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scapular plane ブログ用

肩関節の運動療法を考慮していく上で、「scapular plane(肩甲骨面:スキャプラプレーン)」という概念が存在します。一体これは何なのでしょうか?

scapular planeの概念を最初に提唱したのは、恐らくFick(1911)だと言われています。

現在の常識として、Steindler(1970)により「scapular planeは前額面寄り30°ほど前方に偏移した面、言いかえると前額面と肩甲骨面とが30°の角をなす面」とされています。上図の状態です。

臨床において、肩甲上腕関節の関節可動域制限を確認した際には、関節包・靱帯の制限である場合が多いですが、関節包の緊張の度合いを評価するためにscapular planeの考え方が必要です。

関節包は前・後・上・下の線維に分類できますが、scapular plane上で約45°外転した肢位では、関節包全体の緊張が最も均一になります。

よって、このscapular plane45°の肢位を基準とし、関節包の前・後・上・下それぞれの方向にストレスをかける事によって、線維の硬い部位を知ることができます。

評価する際の注意点としては、肩甲骨が偏移している方の場合、肩甲骨面が前額面から必ず30°の位置になっているとは限りませんし、上腕骨を動かした際に同時に肩甲骨が動いてしまい、scapular plane45°になっていない可能性があるので、肩甲骨と上腕骨の位置を確認しながら評価していく必要があります。

以下は肢位の違いにより、関節包・靱帯の伸張される部位をまとめたものです。

○前上方関節包・上関節上腕靱帯・烏口上腕靱帯
⇒1stポジションによる外旋45°まで達しない場合はこれらの制限の可能性があります。

○前方関節包・中関節上腕靱帯
⇒45°外転位による外旋70°まで達しない場合はこれらの制限の可能性があります。

○前下方関節包・前下関節上腕靱帯
⇒2ndポジションによる外旋50°まで達しない場合はこれらの制限の可能性があります。

○後上方関節包
⇒1stポジションによる内旋90°まで達しない場合はこれらの制限の可能性があります。

○後方関節包
⇒scapular plane45°による内旋45°まで達しない場合はこれらの制限の可能性があります。

○後下方関節包・後下関節上腕靱帯
⇒3rdポジションによる内旋50°まで達しない場合はこれらの制限の可能性があります。

各肢位における関節包の硬さの評価に関しては以上の通りですが、評価する際には筋の短縮やスパズムの影響を取り除いてから行う必要があります。これらが制限因子となっている場合は、関節包の評価が十分に行えません。

(石井 慎一郎:動作分析 臨床活用講座―バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践:メジカルビュー社:2013)


(信原 克哉:肩 第4版: その機能と臨床:医学書院:2012)


(赤羽根 良和、林 典雄:肩関節拘縮の評価と運動療法 (運動と医学の出版社の臨床家シリーズ):運動と医学の出版社:2013)


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今回は、歩行時の下肢の関節モーメントについておさらいします。

時々、「ん?これ屈曲モーメントだっけ?伸展モーメントだっけ?」ってなる事ありません?

原理さえ十分に理解していれば、難しい事ではありません。

そもそも、関節モーメントとは「関節を動かそうとする力の総和」の事です。

歩行時、足底が床に接地している場合では、床反力などの外力が関節を動かそうとする力の総和の事ですが、それらの外力に抵抗する力として表現する場合があります。

床反力ベクトルが各関節の中心に対して、どのような位置を通るかによって、関節モーメントの大きさが変化します。

歩行時の下肢関節モーメント ブログ用

上図から・・・

足関節:床反力ベクトルが足関節の前方を通り、足関節を背屈させようとする力がかかる
⇒足関節底屈モーメントの発生

膝関節:床反力ベクトルが膝関節の後方を通り、膝関節を屈曲させようとする力がかかる
⇒膝関節伸展モーメントの発生

股関節:床反力ベクトルが股関節の前方を通り、股関節を屈曲させようとする力がかかる
⇒股関節伸展モーメントの発生

歩行時においては、以下のようなモーメントの特徴があります。

○股関節では、ICからLR前半で伸展モーメントが強く、TstからPswにかけて屈曲モーメントが最も強くなります。

○膝関節では、衝撃吸収のためにLRからMstにかけて伸展モーメントが最も大きくなります。その後、伸展モーメントは減少し、Tstにて屈曲モーメントを示し、Pswで再度伸展モーメントが確認されます。

