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脳卒中後の患者さんで端座位exを行う際に、前方への恐怖心が強い場合や、体幹・下肢の緊張が強く、反りかえる傾向が認められることが臨床でよくあります。

原因としては

①股関節屈曲可動域の減少により、座位で骨盤後傾位となり後方へ倒れやすくなる
②脊柱可動域の減少
③腹筋群あるいは股関節屈筋群の活動性低下
④pusher現象により、非麻痺側下肢で床面を蹴ることで後方に倒れやすくなる
⑤前方への恐怖心が強く体幹前傾ができない

以上が主な原因となります。原因は一つとは限らず混在している場合もありますので、十分に評価していきます。

①が原因の場合
股関節屈曲の可動域訓練を行い、最低80°以上の可動域を確保します。座位で骨盤が後傾しないレベルが目標です。

②が原因の場合
脊柱の分節的な動きをエクササイズまたは、徒手的に出していくと良いでしょう。

③が原因の場合
・体幹を後傾させた所から直立位に戻す運動を繰り返していき、腹部の活動性を高め、後方への制動を高めます。
・座位で前方のテーブルの上に上肢をのせ、その上でリーチ動作を行い、股関節屈筋によって体幹前傾を促していくとともに骨盤の前後傾の動きも出していく。

④が原因の場合
pusher現象が原因の場合、座面上を高くして足底を床に接地させないようにして座位を行う。

⑤が原因の場合
・セラピストが患者の前方で介助を行うか、前方に台やテーブルを置き上肢が支持できるようにすると安心感が高まり、後方へ倒れにくくなります。
・また、座位で大腿部上に大きめのボールをのせ、寄りかかるようにして体幹前傾を促していく方法もあります。

以上の項目以外にも、座位でハムストリングスの短縮によって骨盤後傾位となっている事もあるため、座位で両足部を後方に引くことで、ハムストリングスが緩み骨盤前傾が可能となり、体幹伸展することから、重心が前方に移動できるようになることもあります。

(武富由雄、市橋則明:理学療法プログラムデザイン―ケース別アプローチのポイントと実際;2009)

体幹後傾を伴う麻痺側遊脚期 ブログ用

上図のように歩行時に麻痺側遊脚期に体幹後傾して振り出す方は、脳卒中後の臨床でよく見かける動作ですが、麻痺側股関節屈曲の筋力の低下によって生じている場合が多いです。

杖歩行にて体幹後傾が生じている場合は、杖を離すと体幹は後傾だけでなく側屈を生じる事もあります。

重力に抗して麻痺側股関節屈曲が行える筋力(MMT3レベル)の場合は、遊脚期の股関節屈曲の筋力訓練を行っていきます。

股関節屈曲の運動をさまざまな股関節角度で行っていくことが大切です。

座位における股関節屈曲トレーニング ブログ用

股関節屈曲のトレーニングを座位で行いますが、体幹後傾位から始めていき、徐々に体幹前傾位でのトレーニングにしていきます。

立位における股関節屈曲トレーニング ブログ用

台や壁を手で支え、体幹前傾位で股関節屈曲運動を行います。

以上の筋力増強訓練行った上で、麻痺側の立脚後期のでの振り出しの練習を行います。立位において、麻痺側下肢を一歩後ろに引いた状態から、麻痺側下肢を振り出していきます。

麻痺側股関節屈曲が重力に抗して行えない筋力(MMT2レベル以下)の場合は、立位で非麻痺側を一歩前に出した状態で、麻痺側下肢を慣性の力で振り出すように訓練を行います。やり方としては非麻痺側前揃え型で行うのが望ましいです。

(武富由雄、市橋則明:理学療法プログラムデザイン―ケース別アプローチのポイントと実際;2009)

脳卒中患者さんの病態は本当にさまざまであり、軽度の麻痺の方もおられれば、重度の座位すら困難な麻痺を呈している方までおられます。

今回は、機能回復に期待ができる回復期での、脳卒中の運動療法の治療介入について記します。

回復期における脳卒中の運動療法のポイントは、「正しい姿勢・運動機能を再学習する」ということになります。

つまり、姿勢・運動の誤った治療介入や、不適切な環境によって生じる過緊張・痛みなどの二次障害予防して、可能な限り神経機能の回復を理学療法士が促していかなければなりません。

