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臨床を見ていく上で、筋緊張が高くなる現象を多く目の当たりにすると思います。その原因とメカニズムについての知識はセラピストは常に念頭に置く必要があります。

これまで、脳血管障害後の片麻痺による筋緊張亢進(痙性)はγ系の機能亢進によるγ固縮が主な原因と考えられていましたが、近年はむしろγ固縮は少なく、脊髄レベルでの介在ニューロンの変性や、Ⅰa線維の側芽などが原因だと考えられています。

筋緊張亢進の原因 ブログ用

◎筋緊張亢進の原因

<反射性要因>

①γ機能亢進(γ固縮)

通常は、γ線維の中枢部を錐体路が抑制している状態ですが、脳血管障害が生じることによって、錐体路の抑制が取れると解放現象としてγ線維の機能が亢進し、Ⅰa線維を介して筋を緊張させます。

②α機能亢進(α運動ニューロンへの興奮性入力の増大)

γ運動神経を選択的に遮断しても筋緊張が低下しない状態で、上位中枢からα運動線維に対して直接的に促通性の信号を出しているために筋緊張が亢進します。

③筋紡錘受容器の感受性上昇(閾値低下)

固有受容器である筋紡錘そのものの感受性が何らかの原因で異常が生じることで、Ⅰa線維を介して筋緊張を亢進させます。

④Ⅰa終末に対するシナプス前抑制の減少

Ⅰa線維の終末には抑制性の介在ニューロンがシナプスを形成していますが、その抑制が減少することによって筋緊張が亢進します。

⑤Ⅰa線維の発芽現象

Ⅰa線維は前角細胞に対して促通性にシナプスを形成していますが、その終末部から側芽線維が発芽し、さらに前角細胞を促通するため筋緊張が亢進します。

⑥シナプス後膜の感受性増大

α運動ニューロンの起始部の膜が興奮しやすい状態になっています。

⑦介在ニューロンの協調性低下(機能亢進)

介在ニューロンの促通性のものが優位になり、α運動ニューロンを興奮させ、筋緊張が亢進します。

⑧α運動ニューロンへの抑制性入力の減少

<非反射性要因>

筋の構成要素

①アクチンとミオシンによる収縮要素

②筋・筋膜・腱などの弾性要素
⇒直列弾性要素(SEC)
⇒並列弾性要素(PEC)

(丸山 仁司:PT、OTなら知っておきたい病気のこと:2010)


(潮見 泰蔵:脳卒中に対する標準的理学療法介入―何を考え、どう進めるか?:2007)

肩甲骨は上肢の動きや、体幹の動きに連動して動いています。肩甲骨の運動に働く筋の活動と、それに拮抗している筋の問題点を見つけていかねばなりません。

肩甲骨の運動と筋活動(挙上・下制) ブログ用

肩甲骨挙上時にメインで働く筋:僧帽筋上部線維、肩甲挙筋、菱形筋

肩甲骨下制時にメインで働く筋:前鋸筋、僧帽筋下部線維

肩甲骨の運動と筋活動(内転・外転) ブログ用

肩甲骨内転時にメインで働く筋:僧帽筋上部・中部・下部線維、菱形筋

肩甲骨外転時にメインで働く筋:前鋸筋

肩甲骨の運動と筋活動(上方回旋・下方回旋) ブログ用

肩甲骨上方回旋時にメインで働く筋:僧帽筋上部・下部線維、前鋸筋

肩甲骨下方回旋時にメインで働く筋:肩甲挙筋、菱形筋

(嶋田 智明:実践mook・理学療法プラクティス 脊柱機能の臨床的重要性と上下肢との連関:2011)


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学習段階とそれに応じた介入の方法 ブログ用

一般的に運動学習の段階としては、

①認知段階(cognitive stage):「何をするのか」
②連合段階(associative stage):「どうやって行うか」
③自動化段階(autonomous stage):「いかにうまくやるか」

