Photo Gallery

脳卒中・片麻痺の患者さんは、臨床において特徴的な寝返りを行います。

一度、その異常動作を学習してしまうと、その非効率的な動作のパターンを日常的に繰り返すこととなり、機能障害を大きくさせてしまう可能性があると考えられます。

まず、正常な起居動作は、頭部より開始した運動が股関節まで拡がるという事です。

体幹の主要な運動は、屈曲・回旋で始まり、on elbowから伸展・回旋方向に切り替わります。体幹の慣性モーメントを少なくするために、頭頚部の屈曲が起こり、続いて上部体幹から順番に屈曲し、最後に股関節を屈曲するような動作パターンとなります。

また、背臥位から寝返るときに、上側になる肩甲骨の前方突出が起こり、上肢は前方に伸ばされ、体幹の回転を妨げない位置に置いておかなくてはなりません。

寝返り動作の開始時に上下肢で支持面を押すことはあっても、体幹の回転運動が起きると、回転方向と反対側に上下肢が残ることはありません。

以上のポイントをふまえて、脳卒中患者さんの寝返り動作を見ていくわけですが、よくみられる寝返りとして以下の図のような方が多いと思われます。

脳卒中患者の寝返り ブログ用

寝返り動作で見られる現象と解釈として・・・

体幹の伸展・回旋パターンによる寝返りは、腹部の筋活動が十分に高められていない方が多用する動作パターンです。

また、上側になる肩甲骨の前方突出が困難な場合では、頭部-体幹-骨盤へと回転を運動を広げられないため、下肢で床を押して骨盤の回転運動を起こそうとします。この状態での寝返りは、全身の伸展パターンとなるため、頭部の屈曲・回旋が困難となってしまいます。

つまり、これらにより・・・

寝返り動作が途中で制動されてしまうのです。

つまり、どういう事かというと・・・

床を押すために残った下肢や、肩甲帯の前方突出ができずに残った上肢は、動きを制動するカウンターウエイトとして作用し、動作を妨害してしまいます。

また、特に股関節や体幹の筋力が十分でない患者さんは、寝返れないからといって、健側上肢で手すりを引っ張ることなどで、患側上肢に連合反応が生じ、上肢が同時屈曲して肩甲帯が後方に引かれて、動作を阻害します。

以上の視点で寝返りの評価をしていきながら、患者さんがどのポイントで失敗しているのか把握し、それに対してどの部分の機能を上げていくことで、動作の改善ができるだろうという事を明確に分析していきながら、治療につなげていきます。

・頭頚部のコントロールを先に学習してもらうか
・腹部のトーンを高める練習をするのか
・肩甲帯の前方突出の動作を獲得していくのか
・支持面上の重心移動の練習をするのか
・リーチ動作の練習を行っていくのか

さまざまな方針の中で、評価⇒治療⇒評価⇒治療・・・と行っていき、効率的な寝返り動作の獲得につなげていきます。

(長澤 弘:脳卒中・片麻痺理学療法マニュアル:2007)


※関連記事
関連:歩行分析・動作分析・姿勢分析のためのオススメ参考書
臨床では、SLRを行う際に股関節に十分な可動域と筋力があるのにも関わらず、SLRができない方がおられます。

SLRを行うのに必要な要素としては、下肢挙上によって支持基底面の変化と重心移動と、外乱に対する骨盤・体幹の安定性、股関節屈筋群の協調性が重要となります。

SLRなどの四肢の運動を行う際には、運動の主動作筋に先行して体幹の安定筋(内腹斜筋・腹横筋など)が活動します。SLRの動きができない患者さんの病態としては、腹横筋などの固定筋の収縮のタイミングが遅延するという報告があり、エクササイズでもこの筋収縮順序を考慮していく必要があるという事です。

つまり、体幹がしっかり固定されていないと、四肢がしっかり動かせないという事ですね。

評価としてはまず、SLR時の動作観察を行います。動きはじめに骨盤が前傾したり、後傾したり、体幹の収縮がどのように行われているか確認します。その際に、支持基底面と重心移動の変化がどのようになっているか確認します。

