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臨床上、脊椎圧迫骨折を呈している患者さんは非常に多いです。学生が臨床実習で担当することも多い疾患であると思いますが、どのような治療アプローチを行っていけばよいのでしょうか?どのような事に気をつけて運動療法をしていけばよいのでしょうか?

転倒による受傷で、腰背部痛に加え、下肢の易疲労性尿失禁が増えたりという症状がでます。

圧迫骨折は椎体の骨折であり、圧潰率により楔状椎型・扁平椎型・魚椎型に分けられます。

圧迫骨折の好発部位は胸腰椎移行部(第11胸椎~第2腰椎)です。

骨粗鬆症があり、それによって脊椎圧迫骨折が起こっている場合、胸腰椎移行部で多発性に圧迫骨折を起こしている患者さんも多いです。これにより、胸椎後弯が増強し脊柱全体が後弯変形してCカーブの背中になっていきます。

脊柱の後弯変形の何がいけないかというと、後弯変形は下肢関節にも影響を与え、変形性関節症の進行や要因になったりします。

例としては、脊椎後弯変形により、骨盤が後傾し、大腿骨頭の前方被覆面積が減少し、骨頭への局所的な関節応力が増大することで変形性股関節症を発症するという報告もあります。

また、脊柱後弯になることで、重心が後方偏移し大腿直筋が過剰に働くこととなり、筋の易疲労性が出現するととなります。

次に、症状としてなぜ尿失禁が起こるかという事に関しては、特に第12胸椎-第1腰椎を含む重篤な圧迫骨折の場合、椎体後方の脊柱管にある第2~4仙髄が損傷して、反射性尿失禁を起こすことがあります。

一方で腹圧性尿失禁の場合は、骨盤底筋群の弛緩によって起こっています。これは、妊娠・出産、加齢、肥満などが原因となりますが、胸椎後弯変形が生じている方の場合は、骨盤底筋群が伸張されている状態になりやすいため、機能低下が起こる場合があります。そういった方には骨盤底筋群へのアプローチが必要になってきます。

脊柱圧迫骨折がADL上において、トイレ動作や排泄コントールの面で自立できない方も中にはおられると思います。骨盤底筋群のエクササイズにより症状が改善するものなのか、反射性尿失禁と考え、オムツでの対応としていくのか、方略はセラピストがどのように評価していくかによります。

そもそも、脊椎圧迫骨折後の治療としては保存療法が選択されることが多いです。

一般的には約4週間の体幹ギプス固定後、約8週間の硬性コルセットの装着を行います。

では、外固定期間中のリハビリテーションは何をすればよいのでしょうか?

外固定期間中は、骨癒合促進と脊柱後弯変形予防が大切になってくるために、脊柱の運動をできるだけ行わないような肢位やトレーニング方法を選択しなければいけません。

例えば、椎体の前面が圧潰した方が、脊柱後弯の姿勢をとると椎体前面のさらなる圧潰のリスクがあるために、注意します。

また、脊柱を運動させずに行う等尺性収縮運動での最長筋や、腸肋筋の訓練も重要であるが、圧迫骨折後では腰椎前弯が減少しているために、脊柱の安定化を図るため、local muscles(ローカルマッスル)に対する筋力訓練が必要になります。

local musclesに対するアプローチとしては、多裂筋、骨盤底筋群、腹横筋、横隔膜に対して訓練を行っていきます。

特に外固定をしている間は脊柱の大きな動きも制限されているために、多裂筋・腹横筋の分節間の運動は促しやすいので、積極的に行うことが大切です。

外固定終了後の骨癒合後のアプローチとしても、腰背部痛と脊柱後弯変形の予防を考えていかなければなりません。

腰背部の筋スパズムに対してリラクゼーションを適度に行う事が大切になってきます。

(工藤 慎太郎:運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学:2012)

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今日の脳卒中リハビリテーションは、明確化されてきているエビデンスを根拠とした治療理論をもとに、臨床へ導入するよう求められるようになってきました。

脳卒中のリハビリテーションを行うにおいて、この時期にこういう事をしなければならない、この時期にはこれをしてはならないという最新の知見をセラピストは常に頭に入れておかなければなりません。

