって、収縮させたい筋を強調させる事ができます。

例えば、大殿筋を収縮させたい時には股関節伸展のエクササイズをしますが、膝伸展位でのエクササイズではハムストリングスにも収縮が入りやすい状態となります。ここで、ハムストリングスが短縮位となる、膝屈曲位で股関節を伸展させた場合、大殿筋を個別に筋トレしている状態にできます。

また、自然長(静止長)を超えると収縮によって得られる張力は減少しますが、筋を構成する結合組織の張力(受動的張力)が加わるので、全張力は増加します。

例えば、変形性膝関節症のおばあちゃんにありがちな姿勢アライメントにおける大腿筋膜張筋の活動で言えます。こういった方の歩行の立脚期においては、中殿筋の筋力をあまり使わずに、大腿筋膜張筋の静止張力を高めるため、膝軽度屈曲位・膝内反・骨盤の立脚時のswayによって、大腿筋膜張筋の筋の長さを長くし、全張力を高め、そこに体重を預けるようにして立脚をしているような状態がよく臨床で目にします。

これは、大腿筋膜張筋の受動要素によって外側の支持性を高めている状態ですが、こういった状態で立脚をとることは安定性としては良いですが、筋の長さが長いままでは筋収縮が行えないので、立脚の状態から動けなくなってしまいます。

トレーニング効果としては、短縮位よりも伸張位でのトレーニングのほうが増強効果は高くなります。

(植松 光俊、大川 祐行:運動療法学テキスト (シンプル理学療法学シリーズ):南江堂:2015)


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筋トレと栄養

高齢者に筋力トレーニングが有効であることは、もはや疑いの余地がない状態ですが、今回は栄養が筋力トレーニングに加えて相乗効果をもたらすのかという事についてです。

1994年にNew England Journal of Medicine誌に掲載された研究では、平均87.1±0.6歳の高齢者100名を4群(筋力トレーニング群、サプリメント群、筋力トレーニング+サプリメント群、対照群)に分け、10週間のレジスタンストレーニングを週3回実施しました。1RMの80%を8回×3セットの負荷量で行い、その結果、筋力トレーニング群と、筋力トレーニング+サプリメント群に有意な筋力向上が見られました。

また、2012年のJournal of American Geriatrics Society誌では、75歳以上のサルコペニアと診断された女性155名を4群(筋力トレーニング+アミノ酸群、筋力トレーニング群、アミノ酸群、対照群)にわけ、20分間の筋力トレーニングを実施した結果、対照群と比較して筋力トレーニング+アミノ酸群と、筋力トレーニング群で有意に筋力向上が見られました。また、筋力に加え筋量と歩行速度の向上もあり、下肢筋量と膝伸展筋力を組み合わせた指標で、筋力トレーニング+アミノ酸群が対照群の4倍以上の機能改善を示したとの報告があります。

以上の事から、筋力トレーニングは筋力向上の高いエビデンスでありますが、筋力トレーニングに加えてアミノ酸などのサプリメントによる栄養補助を行う事が、筋力向上に相乗的な効果をもたらすのではないかと考えられています。

筋力増加のメカニズムとして、骨格筋タンパク質の合成が分解を上回ると筋肥大が起こることが考えられます。アミノ酸を摂取することは、血中のアミノ酸濃度を上昇させ、骨格筋タンパク質の合成を促進させる事につながります。つまり、アミノ酸摂取が筋力向上に貢献することは高齢者においても同じです。

臨床の現場において、筋力トレーニングの時に限らず日常的に高齢者の栄養状態を良好に保つことは重要です。栄養状態の指標である血清アルブミンの臨床医学的なカットオフポイントは3.8g/dl以上とされています。地域高齢者に関しても栄養状態(臨床的には4.0g/dl以上が望ましいとされています)を把握したうえで筋力トレーニングを行う事が望ましいと考えられます。

(井平 光、古名 丈人:理学療法 30巻9号:2013)


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