Photo Gallery

トイレ

排便が困難な患者さんは臨床ではたくさんおられると思います。排便コントロールは主に病棟で管理されているとは思いますが、理学療法士として「排便困難」という状況にどう関われるでしょうか。

まず、排便時に必要な要素としては以下の4つです。

①便意の知覚

まず、排便をする前に便意を感じる必要がありますが、直腸内に一定量の便が溜まると直腸壁が伸張して圧受容器が刺激され、骨盤神経を通じて仙髄の排便中枢から大脳に刺激が伝わり、便意が生じます。

②直腸から肛門への便の移動

直腸内に約150~250mlの便が溜まってくると脊髄反射により内肛門括約筋が弛緩します。さらに直腸内に便が溜まってくると、直腸内の収縮が強くなり、便が肛門側へ移動して便意が高まってきます。ですが、この時は肛門挙筋外肛門括約筋が収縮している事で、便が外に漏れ出る事を防いでいます。

③直腸・肛門の弛緩

トイレに座って排便の姿勢をとる事で、肛門挙筋外肛門括約筋恥骨直腸筋が弛緩します。それにより、直腸肛門角が鈍角化され、会陰部の下垂肛門の弛緩が生じて排便が可能になります。

こういった機序で肛門が開いても便が排出できない場合は、いきみが必要です。

④いきみ

いきむ事で腹腔内圧を高め、それにより直腸内圧が高まり、直腸の便を肛門側へ運びます。腹腔内圧を高めるためには横隔膜の活動が強く影響しており、吸気時に横隔膜をしっかり下に引き下げ、バルサルバ効果時に生じる腹横筋骨盤底筋群などの腹腔壁の緊張も上げていく事が必要です。

スムーズな排便まで ブログ用

適切な排便姿勢 ブログ用

適切な排便姿勢は上図の通りです。

WOC Nursing Vol.3 No.8―WOC(創傷・オストミー・失禁)予防・治療・ケア 特集:排尿・排便障害のアセスメント:医学出版:2015)


※関連記事
関連:トイレ動作の項目別の難易度
関連:運動学・機能解剖のオススメ参考書
トイレ動作は特に、自立のニーズの高い動作です。患者本人にとっても、介助する家族にとっても、トイレ動作が自立して行えるようになる事は臨床上重要なポイントとなってきます。

では、実際にトイレ動作の中でのどのような動作が難しいのか?動作獲得のためにはどのような訓練からはじめていけば良いのか?段階的に動作学習を促すためにも、セラピストは動作の難易度を把握しておく必要があります。

今回は脳卒中患者の方のトイレ動作の場合の報告ですが、全体的には下図のように、上から順に難易度が高いと考えられました。

トイレ動作 難易度 ブログ用

左片麻痺と右片麻痺に分けた場合は、それぞれ下図のような順になります。

トイレ動作 片麻痺 動作難易度 ブログ用

全体的に難易度の高い動作としては、「下衣を上げる動作」であり、それに続いて「ドアの開閉」、「下衣を下げる動作」、「方向転換」が難しいとされる事が分かりました。

左右差で見ると、特に左片麻痺の場合は、「便座へのアプローチ」や、「フットレストへの下肢の上げ下ろし」などの周辺動作が難しく、右片麻痺ではトイレ動作そのものである「方向転換」、「立ち上がり」、「車椅子着座」などが反対側に比べて困難であることが分かりました。

臨床での患者さんにおいても、やはり、ズボンを下ろす時にはまだ何とか下ろせますが、ズボンを上げる時にはふらついて介助を要する時が多いですね。トイレ内での転倒においても方向転換時や、ドアの開閉時に転倒が多いのも納得できます。

非常に興味深い報告であり、こういった難易度を項目別に知ることによって、対応や訓練について早期に検討する事ができると思われます。

(坂田祥子ほか:総合リハビリテーション 2015年 3月号 特集 脳卒中リハビリテーションのエビデンス:2015)


※関連記事
関連:運動学・機能解剖のオススメ参考書
関連:アフォーダンス
ADL動作において、体幹を回旋して後ろへ振り返る動作はよくあると思います。こういった回旋を伴う動作は不安定となりやすく、臨床においては転倒のリスクにつながりやすいです。

日常生活において、洗濯物を持って後ろへ置こうと思った時、キッチンで作業していて後ろのテーブルに料理を置こうと思った時、後ろから名前を呼ばれて振り返る時、また着座の際に後ろを確認する時も体幹の回旋が生じます。

後方に振り返る際の筋活動2 ブログ用

上図は健常人が水平面にて、全身を右回旋した場合に生じる頭頚部・体幹・股関節周囲筋の活動パターンです。

振り返り時に特に不安定性となりやすい場合は、これらの筋活動の評価を行い、活動を上げる治療が必要になると考えられます。

(Donald A.Neumann:筋骨格系のキネシオロジー―カラー版:2012)


※関連記事
関連:運動学・機能解剖のオススメ参考書
道路の掃除 ブログ用

ADLの獲得のためにはおおよそ必要なROMが存在します。

各項目で標準的なROMを記していきます。

○タオルを絞る
手背屈0~20°
回内外0~45°
肘屈曲65~80°
肩屈曲25~45°


○カッターシャツのボタンをはめる
手背屈30~50°
回内0~45°
肘屈曲80~120°
肩屈曲10~15°
肩外転5~10°


○顔を洗いそして拭く
手背屈40°
回外70°
肘屈曲40~135°
肩屈曲15~25°


○丸首シャツの着脱
手背屈40°
肘屈曲120°
肩屈曲70°
肩外転0~45°
肩内外旋45°


○グラスの水を飲む
手背屈15~20°
肘屈曲130°
肩屈曲30~45°


○髪をとく
手背屈0~20°
掌屈0~40°
回外30~50°
肘屈曲110°
肩屈曲70°
肩外旋30°
肩外転110°


○かがんで床の物を拾う
股屈曲114°
股外転27°
股外旋24°
膝屈曲117°


○椅子への立ち座り
股屈曲112°
股外転20°
股外旋14°
膝屈曲93°


(今野孝彦:Ⅱc 日常生活動作(ADL)と上肢機能.これでできるリウマチの作業療法:1996)