今回紹介する最新の必須の知見は、以下の3つです。

①critical time windowの概念
②運動麻痺回復のステージ理論
③運動麻痺の回復を阻害するワーラー変性と痙縮

今日、脳卒中発症後早期からのリハビリテーション介入が運動麻痺の改善を左右することがよく言われています。

Wagenaarらによると、発症後1週間以内に、1.5倍量のリハビリテーションの介入群に運動麻痺の改善が有意に優れ、その効果が12カ月持続することが明らかになっています。

特に、上肢の機能改善では早期介入と強度だけでなく、どのようなリハビリテーションプログラムを実施していくかによって機能回復の程度が変わってきます。

例としては、虚血性脳梗塞を生じたリスザルの実験で、発症後特別な訓練を実施しなければ、1ヶ月後には手指の運動野支配領域は50%以上減少したが、健側手を拘束して患側手の使用を促す方法(CI療法)を実施したリスザルは手の支配領域の減少を阻止しうることが明らかにされています。

このことから、急性期よりどのようなリハビリテーションプログラムを実施するかが問われてくる時代となりました。

①critical time windowの概念

動物の虚血モデルの実験において、リハビリテーションの介入時期が早いほど、シナプスや樹状突起の再生などが有意に認められています。脳梗塞発症後の数週間以内では損傷部位で組織的な修復がされており、この時期の介入は運動麻痺回復に向けて効果的だと言われています。

反面、発症1カ月以後からの遅延リハビリテーション介入では、手指の運動野支配領域の萎縮を取り戻せないことが明らかになっています。

このことから、脳梗塞発症の初期の2週間から3週間以内の期間が、運動麻痺の回復の予後を左右する時期だとして、critical time windowと言われています。

多少の個人差は認められますが、critical time windowの時期に効果的なリハビリテーション介入の必要性があり、この時の逸した介入は運動麻痺回復を最大限に引き出すことを不可能にしてしまいます。

②運動麻痺回復のステージ理論

運動麻痺回復のステージ理論(Swayne:2008)は脳卒中後の機能回復のメカニズムを、3つのステージに分類して説明したものです。

運動麻痺回復のステージとメカニズム ブログ用

まず、脳卒中直後の急性期に始まる皮質脊髄路を刺激しその興奮性を高めることで麻痺の回復を促進する時期(1st stage recovery)です。

これは急速に減退して3カ月までには消失してしまいます。原因は損傷皮質脊髄路に進行するワーラー変性です。これについては後述します。

この1st stage recoveryの時期には、皮質脊髄路の興奮性を効率的に刺激するリハビリテーションを行う事が良いとされています。

例としては、ミラーセラピーがあります。ミラーセラピーとは健側肢をミラーに写し、そのイメージを視覚的に学習し、患側肢の運動イメージとして知覚して麻痺肢の随意性を取り戻すというものです。この治療は患側一次運動野からの皮質脊髄路を刺激することが明らかにされており、発症から3カ月以内の期間は皮質脊髄路の興奮性を高める事が期待されます。逆に、4カ月以降は理論上では効果はあんまり期待できません。

他にも、1st stage recoveryの時期には、電気刺激が有効とされています。電気刺激によって残存する皮質脊髄路の刺激と、体性感覚入力の増加が期待できます。電気刺激の施行時間は30分と60分で有意差はありませんが、最低30分主要な麻痺側上下肢に実施するよう勧められています。

そして、次の回復のステージは、皮質間の新しいネットワークの興奮性に依拠する時期(2nd stage recovery)で、3カ月をピークに再構築されます。この時期は皮質間の抑制が解除されることで機能します。ただ、この抑制の解除も6カ月までに消失してしまうために、それまでに2nd stage recoveryでは皮質間の再組織化を促すリハビリテーションプログラムが必要になってきます。

最後の回復ステージは、シナプス伝達が効率化されることによって、出力ネットワークが一層強化される時期(3rd stage recovery)です。これは6カ月以降も持続して徐々に強化される機能です。

この時期には、出力ネットワークの再構築がされるようなリハビリテーションプログラムが必要となります。

この3rd stage recoveryの時期に有効なリハビリテーションとして、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いた集中リハビリテーションがあります。健側大脳半球運動野に対して、経頭蓋磁気刺激にて抑制を行う事で、運動機能の可塑性を引き出すpriming効果を生じさせた所に、集中的なリハビリテーションを行うというものです。臨床の場面では、このような機器がある施設は限られてくるので、実施は難しいですが、東京慈恵医科大学では慢性期患者の機能改善に効果を確認しています。

