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パーキンソン病の患者さんは臨床において、特定の姿勢異常を呈している場合が多いですが、特に姿勢異常では、「体幹の側屈」と、「camptocormia」という特徴的な姿勢を取りやすくなります。

こういった特徴的な姿勢はどうして起こるのでしょうか?

体幹側屈とcamptocormia ブログ用

○体幹の側屈

パーキン症病の方でしばしば、体幹の側屈を呈している方を見かけると思います。たいてい、ほとんどの患者さんでは体幹の側屈に伴い、前屈も生じます。パーキンソン病の患者さんは、運動障害の程度は左右対称ではなく、laterality (ラテラリティ=左右差)があります。側屈を生じている側に脊柱起立筋および、腹斜筋の筋活動の亢進が生じており、かつ筋委縮も側屈している側に多く認められます。

原因としては、向精神薬による緊張性ジストニアによって体幹の傾斜をもたらすという説がありますが、定かではありません。現在は、身体図式による身体軸の傾斜が原因ではないかという説が有力です。パーキンソン病の患者さんに、倒れている体幹を垂直に他動的に戻すと、「余計に倒れている感じがします」という訴えが聞かれるのも納得ができます。

○camptocormia

camptocormiaとはいわゆる前屈症の事であり、臥位では体幹の前屈は見られませんが、立位や歩行のような抗重力姿勢制御を必要とする姿勢では、体幹の前屈が生じてくる状態です。意識的に自分で体幹の伸展は可能ですが、疲労によりすぐ体幹が前屈位に戻ってしまいます。

原因として、中枢説と末梢説の2つが考えられています。

中枢説としては、能動的ジストニアの一種だというものです。末梢説は、抗重力筋の筋炎ではないかというものです。

最近、支持されつつある仮説としては、一時的に能動的ジストニアによる問題が生じて、その後二次的変化として脊柱起立筋の萎縮が生じているのではないかと考えられています。

(松尾 善美:パーキンソン病に対する標準的理学療法介入―何を考え、どう進めるか?:文光堂:2014)


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パーキンソン病は進行性の疾患であり、一般的には維持的な理学療法が中心となり、身体機能の悪化防止が主たる目的とされています。

①拘縮や変形の防止
②運動障害の改善
③ADL能力の維持

以上の3項目をパーキンソン病に対する理学療法の基本的治療戦略とし、日常生活の活動を維持できるよう、身体運動を積極的に行う必要があります。

まず、パーキンソン病の方には様々な病態があり、それに対して理学療法評価を行っていきます。

以下に理学療法評価の内容と、ポイントを記していきます。

①問診・視診
 発症時期や症状の聴取、重症度分類(ホーエン-ヤールの重症度分類)の予測を行います。
 また、大切なのは薬剤の種類、投与期間や服用時間についていつ何をどのくらいの間飲んでいるかを聞き取りを行います。
 薬剤コントロールの状況を知ることによって、日内変動・日差変動を把握し、訓練の開始時間訓練場所の設定に配慮する必要があります。円滑に運動が行える時間にリハビリを行い、目的とする運動が行えるような環境(手すりの有無や、目印、壁の有無などを考慮した環境)にて臨床では実施していきます。
 また、薬剤の長期投与によって副作用が生じるために、その影響も考慮にいれ、運動は休息を取りながら過負荷にならないような運動を設定していく必要もあります。

以下の図は薬剤長期投与による副作用です。

パーキンソン薬剤長期投与による副作用 ブログ用


②関節可動域テスト
 無動によって動きにくくなっている関節も明記していくことも大切だと思われます。無動によって関節拘縮の起こりやすい部位は特に、肩甲帯、上肢帯、頸部です。この部位は特にROM-exの必要な部位となり、ADL動作につながってくる所だと思います。拘縮予防を十分に行わなくてはいけません。

③MMT
 筋力低下の部位を調べます。重症度のステージが上がるにつれ筋力低下も著明になってきます。

④姿勢アライメント
 特に矢状面でのアライメントの異常についてチェックします。
 典型的なパターンとしては、頸部前弯増強、胸腰椎後弯、肩甲骨内転、肘屈曲、骨盤後傾、股関節屈曲、手指屈曲、膝関節屈曲、足関節底屈を呈する方が多いです。

⑤運動パターン・ADL動作
 起居動作やADL動作全般において動作パターンをチェックし分析を行います。耐久性や持続性、スムースに行えるかどうかもチェックします。
 特に、重症度のステージが上がるにつれ、体軸回旋が減少し、運動開始時に出現しにくい状態にある方が多いです。

⑥歩行分析
 特徴的な歩行(突進歩行、小刻み歩行など)だけでなく、歩行時の手の振り、方向転換、停止した状態、リズムのチェックを行います。

⑦平衡反応、姿勢反射
 保持能力のチェックを行います。

⑧協調性テスト
 遂行能力、安定性をチェックします。

⑨その他
 反射、知覚、言語、心肺機能、高次脳機能など必要に応じて行います。
 自律神経症状では血圧調節障害、排尿・排便障害、睡眠障害などが出現します。
 特にステージの重症な方に多いですが、血圧調節障害のある方は、リハビリの訓練の妨げになることも多く、起立性低血圧の出現によってなかなか離床が進まない事もあります。食事後や睡眠、入浴後などにも影響を受けることもあるために、発生状況を確認し、症状の発生を予防するように検討していかなければいけません。

以上の評価をふまえて、理学療法を実際に行っていきます。

まず、病期によって行う理学療法の訓練内容は変わってきます。

病期における理学療法 ブログ用

以上の図のように、患者さんの状態に合わせて運動療法を選択していきます。

まず、ROM-exですが、初期段階では自己運動が中心となります。全体的な可動域保持を目的に広範囲に訓練を行っていきます。ステージⅢ~Ⅴの方は自動介助・他動運動で行っていきます。特に、拘縮予防・改善を目的に、対象となる関節を実施していきます。

体軸回旋運動においても頸部・体幹の体軸回旋を誘導し、動作獲得につなげていきます。ステージⅠ・Ⅱの方は大きい体動の運動を行い、ステージⅢ~Ⅴの方は各部位での回旋の運動を行い、その後全体的な回旋運動へと進めていきます。

パーキンソン体操の目的は短縮筋の柔軟化(ストレッチの要素が大きいため)、可動性保持、短縮好発部位の予防、重心の再獲得などになります。ステージⅠ~Ⅲの方は主に立位、ステージⅡ~Ⅳの方は座位、ステージⅢ~Ⅴの方は臥位で行います。特に固縮の影響を受けやすい体幹・下肢の抗重力筋は十分に行う必要があります。

筋力訓練については、残存機能の維持・進行予防のために実施します。ステージが重度の方は特に過負荷にならないように注意します。


(細田多穂:中枢神経障害理学療法学テキスト (シンプル理学療法学シリーズ):2014)


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