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手術での侵襲、あるいは靱帯や腱の損傷など、組織に何らかの有害な刺激が加わり、損傷が起こると、損傷を受けた組織の除去あるいは修復を促すために炎症という生理反応が生じ、その後、残存する細胞が増殖し、損傷された組織を元通りに修復する過程をたどります。

組織損傷の治癒過程は大きく3つに分かれます。

①炎症期
②増殖期
③成熟期

だいたい以下の図のような流れで治癒過程をたどっていきますが、筋損傷の場合は治癒過程のメカニズムがやや異なりますので、除外します。

組織損傷の治癒過程 ブログ用

①炎症期

組織が損傷を受けるとまず、炎症の中心的な役割をなす血管反応がスタートし、その後白血球による貪食と炎症の終焉を迎えます。その過程として以下の変化が生じます。

1)血管内径の変化とそれに伴う血流量の変化

まず、組織損傷では血管からの出血を伴うため、損傷部位周囲の細動脈が一過性に収縮し、血小板を凝集して凝血槐をつくる事で止血します。この一過性の収縮は数秒~数分間持続し、その後は細動脈は拡張し、これが数十分~数時間持続します。血管が拡張する事によって、血流量が増加するために発赤や熱感などの炎症の症候が出現します。

2)血管透過性の亢進と滲出液の形成

次に、炎症により血管内皮細胞が収縮し、細胞間接合部が開く事で血管透過性が亢進します。これは、普段は血症タンパク質や細胞は細胞接合部から通過できませんが、炎症により細胞間接合部の開いた部分からりタンパク質を含んだ血漿成分が滲出し、腫脹として現れます。

3)細胞成分の血管外への遊走と細胞性滲出物の形成

血管透過性が亢進し、血管内の液体成分が減少し、血液粘性が増加すると血流速度が遅くなり、白血球などの細胞成分が血管壁に集まり内壁を転がる(ローリング)現象が生じます。そうすると白血球は血管内皮細胞の間隙を通りぬけ、血管外へ出て、炎症が生じている損傷部位に向かって遊走します。

4)白血球による貪食

遊走した白血球の中で、まず最初に働くのは好中球で、これは侵入した細菌や細胞の残骸を除去します(貪食作用)。そして、最終的に好中球はアポトーシスを起こし、マクロファージに貪食されます。また、好中球に遅れてマクロファージが損傷部に集まり、アポトーシスを起こした好中球や組織の残骸、細菌を貪食します。それと同時に、線維芽細胞も損傷部に集まり、マクロファージや単球ともに損傷・変性したコラーゲンなどの細胞外基質を分解します。

5)炎症の終焉

壊死した細胞の除去が終わると、炎症に関わった化学伝達物質は中和されていきます。その後、血管の状態も血管拡張も血管透過性の亢進もなくなり、血流も正常となり、滲出していた血漿成分はリンパ管を通って回収されていきます。炎症の終焉は通常、受傷後から7~10日で見られます。

②増殖期

受傷後、約3日~2週間の時期に当たり、以下の変化が生じます。

1)上皮化

受傷後数分以内に、上皮化と呼ばれる表皮の再生が始まります。基底層からのケラチノサイトの供給によって表皮を形成し、ラミニンやタイプⅣコラーゲンにより基底膜の形成が行われ、表皮の再生が完了します。

2)肉芽組織形成

血小板やマクロファージから分泌されるPDGF(血小板由来成長因子)により、線維芽細胞が刺激され、その線維芽細胞が組織に集積・新入します。そして、線維芽細胞の増殖が生じ、創部は細胞外基質で埋め尽くされるようになります。これが、肉芽組織形成と呼ばれる反応です。

3)血管新生

肉芽組織が形成された部分に酸素と栄養素を供給するために、血管新生という反応が生じます。血管内皮細胞が分裂・増殖し、創部に集積します。それによって創部には毛細血管が新生してきます。ちなみに、血管新生があまりされない肉芽組織は難治性となりやすいとされています。

③成熟期

受傷から約5日後以降からは成熟期と呼ばれる時期にもあたり、以下の変化を生じます。

1)創収縮

肉芽組織が形成されると、創収縮という反応が生じ、傷口がだんだん小さくなっていきます。

2)コラーゲンのリモデリング

ここから数カ月かけてコラーゲンの分解・合成(リモデリング)を繰り返して、肉芽組織から瘢痕組織へ変化していきます。初期に合成されたタイプⅢコラーゲンは、この過程でタイプⅠコラーゲンに置き換わり、抗張力も増加します。そして血管新生は消退して、線維芽細胞の数も減少します。

組織損傷のリハビリテーション ブログ用

以上のメカニズムを踏まえて、ではリハビリテーションではどの時期にどのようなアプローチを考えていけば良いのか考えていかなければいけません。

①炎症期のリハビリテーション

基本的に、炎症の起こっている時期にリハビリ介入でできる事はほとんどありません。炎症に対しては、血管拡張ならびに血管透過性亢進といった血管反応を、いかにして軽減させるかがリハビリテーションの命題になります。このためにはアイシングである寒冷療法が適応となります。なぜなら、冷却により血管収縮が起こり、血管透過性は低下してくるためです。また、この時期のRICEの処置も非常に重要な対応です。要は、冷却に加えて心臓よりも高い位置にし、圧迫を加える事で血流の減少をさせるためです。また、血管透過性の低下は、血中の様々な化学物質の末梢組織内への遊離を抑えることにつながり、痛みの軽減につながります。

また、その他の方法として超音波(非温熱作用)、レーザー、TENSなどが炎症による痛みの軽減に効果があると報告されています。

言うまでも有りませんが、この時期の温熱療法は禁忌とされています。それは、血管拡張、血流増加、血管透過性亢進により炎症を助長してしまうからです。

②増殖期のリハビリテーション

この時期の組織学的変化は、表皮における上皮化、真皮での肉芽組織形成、血管新生が生じます。よって、表皮の上皮化のためにはケラチノサイトの新陳代謝を促さないといけないので、温熱療法が適応となります。また、肉芽組織形成のためには酸素・栄養素の供給が必要であり、そのためには血管新生が大切で、これに対しても温熱療法が適応です。

その他にも超音波やレーザーなども線維芽細胞を刺激する事が報告されており、それにより、肉芽組織形成が促されます。

ただし、温熱療法を開始するタイミングは非常に難しい所かと思われます。なぜなら、炎症期と増殖期は始めと終わりがかぶっており、早すぎてもいけないし、遅すぎてもいけないので、C反応性タンパク(CRP)や、赤血球沈降速度(ESR)などを目安に開始時期を検討するのが良いと思われます。

③成熟期のリハビリテーション

この時期の組織学的変化としては、創収縮とコラーゲンのリモデリングが起こります。そのためには超音波やレーザーが効果があるとされています。

また、この時期はとくに痛みの悪循環に陥らないために、温熱療法や運動療法により筋のリラクセーションや循環改善を図っていかなければいけません。この時期の痛みは、筋収縮の惹起や、交感神経の興奮によってさらなる痛みの増悪だけでなく、循環障害により発痛物質が産生される事で、新たな痛みの発生が起きてしまう可能性があります。

ここで大切なのは、痛いから動かさないのでは不活動状態により、新たに痛みが発生してしまうので、安易に動かさないというのは良くありません。痛みがコントロールできる中での運動療法は非常に重要と考えられます。

(松原 貴子、沖田 実、森岡 周:ペインリハビリテーション:三輪書店:2011)


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