③運動麻痺の回復を阻害するワーラー変性と痙縮

急性期からの運動麻痺回復の過程において、2つの阻害因子が明らかにされています。

一つは、病変部位から下降する皮質脊髄路に生じるワーラー変性で、皮質脊髄路の興奮性が急性期から3ヶ月で消失してしまうのも、ワーラー変性の進行によるものと考えられています。しかし、現在それに対するリハビリテーションの介入を含めた検討の報告はありません。

二つ目は、麻痺肢に生じる痙縮の発現です。

痙縮のメカニズムとは、発症後の麻痺肢は筋が短縮位でのポジショニングがなされ、その状態での不動化によってさらに筋線維の短縮が助長され、筋線維は結合組織と脂肪組織への置換が生じてきます。その結果、骨格筋の粘弾性は失われて、筋紡錘の興奮性が増大します。そのために、深部腱反射の亢進が具現し、筋の過活動状態である痙縮をつくりだしてしまいます。

痙縮に伴い、骨格筋の変性、麻痺肢の不使用、不動化も生じてくると、拘縮へと伸展します。

これは避けなければいけません。

こうならないために、麻痺肢における深部腱反射の亢進を初期のwarning signと考え、急性期の段階からモビライゼーション、麻痺肢を短縮位にしない肢位、可能であれば電気刺激や、ボツリヌス治療など痙縮に対する介入が必要になってきます。

(原 寛美,吉尾 雅春:脳卒中理学療法の理論と技術:2013)


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筋トレと栄養

高齢者に筋力トレーニングが有効であることは、もはや疑いの余地がない状態ですが、今回は栄養が筋力トレーニングに加えて相乗効果をもたらすのかという事についてです。

1994年にNew England Journal of Medicine誌に掲載された研究では、平均87.1±0.6歳の高齢者100名を4群(筋力トレーニング群、サプリメント群、筋力トレーニング+サプリメント群、対照群)に分け、10週間のレジスタンストレーニングを週3回実施しました。1RMの80%を8回×3セットの負荷量で行い、その結果、筋力トレーニング群と、筋力トレーニング+サプリメント群に有意な筋力向上が見られました。

また、2012年のJournal of American Geriatrics Society誌では、75歳以上のサルコペニアと診断された女性155名を4群(筋力トレーニング+アミノ酸群、筋力トレーニング群、アミノ酸群、対照群)にわけ、20分間の筋力トレーニングを実施した結果、対照群と比較して筋力トレーニング+アミノ酸群と、筋力トレーニング群で有意に筋力向上が見られました。また、筋力に加え筋量と歩行速度の向上もあり、下肢筋量と膝伸展筋力を組み合わせた指標で、筋力トレーニング+アミノ酸群が対照群の4倍以上の機能改善を示したとの報告があります。

以上の事から、筋力トレーニングは筋力向上の高いエビデンスでありますが、筋力トレーニングに加えてアミノ酸などのサプリメントによる栄養補助を行う事が、筋力向上に相乗的な効果をもたらすのではないかと考えられています。

筋力増加のメカニズムとして、骨格筋タンパク質の合成が分解を上回ると筋肥大が起こることが考えられます。アミノ酸を摂取することは、血中のアミノ酸濃度を上昇させ、骨格筋タンパク質の合成を促進させる事につながります。つまり、アミノ酸摂取が筋力向上に貢献することは高齢者においても同じです。

臨床の現場において、筋力トレーニングの時に限らず日常的に高齢者の栄養状態を良好に保つことは重要です。栄養状態の指標である血清アルブミンの臨床医学的なカットオフポイントは3.8g/dl以上とされています。地域高齢者に関しても栄養状態(臨床的には4.0g/dl以上が望ましいとされています)を把握したうえで筋力トレーニングを行う事が望ましいと考えられます。

(井平 光、古名 丈人:理学療法 30巻9号:2013)


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階段の整備 ブログ用

実際の階段自体を整備することは少ないですが、階段を新しく設置していく場合には昇降しやすい階段に整備する必要があります。

つまり、対象者が安定して連続昇降が行えるような蹴上げ(階段一段ごとの高さ)、踏面(階段一段ごとの奥行き)、幅員を確認して、整備案を検討します。

①蹴上げ
 蹴上げの高さは安全に昇降できるように、高さは均一とし、屋外階段の蹴上げは110~160mm程度が望ましいとされています。蹴上げの高さを低くすると、階段の段数が増加するために、このことを考慮して整備を進めていかなければいけません。