○階段昇降動作
膝関節屈曲83°

○しゃがみ込み動作
股関節屈曲77°
股関節内転5°
股関節外旋3°
膝関節屈曲117°


○床からの立ち上がり動作
股関節屈曲93°
股関節外転5°
股関節外旋3°


○下肢へのリーチ動作
股関節屈曲101°
股関節外転8°
股関節外旋4°
膝関節屈曲106°


(酒井孝文 他:変形性関節症患者の動作分析:PTジャーナル 37(12):2003)



正常歩行のためには(膝関節)0~65°の可動域が要求され、下腿と同じ高さの椅子からの立ち上がりには100°、21cm高の階段昇降には115°、胡座には130°、正座や和式トイレ動作には150°がそれぞれ必要である。

(八木茂典:膝関節疾患の異常歩行に対するエクササイズの工夫:理学療法 19(4):2002)



○日常生活活動と必要な膝屈曲角度について

自動可動域
平行歩行:70°
階段昇降:95°
椅子からの立ち上がり:105°
自転車漕ぎ:110°


他動可動域
躑踞の姿勢:130~145°
正座:150~165°


※躑踞姿勢とは、しゃがむ、うずくまるような姿勢の事で庭の草むしりをする時などに要求される姿勢です。

(鳥巣岳彦 他 編:標準整形外科学 第9版:2005)


※関連記事
関連:最終域感(end-feel)の感じ
関連:歩行分析・動作分析・姿勢分析のためのオススメ参考書
関連:正常歩行に必要な関節可動域
しゃがみ込み動作 ブログ用

しゃがみこみ動作が困難となっている方は、高齢者をはじめ脳卒中の方や様々な方で困難となっている場合が、臨床では非常に多いです。

しゃがみ込み動作は日常生活でも行う頻度が多く、床の物を取る時や、庭の草取り、一番下のタンスの引き出しを開ける時など、自宅での生活を行う上で重要な動作となってきます。病棟内でも、しゃがみ込み動作をした瞬間に転倒した事例も人によってはあると思います。

立ち上がり・着座の動作は十分にできても、しゃがみ込み動作はできない事は多々ありますので、動作チェックは必要となってきます。

しゃがみこみ動作ができない原因は多くあり、原因が混在している場合もあるので、十分に評価していくことが大切です。今回のしゃがみ込み動作は、床に踵がつく状態の動作となります。

○しゃがみ込み動作ができない原因

①股関節屈曲可動域制限
②膝関節屈曲可動域制限
③足関節背屈可動域制限
④骨盤前傾の動きの不足(骨盤後傾位)
⑤脊柱の屈曲可動域の低下
⑥腸腰筋の短縮位での機能不全
⑦体幹屈曲筋力低下
⑧前脛骨筋の最大背屈位での筋力低下

ここから病態別にアプローチ方法を記していきます。

①股関節屈曲可動域制限
②膝関節屈曲可動域制限
③足関節背屈可動域制限
⑤脊柱の屈曲可動域の低下
 この場合、関節包なのか、筋なのか制限因子を評価し、原因に対して適切な可動域訓練を行っていきます。股関節屈曲時に、大腿直筋や縫工筋の緊張が高い場合には、セラピストが指で圧迫しながら、抑制をかけて屈曲していくと良いと思われます。
 膝の深屈曲では脛骨の内旋が必要となるので、脛骨内旋を引き出すようにしていくとよいかと思われます。

④骨盤前傾の動きの不足(骨盤後傾位)
 患者さんでは、股関節の屈曲可動域が正常でも、上手に骨盤前傾ができない方もおられます。そういった方は座位で骨盤前傾トレーニングを行い、骨盤前傾位で保持していく練習をしていきます。

骨盤前傾トレーニング ブログ用

⑥腸腰筋の短縮位での機能不全
 骨盤前傾のトレーニングを行った後に、座位で骨盤前傾位のまま股関節屈曲していきます。(腸腰筋が短縮位で力を発揮できるようにするため)activeでできてきたら、軽く抵抗運動でもできるようになるとよいかと思われます。

⑧前脛骨筋の最大背屈位での筋力低下
 しゃがみ込み位で保持するためには、最大背屈位でキープするための前脛骨筋の筋力が必要となります。MMTにて最大背屈位での前脛骨筋の筋力を評価し、弱い場合は最大背屈位での筋力トレーニングを行います。

足関節最大背屈位でのトレーニング ブログ用

⇒しゃがみこみ動作トレーニングへ

しゃがみこみ保持トレーニング ブログ用

 個別のトレーニングを行ったら、しゃがみ込み動作を行います。難しければ、踵を足底板などで補高し、重心を前方にさせることでしゃがみ込みやすくなります。1~2分保持できるようになれば、徐々に補高の高さを低くしていき、最後には足底板がとれるところまで継続していきます。

(武富由雄、市橋則明:理学療法プログラムデザイン―ケース別アプローチのポイントと実際;2009)


※関連記事
関連:運動学・機能解剖のオススメ参考書

WHAT'S NEW?