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脳

脳卒中後の患者様で、パソコンあるいはシャーカステンを用い、情報収集した際、CTあるいはMRIなどで確認すると出血、梗塞部位が前頭葉に及んでいる場合、臨床上でどのようなケアの仕方を心掛ければ良いのでしょうか?

前頭葉症状に対するケアの実践は、看護師や介護士だけの仕事ではなく、理学療法士をはじめとするリハビリテーションスタッフも常に念頭におき、臨床にて実践していかなければなりません。

そもそも、前頭葉は外側面、内側面、底面から成り立ち、右半球、左半球、両側の組み合わせから把握していくことが大切です。

まず、CT、MRI上などで前頭葉の病巣が確認できた場合には、まずその方が、全体的に自分から行おうとする意欲が低下し、外に向かって働きかける力が弱まった状態になっている事を想定します。

つまり、自発性の低下や、発動性の低下です。

一方で、脳外傷などで底面の損傷がある場合は、逆に抑制が外れた状態となります。これは、感情やコントロールの低下によって病棟をウロウロ歩き回る、些細なことで怒りやすくなったり、場合によっては暴力をふるうような状態です。

次に、右と左の違いですが、左脳の前頭葉の障害では言葉の表出が、また、右脳の前頭葉の障害では自ら進んで行為や動作を表出することが苦手になります。

以上を踏まえ、一般的に前頭葉に病巣がある患者様のケアを行う場合は、まずは自発性の低下や発動性の低下の問題を念頭に置き、その自発性・発動性をなんとかアップするような働きかけが必要となります。そのためには、その基盤である情動系への刺激が必要になります。

一方で、抑制が外れた患者様の場合は、声のトーンを小さくしたり、患者様との距離をとったりと刺激量を考慮していきます。

次に、症状別の具体的なケアについてです。

○無動無言症

特に、両側の前頭葉内側の急性期の病巣においては、自らの発語がほとんどなく、目を見開いたままじっとしており、呼びかけに対しても反応が乏しい「お地蔵さん」のような状態です。

こういった方は、前頭葉の抑制によって情動系に強いブレーキがかかっている状態であり、ケアのポイントとしては本人の感情・行動を引き出してあげる事となります。例えば、家族からの情報を元に、昔の懐かしい時代に関連した写真や音楽を提示してあげたり、親しい人の声や映像の録音など、情動系に働きかける物を早期から提示して、患者様の抑制を外していく作業が大切となります。

こうすることによって、患者様が自分の言葉、行為、感情を表出できるようになります。

○自発性の欠如

右や左の前頭葉(特に内側)の病巣においては、自発性が低下する症状が見られます。以前は元気ですごくおしゃべりだったという情報があるのに、脳卒中後は覇気がなくなり、自分から積極的に話したり行動することがなくなった場合、この症状です。

こういった方は、用事のある時でも自分でナースコールを押すことがなく、訴えの表出に気付きにくい事が多くなります。

ケアのポイントとしては、気づきにくい訴えの1つ1つに目を向け、何を思っているのか、何がしたいのかを注意深く観察していくことが重要となります。

例えば病棟でも、ベッド上で座位になっているとか、柵を外そうとしている行動などから、トイレの訴えなのか、喉の渇きの訴えなのか、家族に関する事であるのか、行動の1つ1つに注意を向けていきます。こういった事で問題点を解決し、転倒・転落を防いでいく必要があります。

○強制把握

左および右の前頭葉の病巣(とくに急性期)においては、麻痺側の手に物が触れたとともに、手でつかんで離さないという現象を目にします。

ケアのポイントとして、つかんだ手を無理やり取ろうとしても、余計につかまれるので、力ずくにやるのではなく、つかんでいない方の手をつかんでいる手にそっと持っていき、つかんでいる手から別の手に注意を向けさせることで、つかんでいる手を緩ませます。

臨床においては、車椅子移乗の際にベッド柵をつかんで、その手を離さない様な例を見かけます。こういった時も無理やりつかんだ手を離すのではなく、もう一方の手に注意を向けさせることで、ゆっくり離して頂きます。

強制把握の手に直接バイブレーターなどによる振動刺激を与える方法で、筋緊張を低下させる方法もあります。

○保続

左や右の前頭葉の障害の急性期においては、ある行為や発話を始めると、同じ言動や行為をずっと繰り返すような現象が見られたりします。

ケアのポイントとして、こういった症状は脳がいっぱいいっぱいな状態であり、ある意味では脳に疲労がたまった状態で、少し休憩をはさんでから、次の行為の指示を与えるようにすることが望ましいと考えられています。

○ブローカ失語

画像上において、左の前頭葉の下前頭回後部を中心とした広範囲な病巣では、理解は保たれていますが、発語はたどたどしく、なかなか上手く言葉が出にくい症状である、ブローカ失語が見られる場合があります。

こういった方のケアのポイントとしては、「体に関すること」「睡眠に関すること」「食事に関すること」「排泄に関すること」などの領域を提示し、「はい」「いいえ」で答えながら、話の内容を徐々に絞っていく工夫が必要になります。