②踏面
 踏面は靴を十分にのせることができる奥行き以上のものとします。高齢者が利用しやすい一般的な踏面の寸法は300~330mm程度です。踏面は各段とも均一な幅となるのがよく、階段が曲がる部分は踊り場を設置し、三角形の形状の踊り場は避けた方がよいとされています。

③幅員
 幅員の目安は800~900mm程度とし、階段の幅員は均一にした方が良いです。狭すぎる幅員は昇降においての安全面が低く、避難の際に支障となります。

(野村 歡,橋本 美芽:OT・PTのための住環境整備論:2012)

ほめる ブログ用

われわれセラピストは治療を行う際に課題ができたことに対して褒めたり、体の状態にいい反応ができたことに褒めたりします。

ただ、時間に限りのある現場では、業務的にメニューをこなすことが主で、患者さんを十分に観察したうえで褒めたりという事は難しくなってきているのが現状であったりします。特に、入院生活をしている患者さんではリハビリに対するモチベーションが低くなりやすかったり、前向きに課題をこなすことが困難だったりすることも多いです。

残念ながら、日本人は他人の事を褒めることが得意ではない傾向にあります。

しかし、褒めすぎると低いレベルで満足してしまうとか、次への課題の意欲が下がってしまうなどの現象もあるので注意していく必要もあります。

では、リハビリテーションを円滑に進めていくためには、どのように褒めたらいいのでしょうか?

まず、治療の初期の段階では、初歩的なことでも患者さんを褒める必要がある場合が多いと思います。最初の簡単な課題ができるようになったら、次第にできることを増やし、レベルの一段高い課題を行っていきます。

いつまでも低いレベルの課題で褒めるのではなく、少し上のレベルをといった具合に要求水準を少しずつ上げていきます。

そして、ある程度動きが習得できてきたら、褒める回数を2回に1回、3回に1回と徐々に減らしていきます。

これはオペラントの技法でいう連続強化から間欠強化への移行です。

つまりどういう事かというと、新しい課題・行動を身につけてもらうには、毎回褒める連続強化の方が近道です。ただし、いったん身に付けた行動を持続して行えるようにするためには、時々褒める間欠強化が大切になってきます。

治療が始まってなかなか課題ができなくてふさぎこみがちな患者さんは多いと思いますが、臨床の場面としては課題の難易度の低い課題から行い、ちょっとでもできたらすぐに褒めて、だんだん上手に行えるようになってきたら特に上手にできた時にだけほめて、要求水準を上げていくことが大切になると思われます。

(武田 建、中俣 恵美、出田 めぐみ:理学療法士(PT)・作業療法士(OT)のための治療心理学: 患者によりそう行動アプローチ:2014)

記憶障害

脳卒中後の高次脳機能障害を呈した患者さんは臨床上多いです。身体機能は自立レベルであるが、高次脳機能の問題で自宅退院が困難になっているケースも多いです。

高次脳機能障害に直接アプローチすることは、病院・施設によっては作業療法士、言語聴覚士が配置されている場合、理学療法士が介入することは少ないのが現状ではないでしょうか?

しかし、注意障害記憶障害半側空間無視によって円滑な理学療法が阻害されたり、病棟内移動時の転倒・転落の原因になることもあるために、介入の必要性としては非常に高いのではないかと考えます。

高次脳機能障害に対する訓練の方略としては、失われた機能に対して直接的にアプローチする方略と、他の機能を活用して代償的にアプローチする方略に分けられます。

どちらの方略でリハビリテーションを進めていくかは明確にしておく必要があります。

今回とりわけ、高次脳機能障害の中で問題となることの多い注意障害記憶障害半側空間無視について記します。

①注意障害

 注意障害の実際の臨床症状としては、注意散漫で集中力に欠けており、椅子に座っていてもキョロキョロして落ち着きがない状態だったり、またはボーっとして、会話や行動にまとまりがない状態だったりします。
 また、一つの課題にしか注意を向けることができず、同時に複数の課題を行う事が難しい状態の方もおられます。

