Photo Gallery

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ウェルニッケマン肢位

臨床において、脳卒中後の片麻痺患者さんは典型的な「ウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位」となる事が非常に多いです。なぜなのでしょうか?

「ウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位」となってしまう原因も諸説ありますが、皮質-網様体脊髄路の活動が関与しているとされています。

そもそもウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位とは、病変対側の上肢が屈曲位、下肢が伸展位となる状態の事を言います。脳幹より上の外側皮質脊髄路の損傷で痙性麻痺が強いほどこの肢位が誘発されます。

脳卒中発症直後は、外側皮質脊髄路の損傷によって下行路の支配が消失すると、運動細胞の興奮も低下します。この急性期の状態は弛緩性麻痺の状態です。

そして徐々に慢性期に移行するにあたり、運動細胞の興奮性が上昇してくると痙性麻痺が出現してきます。この時に、上肢では屈曲運動細胞群に、下肢は伸筋細胞群に興奮が顕著となりやすい傾向にあります。これにより、「上肢屈曲パターン、下肢伸展パターン」が誘発されやすくなってしまうのです。

ただ、この「ウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位」を自ら保っているのではなく、「情動や感情が高揚する時や、随意運動を開始する際に”先行”してこの肢位が誘発されている」という事なのです。前者の場合は大脳辺縁系・視床下部から網様体への投射、そして後者では皮質-網様体投射が寄与すると考えられています。

これらの投射系によって網様体脊髄路系が賦活されると、興奮性が亢進している麻痺側の上肢屈筋運動細胞と下肢伸筋運動細胞は、非麻痺側の運動細胞よりもより強く活動するため、麻痺側の上肢屈曲位と下肢伸展位が誘発されます。

つまり、先行性姿勢制御を誘発する皮質-網様体脊髄路の活動が、運動麻痺におけるウェルニッケマン(Wernicke-Mann)肢位の発現に関与すると考えられるのです。

(鈴木 恒彦:脳卒中の臨床神経リハビリテーション―理論と実践:市村出版:2016)


※関連記事
関連:脳卒中リハビリテーションの理論と治療方向性
関連:脳卒中片麻痺の回復のメカニズム
関連:10分でわかる脳の構造と機能-畿央大学
スポンサーサイト
皆さんご存じとは思いますが、「川平法」として提唱されている促通反復療法は、川平和美先生が考案した促通手技であり、「促通手技によって随意運動を実現し、それを反復する事によって随意運動を実現するために必要な神経路を再建・強化する事を目的とした、神経路強化的促通療法」です。

つまり麻痺そのものを改善させる事を促す手技で、テレビでも取り上げられている有名な手技ですね。

今回は、ここで述べられている神経路の結合強化に必要な要素である「誤りなき学習」「コンソリデーション」について記していきます。

①「誤りなき学習」特定神経路への反復興奮伝導

「誤りなき学習」とは、健忘症例に新しい事を記憶させる有効な方法の一つです。

例えば、AとBの名前を、2人の顔写真と名前を書いたカードを用いて記憶させる場合です。顔写真Aを提示して名前カードをそれぞれ出して「Aですか?」「Bですか?」と質問を繰り返しながら名前を記憶させようとすると「顔細胞Aの興奮」→「名前細胞Aの興奮」で正答時の反応と、「顔細胞Aの興奮」→「名前細胞Bの興奮」の誤答の反応を繰り返すために、正答時の「顔細胞A→名前細胞A」のシナプス強化が難しく、なかなかAの名前を覚える事が困難となります。

一方、「誤りなき学習」ではAの顔写真を提示して名前カードAを指して、「Aですね?」と再認させる事を反復します。そうすると、「顔細胞A→名前細胞A」のシナプス結合だけが強化されてAの名前を憶えやすくなるのです。

これと同じことを片麻痺の神経路の再建・強化に用いるのです。

つまり、下図のように肘関節屈曲の指示を出した際に、共同運動によって肘屈曲に加えて前腕回外を生じて患者さんの場合、「肘屈曲」を命じると同時に、促通手技によって神経路の興奮水準を高めて正しい「肘屈曲」を実現した運動を反復する事によって、分離した肘屈曲の神経回路を強化していきます。

神経路の強化

要は、求める運動パターンを促通手技によって実現して、それを反復する事で特定の神経路や神経細胞に運動プログラムを記憶させるという事です。

正しい動作を促通しながら反復しまくれという事ですね。神経路を強化させるにはかなり回数をこなさなければいけませんが・・・


しかし、麻痺の回復に関してはこの考え方は非常に大切だと思われます。中枢神経系は基本的に「やった事しか覚えない」ので、共同運動や痙縮の影響を少なくした状態で、必要な運動パターンを反復していく。川平法に限らず、これが麻痺改善の近道であると思われます。

②興奮伝導後のシナプスとコンソリデーション

シナプスは興奮が伝わると伝達効率が上がるため、興奮伝導を繰り返すと興奮がさらに伝わりやすくなり、神経回路の機能的結合が強まります。この伝達効率の向上による機能的結合強化の事をコンソリデーションと言います。

まだ組織学的な変化を伴う結合強化を生じていない状態で、運動学習を阻害する課題や結合強化を妨害する刺激があると、ちゃんと組織学的な結合強化を生じません。

コンソリデーションを持続させるためには練習と阻害課題との間隔が5分を超えると、ある程度の学習効果が残ると言われています。つまり、促通手技パターンを反復した後は、次のパターンの反復との間に少なくとも5分程度の休憩を入れる事で訓練効果を増大させる可能性が大きいと言われています。

しかし、実際に川平法を臨床で用いた場合、治療時間が限られている事と、反復促通で用いる運動パターンは学習阻害を招く内容ではないことから30秒~1分の休憩で十分であろうとされています。

また、コンソリデーションは睡眠中に大きく進むと言われています。毎日の練習効果をしっかり蓄積していくためには、良質な睡眠が大切です。

出来事の記憶にはREM睡眠が、運動学習にはnon-REM睡眠が関与すると考えられています。寝ている間も運動学習は進んでいるのです。

という事で、練習ばっかりではなく休憩も大事という事ですね。当たり前の事ですが十分にできているかどうかで、確かに臨床でも麻痺の改善度にかなり違いが出る様な印象があります。

(川平 和美:片麻痺回復のための運動療法―促通反復療法「川平法」の理論と実際:医学書院:2010)


※関連記事
関連:10分でわかる脳の構造と機能-畿央大学
関連:脳卒中片麻痺の回復のメカニズム
関連:臨床における運動学習

WHAT'S NEW?

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。