観察するポイントとしては以下の図の通りです。

SLRが困難なケース ブログ用

体幹筋の収縮が不十分と感じた場合は、手で筋を軽く圧迫して、どの筋を圧迫し固定した状態で安定性が改善するのかを評価します。

それによって動作改善がみられる場合、その筋のエクササイズの必要性があると考え、理学療法の治療の実際として、体幹筋エクササイズを行います。機能低下している筋に対して収縮練習を行います。

その後、股関節屈筋と体幹筋が同時に収縮することが大切になるため、股関節屈筋群と体幹筋群の協調性エクササイズを行います。(下図)

股関節屈筋群と体幹筋群の協調性エクササイズ ブログ用

支持基底面の変化と重心移動が上手く行えていない場合は、ボールの上に足をのせ、軽くボールを転がすように動かし、頭部・体幹・反対側下肢での支持面の形成を学習してもらいます。(下図)

SLRに伴う支持基底面の変化と重心移動の練習 ブログ用

(武富由雄、市橋則明:理学療法プログラムデザイン―ケース別アプローチのポイントと実際;2009)

脳卒中患者さんの病棟内でのADLアップのための病棟内練習は、できるだけ早期から行っていき、自立にもっていくことが重要になってきます。

そのためには、看護師(看護部)と連携をしっかり取り、病棟内での動作遂行の問題点を明らかにしていく必要があります。

病棟内での動作は、リハ室での動作に比べて、より生活面を反映した(自宅内での動作に近い)動作になります。理学療法を進行させていく過程で、リハ室で行えている動作と病棟内生活のADL自立度のギャップ(相違点)を把握しておきます。

行う病棟内練習は、実生活(退院後の生活)で行う目的をもったADL練習とし、患者がそのことを十分に理解している必要があります。

看護師は患者の病棟内生活や家族関係など、最も把握している専門職であり、患者の主観的な訴えや、病棟内ADL自立度、患者及び家族の心理、体調、薬物療法、患者のスケジュールなど理学療法士が治療介入以外で得られる生活状況と、患者の身体的・心理的状況などをたくさん把握しています。

病棟内で積極的に看護師とコミュニケーションをとり、分析していく環境が大切です。

看護師との連携 ブログ用

上図は看護師から得られる主な情報の一部です。

「患者さん本人はADLに介助を要するものの、自宅で生活したいと希望を持っているが、家族は介助の方を全くしたくないというのが本音で、施設希望なんです。」

「リハビリではレベルの高い動作練習を毎日行っていますが、本人はリハビリ後の疲労感が強く、結構入浴を拒否されるんです。リハビリでの負荷量について検討させていただけませんか?」

「患者さん家族がお見舞いに来ることがほとんどありません。今後の方針について相談したいのですが・・・」

「夜間不眠で、朝の覚醒が悪いんです。午前中のリハビリはできていますか?」

「今週から、眠剤の量が増えているんです。夜間のトイレ動作にふらつきが多くなってきました。」

「歩行時に膝の痛みがあるんです。整形の診察をされた方が良いのではないでしょうか?」

「痔があるので、できるだけ腹圧をかけた運動は避けた方がいいかと思います。」

「同室者との関係が非常に悪いんです。部屋をかえたのですが、リハビリ時で顔を合わせないように工夫できますか?」

「キーパーソンである夫ががん治療のために入院してしまいました。今後の方針について検討していきましょう。」

「トイレ移乗ですが病棟内でも介助なしで、見守りでできるようになってきましたよ。」

「自律神経障害のため血圧の変動が大きいです。体位変換時のめまいに注意して、転倒などが起こらないように気をつけておかないといけないですね。」

「来週に外泊予定となりました。車への移乗はどのように介助していきましょうか?」

「リハビリでは杖での歩行練習をされているようですが、どうも病棟内では独歩で歩かれています。転倒のリスクがあることを再度説明の必要がありますね。」

「今週から、降圧剤の種類が変わりましたが、運動後の血圧の変動はどうですか?」

「脳梗塞・尿路感染症の予防に積極的に飲水を進めていく必要があるので、リハビリ前の飲水確認お願いします。」

これは、病棟内でかわされる会話の一部ですが、常にスタッフ連携を取っていく必要があります。看護師サイドが忙しくて時間が取れないときもあります。時間をずらしてリハビリサイドから積極的に、情報の取得をしていく事も大切です。