 注意障害に対する訓練としては、attention process training(ATP)、数字や文字の抹消課題、計算問題、文章の書きうつし、トランプ分類(数字やマークごとに分ける)、絵や図形の間違い探しなどの課題が行われます。

 注意の持続が困難な方は静かな部屋で訓練を行うなどの環境への配慮も必要となります。
 
 臨床では、車椅子レベルの患者さんで、車椅子移乗を行う時にブレーキをかける動作や、フットプレートを上げる動作を忘れて、転倒のリスクのある方も多くおられます。そういった方には、動作手順を言語で書いた張り紙を目につく所に貼って、注意を促す方法もありますし、カラーテープをブレーキの部分に貼ったりと、目立つようにマーキングするのも良い場合もあると思われます。

②記憶障害

 記憶には覚えこむ段階の記銘、記憶をためておく把持、検索して思い出す想起という3つのプロセスに分かれており、臨床ではどの段階に問題があるのかを明確にしておく必要があります。

 臨床の場面では、担当セラピストの名前を覚えることができなかったり、訓練時間などのスケジュールを覚えれなかったり、トイレの場所が分からなかったり、自分の病室が分からず迷ったり、会話内容を覚えていなかったりと症状としては個人差があります。

 このような状態では、訓練そのものを円滑に行う事ができないだけでなく、退院先の生活において支障が出てしまいます。

 対応としては、訓練時間やセラピストの名前を書いたスケジュール表を渡して確認してもらったり、病棟内を記した地図をもって歩行していただいたり、所々の廊下や部屋の前に目印を置くのもよいかと思われます。このほかメモリーノートやボイスレコーダーなどを用いて日課管理をしていくことが重要と思われます。

③半側空間無視

 半側空間無視(USN)は中枢神経疾患の患者に生じる失認のなかの症状の一つです。半側空間無視は左片麻痺の方に多く、右脳損傷者の20%~50%に出現すると言われています。臨床の場面ではよく遭遇し、リハビリテーションの阻害因子となることも多いです。

 責任病巣としては頭頂葉後部が多いですが、前頭葉や視床、被殻でも起こる場合があります。

 臨床での症状としては、ご飯のときに左側のおかずが残ってしまったり、左側の壁や家具に足や体をぶつけてしまう状態や、左側から話しかけられても気付かない事もあります。

 机上のテストでは、線分二等分線検査、アルバートの線分末梢検査、ダブルデイジーがよく使用されています。ただし、このような机上のテストは日常生活の観察の結果と違う事もあるために、それも含めた評価をしていく必要があります。

 半側空間無視の実際の訓練としては、手で机や箱の縁を無視側の方へ向ってなぞって、その手を追視させるようにします。また、テーブルの上にお手玉などをのせ、お手玉を無視側の箱の中に数えながら入れていく作業を行ったりします。方略としては視覚以外の知覚を用いて無視側への探索をしていく課題をしていくと良いと思われます。

(細田多穂:中枢神経障害理学療法学テキスト (シンプル理学療法学シリーズ):2014)


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起き上がり

どんな人においても、病気などの特別な理由がない限り、日常生活において毎日この動作を繰り返しています。

ただ、起き上がりのしかたについては、決まった典型的なパターンはなく、いろんな方略を用いてその人個人のやり方で起き上がっています。

場合によっては目覚まし時計にびっくりして急に起き上がったり、両手をつきながらゆっくり起き上がったり、人によっては足をいったん持ち上げてからその反動で起き上がったり、ベッド柵につかまりながら体を起こしていったりと様々です。

ただ、様々な起き上がりができるのは健常者だからなのです。脳卒中後の方や、廃用の進んだ高齢者など起き上がりが困難な方は健常者に比べて起き上がりの動作を遂行するための機能が制御できない傾向にあります。その要素とは加速度や、慣性力や、床反力などです。

つまり、起き上がりの動作分析においてはどのような要素が必要であるのか?とか、どのような機能獲得にむかっていく必要があるのかを考えていかないといけないと思われます。

今回は、ベッド上の側臥位から端座位までの動作について神経学的視点から考えていきます。

○起き上がりの各相
 今回は起き上がりを4つの相に分けて考えていきます。

①第一相:開始肢位(側臥位)

