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立ち上がり時に、重心の前方移動が難しく、離殿で失敗している方は脳血管障害や股関節術後に限らず、臨床ではよく見られます。

立ち上がり時の重心前方移動においては、骨盤・体幹の前傾、下腿の前傾が重要になります。

つまり、股関節と足関節の動かし方が十分に行えるようになると、重心の前方移動はもっとスムーズに行えるようになってきます。

立ち上がりには2つの戦略(ストラテジー)があるとされます。

力(ちから)ストラテジー:重心を支持基底面の中にとどめ続けながら、下肢の筋力で主に立ち上がるやり方です。(高齢者の方や、立ち上がりに失敗している方が良くやる立ち上がりの戦略です。)この戦略を選択した場合、重心の前方への移動量は多く要求される事となり、②に比べて重心の前方移動が不十分になりやすくなります。

運動量ストラテジー:骨盤・体幹前傾の勢いを股関節伸展筋でブレーキをかけることで、膝関節伸展のモーメントに変えていくという慣性力を利用します。(われわれ健常人が良く用いる立ち上がりの戦略です)

つまり、立ち上がり動作で重心の前方移動を十分に行う様にしていくには、②の立ち上がりのやり方が選択される必要があります。

まず、評価としては矢状面で動作時の上半身重心(Th7~9)がどのように移動しているかを確認しながら、体幹の屈曲の程度と、骨盤の前後傾の有無を見て、離殿のタイミングで下腿の前傾が適度に行えているかを評価します。この時に立ち上がりのスピードや、骨盤・体幹の前傾の停止するタイミングで殿部離床・膝関節伸展が起きているかを確認して、運動量ストラテジーの戦略にて動作が行えているかを評価します。

以上の評価を踏まえ、ROMやMMTで、ある程度問題ないレベルにはあるが、立ち上がり時に重心の前方移動ができていない方に対しては、動作の学習が必要になってきます。

○骨盤・体幹前傾が不足している場合

骨盤前傾の誘導アプローチ ブログ用

上図の左は、三角ウェッジにより座面を傾斜させることで、座面より上の質量中心位置を前方に移動しやすくすることが可能になります。

中央は、椅子での端座位の状態から椅子の後脚を持ち上げるようにすることで、座面より上の重心を前に移動することが可能となり、骨盤前傾が誘導できます。

右は、端座位にて膝を深く屈曲することによって、ハムストリングスの短縮位・大腿直筋の伸張位を生じさせて、それにより骨盤前傾を誘導できます。

骨盤前傾の誘導 ブログ用

上図は、セラピストが患者さんの大腿前面の皮膚を両側同時に遠位方向に移動させている状態ですが、そうすることで骨盤前傾を誘導することができます。

○下腿の前傾が不足している場合

下腿前傾の誘導 ブログ用

キャスター付きの椅子に腰かけ、足底接地の状態で、下腿の前傾により椅子を前方に移動していきます。この際に、バランスボールを下腿前方と床との間に挟み込み、上図のようにバランスボールを潰していくような意識で下腿前傾を促していくのもよいでしょう。

この時注意する点としては、踵部が床から離れてしまうと足関節底屈を促してしまうので注意が必要です。

○立ち上がりのスピードが遅く、慣性力を利用して殿部離床ができない場合

慣性力を用いた立ち上がりが重要となりますが、離殿時に下腿の前傾と同時に、骨盤の前傾に股関節伸展筋がブレーキをかけていくことを学習していきます。このタイミングを習得していくまで繰り返し練習していきます。

まず、端座位で大腿上に上肢を置き、そのまま膝蓋骨の方に手掌を滑らせながら、一定の速度で体幹前傾していきながら殿部離床までもっていきます。殿部離床後は立ち上がらずに、すぐに着座してこれを繰り返していきます。

注意する点としては、上肢の力でpushしないようにしていきます。

(福井 勉:ブラッシュアップ理学療法―88の知が生み出す臨床技術:2012)


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立ち上がり動作は日常生活においても、非常に重要な動作であり、ベッドから車いすへの移乗や、トイレへの移乗などADLの自立に向けて必須の動作になってきます。

立ち上がり動作のシークエンス

◎第1相

座位姿勢~殿部離床までの間の区間を指します。
股関節は、頭部は足指よりやや前に出るまで屈曲を続け、下肢は荷重の準備のため、大腿四頭筋や大殿筋、ハムストリングスの緊張が高まり、下腿がまっすぐ床面に配列されます。左右の下肢は、対称的な角度になります。

◎第2相

殿部離床~足関節が最大背屈位までの区間を指します。
股関節の屈曲が制動されるタイミングで膝の伸展が起こり、殿部が座面から離床します。この時に足関節の背屈角度が最大となります。左右の足底は全面接地し、踵でしっかり荷重した状態になります。

◎第3相

足関節最大背屈位~股関節伸展終了までの区間を指します。
殿部が浮いて両足部で囲まれた狭い支持面内を重心線が通るようになってから頭部と殿部の両体節部位が同時に重心線に近づく方向に移動して身体重心の上方移動が開始します。股関節の伸展が始まってから膝関節が伸展します。

以上が、立ち上がり動作の流れになりますが、動作分析をする際には、どの相でどのポイントを確認しながら見ていくのかをはっきりさせなければいけません。

◎第1相のチェックポイント

・安静座位から骨盤前傾し、体幹がしっかりとした坐骨支持の直立姿勢になっているのか?
・足部が前方を向き、下腿が床面と直立になるように位置しているか?
・股関節の屈曲による骨盤の前傾により身体重心がまっすぐ前方加速しているか?
・左右均等に下肢にウエイトがのっているか?重心移動はまっすぐ前方に移動しているか?
・左右の下肢は、対称的な角度か?
・上肢で何かにつかまったり、過剰努力が起こっていないか?

◎第2相のチェックポイント

・下腿が前方に傾斜して、膝が前に出ているか?
・ウエイトを前方移動させながら、上肢に頼らず動作が行えているか?
・骨盤の傾斜はないか?
・左右の下肢のウエイトは均等にかかっているか?
・ウエイトはまっすぐ前方に移動しているか?
・足底が全面接地しているか?踵が浮いていないか?
・上下肢の連合反応は出ていないか?
・股関節が内外旋していないか?下腿は垂直に保てているか?
・頭部・体幹のアライメントは適切か?

◎第3相のチェックポイント

・股関節、膝関節、足関節の伸展のタイミングは適切か?左右差はどうか?
・重心の上方移動は安定しているか?
・左右のウエイトの偏移はないか?
・連合反応は起きていないか?
・骨盤の位置はどうか?
・股関節は内外旋、内外転中間位となっているか?

(石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座―バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践:2013)


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