これを行ったうえで、患者及び家族のニーズを把握し、「しているADL」と「できるADL」の相違を分析して理解したうえで、病棟内練習を計画します。


自立度(介助・監視・自立)の判断は、病棟スタッフ同士で話し合い、患者さんに適切な練習内容にしていきます。例えば、転倒の危険性はあるのか、疲労度はどうか、過剰な努力を要するか、認知力はどうかなどの面を見極めていきます。

病棟内訓練の具体例としては・・・
・寝返り
・座位保持
・起き上がり
・立ち上がり・立位・移乗
・歩行
・応用歩行

上記の訓練を行っていくことになりますが、病棟練習における動作指導について以下の点に気をつけます。

①理学療法室と病棟で統一した方法を指導します。
②患者・家族への十分な説明を行います。
③患者の主観的な訴えに注意します。
④簡単な動作から始め、徐々に難易度を上げていきます。
⑤過剰努力による反応に注意します。
⑥事前準備をしっかり行い、リスク管理に注意します。
⑦安全かつ効率的な介護方法の指導をします。
⑧実際の生活を踏まえた動作練習にしていきます。
⑨周囲の環境調整をします。
⑩他部門と連携し、円滑に指導します。

これらを十分に確認したうえで、ADLをアップさせていきます。

(長澤 弘:脳卒中・片麻痺理学療法マニュアル:2007)


※関連記事
関連:10分でわかる脳の構造と機能-畿央大学
関連:回復期リハビリテーション病棟の取り組み・チーム医療の理解のためのオススメ参考書
脳卒中患者さんの病態は本当にさまざまであり、軽度の麻痺の方もおられれば、重度の座位すら困難な麻痺を呈している方までおられます。

今回は、機能回復に期待ができる回復期での、脳卒中の運動療法の治療介入について記します。

回復期における脳卒中の運動療法のポイントは、「正しい姿勢・運動機能を再学習する」ということになります。

つまり、姿勢・運動の誤った治療介入や、不適切な環境によって生じる過緊張・痛みなどの二次障害予防して、可能な限り神経機能の回復を理学療法士が促していかなければなりません。

まず、病態レベルとして、上肢支持にて端座位がなんとか保持可能な方ですが、理学療法での訓練では座位訓練に並行して立位訓練を行っていきます。

なぜかというと、立位の方が骨盤を前傾しやいと同時に、下肢からの抗重力刺激が網様体脊髄路を刺激し、脊柱の抗重力伸筋活動が賦活されます。そのために、運動学的にも神経科学的にも体幹の伸展機構を促しやすいからなのです。

脳卒中の発症後から、とにかく座って・立ってという練習を早期から開始していくのはこのためです。

立位の治療介入では、セラピストの徒手によるコントロールでは限界があるため、装具(上肢装具や下肢装具など)を使用してアライメントを整え、脊柱垂直保持を再学習していくようにしていきます。

臨床の現場では、上肢に重度な麻痺を呈している方がおられると思います。麻痺側上肢の重みによって脊柱の垂直保持を阻害している場合には、肩装具を装着してアライメント矯正することが好ましいと思われます。

下図は脳卒中患者によく見られる静止立位で、肩装具を装着することでアライメントの修正が行えている図です。

脳卒中患者の立位アライメント介入 ブログ用

介入の順序としてはこのような静的立位保持の訓練を行ってから、動的立位保持の訓練に移っていきます。

動的立位保持はADL動作に直結しているため、ADL場面を想定して訓練を行います。

(原 寛美,吉尾 雅春:脳卒中理学療法の理論と技術:2013)