○発語失行

左の前頭葉(とくに中心前回や中心後回の下部)の病巣においては、発語失行が見られることがあります。

発音の症状としては、「おはようございます」が「おぎゃぎょうおあいあう」のように歪んだ発音になります。

この症状は単独で現れる事もありますが、ブローカ失語に合併することもあります。

ケアのポイントとしては、この症状が単独で現れている場合、理解力に問題ありませんので、落ち着いて聞き取ってみます。発話が分かりにくい場合は、筆談も有効です。

○遂行機能障害

左や右の前頭葉の外側面の病巣においては、我々が日常的に行っている「計画-実行-反省-修正-再実行」のサイクルが行えない症状が出てくることがあります。

ケアのポイントしては、言語の障害がない場合は、自分が行おうとする行動は言葉に出し、繰り返し言わせることが重要です。リハビリ時間や、入浴時間、食事、検査、診察などのスケジュール表を作成して、ベッドサイドの目の届くところに置くと良いです。また、服薬の自己管理が難しい場合がありますので、看護師が症状の程度によって、必要に応じて管理します。

○運動維持困難

右の前頭葉の病巣において、「目を閉じたままでいてください」とか、「口を開けたままでいてください」という口頭指示に対しても動作を維持することができずに、すぐ目を開いたり、口を閉じたりしてしまう症状です。

臨床上見逃しやすいですが、右の中大脳動脈領域の梗塞においては、約2/3で出現すると言われています。

ケアのポイントしては、看護師・介護士が剃毛や爪切りの時に怪我させないように気をつけることと、動作指示の与え方として、一つの動作に対して一つにするなど、複雑にしないように心がけることです。

○作業記憶の障害

左や右の前頭葉(とくに外側面)の病巣においては、必要な情報を記憶として一時的に保持し、再利用する事ができなくなる症状があります。いわゆるワーキングメモリーです。

ケアのポイントとしては、口頭指示の出し方も同時に2つ以上の指示は避け、1つの指示をだし、それが終わったら次の指示を出していくような工夫をします。

○尿失禁

まず、左や右の前頭葉の障害がある場合には、尿失禁がないか一度確認する必要があります。それは、前頭葉には排尿中枢の領域があるからです。

ケアのポイントしては、水分摂取の量と時間をチェックし、普段の排尿の時間間隔もチェックします。それによって、排尿時間をある程度予測し、排尿時間の少し前からトイレ誘導を行い、排尿リズムの習慣化につなげていきます。

一方で、服薬により症状の増悪をきたしている場合もありますので、主治医と相談も必要です。

○コルサコフ症状

前頭葉の底面の症状であり、前交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血後に起こる事が多いとされています。また、視床の病巣に加え、大脳辺縁系の病巣でも見られる事があります。

コルサコフ症状の特徴としては、記憶障害があり、作話症状見当識障害病識の欠如が見られます。

ケアのポイントして、「忘れる」という事に関しては、忘れる事を想定して、あらかじめ1日のスケジュール表を作成し、壁に貼って置いたり、道順を描いた絵を目に見える所に置いておくなどです。「作り話をする」事に関しては、無理に否定せずに、患者さんの話があたかも本当にあったかのように、賛同して会話してあげる事です。

(小宮 桂治、酒井 保治郎:よくわかる脳の障害とケア―解剖・病態・画像と症状がつながる!:2013)


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脳

看護計画立案のためのケアの実践は看護師の役割ですが、病棟の中で看護師と共に臨床を行う中で、理学療法士をはじめとするリハビリスタッフが患者様の脳機能障害の症状に対する支援を考えて協力して行う事は必要不可欠だと思われます。

そのためには、脳の機能解剖を基礎に、脳画像で病巣を確認し、症状の予測やそれに対するケアを看護師とともにコミュニケーションをとりながら、実践していく必要があると思われます。

今回は、視床が病巣の場合の看護師が行う脳血管障害の患者さんに対するケアの方法ですが、視床の障害では、まず意識障害・注意障害の問題が発生する場合が多いです。また、記憶障害、保続、失語や構音障害、運動麻痺と感覚障害、また右の視床にて左半側空間無視が出現する場合もあります。

○意識障害

 左および右の視床の障害で、まず最初にチェックする項目として意識障害があります。というのも、意識障害からの早期の回復が予後に影響を与えます。それは、全身の感覚の中継点の役割があり、ここが障害されると大脳皮質が活性化されないためです。発症後早期はできるだけここを改善させるように介入し、こまめにJCS(ジャパンコーマスケール),GCS(グラスゴーコーマスケール)などで意識レベルを評価しましょう。

 この状態に対しては、視床の働きを上げるケアを行います。例えば、三叉神経の感覚を利用して視床の活動を上げる方法として、氷をガーゼで包んだもので目の周りの眼輪筋・顎関節のつけ根・顎の先端のオトガイ部(三叉神経の第1枝、第2枝、第3枝)にポンポンとタッピングをして刺激します。これにより、発症して初期の段階から覚醒を促進することが可能です。

