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脳卒中患者歩行

脳卒中患者において歩行速度は、歩行実用性を決定する重要な因子であり、歩行速度を向上させることは歩行の効率を高め、日常生活における行動範囲を拡大する事につながります。

Perryによると、歩行速度により、歩行が生活場面でどのくらい行えるかという分類に以下のように分けています。

○屋内外ともに歩行で生活する者:10m歩行は、12.5秒以下である必要がある。
○屋内は歩行だが、屋外での長距離移動などでは車椅子などを利用する者:10m歩行が25秒以下である必要がある。
○屋内でしか歩行できない者:10m歩行が25秒以上の場合。

ある程度の目安なので、歩行速度だけで実用性は判断はできませんが、臨床では歩行速度を上げるトレーニングを行うと、代償動作が出現しやすくなる事にも注意します。

実際は、歩容やバランスを悪化させずに、歩行速度を上げていくトレーニング戦略が望ましいです。

そのためには、どのようなポイントで歩行速度を上げていけば良いのでしょうか?

①歩行時の下肢の対称性を高める事
②歩行パターンを効率の良いものに変更する事(3動作⇒2動作)
③両側下肢の筋力、特に足底屈筋ならびに股関節屈筋の強化を図る事
④非麻痺側下肢ならびに麻痺側を大きく振り出す事
⑤非麻痺側上肢を強く振るようにして推進力を得る事

以上のことに着眼点を置きながら、介入していく事が良いと思われます。

ただ、正常な歩行パターンに近づける事が、必ずしも歩行のスピードを高める事にはならない事に注意しなければなりません。

さらに、歩行速度を高めるためのポイントを記していきます。

○Dobkinらの試み

脳卒中片麻痺患者で、強制的に速く歩かせた群とそうでない群と比較すると、速く歩かせた群が歩行能力が改善されたと報告されています。

○杖を出すタイミング

歩行中の杖を出すタイミングを早くすることで、それがトリガーとなり歩行周期全体が速まる事が観察されています。また、杖を前に出すタイミングを早くすることは、下肢を大きく前に振り出して歩行速度を上げる場合とは異なり、歩行時のバランスや歩容を悪化させにくい利点があります。

○external cueの利用

外的な手がかりの事をcue(キュー:聴覚・視覚・体性感覚刺激)と言いますが、これを利用した課題は特にパーキンソン病患者に対して有効であるという報告が非常に多いですが、脳卒中患者に対しても有効ではないかと考えられています。

cueを利用した課題例は以下の通りです。

1)聴覚的手がかりを用いた歩行練習例
・杖をできるだけ速く出すように毎回声をかける
・メトロノームの音に合わせて杖を出す
・リズムをとるように患者の身体の一部(背中や肩)を軽くたたく(掛け声に合わせて)

2)視覚的手がかりを用いた歩行練習例
・床やトレッドミル上に引かれた直線や目印を次々と踏むようにして歩く
・セラピストは患者よりも前を速く歩き、患者はそれに追従する

3)フィードバックを用いた歩行練習例
・歩行中にパフォーマンスの知識(KP)を与える(例:「もっと早く足を出して!」「もっとスピードを上げて!」)
・歩行後に結果の知識(KR)を与える(例:「前回よりも3秒速くなっていますよ」「もっと速く歩けるはずです。今度は5秒短縮できるようにしましょうか」)
・KPとKRを同時に与える

○トレッドミルによる歩行トレーニング

(潮見 泰蔵:脳卒中患者に対する課題指向型トレーニング:文光堂:2015)


※関連記事
関連:高齢者の歩行速度・歩行率・歩幅の目安
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歩く姿

リハビリテーションの現場において、患者さんの目指すべき獲得動作レベルは、ただ単に障害物のない平らな床の上を、まっすぐ歩く屋内歩行だけを目指しているのではありません。

実際の自宅環境は、床に物が置いてあったり、座布団の上を歩いたり、狭い廊下を通ったり、家の人に呼びとめられて振り返ったり、電話に出るために急いで電話の所まで行ったり、物を持ちながら歩く必要もあるでしょう。

こういった日常生活における歩行の実用性を獲得するために、患者さんが様々な環境や動作の流れの中で効率的な動作遂行の学習が必要になります。

様々なバリエーションの条件の中で反復練習を行い、課題に対する処理能力を高める事が重要です。

①歩行中に急に停止する
②歩行中に急に呼びとめ、その方向に振り返させる
③異なる速度(できるだけ早く、通常の速さで、できるだけゆっくりと)歩く
④障害物をよける、スラローム歩行、またぐ
⑤目の前を人が横切る
⑥柔らかな床材の上を歩く
⑦片手に物を持って歩く
⑧人の往来の激しい場所で(人を避けながら)歩く


以上の歩行課題をそれぞれ行ったり、複数を同時に行ったりしていきます。

(潮見 泰蔵:脳障害後の機能回復と運動学習:理学療法科学:2006)


※関連記事
関連:歩行に必要なMMTは?
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最近、脳卒中に対するリハでも良く言われている「課題指向型アプローチ」についてですが、そもそもどんなもんなんだと疑問に思う方も少なくないはずです。

課題指向型アプローチは1932年にBernsteinが提唱したシステム理論を根拠に持ちます。

システム理論とは、「人間の運動や行動は何らかの課題を遂行している状態であり、その課題の達成のためにいくつかのシステムが動員されたり、組織化されたり、ある行動パターンが生じる」というものです。

つまり、システムの構成をする要素の相互作用によって、機能的な課題が与えられた環境の中で効率良く遂行できるようになるとのことです。

例えば、臨床における訓練場面でも、バランスを含む姿勢調節では、その課題(目標に手を伸ばすこと、立ち上がること、部屋を歩くこと)と背景(身体の位置、環境の特性)に特異的です。課題や条件が少し変化するだけでも、筋活動のパターンに著しい変化をもたらします。この特性はある課題から、別の課題に転移する可能性に欠けています。例えば、立位でウエイトシフトのトレーニングをしても、それが歩行の安定性が改善することには直接的にはつながらないのです。

脳卒中の方は、課題を遂行する際には残存機能を駆使して、過剰努力をして動かれることが多いです。片麻痺患者の代償運動を矯正するのではなく、動作の効率化を高めることが重要な介入ポイントになります。

そういった練習を行うと、機能障害レベルで改善が認められなかった人でも、能力障害レベルの改善が期待できます。

(潮見泰藏:脳卒中に対する標準的理学療法介入―何を考え、どう進めるか?;2007)

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