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head control

「寝返り」や「起き上がり」では特に、基本的な運動において動作に先行して頭頸部の運動が起きます。

頭部と頸部の位置関係は、上位頚椎(C1~C3)の関節、靱帯、頸部筋の筋紡錘などの受容器によって検知され、この情報に基づいて四肢の姿勢筋緊張に変化が起き、この時の頭頸部の運動を頭頸部のコントロール(Head Control)と呼びます。

臨床においても、頭頸部の動きがちょっと違うだけで、寝返れたり、起き上がれなくなったりします。非常に重要な機能だと思われます。

たかが頭の動きで・・・と思うかもしれませんが、臨床での患者さんにおいては頭頸部の動き一つで、腹部への収縮力の高まりが変化したりしますので、見て置くべき要素の一つです。

Head Controlで重要な要素としては、上位頚椎が屈曲する事です。

上位頚椎の屈曲を可能にする筋群は、頭長筋頚長筋の椎前筋群です。

こういった頭長筋や頚長筋が機能せず、斜角筋や広頚筋が過剰に収縮している場合は、下位頚椎の屈曲のみで頭が持ち上げにくくなるので、頸部の深層屈曲筋が十分に機能しているかを評価し、斜角筋や広頚筋の過剰な収縮はしっかりリリースしていくことが大切です。

頸部の深層前面筋

しかし、上位頚椎の屈曲を妨げるものとして、後頭下筋群の緊張があります。

後頭下筋群には、上頭斜筋下頭斜筋大後頭直筋小後頭直筋があり、Head Control獲得のためにはこれらの筋の緊張を取っていかなければなりません。

後頭下筋群

正常なHead Controlでは、上位頚椎が十分に屈曲する事で、腹部や股関節屈曲筋などの体幹前面筋の緊張が高まり、寝返りや起き上がりの動作をスムーズにしてくれるのです。

これが、上位頚椎が伸展した状態で下位頚椎のみの屈曲で動く場合は、背筋の緊張が優位になり腹部に収縮が入りにくく、寝返りや起き上がりの動作がしにくくなります。

head control

(石井 慎一郎:動作分析 臨床活用講座―バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践:メジカルビュー社:2013)


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脳卒中・片麻痺の患者さんは、臨床において特徴的な寝返りを行います。

一度、その異常動作を学習してしまうと、その非効率的な動作のパターンを日常的に繰り返すこととなり、機能障害を大きくさせてしまう可能性があると考えられます。

まず、正常な起居動作は、頭部より開始した運動が股関節まで拡がるという事です。

体幹の主要な運動は、屈曲・回旋で始まり、on elbowから伸展・回旋方向に切り替わります。体幹の慣性モーメントを少なくするために、頭頚部の屈曲が起こり、続いて上部体幹から順番に屈曲し、最後に股関節を屈曲するような動作パターンとなります。

また、背臥位から寝返るときに、上側になる肩甲骨の前方突出が起こり、上肢は前方に伸ばされ、体幹の回転を妨げない位置に置いておかなくてはなりません。

寝返り動作の開始時に上下肢で支持面を押すことはあっても、体幹の回転運動が起きると、回転方向と反対側に上下肢が残ることはありません。

以上のポイントをふまえて、脳卒中患者さんの寝返り動作を見ていくわけですが、よくみられる寝返りとして以下の図のような方が多いと思われます。

脳卒中患者の寝返り ブログ用

寝返り動作で見られる現象と解釈として・・・

体幹の伸展・回旋パターンによる寝返りは、腹部の筋活動が十分に高められていない方が多用する動作パターンです。

また、上側になる肩甲骨の前方突出が困難な場合では、頭部-体幹-骨盤へと回転を運動を広げられないため、下肢で床を押して骨盤の回転運動を起こそうとします。この状態での寝返りは、全身の伸展パターンとなるため、頭部の屈曲・回旋が困難となってしまいます。

つまり、これらにより・・・

寝返り動作が途中で制動されてしまうのです。

つまり、どういう事かというと・・・

床を押すために残った下肢や、肩甲帯の前方突出ができずに残った上肢は、動きを制動するカウンターウエイトとして作用し、動作を妨害してしまいます。

また、特に股関節や体幹の筋力が十分でない患者さんは、寝返れないからといって、健側上肢で手すりを引っ張ることなどで、患側上肢に連合反応が生じ、上肢が同時屈曲して肩甲帯が後方に引かれて、動作を阻害します。

以上の視点で寝返りの評価をしていきながら、患者さんがどのポイントで失敗しているのか把握し、それに対してどの部分の機能を上げていくことで、動作の改善ができるだろうという事を明確に分析していきながら、治療につなげていきます。

・頭頚部のコントロールを先に学習してもらうか
・腹部のトーンを高める練習をするのか
・肩甲帯の前方突出の動作を獲得していくのか
・支持面上の重心移動の練習をするのか
・リーチ動作の練習を行っていくのか

さまざまな方針の中で、評価⇒治療⇒評価⇒治療・・・と行っていき、効率的な寝返り動作の獲得につなげていきます。

(長澤 弘:脳卒中・片麻痺理学療法マニュアル:2007)


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寝返り ブログ用

寝返りの動作分析に関する文献って、昔はほぼ皆無でしたよね。学生時代、レポートをつくる際に寝返りの問題点を抽出し、治療を考える時は非常に苦労しました。

皆さんはどうですか?