※関連記事
関連:歩行分析・動作分析・姿勢分析のためのオススメ参考書
関連:10分でわかる脳の構造と機能-畿央大学
道路の掃除 ブログ用

ADLの獲得のためにはおおよそ必要なROMが存在します。

各項目で標準的なROMを記していきます。

○タオルを絞る
手背屈0~20°
回内外0~45°
肘屈曲65~80°
肩屈曲25~45°


○カッターシャツのボタンをはめる
手背屈30~50°
回内0~45°
肘屈曲80~120°
肩屈曲10~15°
肩外転5~10°


○顔を洗いそして拭く
手背屈40°
回外70°
肘屈曲40~135°
肩屈曲15~25°


○丸首シャツの着脱
手背屈40°
肘屈曲120°
肩屈曲70°
肩外転0~45°
肩内外旋45°


○グラスの水を飲む
手背屈15~20°
肘屈曲130°
肩屈曲30~45°


○髪をとく
手背屈0~20°
掌屈0~40°
回外30~50°
肘屈曲110°
肩屈曲70°
肩外旋30°
肩外転110°


○かがんで床の物を拾う
股屈曲114°
股外転27°
股外旋24°
膝屈曲117°


○椅子への立ち座り
股屈曲112°
股外転20°
股外旋14°
膝屈曲93°


(今野孝彦:Ⅱc 日常生活動作(ADL)と上肢機能.これでできるリウマチの作業療法:1996)



○階段昇降動作
膝関節屈曲83°

○しゃがみ込み動作
股関節屈曲77°
股関節内転5°
股関節外旋3°
膝関節屈曲117°


○床からの立ち上がり動作
股関節屈曲93°
股関節外転5°
股関節外旋3°


○下肢へのリーチ動作
股関節屈曲101°
股関節外転8°
股関節外旋4°
膝関節屈曲106°


(酒井孝文 他:変形性関節症患者の動作分析:PTジャーナル 37(12):2003)



正常歩行のためには(膝関節)0~65°の可動域が要求され、下腿と同じ高さの椅子からの立ち上がりには100°、21cm高の階段昇降には115°、胡座には130°、正座や和式トイレ動作には150°がそれぞれ必要である。

(八木茂典:膝関節疾患の異常歩行に対するエクササイズの工夫:理学療法 19(4):2002)



○日常生活活動と必要な膝屈曲角度について

自動可動域
平行歩行:70°
階段昇降:95°
椅子からの立ち上がり:105°
自転車漕ぎ:110°


他動可動域
躑踞の姿勢:130~145°
正座:150~165°


※躑踞姿勢とは、しゃがむ、うずくまるような姿勢の事で庭の草むしりをする時などに要求される姿勢です。

(鳥巣岳彦 他 編:標準整形外科学 第9版:2005)


※関連記事
関連:最終域感(end-feel)の感じ
関連:歩行分析・動作分析・姿勢分析のためのオススメ参考書
関連:正常歩行に必要な関節可動域
心臓

狭心症に対するリハビリテーションは、「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012)」で、狭心症状を改善させるとして推奨されています。

さらに心臓リハは、心筋梗塞に限らず、不安定狭心症や安定狭心症、冠動脈インターベンション後、 冠動脈バイパス術(CABG)後や心不全など様々な心臓疾患において有用で効果的であるとされています。

しかし、狭心症の心臓リハに関しては、明確な運動プログラムはないというのが現状です。

理学療法の現場でも、狭心症を合併し、そのために運動後に「つかれました。」とか「胸のあたりが苦しいです。」など胸部症状がでて、なかなかリハビリが進まないという事がよくあると思います。

運動療法を適切に行う為に、何のために運動療法を行うのかをはっきりさせ、狭心症の状態を評価し、運動プログラムを組んでいくことが臨床では大切になると思います。

狭心症に対する心臓リハの効果としては、以下の項目が挙げられます。

①運動耐容能の改善
 狭心症患者に対して運動療法を行う事で、狭心症発作回数が減少すると言われています。運動療法によって、末梢の骨格筋が強化されることによって、虚血閾値が高まり、狭心症発作を軽減させます。また、血管拡張能の反応改善によって冠動脈灌流が良くなり、運動耐容能を改善させると考えられています。

