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腎臓の糸球体や尿細管が何らかの原因で冒されることによって、腎臓の機能が失われた状態である慢性腎臓病(CKD)という病態があります。

保存期のCKDは透析療法は必要ないまでも、ゆっくりと腎臓の機能は低下している状態であり、治療としてはその進行を防ぐ事が重要となってきます。

こういった慢性腎臓病(CKD)の患者さんに対して、われわれはどのような運動をしていくべきなのでしょうか?

そもそも腎臓は安静時には心拍出量の5分の1の血液供給を受け、組織単位重量当たりの血液潅流量は他のどの臓器よりも多いですが、運動時には骨格筋・肺・心への血液配分率が高まるために、腎血流量は低下します。

腎血流量は腎機能の中で運動により最も顕著な影響を受けるものであり、運動強度や心拍数などとも相関し、激しい運動時には50~75%も低下する事が知られています。

短期的に運動を行うと尿蛋白排泄量が増加し、腎血流量(RBF)や糸球体濾過量(GFR)が減少することから、強すぎる運動を行うと腎機能障害や腎病変が悪化する危険があるとされています。

しかし、かといって日常生活の活動範囲を制限し、運動を控えて安静を長期間行うとQOLが大きく低下するだけでなく、運動耐容能の低下やインスリン抵抗性の増加を介して心血管系合併症を増加させ、腎疾患の進行速度を増す危険性があります。

現在、CKD患者における理想的な運動強度や運動時間の科学的根拠は明らかにされてはいませんが、腎障害患者において適度な運動や運動耐容能やQOLを向上させるという報告や、糖や脂質代謝を改善させるメリットなども報告されています。

我々は運動負荷試験を行う上で、CKD患者に対して以下の注意が必要となります。


◎CKD患者の運動負荷試験の注意

・医学的チェックは、患者のかかりつけの腎臓専門医によってなされるべきである。
・高血圧症や糖尿病の治療で一般的に使用されているものを含めて、患者は多数の薬物を使用している傾向がある。
・CKD患者(ステージ1~4)に多段階運動負荷試験を行う時は標準的な運動負荷試験法を施行すべきである。
・トレッドミルや自転車エルゴメーターのプロトコールがCKD患者に使用されるべきであり、特にトレッドミルはより一般的であるように思われる。
・自転車エルゴメーターが使用されるならば、推奨される初期の準備運動の負荷強度は20~25Wである。その負荷強度は1~3分ごとに10~30Wずつ増加すべきである。
・維持血液透析を受けている患者では、運動負荷試験は血液透析を実施しない日に計画すべきであり、血圧はシャントのない側で測定すべきである。さらにピーク時心拍数は、年齢別予測最大心拍数の75%までにすべきである。
・持続的携帯型腹膜透析を受けている患者は、腹腔に透析液が無い状態で運動負荷試験を受けるべきである。
・CKD患者では、心拍数が常に運動強度の信頼できる指標とは言えないので、自覚的運動強度を常に監視する。
・腎移植後患者には、標準的な運動負荷試験方法が適応される。
・動的筋力測定は3-RMやそれより高い(例えば10~12-RM)負荷を使用して行われるべきであり、剥離骨折をきたす恐れがあるので、CKD患者に対しては1-RM試験に関しては禁忌であると考えられている。
・筋力および筋持久力は、60~180度/secの角速度の範囲において等速性マシーンを使用し、安全に評価しうる。
・多種多様な体力テストが、CKD患者をテストするために使用される。例えば、6分間歩行テストや、筋力テスト、バランス能力テストなどが適切である。
(日本体力医学会体力科学編集委員会・2011より)


運動処方は、一般向けの勧告をもとに、初期の運動強度を軽度強度(酸素摂取予備能の40%未満)~中等度強度(酸素摂取予備能の40~60%)に設定し、患者の運動耐容能に基づいて時間をかけて徐々に負荷量を調整していくようにしていくべきと考えられています。

(上月 正博:腎臓リハビリテーション:医歯薬出版:2012)


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