寝返りは数多くのパターンがあり、健常人でも常にワンパターンの寝返りをするわけではないため、どのような寝返りができたらゴールなのか?考え方の基準になるものがありませんでした。

石井先生の動作分析の考え方は、非常に明確です。

正常と逸脱した動作を単に正しいフォームにするというのではなく、動作の「機能」を見ていかなくてはいけないという事です。

特に、寝返りは起き上がりや、立ち上がりにつなげていく動作であるべきという事なのです。

◎寝返りの第1相

頭頚部のわずかな屈曲と回旋が生じ、上側の肩甲帯の前方突出とリーチが起きるまでの区間を指します。
運動の開始部位は頭頚部である。頭頚部の屈曲と回旋が動作に先行して起こります。
頭頚部の屈曲回旋に続き、上側になる肩甲骨が胸郭面上で前方突出し、上肢が寝返る側にリーチされます。

◎寝返りの第2相

上部体幹が回旋運動を始め、上側になる肩が下側の肩の上に配列されるまでの区間を指します。
肩甲骨の前方突出と上肢のリーチに続き、胸椎・腰椎が回旋し、体軸内で回旋が生じ上部体幹が寝返る方向に回転していく。
胸椎が回旋し始めるころから寝返っていく側へ身体重心を移動させるため、下肢が支持面を操作します。
体軸内の回旋は、上部体幹が先行して、下部体幹の回旋へと波及していきます。

◎寝返りの第3相

上部体幹の回旋に続いて下部体幹が回旋を始め、側臥位になるまでの区間を指します。
第3相の体軸内回旋は、第2相と異なる回旋パターンを呈します。
第2相の体軸内回旋は、固定された下部体幹に対して上部体幹が回旋します。一方、第3相になると回旋運動は逆転し、固定された上部体幹に対して下部体幹の回旋運動がおきます。
この回旋運動の逆転によって、先行した上部体幹の回旋に下部体幹の回旋が追いつき、側臥位が完成します。

(石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座―バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践:2013)


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我々、健常者が行う寝返りの動作パターンは非常に多く、以下のパターンに分類できる。

◎上肢の運動パターンの分類

上側の上肢が肩関節の高さより低い位置でリーチされる動作パターン
上側の上肢が肩関節の高さより高い位置でリーチされる動作パターン
上側の上肢で床面を押し付け、その後リーチする動作パターン
上側の上肢で床面を押し続けて寝返る動作パターン

◎頸部、体幹の運動パターンの分類

骨盤と肩甲帯の位置関係が固定された動作パターン
骨盤が先行する動作パターン
骨盤と肩甲帯の位置関係が変化する動作パターン
肩甲帯が先行するパターン

◎下肢の運動パターンの分類

両側下肢が屈曲し、床面からもち上がる動作パターン
片側下肢が屈曲し床面からもち上がる動作パターン
片側または両側の下肢が屈曲し、床面を押して寝返る動作パターン
片側の下肢が支持面から持ち上がり、下肢の重さを利用して寝返るパターン
どちらの下肢も支持面と接触し続けるが、下肢で床面を押す部位が変化する動作
側臥位へと回転するにつれて、右脚または大腿は左下肢の後ろに残されるパターン

(Randy R,Richter:Description of Adult Rolling Movements and Hypothesis of Developmental Sequences,PHYS THER.69:1989)



ただ、機能障害のない健常成人が行う寝返りの動作パターンは非常に豊富であり、10回寝返れば10通りの寝返りをする場合があります。寝返り動作の正常運動パターンを定義するのは難しいです。

しかし、運動パターンには、ある普遍的特性が存在しています。

その普遍的特性とは「脊柱の回旋運動による肩甲帯と骨盤帯の間の回旋」すなわち、「体軸内回旋」です。(Bobath,1978)

健常成人の寝返り動作においては、身体各体節を筋活動によって連結させ、ある部位から始まった回旋運動が、途切れることなく前進に波及します。また、身体すべての体節が、身体の回転運動を阻害しないように運動するのが特徴です。

(石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座―バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践:2013)


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