②不安定プラークの安定化
 動脈硬化には炎症反応が影響を及ぼしている事が報告されています。運動療法によるメタボリックシンドロームやインスリン抵抗性の改善が炎症反応の抑制に働き、冠動脈硬化病巣を安定化させ、プラーク破綻を防止し、急性冠症候群を防止することが考えられています。

③血管拡張能の改善

以上の心臓リハの効果を理解し、狭心症の運動療法プログラムを立てていきますが、「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012)」に基づいて設定していきます。

運動強度は、虚血所見が出現する80%程度を上限とし、ATレベル、Karvonenの式、自覚的運動強度:Borg指数11~13を目標とします。

Borg指数 ブログ用

運動内容としては、持久運動をメインに行い、ストレッチング、レジスタンストレーニングなども含め、運動耐容能の60%以下で虚血徴候が出現しない強度であれば、他の運動や軽いスポーツなども良いとされています。

ただ、不安定狭心症は運動療法を禁忌とすべきです。特に、悪化型で48時間以内に安静時狭心症が頻発するものについては、心筋梗塞へ移行する確率が高いため、必ず薬物、あるいは冠動脈インターベンション(PCI)などを施行して安定化を待ってから運動療法に入らなければなりません。

(上月正博:心臓リハビリテーション:2013)


※関連記事
関連:慢性心不全の方のリハビリテーション
関連:高齢者に激しい筋トレをさせるのは危険?
整形外科術後の最も重要なリスク管理に深部血栓静脈症(DVT)があります。

DVTは肺塞栓症(PE)を発生させ、呼吸困難や胸部痛、さらに重篤な場合は短時間のうちに心停止を引き起こす場合があります。

理学療法を実施中に、突然患者さんが、意識消失してその場に倒れこみ、みるみる顔色が悪くなるという状態になることが起こる可能性があります。

理学療法が介入する際には、特に術後はそういう事が起こるかもしれない事を仮定し、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを予測していくことが大切となってきます。

以下の表は、深部静脈血栓症の付加的な危険因子の強度です。これらの因子から、どの程度VTEのリスクがあるかを予測します。

静脈血栓症の危険因子の強度 ブログ用

DVTが起こっている急性期の症状としては、患肢の疼痛、浮腫、腫脹、表在静脈の怒脹、腓腹部の把握痛、足関節を強制背屈した際の腓腹部の疼痛(Homan徴候)などがありますが、無症状の例も多くあり、臨床症状がなくてもDVTがある場合もあります。診断ではD-dimar値などの血液学的検査超音波検査などによって画像診断していくことが重要となります。

予防していくためには、術後理学療法において、

①早期離床
②積極的な運動
③弾性ストッキング
④間欠的空気圧迫法

整形外科の術後でDVTの発症率が最も高いのは、人工膝関節置換術(TKA)後で、次に人工股関節置換術(THA)後です。

特にこれらの方に対して、上記の①~④が行われます。

①・②に関して、術後はできるだけ早期に離床し、積極的に動かし、早期荷重歩行を行う事が最大の予防法になります。リハビリがない日でも、自主的に足の底背屈運動によるカーフパンピングを行っていただき、血栓をつくらないようにしていかなければなりません。この運動を行ってもらう際には、下腿三頭筋をしっかりと収縮させて行うように指導していきます。

③・④に関しても良く用いられます。圧迫を加えることによって、静脈の血流速度を上昇させ、下肢への静脈うっ滞を減少させる効果があるからです。このストッキングは履いてみると分かりますが、かなりキツいストッキングです。普通のストッキングではありません。履いた後は、できるだけストッキングにシワができないように注意してください。シワやよじれが出来ると、皮膚に食い込み発赤や疼痛の原因となりますし、圧迫力が不均一となり、段階的圧迫力にならなくなってしまうためです。

(島田 洋一,高橋 仁美:整形外科 術後理学療法プログラム:2013)