 まず、側臥位の状態をパッと見たときに、体幹と骨盤の位置がねじれていたり、肩甲帯が落ち込んでいたり、頭頚部が必要以上に屈曲していたり、肩関節が不安定な状態であった場合、この状態から手を伸ばしたり、体を起こしたりしていくのには必要以上の筋活動を必要とします。このような状態での起き上がりは過剰な努力を要し、効率的な動作が行えません。このような動作遂行では支持基底面であるBOSを感じることは難しく、身体が接地面を介しての固有受容覚的な相互作用を関係づける事がでずに、身体アライメントを調節しにくい状態となってしまいます。
 そもそも、側臥位は背臥位と同様に自分の身体を視覚で確認しづらく、なかなかイメージすることができにくい肢位でもあります。BOSを感じながら身体アライメントを調整することは、他の動作より難しくなってくることを念頭に置く必要があります。つまり、身体図式(ボディースキーマ)として取り込んでいくことも難しくなっています。

以上のことをふまえて、安定した側臥位とはどういうものなのか?、起き上がりにつなげていくための側臥位とはどういうものなのか?を構成要素でまとめると、

・頭頚部、胸郭、骨盤がねじれた位置ではなく、一直線上にある。
・両側肩甲帯が動的に安定している。
・全身の姿勢緊張のバランスがとれている(過剰努力なく、どちらの方向にも動ける状態)
・身体図式(ボディスキーマ)を通して安定性限界を患者が自覚している。
・身体(下側の肩甲帯・体側・骨盤・下肢の外側)とBOSが機能的に接地しており、固有受容感覚でのやり取りができている。

②第二相:運動の開始

 側臥位の状態から、過剰固定を強めることなく、全身の姿勢緊張がニュートラルな状態から運動を開始していきます。効率的な運動を遂行していくには、先行随伴性姿勢調節(APA)を駆動させる運動方略が必要です。ベッド柵を引っ張ったり、下肢の重みを主体に使って起きたりなどの過剰な運動開始方略ではAPAが駆動しにくい状態なのです。
 APAを働かせるためには、BOS上に身体分節をのせていくとよいです。

③第三相:運動の過程

 起き上がりの動作過程では、橋網様体脊髄路を介した、コアスタビリティ(コア筋群)の活性化が重要です。
 コアスタビリティは過剰に活動したり、固定を強めるものではなく、最小限の動きによって動的安定性を生み出し、四肢の自由度を高めるという役割もあります。スムーズな起き上がりの動きの獲得には、適度なコアスタビリティの働きが大切です。

・まず、動作的にはBOSの上に身体分節をのせて、上部体幹の回旋からスタートする場合、上部体幹の前方回旋に伴い、頭部が挙上しながら重心が支持肩から上腕に移動していきます。この時に神経学的障害を持つ方は、上部体幹を前方へ移動することが難しいことが多いです。

・ベッド柵を引っ張りながら体幹、頸部を起こしていく方の場合、全身を過剰に屈曲固定にして起き上がります。この運動パターンではAPAが駆動するよりも先に、赤核脊髄路間室核脊髄路といった経路が働いてしまいます。

・下肢の重みを使って起き上がるパターンを示す方の場合、BOSの変化に関連して運動が遂行されているのではありません。こういった方は延髄網様体路系を介したシステムを利用しています。コアスタビリティの活性化にはつながりにくいです。

④第四相:到達肢位

 到達肢位である端座位ですが、支持面は足底、大腿後面、殿部となり、骨盤・体幹・頭頚部は重力線上にのり、座位姿勢保持のための筋活動は最小限になります。これによって、次の動作への効率的に移れたり、上肢の自由度が高くなります。こういった要素が必要になってきます。

(山岸 茂則:臨床実践 動きのとらえかた  何をみるのか その思考と試行:2012)

脳卒中後の患者さんで端座位exを行う際に、前方への恐怖心が強い場合や、体幹・下肢の緊張が強く、反りかえる傾向が認められることが臨床でよくあります。

原因としては

①股関節屈曲可動域の減少により、座位で骨盤後傾位となり後方へ倒れやすくなる
②脊柱可動域の減少
③腹筋群あるいは股関節屈筋群の活動性低下
④pusher現象により、非麻痺側下肢で床面を蹴ることで後方に倒れやすくなる
⑤前方への恐怖心が強く体幹前傾ができない