まず、病態レベルとして、上肢支持にて端座位がなんとか保持可能な方ですが、理学療法での訓練では座位訓練に並行して立位訓練を行っていきます。

なぜかというと、立位の方が骨盤を前傾しやいと同時に、下肢からの抗重力刺激が網様体脊髄路を刺激し、脊柱の抗重力伸筋活動が賦活されます。そのために、運動学的にも神経科学的にも体幹の伸展機構を促しやすいからなのです。

脳卒中の発症後から、とにかく座って・立ってという練習を早期から開始していくのはこのためです。

立位の治療介入では、セラピストの徒手によるコントロールでは限界があるため、装具(上肢装具や下肢装具など)を使用してアライメントを整え、脊柱垂直保持を再学習していくようにしていきます。

臨床の現場では、上肢に重度な麻痺を呈している方がおられると思います。麻痺側上肢の重みによって脊柱の垂直保持を阻害している場合には、肩装具を装着してアライメント矯正することが好ましいと思われます。

下図は脳卒中患者によく見られる静止立位で、肩装具を装着することでアライメントの修正が行えている図です。

脳卒中患者の立位アライメント介入 ブログ用

介入の順序としてはこのような静的立位保持の訓練を行ってから、動的立位保持の訓練に移っていきます。

動的立位保持はADL動作に直結しているため、ADL場面を想定して訓練を行います。

(原 寛美,吉尾 雅春:脳卒中理学療法の理論と技術:2013)


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立位時や座位時に非麻痺側上下肢で押すことによって麻痺側の方に突っ張って傾き、非麻痺側に戻ることができない状態をプッシャー(Pusher)現象といいます。教科書でよく出てきますね。脳血管障害の患者さんで、この症状を呈している方を臨床上見ることがあります。

上肢のプッシャーに注目しがちですが、下肢が突っ張り麻痺側に倒れる事が多いです。

プッシャー現象の原因としては、非麻痺側の緊張が高く、うまく協調的な運動ができないために起こる場合が多いです。

プッシャー現象 図 ブログ用

下肢のプッシャーは立位・歩行の問題となりやすいです。

治療として、非麻痺側上下肢の協調性トレーニングを行う事でプッシャー現象が減少する場合があります。

下肢の協調性トレーニングは臥位で股関節の内外転・内外旋、膝関節の屈曲・伸展、足関節の底屈・背屈をactiveで繰り返して反復していきます。

下肢のプッシャーが強い場合は座位保持で床に足をつけないようにし、座位での運動療法(非麻痺側への荷重)を行っていくことが重要と思われます。

プッシャーの運動療法の図 ブログ用


(武富由雄、市橋則明:理学療法プログラムデザイン―ケース別アプローチのポイントと実際;2009)



臨床上非常によく見るケースですね。麻痺側のswingで床とのクリアランスに問題があるために生じます。

日常生活では、床を足尖が引きずることで、つまづきやすくなり、転倒のリスクが増えることが問題になってきますので、この異常動作は、改善すべき対象の優先順位で高くなってくると思われます。

swing時のクリアランス低下の原因としては・・・

足関節背屈運動の制限・・・下腿三頭筋の筋緊張亢進、足関節背屈筋力低下
膝関節屈曲運動の制限・・・大腿四頭筋の筋緊張亢進

関節可動域の制限・・・足関節の背屈制限、膝関節の屈曲制限、股関節の屈曲制限

麻痺側swingで足尖が床をするケース ブログ用

歩行時にまずどの部分に問題があるか、歩行観察して予測し(トップダウン)、個別に問題がありそうな足関節・膝関節・股関節のROM、MMTを見ていきます。

足関節を見た場合、まず、背屈運動を随意的に行い、収縮が十分にあるかどうかを確認し、歩行時に必要な角度の背屈運動が生じなければ、装具の処方が必要となります。ただ、足関節以外の(例えば股関節など)筋力低下がある場合は、装具が重すぎるために、かえって引きずりが強くなってしまう事もあるので注意します。

足・膝・股関節の可動域制限がある場合は、可動域訓練を行います。

足関節の背屈運動が十分に行えていない場合は、さまざまな股関節角度における背屈運動を促していきます。

方法としては立位下で、徐々に股関節の伸展角度を増加させていくのが良いと思われます。

膝関節の屈曲運動が十分に行えていない場合は、さまざまな股関節角度で膝屈曲運動を促していきます。


(武富由雄、市橋則明:理学療法プログラムデザイン―ケース別アプローチのポイントと実際;2009)


(Jacquelin Perry,Judith M.Burnfield:ペリー 歩行分析―正常歩行と異常歩行:2012)


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