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脳卒中の患者さんに対して回復期においては、どうのようにリハビリを計画していけばいいのでしょうか?

回復期といえば急性期の不安定な身体状況から回復し、リハビリテーションに専念して機能回復をどんどん行っていく時期になりますが、結局色々なリハビリがある中でどのようなリハビリをしていけば、患者さんのADLを最大限まで引き出すことができるのでしょうか?

特に言われているのが、、、

「集中的な理学療法の実施時間を増やすこと。上肢のCI療法や下肢への課題反復型の練習が推奨される。また、有酸素運動能力や下肢筋力の増強を目指す介入、応用歩行能力に通じる二重課題を課した介入も推奨される。なお、行わない事が強く推奨される事項は無い。」

とにかく、麻痺の回復を促すためにも、ADL向上のためにも、どんどん反復して動かして訓練時間をしっかり多くとれという事に尽きますね。

「脳卒中による機能障害は運動機能であれば3ヶ月、動作能力であれば6ヶ月まで回復の幅が大きい」とあります。

⇨ステージ理論による脳卒中後の回復過程

ステージ理論においてもこのような経過をたどるため、発症3ヶ月を過ぎて6ヶ月になっても歩行時の下肢の振り出しでつま先が引っかかるのは足関節背屈が出ないからだと一生懸命それだけを訓練で頑張るのではなく、3ヶ月を過ぎる頃にはどちらかというと今ある残存機能を元にどうやって動作の効率を高めていくか、つまり動きやすく動くためにはどうやって工夫したらいいかを少しずつ考えていかねばいけないという事ですね。

具体的には、適切な下肢装具を処方したり、骨盤の引き上げによる代償をある程度許容する中で局所に負担のかかりにくいような動作の仕方を考えたり、ハムストリングスの強化により膝関節屈曲の代償をある程度許すようにしていったり、、、。

こうも言われています。

「回復期理学療法の治療効果は重症度によって異なり、最重症と軽症よりも中等症での変化の幅が大きい。機能的予後は脳画像の病巣部位と大きさから脳の機能的可塑性が予測され、ADL自立の予測のポイントは年齢、脳損傷の大きさ、神経症候や麻痺の重症度、病前ADLとなる。なお、疫学的に見ると機能的予後は脳梗塞の方が良い。」

臨床的にも、そうだよなあという感じがします。

発症直後から歩行が十分に可能で、手の動きも良い方は特に変化に乏しいですし、逆にあまり重症な脳卒中の患者さんが劇的に改善する例はほとんど見たことがありません。変化の率が一番大きいのはやはり中等症の方で、じっくり時間をかけてだんだん良くなっていくイメージですね。

機能的予後が良い人はやはり、脳画像を見ても錐体路を全体的に直撃しているような病巣の人は少ないですし、特に大きく予後を分けるのは、年齢と発症前ADLだと個人的は感じています。これはなんとなくですが、、、。

個人差はあると思いますが、脳梗塞の方が全体的には予後がいいんですね、、、。

これらの考えを元に現在推奨される治療・介入の方法をまとめていきます。

①介入時間の確保(推奨グレードB)
移動・セルフケア・嚥下・コミュニケーション・認知などの複数領域に障害が残存した例では、より専門的かつ集中的に行う回復期リハを実施することが推奨される。

⇨グレードBになっていますが、個人的にはかなり重要なことであると思っています。ただ、時間をかければいいかというとそうではなく、専門的な介入時間の絶対的な量を増やしていく必要はあるかと考えています。

リハビリ時間以外でもただ、食堂で車椅子に患者さんが座ったままになるのではなく、看護師などの介入によって担当セラピストが指導した自主訓練をして過ごすだけでも大分違うと思います。

②麻痺側上肢への課題反復(推奨グレードA〜B)
上肢に対する運動負荷を積極的に繰り返し、特定の動作の反復を行うことが大切で、CI療法、ミラーセラピー、手関節背屈に対する電気刺激、随意運動介助電気刺激、ロボット装置を使った感覚運動トレーニング、促通反復療法などが上肢機能向上に有効である。

⇨脳卒中後の肩の痛みに注意しながら、上肢もどんどんいろんな介入をしていくのがいいと思います。特定の治療に固執せず、様々な手段で患者さんに課題をチャレンジしていただくのが良いのではないでしょうか?

