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アフォーダンス 椅子

アフォーダンスという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

アフォーダンスとは「環境から人に提供される意味」の事であり、アメリカの心理学者Gibsonが造った造語で、「与える・提供する」という意味を持つ動詞「afford」に、「状態・性質」という意味を持つ名詞語尾「ance」を組み合わせたものです。

アフォーダンス理論においては、人を取り巻く環境の中に行為を変化させうる状況(良い物と悪い物の両方)が存在しており、人は目的に応じてその情報を取捨選択しながら行為をしていると考えられています。

ちょっと何の事か分かりにくいのですが、例えば、上の写真は椅子ですが、たいていの人はこの椅子は座るものだと認識しており、何も考えなくても目の前にあれば座ろうとすると思います。

それは行為者の今までの経験と、行為者とその椅子の関係が、「座れる」というアフォーダンスになったからです。

これが、椅子に座れないくらい小さな子供や、座ると壊れてしまそうなくらい大きな力士にとっては、この椅子と行為者の間には「座れる」というアフォーダンスはありません。

また、手に持った荷物をどこかに置きたいという状況でこの椅子をみた場合、この椅子との関係性は「荷物置き」というアフォーダンスになりますし、何か手が届かない所の物を取りたい場合は椅子との関係性は「踏み台」になるかもしれません。

つまりアフォーダンスは、行為のいろいろな可能性の予見情報を我々が直接に知覚し、その時の事物が与えてくれる行為可能性の予見情報であると言えます。

椅子は本当はいろいろな使い方があるかもしれません。「座る」「踏み台にする」「荷物を置く」「地震がきた時には下に隠れる」「倒れそうになった時につかまる」「振り回して遊ぶ」「2つならべてベッドにする」・・・・・など。こういった様々な情報の中から、環境下に応じて知覚者が最適な情報をピックアップするのです。

Gibsonは人を環境に対して能動的に探求する存在と位置づけ、動くために知覚を利用して、知覚するために動くという人と環境との相互作用が常に行われ、自分がおかれた環境の中で得られた情報をもとに予測的・無意識的に行動していると言っています。

これまた難しく感じますが、例えば、左片麻痺の患者さんで、歩行が非常に不安定であり、車椅子自走レベルの方が、居室でベッドから起きて洗面台に水を飲もうとした時の場合です。普段はふらつきが著明でとても歩いて洗面台まではいけませんが、ある日、テレビ台につかまって歩いて洗面台まで行ってしまっていたという事が起こりました。

患者さんとしては、その時はベッドから手が届くテレビ台につかまれば歩いていけると思ったとの事でした。この場合、ベッドと洗面ヂの間のテレビ台が「歩いていくことができる」というアフォーダンスを提供し、それを患者さんが選択した事にあります。

病棟内での転倒のリスク、患者さんが一人で行動しないようにという事を考えた時に、環境下としてはどのような配置が安全だったのかを考えさせられる現象ですね。

(地神 裕史、斉藤 秀之:上肢の理学療法-局所機能と全身運動を結びつけるインタラクティブ・アプローチ:三輪書店:2016)


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患者さんのリハビリに対するモチベーションを高め、能力を最大限に引き出すことは理学療法士の仕事ですね。

実際に、我々セラピストは薬物などを使用する事はできませんから、臨床では何らかの工夫によって、患者さんのドーパミン系の活動を促すようにしていく必要があります。

リハビリ 課題 ブログ用

今回のテーマは「課題の順番」です。

Shidaraら(2002)の研究によると、課題の順番とやる気の関連についての傾向が示されています。

サルを用いた研究ですが、方法として、目の前にモニターを置き、そのモニターに赤色が表示されればレバーを押し、緑色の表示が出ればレバーを離すという課題を行うようにします。これができれば報酬となるジュースがもらえる仕組みです。

この単純な課題ではサルは97%の成功率で課題を達成する事ができました。

次に2回連続で課題を行わせて、2回目だけにジュースが貰えるように設定を変更したところ、1回目の成功率が低下してしましました。(初回85%、2回目97%)