しゃがみ込み動作 ブログ用

しゃがみこみ動作が困難となっている方は、高齢者をはじめ脳卒中の方や様々な方で困難となっている場合が、臨床では非常に多いです。

しゃがみ込み動作は日常生活でも行う頻度が多く、床の物を取る時や、庭の草取り、一番下のタンスの引き出しを開ける時など、自宅での生活を行う上で重要な動作となってきます。病棟内でも、しゃがみ込み動作をした瞬間に転倒した事例も人によってはあると思います。

立ち上がり・着座の動作は十分にできても、しゃがみ込み動作はできない事は多々ありますので、動作チェックは必要となってきます。

しゃがみこみ動作ができない原因は多くあり、原因が混在している場合もあるので、十分に評価していくことが大切です。今回のしゃがみ込み動作は、床に踵がつく状態の動作となります。

○しゃがみ込み動作ができない原因

①股関節屈曲可動域制限
②膝関節屈曲可動域制限
③足関節背屈可動域制限
④骨盤前傾の動きの不足(骨盤後傾位)
⑤脊柱の屈曲可動域の低下
⑥腸腰筋の短縮位での機能不全
⑦体幹屈曲筋力低下
⑧前脛骨筋の最大背屈位での筋力低下

ここから病態別にアプローチ方法を記していきます。

①股関節屈曲可動域制限
②膝関節屈曲可動域制限
③足関節背屈可動域制限
⑤脊柱の屈曲可動域の低下
 この場合、関節包なのか、筋なのか制限因子を評価し、原因に対して適切な可動域訓練を行っていきます。股関節屈曲時に、大腿直筋や縫工筋の緊張が高い場合には、セラピストが指で圧迫しながら、抑制をかけて屈曲していくと良いと思われます。
 膝の深屈曲では脛骨の内旋が必要となるので、脛骨内旋を引き出すようにしていくとよいかと思われます。

④骨盤前傾の動きの不足(骨盤後傾位)
 患者さんでは、股関節の屈曲可動域が正常でも、上手に骨盤前傾ができない方もおられます。そういった方は座位で骨盤前傾トレーニングを行い、骨盤前傾位で保持していく練習をしていきます。

骨盤前傾トレーニング ブログ用

⑥腸腰筋の短縮位での機能不全
 骨盤前傾のトレーニングを行った後に、座位で骨盤前傾位のまま股関節屈曲していきます。(腸腰筋が短縮位で力を発揮できるようにするため)activeでできてきたら、軽く抵抗運動でもできるようになるとよいかと思われます。

⑧前脛骨筋の最大背屈位での筋力低下
 しゃがみ込み位で保持するためには、最大背屈位でキープするための前脛骨筋の筋力が必要となります。MMTにて最大背屈位での前脛骨筋の筋力を評価し、弱い場合は最大背屈位での筋力トレーニングを行います。

足関節最大背屈位でのトレーニング ブログ用

⇒しゃがみこみ動作トレーニングへ

しゃがみこみ保持トレーニング ブログ用

 個別のトレーニングを行ったら、しゃがみ込み動作を行います。難しければ、踵を足底板などで補高し、重心を前方にさせることでしゃがみ込みやすくなります。1~2分保持できるようになれば、徐々に補高の高さを低くしていき、最後には足底板がとれるところまで継続していきます。

(武富由雄、市橋則明:理学療法プログラムデザイン―ケース別アプローチのポイントと実際;2009)


※関連記事
関連:運動学・機能解剖のオススメ参考書
交通事故や、スポーツでの事故、転落事故、脳卒中などの後遺症によって生じる高次脳機能障害は、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害を呈し、日常生活でさまざまな支障が生じます。