③痙縮(推奨グレードA〜B)
痙縮による関節可動域制限に対してはボツリヌス療法が強く勧められ、高頻度の経皮的電気刺激も勧められる。

⇨やはり痙縮は悪です。リハビリを行う上で阻害因子になるので、しっかりと痙縮に対する介入も必要となってくると思います。

④麻痺側肩(推奨グレードB)
麻痺側肩の可動域制限に対する関節可動域運動や、亜脱臼に対する機能的電気刺激、肩痛の予防に対するスリングの使用も視野に入れる。

⇨脳卒中後の肩の管理については注意していく必要があると思います。

脳卒中後の合併症~肩関節の亜脱臼

⑤立位動作(推奨グレードA)
起立・着座や歩行練習の量を多くすることが強く推奨される。

⇨今の回復期病棟でのリハビリテーションでの運動量は十分に確保されているのか?という問題点に対し、警鐘を鳴らされている方もおられます。実際、起立・着座訓練、歩行訓練の量は思ったよりもまだ量的に少ないのではないでしょうか?もっとこういった訓練量をリハビリテーション時間でも病棟でも増やしていいのではないかと個人的には思います。(リスク管理はしながら)

ちょっとマッサージして筋緊張を是正して、感覚の訓練と可動域の訓練をして、最後の10分だけ歩行練習みたいな感じになっていませんか?できる人であれば、もっと負荷をかけていいと思います。

⑥歩行練習(推奨グレードB)
内反尖足に対する短下肢装具、筋電バイオフィードバック、免荷歩行器を使ったトレッドミル上での歩行練習、機能的電気刺激療法、歩行補助ロボットを使用した歩行練習、サーキットトレーニングが求められる。

⇨医療機器が揃っている施設・病院では積極的に取り組んでもらったらいいと思いますし、十分に機器の使用方法や効果を理解したスタッフがやっていただきたいと思います。

⑦ADL課題の練習(推奨グレードA)
ADL能力向上のために、集中的な理学療法や作業療法を行い、その時間を増やすことで課題反復型の練習が効果的で、強く勧められる。歩行課題では、屋外での歩行の推進につなげるために、様々な路面形状で必要距離を歩行する経験や、周辺環境に対処しながら歩行を遂行する二重課題処理能力がポイントとなる。

⇨運動療法で、大殿筋や大腿四頭筋、前脛骨筋の筋力が向上したら立ち上がれるようになるかといえば、そんなことはなく、立ち上がれるようになるためには立ち上がりの動作の練習をしっかりしないといけません。ADLにつなげていくには課題反復型の練習は必須です。また、歩くときも日常生活ではただ歩くだけでなく、話したり物を持ったり、周りの環境に注意したりといろんなことを考えながら歩かないといけないので、二重課題処理能力も重要です。

⑧体力の向上(推奨グレードA)
トレッドミルや自転車エルゴメーターでの有酸素運動と下肢筋力増強を組み合わせたプログラムで、最大酸素摂取量や歩行能力を優位に改善させることができる。

⇨脳卒中片麻痺患者さんは健常者に比べて、最大酸素摂取量や乳酸性作業域値などが低いと言われています。確かに、ちょっと杖歩行したら「疲れました」と言われますし、体力の低さを感じます。やはり、片麻痺になってからは、かなり健側の下肢での立位コントロールが求められますし、両側の体感機能が低下した状態で、感覚情報が入ってこないまま同時収縮を高めた歩き方は、ただただ疲れるイメージがします。自分でやってみたらよくわかります。

ベースの体力をしっかり向上させていくことは、日常生活自立のためにもかなり重要なことであるとも思います。

⑨低栄養の評価(推奨グレードA)
嚥下障害に関連した低栄養状態が多く認められ、他職種で連携することが勧められる。栄養は血清アルブミン値や、体重減少率から把握する。

⇨今盛んに言われている栄養の問題ですね。アルブミン値が低い方は結構おられると思います。どの時期の栄養状態を反映している数値なのか注意しながら、しっかり栄養管理もしていくことも大事だと思います。

⑩認知障害の把握(推奨グレードB)
半側空間無視、注意障害、遂行機能障害、情緒行動障害、うつ状態などについて評価を行うことが勧められる。

⇨これらについて把握することは、時によっては運動機能を見ることよりも優先される場合があります。運動機能は向上してきても、高次脳機能障害や、認知障害が原因でADLの自立が困難になることは臨床上非常に多く感じます。何ができて、何ができないのか。どういう時に注意しないといけないのか。詳細を把握し、対策・手段を考えていくことが重要になります。

(内山 靖:エビデンスに基づく理学療法 クイックリファレンス:医歯薬出版:2017)