の3段階に分かれます。

患者さんが訓練を開始し、自分の運動がうまくいっているかどうかのより所とするものの1つに、フィードバックがあり、大きく2つに分けられます。

外在的フィードバック:患者さんの外部から与えられるフィードバック

内在的フィードバック:患者さん自身が運動して得られる視覚、聴覚、触覚、固有感覚などによるフィードバック

また、外在的フィードバックはさらに2つに分けられます。

結果の知識(KR:knowledge of results)
例:立ち上がりが成功したかどうかの結果の情報や、歩行のタイムを計測した時の結果の情報、また、起き上がりが介助なしでできた時、歩行が介助なしでできた時、「今、介助なしでできましたね。」という声掛けを患者さんにしたとすると、これもKRとなります。

パフォーマンスの知識(KP:knowledge of performance)
例:歩行時につま先が下がっている状態の時に、「つま先が下がっていますよ」という声掛けや、立ち上がりの時に「もう少しおじぎを深くして立ち上がりましょう」という指導はKPの情報です。また、自分の運動をビデオで撮影しておいて、後から見るというのもKPの一つです。

練習の組み方として、分散法集中法一定練習多様練習があります。

分散法:休憩を長くとる、もしくは頻回に休憩をとる事です。

集中法:訓練試行間の休憩をかなり短くする事です。

一定練習:1つの課題に関して単一のパターンで行う練習の事です。

多様練習:様々なバリエーションを含む練習の事です。

以上の事からまとめると、訓練中に行う運動課題の方向性としては、

①認知段階
この段階では、運動課題を十分に理解し、動機づけを持続させるように注意します。つまり、この段階では教示やハンドリングはすごく重要になってきます。また、身体を使わないで運動をイメージさせながら行うメンタル・プラクティスもこの時期には有効です。

②連合段階
この段階は認知段階で理解した運動課題を修正しながら、一貫したものに仕上げていく段階です。この段階はエラーもだんだん少なくなってきているので、安定して効率の良い運動が行えるようにしていきます。外在的フィードバックは徐々に減らしていきます。内在的フィードバックも視覚から少しずつ固有感覚へと移行していきます。また、この段階から異なる環境下においても、自分で調整・修正を加えて、課題を解決する能力を習得していきます。

③自動化段階
この段階の外在的フィードバックは、明らかに間違えているような時に行い、原則的にはフィードバックは与えません。課題は、さまざまな環境や課題のバリエーションを試みていきます。動作課題の速度、距離、複雑さを加えて難易度を上げていきます。課題は患者さんが関心度が高いものが良いとされます。この段階は、患者さんの自己管理能力はかなり進歩している様な状態です。患者さんに自分でどんどん動いてもらうようにしていくのが良いでしょう。

(柳澤 健:運動療法学 改訂第2版:2011)


(中山 孝:理学療法基礎治療学〈1〉運動療法―コアカリ準拠 (ビジュアルレクチャー):2012)


歩く姿

リハビリテーションの現場において、患者さんの目指すべき獲得動作レベルは、ただ単に障害物のない平らな床の上を、まっすぐ歩く屋内歩行だけを目指しているのではありません。

実際の自宅環境は、床に物が置いてあったり、座布団の上を歩いたり、狭い廊下を通ったり、家の人に呼びとめられて振り返ったり、電話に出るために急いで電話の所まで行ったり、物を持ちながら歩く必要もあるでしょう。

こういった日常生活における歩行の実用性を獲得するために、患者さんが様々な環境や動作の流れの中で効率的な動作遂行の学習が必要になります。

様々なバリエーションの条件の中で反復練習を行い、課題に対する処理能力を高める事が重要です。

①歩行中に急に停止する
②歩行中に急に呼びとめ、その方向に振り返させる
③異なる速度(できるだけ早く、通常の速さで、できるだけゆっくりと)歩く
④障害物をよける、スラローム歩行、またぐ
⑤目の前を人が横切る
⑥柔らかな床材の上を歩く
⑦片手に物を持って歩く
⑧人の往来の激しい場所で(人を避けながら)歩く


以上の歩行課題をそれぞれ行ったり、複数を同時に行ったりしていきます。

(潮見 泰蔵:脳障害後の機能回復と運動学習:理学療法科学:2006)


