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我々、健常者が行う寝返りの動作パターンは非常に多く、以下のパターンに分類できる。

◎上肢の運動パターンの分類

上側の上肢が肩関節の高さより低い位置でリーチされる動作パターン
上側の上肢が肩関節の高さより高い位置でリーチされる動作パターン
上側の上肢で床面を押し付け、その後リーチする動作パターン
上側の上肢で床面を押し続けて寝返る動作パターン

◎頸部、体幹の運動パターンの分類

骨盤と肩甲帯の位置関係が固定された動作パターン
骨盤が先行する動作パターン
骨盤と肩甲帯の位置関係が変化する動作パターン
肩甲帯が先行するパターン

◎下肢の運動パターンの分類

両側下肢が屈曲し、床面からもち上がる動作パターン
片側下肢が屈曲し床面からもち上がる動作パターン
片側または両側の下肢が屈曲し、床面を押して寝返る動作パターン
片側の下肢が支持面から持ち上がり、下肢の重さを利用して寝返るパターン
どちらの下肢も支持面と接触し続けるが、下肢で床面を押す部位が変化する動作
側臥位へと回転するにつれて、右脚または大腿は左下肢の後ろに残されるパターン

(Randy R,Richter:Description of Adult Rolling Movements and Hypothesis of Developmental Sequences,PHYS THER.69:1989)



ただ、機能障害のない健常成人が行う寝返りの動作パターンは非常に豊富であり、10回寝返れば10通りの寝返りをする場合があります。寝返り動作の正常運動パターンを定義するのは難しいです。

しかし、運動パターンには、ある普遍的特性が存在しています。

その普遍的特性とは「脊柱の回旋運動による肩甲帯と骨盤帯の間の回旋」すなわち、「体軸内回旋」です。(Bobath,1978)

健常成人の寝返り動作においては、身体各体節を筋活動によって連結させ、ある部位から始まった回旋運動が、途切れることなく前進に波及します。また、身体すべての体節が、身体の回転運動を阻害しないように運動するのが特徴です。

(石井慎一郎:動作分析 臨床活用講座―バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践:2013)


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我々は視覚情報なしに、どの程度足が曲がっているか、どの位置にあるのかを認知できます。これは、筋・腱・関節の固有受容器からの情報によって位置や運動速度、筋力などを感知する「固有感覚」によるためです。

臨床のリハビリテーションの場面で、固有感覚に対するアプローチとして、不安定板やバランスマットなど感覚情報に集中しながら姿勢を制御するトレーニングが行われています。

ただ、こういった練習を行う事によって固有感覚は改善するのでしょうか?

固有感覚の改善の可能性としては、末梢の受容器の変化と、それを処理する脳の中枢性の変化の2つが考えられます。

横紋筋の内部にある筋紡錘は、筋の伸張を感知する器官です。筋紡錘は固有受容器の中で感度を調節できる唯一の受容器であり、指で細かいものをつまもうとする時など、感覚情報に注意が向けられると、一時的に感度を高くして感覚情報を増やそうとします。このために、訓練によって感度を高めることができる可能性がありますが、残念ながら、練習前後で感度が変化したとの報告はありません。筋紡錘の密度に関しても、トップアスリートと一般の人との間で差はないとされており、末梢の変化に対しては否定的な意見が多いのが現状です。

末梢で検知された固有感覚は大脳や小脳に伝えられます。固有感覚の識別課題を繰り返すと、大脳皮質の感覚野での支配領域が2.5倍~3倍に大きくなることが知られています。よって、固有感覚の改善は大脳皮質の可塑性変化による可能性が高いと思われます。

実際に、高齢者を対象としたバランストレーニングの報告では、固有感覚を関節の動き、位置、速度の3つの課題の中で速度の識別課題のみ改善が見られたとのことです。このことから、動作の中で姿勢を制御するバランストレーニングでは、関節の速度の識別能力が向上すると考えられます。

ただ、大脳皮質レベルで感覚が改善されても、日常的な運動下における外乱に対しての反応としては遅すぎるため、皮質下(脊髄・脳幹・中脳)の反射による制御が必要になってきます。

固有感覚訓練によって運動パフォーマンスが改善するのは、入力された感覚から適切な情報を選び出し、運動を素早く選択する処理を皮質下で行うようになるからです。

以上のことから、報告から見ると、固有感覚の改善の原因としては大脳の可塑性変化が考えられますが、臨床においては、大脳皮質レベルでの意識的な訓練のみでは、(素早い動きが要求されるような)運動パフォーマンスには反映されないはずなので、その点を考慮しながらリハビリテーションのプログラムを計画していく必要があるのです。

(市橋則明、小田伸午:ヒトの動き百話―スポーツの視点からリハビリテーションの視点まで;2011)

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