すっかり久しぶりの更新となってしまいました。また、新たにスタートしていきたいと思います。

今回は脳卒中リハを行う前に考えるべき、脳画像読影の必要性です。

広南病院の阿部先生も言われている事ですが、脳卒中の患者さんのリハを行う前に脳画像を見ないという事は、エンジントラブルの車の修理を行う際に、エンジンの状態を確認せずにタイヤなどのその他の部分を触る事と一緒だとしています。

つまり、脳画像を見て損傷部位の程度を確認して、患者さんの症状の予測や、リハビリテーションの介入の方向性、予後予測をある程度立てていく事が非常に大切になってきます。

ただ、脳卒中患者の機能障害や機能予後は、脳損傷そのものによる一時障害と、病前の機能・発症後の機能回復などの二次障害の程度によっても左右されます。

つまり、予後予測においては脳画像の判断だけでなく、患者の年齢や病前の体力、既往歴、リハビリテーション歴などを総合的に考慮する必要があります。

特に、年齢という観点はかなり大きく、高齢者と比較して若年者は体力に優れる為に、多くの運動量をこなす事ができますし、神経可塑性にも優れており、機能回復も臨床的にかなり良い傾向にあります。

実際、画像上においても皮質脊髄路が完全に遮断された片麻痺患者であっても、若年者であれば他の機能代償によって歩行可能レベルにまで到達できる事は、確かに見られています。

(大村 優慈:養成校・教科書では教えてくれない‼ 脳卒中リハの落とし穴100―成功への一歩:ヒューマン・プレス:2017)

腓骨神経麻痺は良く知られた言葉ですが、足関節の感覚障害に加え、足関節背屈障害・足趾伸展障害によって、つま先が上がらない「下垂足」の症状を呈する末梢神経障害です。

発生原因としては、手術に伴う損傷、ギプスや装具の適合不良あるいは、不良肢位による腓骨頭への圧迫、骨盤骨折、大腿骨骨折などの外傷が挙げられます。色んな事で生じてしまいますね。

長時間足を組んだ姿勢で座っていても腓骨神経が圧迫され、つま先が上がらなくなるという症状が出たりすると言われます。

まず、手術に伴う損傷は手術中に傷ついてしまう事が原因ですが、人工関節置換術や癒着の激しい方の手術操作の場合は困難を極める事がありますので、腓骨神経に損傷が起こる事も少ない事ではありません。

そして、原因としては最も多いと思われますが、総腓骨神経が直接的に圧迫を受けてしまう事で麻痺になってしまう事があります。これはベッド上背臥位で、股関節外旋位を長時間とる事によって腓骨頭近傍が常に圧迫され、腓骨神経麻痺が誘発されてしまいます。これはギプスや装具の適合不良による圧迫においても生じます。

下の図の部分です。

腓骨神経麻痺

また、支配筋についておさらいです。

深腓骨神経:前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋、短趾伸筋、短母趾伸筋、第三腓骨筋
浅腓骨神経:長腓骨筋、短腓骨筋

つまり腓骨神経麻痺が生じる事によって、動きとしては足関節の背屈、回外、足趾の伸展、回内位での足関節底屈が障害されます。

そのほかに骨盤骨折や、大腿骨骨折などでも腓骨神経麻痺が生じますが、これは総腓骨神経の上の坐骨神経が骨折によって損傷を受ける事で、麻痺の影響を受けてしまうものです。

腓骨神経麻痺に対する理学療法ですが、まず、なぜ腓骨神経麻痺になったのか原因を確認して合併症の予防と、麻痺の回復に合わせた運動機能向上が目的となります。

○ベッド上臥位のポジショニングに注意する

原因としては一番多い腓骨神経の直接的な圧迫を避ける必要があるため、臥位においては股関節内外旋が中間位になるようにクッションなどでポジショニングします。これにより直接的な圧迫を避けておきます。

また常に股関節が外旋位になっていないかチェックし、足関節背屈・足趾伸展の動きがあるかどうか日頃からチェックします。

○尖足変形を予防する

前脛骨筋が麻痺してしまうと、拮抗筋である下腿三頭筋が優位になるため、足関節は底屈位をとります。(下垂足)