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ADL動作において、体幹を回旋して後ろへ振り返る動作はよくあると思います。こういった回旋を伴う動作は不安定となりやすく、臨床においては転倒のリスクにつながりやすいです。

日常生活において、洗濯物を持って後ろへ置こうと思った時、キッチンで作業していて後ろのテーブルに料理を置こうと思った時、後ろから名前を呼ばれて振り返る時、また着座の際に後ろを確認する時も体幹の回旋が生じます。

後方に振り返る際の筋活動2 ブログ用

上図は健常人が水平面にて、全身を右回旋した場合に生じる頭頚部・体幹・股関節周囲筋の活動パターンです。

振り返り時に特に不安定性となりやすい場合は、これらの筋活動の評価を行い、活動を上げる治療が必要になると考えられます。

(Donald A.Neumann:筋骨格系のキネシオロジー―カラー版:2012)


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高齢者を始め若い方でも、脳卒中後遺症や整形疾患など、さまざまな障害により、自宅内移動時にバランスを崩したり、転倒のリスクが生じる場合があります。

特に、階段昇降時や敷居を跨ぐ際、前にかがんだり車椅子への移乗の時などにつかまる物が必要となりやすいです。

そういう場合に「手すり」の設置は動作を安定して行え、安全に生活ができる住環境整備の一つの手段です。

◎手すりの形状

基本は円形の手すりですが、手指に障害のある方や、関節リウマチの方の場合、手すりを握りこむ事が困難になるために上部が平坦な面の平手すりを使用するのが良いとされています。この平手すりは肘や上腕部をのせて使用します。

◎手すりの直径

階段や廊下で使う手すりの場合は、直径は36~40mm程度が望ましいとされます。これは、手すりに手を滑らせながら軽く握りながら移動する使用方法であるため、ある程度の太さがある方が、安心感があるためです。

トイレや浴室で使用する手すりの場合は、直径は28~33mm程度が望ましいとされます。これは、使用する際にしっかりと握りこんで、親指と中指が軽く重なる程度の細さの方が安心感があるためです。

◎手すりの材質

廊下や階段、トイレで使用する際の手すりの材質は、握りこんだときに冷感を感じさせない、木製あるいは合成樹脂製のものが望ましいとされます。

浴室で使用する手すりの場合は、耐水性が求められるために、合成樹脂製のものが基本となります。

また、屋外で使用する手すりは、様々な天候に耐えられる素材である必要がありますが、金属製の場合は夏季の日照りによって熱くなりやすいため、表面を樹脂被覆した製品を選択する必要があります。

◎手すりの色

手すりの色は周囲の壁の色と上手く調和させながらも、簡単に見分けがつく色にしなければいけません。バランスを崩した時にとっさに目で見て確認して把持しやすい物でないといけないからです。

手すりの取り付けの位置 ブログ用

◎手すりの取り付けの位置

手すりを取り付ける際の基本の高さは、床面から上端までが750~800mmとなりますが、もちろん患者さんの身長や、身体状況の応じて高さは設定していきます。

リウマチの方などの場合の平手すりの時は、肘や上腕部をのせて使用していくため、基本は床から平手すりの上端までが850~900mmの高さとなります。

また、手すりの壁からの出幅は、手すりを握った時に手掌が壁に当たらないよう、30~50mmあけるのが基本です。

さらに、階段の手すり取り付けにおいて、建築基準法上750mm以上の幅員が必要で、手すり全体の幅が100mm超えないよう、通行の妨げにならないよう気をつけなければいけません。

◎手すりの取り付けの実際

壁下地がせっこうボードの場合、その上から直接手すりを取り付ける事は、強度上不可能です。

通常の住宅で、浴室以外の壁下地はほとんどせっこうボードであるため、方法としては、柱や間柱を利用して補強板を取り付け、その上から手すりを取り付ける必要があります。

(野村 歡,橋本 美芽:OT・PTのための住環境整備論:2012)


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姿勢鏡

身体図式(body schema)身体イメージ(body image)について、耳にされた事があるかと思います。いわゆるボディースキーマボディーイメージですね。

臨床において、体幹や頸部の側屈を修正した際に患者さんが、「ここがまっすぐですか?分からんもんですねぇ。自分はもっとこっちがまっすぐだと思っていました。」などという発言を聞いたことありませんか?