次に4回目に成功しないとジュースが貰えないようにすると、初回74%、2回目80%、3回目93%、4回目97%となり、となり途中の課題の成功率が低下する傾向にありました。

こういった事から、報酬に至るまでのプロセスが多くなると、その間の課題のエラー率が上昇する事が分かりました。

これは臨床の場面でも大いに言える事ではないでしょうか。

例えば、患者さんのホープである「歩きたい」とか、「階段を上らないと仕事ができない」などやりたい練習を後回しにして、「まずは個々の筋肉を鍛えましょう」とか、「この動作ができないと歩けませんよ」としてしまう事は、セラピストの一方的な課題の押し付けになってしまい、患者さんのやる気を下げ、課題の成功率をさらに下げてしまう事になりかねません。

実際には遠まわしにするのではなく、希望の課題に至るまでのステップを細かく分け、できる度に報酬が与えられるように設定する事が大切だと思われます。

つまり大きな目標を達成するまでの、小さな目標を一つづつクリアできる様な課題の順番の設定と報酬の与え方を考えていくことが重要だと思われます。

患者さんそれぞれのパーソナリティを考慮していかなければいけませんので、難しいですが、リハビリテーションプログラムはこちらの押し付けであってはいけないという事ですね。

やりたくもない事をやらされるのは、それが後々いい事であっても、気持ちのいい物ではないですもんね。

(今井 樹、潮見 泰蔵:脳卒中後の運動機能回復レビュー―PT・OTが知っておきたい基礎知識:文光堂:2015)


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臨床では、どの肢位で運動を行っていくのか、どの肢位で評価していくのか、何を狙っていくかで取るべき肢位は異なってきます。

どの肢位で、どの要素があるのかを今回はまとめています。

○背臥位
・構造的に左右に回転しやすい。小さな運動で正中軸を知覚させやすい。
・四肢の運動を通して腹部の活動を高めやすい。
・頸部から下肢へ広がる運動連鎖を修正しやすい。支持基底面の知覚が重要になる。
・床面から浮き上がっている身体部位には体性感覚(触覚)が入りにくい。
・四肢を空間保持できない場合は全身的な伸展活動に陥りやすい。

○側臥位
・力学的に不安定な体位であるが動的安定性を向上させやすい。
・体幹の回旋運動を展開しやすい。
・体幹の回旋に対応した四肢の空間移動と支持機能の両面を促通できる。
・レイミステ反応を利用して四肢の外転活動と側腹筋群の共同収縮を促しやすい。
・側臥位での骨突出部は大結節と大転子で、体側部全体へ触刺激が入りにくくなっている。

○腹臥位
・頸部の対称性保持が困難であるが、上肢の支持機能を確保することで改善される。
・胸郭は肋骨下角での二点支持になり安定する。
・骨盤は二点支持になりにくいが、大腿部支持で比較的安定している。
・四肢の支持機能を促しやすい。
・腹筋群と四肢の対称的な運動連鎖を促しやすい。

○座位
・骨盤傾斜に不可欠な体幹と股関節の協調的な活動を促しやすい。
・体幹の分節的な運動を促しやすい。
・骨盤直立位では腸脛靱帯の支持を利用できないため、股関節屈筋群の活動が重要になる。
・胸椎前方に重心線があるため、持続的な胸椎伸展活動が得られないと脊柱は屈曲しやすい。
・坐骨一点支持では、移動につながる股関節の支持機能を評価・促通しやすい。

○立位
・力学的に最も不安定な体位であるが、動的安定性を向上させやすい。
・足部との関係で股関節と体幹の協調的な活動を促しやすい。
・下肢の支持機能を強化しやすい。
・上肢機能がバランスに影響しやすい。
・片脚立ちでは、移動につながる下肢の支持機能を評価・促通しやすい。

(佐藤 房郎:理学療法 29巻12号:2012)

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