下垂足を放置してしまうと、底屈筋群が短縮してしまい尖足変形を生じてしまうため、十分な足関節背屈ROMエクササイズが必要となります。

また、深腓骨神経の麻痺によって長趾伸筋や長母趾伸筋も動きが障害されている場合は、足趾屈筋優位となるため足趾伸展のROMエクササイズも重要となります。

○筋力訓練を考慮する

麻痺筋は易疲労性があるので、強すぎる負荷では逆に筋力の低下につながってしまいます。筋力訓練は段階的に麻痺の回復に合わせて負荷量を調節していかなければいけません。

筋力が次第に回復してきたら、不安定版の活用によって荷重位で足関節の内返し、外返し、底背屈を促通し、感覚入力を増やす事で筋協調性の改善につながる事が期待できます。

神経回復の可能性が低い時は、麻痺の回復に固執せずどのようにしたらADL獲得につながるか、環境設定なども考慮しながら進めていきます。

筋力増強プログラム

○装具を処方する

歩行が不安定な時や、足関節の拘縮予防が必要な時は装具の適応となります。

下垂足の症状が軽度であれば弾性包帯や弾性バンドで対応ができるかと思われます。強い固定が必要な場合はプラスチックの短下肢装具を検討します。装具装着時は腓骨頭の圧迫がないか等確認して、足趾屈曲が歩行に影響する場合は足趾までカバーできる装具を検討します。

(國安 勝司、渡邉 進、椿原 彰夫:PT・OTのための 臨床実習で役立つリハビリテーション基本実技 PT版:診断と治療社:2016)


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脳卒中の発症

脳梗塞とは文字通り、脳の血管の一部が詰まり血流が途絶える事によって、脳細胞が壊死してしまう病気です。

脳への血流が途絶えてしまう事で、酸素と栄養(グルコース)の供給ができなくなってしまう事により脳細胞が壊死してしまうのです。

血流が途絶えてしまった部分の血流に対してさらなる障害悪化とならないように、脳梗塞後の脳血流維持のために考えるべき3つのポイントがあります。

「ペナンブラ」と「脳循環自動調節能」と「脳浮腫」の3つです。

○ペナンブラ

ペナンブラ

学校で習ったことはあると思いますが、「ペナンブラ」とは正常脳細胞と壊死した脳細胞の境界領域の事を言います。

この領域がなぜ大事かというと、ペナンブラ領域の血流がケアにより復活もしくは維持される事によって、神経機能の回復が再開される領域だからです。この部分の血流がストップしてしまうと、たちまち脳細胞の壊死が拡大してしまいます。そうならないように脳血流が十分に保たれるようにアプローチしていく必要があります。

○脳循環自動調節能

ペナンブラ領域の血流を救う為に重要な考え方として、「脳循環自動調節能」があります。

脳循環自動調節能

脳循環自動調節能とは、血圧が上昇したり低下したりして変動しても、脳の血管はそれに合わせて収縮や拡張によって変化し脳血流量を一定に保とうという働きがあります。この働きを脳循環自動調節能(autoregulation:オートレギュレーション)と言います。

正常な人では上のグラフのように、横軸が血圧ですが平均血圧60~160mmHgの範囲では脳血流は一定に保たれています。高血圧の人は自動調節能のグラフは右にシフトします。

それに対し、脳梗塞の発症後は自動調節能が破綻しており、血圧の変動によって脳血流量が変化してしまいます。特に発症後は、離床による血圧低下によってペナンブラ領域への血流量が低下していないか注意が必要です。

特に急性期は安易に積極的離床を進めず、離床の段階をチームで検討しなくてはなりません。

一般的な脳梗塞後の脳循環自動調節能の破綻期間は以下に示します。こういった期間を過ぎると脳循環の自動調節能は回復してきます。障害のタイプにより期間は異なっています。

脳梗塞の自動調節能の破綻期間

○脳浮腫

脳浮腫とはいわゆる脳がむくんでいる状態の事であり、脳の細胞内・細胞間質に液体がたまっている状態の事を言います。

脳浮腫は脳圧を亢進させ、脳ヘルニアの引き金になるため、注意が必要です。

脳圧とは頭蓋内圧とも言い、通常は60~180mmH₂Oで保たれています。

脳圧を決定する因子は脳実質、脳脊髄液、血液の3つですが、通常頭蓋内での割合は8:1:1(脳実質:脳脊髄液:血液)です。このバランスが崩れると脳圧が亢進します。

そもそもなぜ脳浮腫が起こるかというと、脳出血や脳梗塞後は、血液脳関門(BBB)という有害物質の侵入を阻止する警備員の様な働きをするシステムが破綻します。そうなると、普段は通過できないナトリウムイオンアルブミンなどが通過してしまいます。

細胞間質にナトリウムイオンやアルブミンが流れ込む事で、浸透圧による濃度勾配が起き、血漿中の水分が細胞間質に流れ込み、脳浮腫が生じます。

こういった脳浮腫が生じ、脳圧が亢進すると脳圧亢進症状(頭痛、悪心、嘔吐、うっ血乳頭、意識障害、瞳孔不同、対光反射の減弱、消失、呼吸の変化、クッシング現象)が出現します。

(飯田 祥、黒田 智也、久松 正樹、野々村 雅文、曷川 元:離床への不安を自信に変える脳卒中急性期における看護ケアとリハビリテーション完全ガイド (Early Mobilization Mook):慧文社:2015)


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臨床では、関節リウマチ(RA)を呈している患者さんは多いです。関節リウマチにより、人工関節をしておられる方や、まだ症状の軽度の方までおられます。関節リウマチを呈している方の運動療法は、実際にどのようなことに注意して実施していけば良いのでしょうか?