○足関節では、ICからLRにかけてわずかに背屈モーメントが確認されます。その後、LR後半からTstの後半まで底屈モーメントがほぼ直線的に強くなり、Tstの後半でピークを示します。そして、Pswで急激に底屈モーメントが減少します。

(細田 多穂:運動学テキスト(改訂第2版) (シンプル理学療法学・作業療法学シリーズ)南江堂:2015)


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ブリッジ活動テンタクル活動という言葉を聞いたことがあると思います。これは、クラインフォーゲルバッハのコンセプトで、力学的にどの筋活動が生じてくるのかを理解するための概念で、これを治療に結びつけていくことが大切だと思われます。

ブリッジ活動とテンタクル活動 ブログ用

○ブリッジ活動

ブリッジ活動とは、アーチをかけるように身体体節を持ちあげて保持する活動の事で、主動作筋は床に面した筋群になります。

四肢や頭部など支持基底面に接する身体部位は、支持点になるために移動はできません。

支持点間の距離が大きくなると負荷が増します。

ブリッジ活動を考える時には、下図のようにブリッジングを行った時にシナジーを形成する筋群の活動するタイミングを確認しなければいけません。例えば、脳卒中片麻痺の患者さんで、大殿筋の促通の目的でブリッジングを行った場合、骨盤が前傾する方へ動いてきたら殿筋で骨盤を持ちあげているのではなく、腰背筋と大腿直筋にて代償して持ちあげている事になり、これでは目的の筋群への促通ができてないばかりか、異常な筋活動のパターンを助長してしまう可能性があります。そのためにもまず、骨盤の動きから筋活動のパターンを確認しなければなりません。そうする事で、優位な筋活動のパターンを判断し、これを治療につなげていきます。

ブリッジ活動でのシナジー ブログ用

○テンタクル活動

テンタクルとは「触手」を意味しており、胴体からでた触手が動くような身体活動をテンタクル活動と呼びます。身体を釣りあげるように移動させることから、天井に面する筋群が主動作筋になります。

この活動においては、運動の支点に対する質量の影響がダイナミックに変化するために、移動をする身体部位の質量に対して、安定させる身体部位の質量は重く安定していなければいけません。

テンタクル活動においては、支持基底面との接触を失った部位では、テンタクル活動の運動連鎖が途切れやすくなります。テンタクル活動が困難となった場合に、ブリッジ活動での代償が出やすくなります。

(奈良 勲、土山 裕之、松尾 善美:脳卒中理学療法ベスト・プラクティス―科学としての理学療法実践の立場から:文光堂:2014)


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動きのとらえ方の概念で、カウンターアクティビティー(CA)・カウンターウエイト(CW)・カウンタームーブメント(CM)という言葉を耳にされた事があるかと思います。これは、クラインフォーゲルバッハの運動学の概念で、運動の拡がりを制御するための動きや平衡反応を表した表現となります。

まず、身体を頭部、胸郭、骨盤(腰椎を含む)、上肢、下肢の5つの部位(Body Segments)に分け、それぞれがどのように動いているかを考えていき、姿勢・動作の分析のポイントとしていきます。

○カウンターアクティビティ(CA)とは

CAとは、運動の拡がりを拮抗筋活動で制御する活動です。例えば下の図で言うと、左にウエイトシフトする際には体幹の左側屈でウエイトシフトするのではなく、右の体幹の側腹筋で制御している状態を表します。