この状態は、例えば長年の不良姿勢の蓄積によって、筋・筋膜の長さや歪みとして体幹側屈などの変化が生じ、身体図式も同じように歪んできてしまっている状態です。一方、身体イメージは意識的なものなので、客観的に体幹側屈している人でも、本人は体幹がまっすぐ伸びていると思い込んでいる状態です。

①身体図式

身体図式という概念は1911年にイギリスの神経学者のSir Henry HeadとGordon Holnesによって提唱されています。

Headによると、身体図式は「自分の身体の姿勢や動きを制御する際にダイナミックに働く無意識のプロセス」と定義しています。

普段我々は日常生活を行う時に、関節の角度や筋出力、床反力や位置関係を意識することはありません。これらを意識して動作をしようとすると我々の脳はパンクしてしまいます。このような身体に関するフィードバック情報は頭頂葉にて統合されてできたものが身体図式です。

この機能があるために、普段の動作にてその時々の身体の状況を意識しなくても、無意識的に動作が滑らかに遂行できるのです。

身体図式の機能局在は前頭-頭頂連間にあるとされています。

詳しく言うと、身体図式の生成は、体性感覚情報背側経路からの視覚情報運動野からの遠心性コピー(※ちなみに、運動制御において運動の指令は運動野に送られるだけでなく、その信号のコピーが感覚野にかえってくると考えられています。これを運動野からの遠心性コピーと言います。)などの情報が集まり、それらが統合される頭頂間溝で行われます。

身体図式はヒトの成長に合わせて変化し続け、成人になってからもケガや関節変形にて変化する感覚情報にてリアルタイムに更新し続けています。

つまり、臨床において我々セラピストが患者さんに触れること、つまり感覚入力を促し、身体図式を経由して運動を変化させていくことが必要になります。

例えば、動作時に固定部位がある部分に存在すると、動作時はそこは動かない部位になるので、身体図式も「動かないものだ」とそのようになってしまいます。つまり、歩行時に二―ブレイスを膝に巻いた状態で歩こうとすると、足が振り出せないので、体幹を側屈させたり、骨盤を挙上させてあるこうとすると思います。これが続くと、膝が曲がらないという身体図式になってしまうのです。

②身体イメージ

身体イメージは、オーストラリア系アメリカ人の神経学者Paull Schilderが1935年に導入した用語です。

身体イメージは、「自分自身の身体について意識的にもつ表象」と定義されています。

つまり、「自分はこうあるはずだ」という印象をつくりだしていて、それは何かの情報を得る時の予測になります。

脳卒中の方においては、「自分はこうあるはずだ」という予測と思い込みによって、新たな視点で物事を見ることができなくなってしまい、片麻痺患者さんが感じている現実は、実際の現実とかけ離れている可能性があります。

例えば、脳卒中の初期に麻痺側の異常な重量感や、麻痺側を動かす際によりどころのなさなど今まで経験したことのないような感じのことです。この時、非麻痺側は正常と感じ、非麻痺側に依存した非対称的な姿勢をとりやすくなるのです。

患者さんの非対称的な状態をセラピストが他動的に修正しても、感覚情報に対して身体イメージが感覚入力を歪めてしまっているので、患者さんは「これはおかしい。まっすぐではない。」という感じを受けてしまうのです。

このような状態にしないためにも、臨床においてセラピストは急性期の段階から麻痺側からの体性感覚や前庭感覚や視覚からの入力を十分に行い、身体図式にアクセスしながら、正しい身体イメージに導いていく必要があります。

身体イメージの機能局在は左側頭葉にあると言われていますが、いろいろな考えがあります。

脳卒中の方だけでなく、摂食障害の方も身体イメージが歪んでおり、鏡に映った自分は実際には痩せているのに、身体イメージによる視覚情報の歪みにより自分はまだ太っているように感じるという方もおられます。

(舟波 真一、山岸 茂則:運動の成り立ちとは何か―理学療法・作業療法のためのBiNI Approach:2014)


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