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TKA(人工膝関節全置換術)の患者さんでは、TKAの種類は大きく「PS型」「CR型」の2種類のデザインに分けられます。他にも「CS型」などありますが、大きくはこの2つだと思われます。

CR型:後十字靱帯(PCL)温存型
PS型:後十字靱帯(PCL)切除型

人工膝関節において、脛骨コンポーネントを挿入するためには、前十字靱帯(ACL)は必ず切除しないといけないのですが、PCLを温存するか、しないかがCR型とPS型の違いです。

それぞれが、それぞれのメリット・デメリットを持ち、理学療法士である我々が治療を考える上で、その特徴やバイオメカニクスを理解しておく必要があります。

≪CR型≫
・PCLを温存する事により、PCLが荷重伝達を行い応力が低減するという利点がある。
・後方安定性に寄与する。(後方脱臼を防ぐ)
・PCLによるロールバック(roll back)運動を誘発する。
・レバーアームが長くなり、伸展筋力の効率が向上する。
・PCLが関節の固有位置覚に寄与する。

≪PS型≫
・膝関節を屈曲するにつれて大腿骨コンポーネントのカム(cam)がインサートのポスト(post)と接触し、カムがポストに誘導されて、人工的なロールバック(roll back)運動が誘発される。
・手術手技の依存が少なく、関節可動域も安定していると言われる。
・PS型に特徴的な合併症として、patella clunk syndromeや、ポストの摩耗、破損が報告されています。

※patella clunk syndrome:膝蓋骨周辺に生じた瘢痕組織が大腿骨コンポーネントの顆間のboxに入り込み、屈曲時に軋轢音、ロッキングを発生する。

(杉本 和隆、美﨑 定也、相澤 純也:人工関節のリハビリテーション 術前・周術期・術後のガイドブック:三輪書店:2015)



以上のような特徴が挙げられます。

また、Rakuya(2008)によると以下のような報告もされています。

・多くのPCL温存膝が不規則な異常運動を示す。TKAはACL不全の状態であり、PCL温存により正常運動が再現される事は期待できない。

・PS型ではポストカム機構により再現性の良い運動パターンが得られている。

・可動域についてはPS型の方が良好である。

・優れた長期成績が報告されているのはPS型であり、温存膝の長期成績が優れているというデータは無い。

・PS型でポストカム機構の破損や摩耗例の報告も散見される。特に回旋ストレスに対する対策が重要である。

また、Akagi(2008)によると次のようにも言われています。

・CR型では屈曲早期の大腿骨の脛骨上での前方滑りが観察され、術後PCL機能不全の存在が指摘されている。

・PS型ではカム機構とFT関節面デザインによりキネマティクスがコントロールされるため再現性の高い運動をする。

・PS型におけるカム部分の摩耗が新たなweardebrisの源として指摘されており、骨溶解との関連も報告されている。

・最近のPS型では軸回旋を含めて、カム機構を摺動面として考え設計がなされている。しかし、PS型において荷垂下深屈曲時のカム機構に加わる負荷は非常に大きく、長期成績への影響が指摘されている。

また、京都下鴨病院の小野志操先生は、以下のように述べておられます。

≪CR型≫

<メリット>
・PCLを残す事で、正常膝に近いキネマティクスが維持されると期待されていた。
(PCLの変性により温存したPCLが必ずしも機能せず、roll backが再現されない事もある)


<デメリット>
・PCLの緊張は軟部組織バランスに大きな影響を及ぼし、屈曲ギャップを減少させる重要な因子。PCLの拘縮があればPS型が望ましい。

<適応>
・PCL、側副靱帯がほぼ正常である事。
・術前の屈曲角度が良好で、その角度を維持して生活する患者(120°以上の屈曲が可能な場合ではPCL温存も選択)

≪PS型≫

<メリット>
・PCLを切離すると屈曲ギャップが増大するため、術後に良好な屈曲可動域が期待できる。
・前後方向での安定性はポストカム機構にゆだねられ、再現性のよいroll backが得られる。後方でのインピンジの防止し接触面が確保される。

<デメリット>
・接触圧が狭いと耐久性に影響する(postが破損する)。「ひざまずき動作」は良くない。
・postの高い位置でcamが接触するようだと、少しの緩みで脱臼やpostの摩耗、脛骨コンポーネントの緩みにつながる。
・PS型ではpostの脱臼の危険があり、140°以上は禁忌。

・過度の屈曲位設置はPS型では前方インピンジメントの原因となり、postの破損が危惧される。(過伸展位となる)

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