以上が主な原因となります。原因は一つとは限らず混在している場合もありますので、十分に評価していきます。

①が原因の場合
股関節屈曲の可動域訓練を行い、最低80°以上の可動域を確保します。座位で骨盤が後傾しないレベルが目標です。

②が原因の場合
脊柱の分節的な動きをエクササイズまたは、徒手的に出していくと良いでしょう。

③が原因の場合
・体幹を後傾させた所から直立位に戻す運動を繰り返していき、腹部の活動性を高め、後方への制動を高めます。
・座位で前方のテーブルの上に上肢をのせ、その上でリーチ動作を行い、股関節屈筋によって体幹前傾を促していくとともに骨盤の前後傾の動きも出していく。

④が原因の場合
pusher現象が原因の場合、座面上を高くして足底を床に接地させないようにして座位を行う。

⑤が原因の場合
・セラピストが患者の前方で介助を行うか、前方に台やテーブルを置き上肢が支持できるようにすると安心感が高まり、後方へ倒れにくくなります。
・また、座位で大腿部上に大きめのボールをのせ、寄りかかるようにして体幹前傾を促していく方法もあります。

以上の項目以外にも、座位でハムストリングスの短縮によって骨盤後傾位となっている事もあるため、座位で両足部を後方に引くことで、ハムストリングスが緩み骨盤前傾が可能となり、体幹伸展することから、重心が前方に移動できるようになることもあります。

(武富由雄、市橋則明:理学療法プログラムデザイン―ケース別アプローチのポイントと実際;2009)

近年リハビリテーションの分野においても、コアスタビリティ、スタビライゼーショントレーニング、スタビリティなどの言葉をよく耳にします。

スタビリティ(スタビライゼーション)とは安定化や固定と訳されます。

トレーニングの用語としてスタビライゼーションとは3つの必要な要素があり、日常生活動作におけるパフォーマンスアップ・けがの予防に重要です。

①関節の回転軸の安定
②関節の固定
③動作の安定

上記の固定を獲得するために、体幹を固定する感覚を養成するためのエクササイズを以下に記します。

Ⅰ:ドローイン
ドローイン ブログ用

ドローインは腹横筋に自分で力を入れることができるようにする筋再教育エクササイズです。基本的な運動になります。

Ⅱ:ドローイン クアドラプト
ドローイン クアドラプト ブログ用

ドローインと同じく腹横筋の収縮を促すエクササイズになります。ドローインをさまざまな姿勢で行えるように、四つ這いやうつ伏せで行います。この方法は、内臓の重さが腹横筋への負荷になります。

Ⅲ:ドローイン アームバイブレーション
ドローイン アームバイブレーション ブログ用

ドローイン アームバイブレーションは腕を動かしながら腹横筋を促通するエクササイズです。

Ⅳ:バックブリッジ
バックブリッジ ブログ用

バックブリッジは、体幹背面の脊柱起立筋や大殿筋メインで働かせて、体幹を固定するエクササイズです。
この時にお尻の上げすぎで腰椎前弯が強くなりすぎると、腰痛の原因になるので注意します。
応用のエクササイズとして、バックブリッジ レッグブリッジがあります。バックブリッジが十分に行えたらこのエクササイズも行うと良いと思われます。

Ⅴ:サイドブリッジ
サイドブリッジ ブログ用

サイドブリッジは体幹側面の腹斜筋群や腰方形筋、脊柱起立筋、中殿筋が働くことで体幹固定を行うエクササイズです。

Ⅵ:フロントブリッジ
フロントブリッジ ブログ用

フロントブリッジは体幹前面の腹直筋や、腸腰筋、大腿直筋が働くエクササイズになります。

また、Ⅳ~Ⅵのトレーニングは安定して行えるようになれば、ドローインした状態で行うと、腹横筋を働かせたままのエクササイズとして行えます。

(石井直方:体幹トレーニング・メソッド コア 本当の鍛え方。:2011)


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パーキンソン病は進行性の疾患であり、一般的には維持的な理学療法が中心となり、身体機能の悪化防止が主たる目的とされています。