○注意障害

 左および右の視床の障害の方で、意識障害が改善してきて、開眼してものが見れるようになってきたら、次に注意障害の問題を考えていく必要があります。まず、患者さんの前に物品を見せ、その物品を目で選択的に見ることができるか(選択的注意)、その出した物品を10秒以上見続けることができているか(持続性注意)、その物品を左右にパッと動かしてみて目でその物品を追う事ができているか(転導性注意)などを簡易的に評価します。

 被殻の病巣でも意識障害・注意障害は呈しますが、視床の障害は被殻に比べて注意障害が残存しやすいため、十分な注意の練習が求められます。具体的な練習としては、患者さんの目の前にボールを提示し、10秒以上じっと見てもらう練習を真中で、左側で、右側で、上側で、下側でといろんな方向で提示して見続けたり、見るだけでなく非麻痺側でボールに触れ、ボールを移動してからまた手で触れるようにしてという動作を最初はゆっくりから始め、だんだん速くしていきます。

○記憶障害

 左および右の視床の障害で病巣の大きさに関係なく、記憶障害を呈する患者さんは多いです。原因としては視床は記憶の回路(パペッツ回路・ヤコブレフ回路)を構成しているからです。つまり、視床の障害後の患者さんは物事を覚えるのが難しく、視床性の認知症も呈することもあり、判断力も鈍ってきます。

 この症状に対するケアとしては、意識障害→注意障害→記憶障害の順で介入していきます。患者さんに対して言葉による伝達だけでなくメモリーノートホワイトボードを使い覚えるように心がけると良いと思われます。携帯電話のアラーム機能を活用することでスケジュールを思い出す作業もよいです。

○半側空間無視

 右の視床出血の場合、本症状を呈することがあります。食事中にお皿の左半分の料理を残したり、歩行時や車椅子操作にて左側をぶつけることがあったりなどする場合には、左半側空間無視の症状の可能性があります。右視床出血が吸収されるにつれて症状は改善していく傾向にありますが、普段の生活でどの程度出ているかはチェックしていく必要があります。

 ケアの内容として、半側空間無視により、頸部が病巣側へ回旋してきますのでその程度を観察します。右に回旋している時に左の胸鎖乳突筋が過剰収縮していますので、左の胸鎖乳突筋にアイスマッサージを行う事によって、緊張を緩め頸部の左回旋を促します。頸部がそれほど右に回旋していない場合は、左の体に注意を向けるエクササイズを行う事が中心となりますが、具体例としては、右手にボールを持たせて、その手を右空間から左の空間へゆっくりと移動させます。

○失語様症状

 左の視床出血の場合、失語様の症状が出現する可能性があります。程度には個人差がありますが、錯語(意図したものと別の言葉になる)、喚語困難(言葉がなかなか出てこない)、保続(同じ言葉や行為を繰り返す)などの症状が見られます。基本的には視床出血後の失語様症状は出血の吸収に伴い改善していく傾向にあります。

○運動麻痺や感覚障害

 リハビリスタッフ(特に理学療法士)は特に治療対象となる症状かと思われますが、左および右の視床の障害があれば、視床の障害側の反対の上下肢の運動・感覚の評価を行ってください。病巣の大きさにもよりますが運動麻痺が改善されても感覚障害が残存する場合がありますので、経過とともに感覚障害の程度もチェックしてください。深部感覚が障害されている場合は、運動失調も生じてきます。

 感覚障害に対するケアとしては、温かい・冷たい・ざらざら・つるつる・硬い・柔らかい・重い・軽いなど様々な感覚の違いを患者さんの手足で感じていただき、いろいろな刺激を加えていくことです。意識障害のある患者さんにも行えますので、発症早期から実践できます。非障害側の感じと比べてみたり、目をつぶって感覚に集中するように行ったりしていきます。

 病棟内での患者さんの生活でもできるだけ刺激を加える様な工夫が必要かと思われます。

○構音障害

 左の視床出血の急性期の症状として、言語の発音が不明瞭となり発音そのものが聞き取りにくくなります。この症状は一過性であり、意識障害や注意障害が軽減してくると多くは徐々に改善していく傾向にあります。まずは、意識障害や注意障害に対してケアを行い、改善を確認しながら必要に応じて構音の練習を行う必要があります。

 構音の練習としては、下顎の開閉や舌の運動、パ行・タ行・カ行音やそれらを組み合わせた協調音の復唱などがよいかと思われます。空き時間で患者さんと一緒に実践していくとよいかと思われます。

○発声障害

 これも左の視床出血の急性期の症状として、一過性に声がでないであるとか、声がでてもささやかな声やかすれ声のようなとても小さな声といった障害が出現する場合があります。この症状は徐々に軽減する場合が多いので、他の症状に対するケアを優先すると良いでしょう。

 しかし、発声障害が持続するケースの場合、前頭葉症状としての自発性低下が背景に生じている場合がありますので、前頭葉に対するケアの必要があります。これは視床と前頭葉の線維連絡があるために、前頭葉も機能低下を生じるためです。

(小宮桂治、酒井保治郎:よくわかる脳の障害とケア―解剖・病態・画像と症状がつながる!:2013)


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