臨床の現場でも非常に多く、動作レベルで改善できても、高次脳機能障害により生活に介助を要する場面がかなりあると思います。

高次脳機能障害の症状は、発症原因、障害部位、重症度によって個別差は大きいですが、リハビリテーションの訓練によって落ち着いてくることが一般的です。

リハビリテーションにおいては、症状の改善のための訓練を行い、それでも日常生活で問題が生じる部分に、住環境整備の必要性があります。

高齢者や障害者に共通する住環境整備以外で、高次脳機能障害の方に限定した具体的な配慮としては・・・

①室内の凹凸や床の段差を解消する
高次脳機能障害の方は床面の段差を認知しにくい場合が多いです。床面の段差に気付くのが遅れたり、気づかずに衝突したり、転倒したりする危険性があります。特に、リハビリテーションの訓練中はもちろん、病棟内で気づきが浅い方は極力床面の段差解消を行った方がよいと考えられます。

②室内空間はシンプルな雰囲気で統一する
室内空間は落ち着いた雰囲気にすることで、高次脳機能障害の方は精神的に落ち着いた状態を維持できると言われています。例えば、市松模様の柄や、大柄の模様の壁紙などは気になって落ち着かない事があります。室内の装飾品も少なめにしておいた方がよいとされています。
色彩は活気を与える様な暖色系よりも、どちらかというと静かで落ち着いている雰囲気の寒色系が好ましいです。
音も同様で、外部からの騒音が聞こえないように壁の遮音性能を高め、窓にも二重サッシを採用すると遮音効果が高まります。

③柔らかな照明
室内は一定の照度が必要ですが、柔らかな雰囲気がよいことから間接照明が好ましいとされています。

④収納への配慮
室内が雑然としていると、高次脳機能障害の方は落ち着かず、混乱しやすくなるため、室内は常に片づけて机の上などもきれいにしておく習慣をつけておきます。物を置く位置も常に同じ場所になるようにすると良いと言われています。

⑤家具類の位置を変えない

(野村 歡,橋本 美芽:OT・PTのための住環境整備論:2012)


※関連記事
関連:10分でわかる脳の構造と機能-畿央大学
理学療法の臨床の現場では、脳卒中などによって運動失調を呈している患者さんは多く、そういった方の多くは股関節周囲筋の協調性低下や、筋収縮力の低下による股関節の安定性の低下がよくあります。

こういった機能低下を起こしている方は、立位でワイドベースとなり、骨盤の動揺が大きくなります。

この場合、股関節周囲筋に問題があるので、立位だけでなく、膝立ち位の課題で特に動作困難となりやすいのです。

股関節周囲筋の特に遠心性収縮が困難になる場合が多いと思われます。

実際に評価する際は、身体のどの部位の協調性・筋収縮力の低下が生じているかを見ていかなくてはいけません。

座位で体幹の動き、膝立ち位で股関節の動き、立位で足関節の動きに注目して評価を行います。

特に、膝立ち位で失調症状がみられる場合、ターゲットを股関節周囲筋としていきます。

トレーニングとしては、膝立ち位でのステッピングや、片膝立ちの保持や、両膝立ちから横座りをしてまた膝立ち位へ戻るという課題などが、股関節の協調性・筋収縮力の評価&トレーニングとして有効と言われています。

トレーニングを行う際には、遠心性収縮を意識し、動作は反動をつけずに、できるだけゆっくり行うように心がけます。

まず、膝立ちになること自体が不安定な方は、正座の状態からゆっくりと膝立ち位になっていきます。股関節伸展位での膝立ち位が困難な場合は、台での支持ありで行っていくとよいと思われます。(もちろん、変形性膝関節症など膝の深屈曲ができない方に正座を強要してはいけません)

片膝立ちトレーニング ブログ用

上図は片膝立ちトレーニングです。支持側の股関節が屈曲して体が崩れないように注意しながら、ゆっくりと動かしていきます。

膝立ち位から横座りトレーニング ブログ用

上図は膝立ち位からの横座りトレーニングで、この運動は体幹回旋の動きも含んだ複合動作になるために、難易度の高いトレーンニングになります。難しい場合は手をついてもかまいません。(ここでも、THAなど脱臼のリスクがある方に対して行うのは避けなければなりません)

(武富由雄、市橋則明:理学療法プログラムデザイン〈2〉ケース別アプローチのポイントと実際;2012)


※関連記事
関連:10分でわかる脳の構造と機能-畿央大学

WHAT'S NEW?