①拘縮や変形の防止
②運動障害の改善
③ADL能力の維持

以上の3項目をパーキンソン病に対する理学療法の基本的治療戦略とし、日常生活の活動を維持できるよう、身体運動を積極的に行う必要があります。

まず、パーキンソン病の方には様々な病態があり、それに対して理学療法評価を行っていきます。

以下に理学療法評価の内容と、ポイントを記していきます。

①問診・視診
 発症時期や症状の聴取、重症度分類(ホーエン-ヤールの重症度分類)の予測を行います。
 また、大切なのは薬剤の種類、投与期間や服用時間についていつ何をどのくらいの間飲んでいるかを聞き取りを行います。
 薬剤コントロールの状況を知ることによって、日内変動・日差変動を把握し、訓練の開始時間訓練場所の設定に配慮する必要があります。円滑に運動が行える時間にリハビリを行い、目的とする運動が行えるような環境(手すりの有無や、目印、壁の有無などを考慮した環境)にて臨床では実施していきます。
 また、薬剤の長期投与によって副作用が生じるために、その影響も考慮にいれ、運動は休息を取りながら過負荷にならないような運動を設定していく必要もあります。

以下の図は薬剤長期投与による副作用です。

パーキンソン薬剤長期投与による副作用 ブログ用


②関節可動域テスト
 無動によって動きにくくなっている関節も明記していくことも大切だと思われます。無動によって関節拘縮の起こりやすい部位は特に、肩甲帯、上肢帯、頸部です。この部位は特にROM-exの必要な部位となり、ADL動作につながってくる所だと思います。拘縮予防を十分に行わなくてはいけません。

③MMT
 筋力低下の部位を調べます。重症度のステージが上がるにつれ筋力低下も著明になってきます。

④姿勢アライメント
 特に矢状面でのアライメントの異常についてチェックします。
 典型的なパターンとしては、頸部前弯増強、胸腰椎後弯、肩甲骨内転、肘屈曲、骨盤後傾、股関節屈曲、手指屈曲、膝関節屈曲、足関節底屈を呈する方が多いです。

⑤運動パターン・ADL動作
 起居動作やADL動作全般において動作パターンをチェックし分析を行います。耐久性や持続性、スムースに行えるかどうかもチェックします。
 特に、重症度のステージが上がるにつれ、体軸回旋が減少し、運動開始時に出現しにくい状態にある方が多いです。

⑥歩行分析
 特徴的な歩行(突進歩行、小刻み歩行など)だけでなく、歩行時の手の振り、方向転換、停止した状態、リズムのチェックを行います。

⑦平衡反応、姿勢反射
 保持能力のチェックを行います。

⑧協調性テスト
 遂行能力、安定性をチェックします。

⑨その他
 反射、知覚、言語、心肺機能、高次脳機能など必要に応じて行います。
 自律神経症状では血圧調節障害、排尿・排便障害、睡眠障害などが出現します。
 特にステージの重症な方に多いですが、血圧調節障害のある方は、リハビリの訓練の妨げになることも多く、起立性低血圧の出現によってなかなか離床が進まない事もあります。食事後や睡眠、入浴後などにも影響を受けることもあるために、発生状況を確認し、症状の発生を予防するように検討していかなければいけません。

以上の評価をふまえて、理学療法を実際に行っていきます。

まず、病期によって行う理学療法の訓練内容は変わってきます。

病期における理学療法 ブログ用

以上の図のように、患者さんの状態に合わせて運動療法を選択していきます。

まず、ROM-exですが、初期段階では自己運動が中心となります。全体的な可動域保持を目的に広範囲に訓練を行っていきます。ステージⅢ~Ⅴの方は自動介助・他動運動で行っていきます。特に、拘縮予防・改善を目的に、対象となる関節を実施していきます。

体軸回旋運動においても頸部・体幹の体軸回旋を誘導し、動作獲得につなげていきます。ステージⅠ・Ⅱの方は大きい体動の運動を行い、ステージⅢ~Ⅴの方は各部位での回旋の運動を行い、その後全体的な回旋運動へと進めていきます。

パーキンソン体操の目的は短縮筋の柔軟化(ストレッチの要素が大きいため)、可動性保持、短縮好発部位の予防、重心の再獲得などになります。ステージⅠ~Ⅲの方は主に立位、ステージⅡ~Ⅳの方は座位、ステージⅢ~Ⅴの方は臥位で行います。特に固縮の影響を受けやすい体幹・下肢の抗重力筋は十分に行う必要があります。

筋力訓練については、残存機能の維持・進行予防のために実施します。ステージが重度の方は特に過負荷にならないように注意します。


(細田多穂:中枢神経障害理学療法学テキスト (シンプル理学療法学シリーズ):2014)


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