リハビリイラスト

まず、関節リウマチの患者さんになぜ運動療法を行うかとういう事についてですが、目的は以下の通りです。

・関節痛の軽減
・関節破壊の予防
・関節可動域や筋力の改善
・身体活動、ADL動作の改善

また、リハビリテーションを実施する前にリスク管理として注意して見ておく項目は、以下の項目です。

・X線画像検査、MRI検査、関節エコー検査、骨塩定量などの画像診断
・血液検査(赤沈値、CRP、リウマトイド因子、MMP-3、ヘモグロビンなど)
・薬物療法の治癒過程やその副作用

さらに、リウマチを呈している関節を実際に視診・触診し、関節の炎症所見がどの程度のものか確認して、痛みの原因が、①関節包内の軟部組織性、②骨性、③周囲筋の筋スパズムなのかを特定し、治療プログラムを立案していきます。骨性だと理学療法介入できませんが・・・

治療プログラムの立案の際に気をつけるポイントとしては、以下の項目があります。

①蜂窩織炎や毛細血管の弱化などが隠れている事があるため、皮膚の疼痛や発赤、内出血などに配慮していく
②関節包内か、周囲筋かにターゲットを絞ったアプローチを実施する
③アライメント不良が常に生じやすい事を想定し、リウマチの症状を呈している関節だけでなく、隣接する周囲の関節にも負担が生じていないかなど考慮したアプローチを実施する

治療内容としては、以下の3つが運動療法の3本柱になると思われます。

①関節・筋に対する治療(関節可動域制限や、異常な筋緊張に対してのアプローチ)
②筋力に対しての治療(筋力を向上していくアプローチ)
③ADL動作における負荷量の指導や体力的側面に対する治療

以上の方針で、リハビリテーション介入を行っていきます。

○関節可動域(ROM)訓練の実際

・関節リウマチの患者さんは、関節の炎症や疼痛が生じている事が多いために、関節内圧が高まる動きは疼痛が発生してしまうため、できるだけ関節内圧が変化しないような安楽肢位を自然ととるようになり、これが関節の不動につながり関節可動域制限を生じさせてしまいます。また、筋スパズムなどの持続的な筋収縮状態によっても、関節可動域制限を生じてしまいます。

・関節包内運動を実施する際、急性炎症期や不安定性、ムチランス変形のある関節は行わないほうがよいでしょう。

・筋スパズムに対して、罹患関節や周囲の隣接関節に対して、ストレッチなど筋緊張軽減を目的に実施します。

・物理療法なども併用するとよいでしょう。

環軸関節前方亜脱臼を考慮すると、頚椎に対するROMは行わないほうがよいでしょう。

○筋力訓練の実際

・MMTにて筋力を評価する際に、疼痛が強い場合はその周囲関節の筋力は出力抑制され、MMTにてちゃんとした評価ができない可能性があることも考慮し、疼痛検査を十分に評価する必要もあります。

・CRPや赤沈値が高く、全身状態が不良の場合や、ヘモグロビンなどの数値低下が見られ重度の貧血状態である場合は、筋力強化が期待できない場合が多く、低活動に伴う廃用症候群予防のための非荷重での等尺性収縮中心の介入が重要と考えられます。

・罹患関節が急性炎症期である場合は関節破壊を助長してしまうため、筋力訓練は中止します。

・炎症期では、等尺性収縮を中心とし、慢性期で骨破壊が見られない場合では等尺性収縮に加え、等張性収縮や荷重位でのCKCの筋力訓練などを取り入れていきます。

・立ち上がり動作やスクワットなど生活動作に反映できる運動や、筋の同時収縮を促す運動が効果的ですが、過負荷になると関節破壊を助長してしまうので、その日の夜か、次の日に疲労が残らないような回数・強度設定を行います。

・薬物の効果が現れる時間帯や、時期に実施できるような工夫も必要です。

・自主訓練として筋力訓練を指導する際は、回数を増やすというよりも収縮の強度を上げるように指導していくのがよいでしょう。

(佐浦 隆一、八木 範彦:関節リウマチ (リハ実践テクニック):メジカルビュー社:2014)

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