○カウンターウエイト(CW)とは

CWとは、目的動作に伴い運動に参加する体節以外の部位を、目的方向と反対方向に移動させる事で、ヤジロベエのように重みを釣り合わせて運動の拡がりを制御する活動です。下図では、ウエイトシフト時には直接参加しない下肢を、ウエイトシフトの方向とは反対の方向に動かすことによって、重みを釣り合わせて制動している状態を表します。

○カウンタームーブメント(CM)とは

CMとは、目的動作に伴って起こる運動の拡がりに対して、その逆の方向に運動の拡がりを起こす2つの運動を同時に行う(ぶつかり合う)事で制動する活動です。下図では、上部体幹と下部体幹の側屈は逆方向ですが、そうすることによって運動を制御してバランスをとっている状態です。

クラインフォーゲルバッハの運動学 ブログ用

これら3つの反応は単独で独立して起こるのではく、いくつかが組み合わさって同時に起こります。

カウンターアクティビティー・カウンターウエイト・カウンタームーブメントを活性化させてもバランスが取れなかった場合は、新しい支持面に変更しバランスをとる反応が生じます。

(長澤 弘:脳卒中・片麻痺理学療法マニュアル:文光堂:2007)


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ストレッチショートニングサイクル(stretch shortening cycle:SSC:伸張-短縮サイクル)とはよく聞きますが、一体何なのでしょうか?

ストレッチショートニングサイクルとは、強くかつ速く伸張された筋(腱)がその弾性エネルギーと筋内の受容器である筋紡錘の伸張反射作用により、直後に強くかつ早く短縮される機能であるとされます。

分かりやすく言うと、立位で膝を伸ばしたままジャンプしたり、膝は曲げて静止した状態でジャンプするよりも、膝を伸ばした状態から、素早く曲げて反動をつけてジャンプした方が高く跳べますよね?

これは、跳ぶ直前にしゃがみ込んで膝を曲げる事によって、ヒラメ筋や大腿四頭筋が引き伸ばされます。それと同時に筋が引き伸ばされる事に耐えようとするため、両端の腱が引き伸ばされて弾性エネルギーとして力を蓄えます。そして、しゃがみ込みから跳び上がる瞬間に筋の収縮力に加えて、腱の弾性エネルギーが解放されることで、全体として大きな力を得る事ができ、より高く跳ぶことができるのです。

脳から筋出力の指令が出てから、最大の筋力を発揮するまでにはわずかではありますが、時間がかかります。必要な動作場面において筋発揮が間に合わない状態になってしまいます。その点、SSCは動作を始める段階ですでに筋収縮が始まっていますので、しっかりと必要な場面で筋発揮ができるようになるのです。

日常的な場面においても、こういったSSCのメカニズムが発揮されるのに必要な場面があるのではないかと考えられます。例えば、電話が鳴って急いで駆け足で電話の所へ行ったり、横断歩道で赤になりそうなので、小走りになるとか、急ぎの用事があり駆け足で階段を上る場面など、速度変化に応じて我々はこのSSCの機能を用いているのではないかと思います。

歩行時において、歩行速度が上がってきた際にはストレッチショートニングサイクル(SSC)が、ターミナルスタンス(Tst)での足関節背屈運動により、下腿三頭筋-アキレス腱に弾性エネルギーが蓄積され、プレスイング(Psw)で解放されることによって発揮されます。

臨床の場面において、ただ単に筋力を上げる事で安定性を上げていくのではなく、SSCの機能も発揮できるように速度変化に対応できる動作能力の向上も、実用性獲得に重要なのではと考えられます。

ストレッチショートニングサイクル(SSC)を利用したトレーニングをプライオメトリクスと呼びます。

プライオメトリクスの例としては、下肢のエクササイズではジャンプ動作や、片脚ホッピング、ラテラルバウンドなど連続した反動をつける運動となります。上肢のエクササイズでは、ボールを用いたチェストパスや、壁を用いたバウンド、四つ這いでのバウンドの運動などがあります。必要に応じて難易度を上げていきます。

(市橋 則明:運動療法学―障害別アプローチの理論と実際:2014)


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