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読書 女性

○臨床思考の過程をポイントにまとめた本



臨床実習フィールドガイド:2014

2014年に第二版に改訂されました。

臨床でよく遭遇するであろう疾患(疾患・病態44項目)をメインにまとめられており、それぞれの問題点をICFに対応させて、提示されています。

この参考書は、臨床実習が始まるまでに全体的に目を通してイメージを膨らませ、実習期間はレポート作成の手元に置いておくことで、次に何をしたらよいかを考える手がかりにしていける有用な本です。

様々な著名な先生によって執筆されており、内容は信頼できる一冊となっております。

臨床で考える上での重要なポイントが記されているため、これを参考にしながら臨床実習において、見学中や見学後に「○○は○○だと思うのですが、○○については、先生はどのようにお考えですか?」という質問ができると思います。

こういった積み重ねによって、臨床での経験を増やしていける、きっかけになる非常に良い参考書ではないでしょうか。

特に、実習中患者様の見学について、「何をポイントとして見ていけば良いか分からない」という方は特に繰り返して見ていくべき必携の書となると思われます。

分厚くて持ち歩く事はできませんが、実習が始まるまでには読んでおきたい本です。

○評価の過程を分かりやすくまとめた本



3日間で行う理学療法臨床評価プランニング:2013

評価の過程・ノウハウが非常に分かりやすく書かれている本です。ICFに問題点を上げていくプロセスが、臨床上よく遭遇する10疾患書かれています。

内容は見やすく、最初の評価開始から、どのように考えていけばよいかイラスト付きで書かれています。

評価手順としては、この評価をしたから次はこの評価をするという単純な作業ではなく、この動きを見ながら「次はあの検査が必要かな」と考慮しながら平行して別の検査も行っていくという、臨床経験が長い方は当たり前に行えるようになる思考プロセスを分かりやすくまとめた非常に面白い参考書です。

これは、評価を行う前に必ず読んでもらいたい本です。

○データをもとに根拠を提示していくための本



はじめての臨床 脳血管障害―理学療法スタートライン:2010

「はじめての~」とありますが、内容的にはデータの提示もされており、非常に興味深い本です。

評価は行えたが、この後どのように考えたら良いのだろう。何を根拠に問題点を進めていけば良いのだろう。

こういった誰もが直面する、疑問やつまづきに対応できる非常に良い参考書です。

評価に入る前の基礎的な知識から、方向性までレポート作成時に頼りになる一冊です。

この本は脳血管障害についてまとめられていますが、運動器疾患のバージョンもあります。

○実習のノウハウを分かりやすくまとめた本



理学療法 臨床実習サポートブック レポート作成に役立つ素材データ付:2015

一言で言うと、もの凄く分かりやすく実践的です。安いですし、一冊持って損は無いと思います。

実習が始まる前までに何を準備しておけば良いのか、またデイリーノートや症例レポートはどのように書けばよいのか詳細に書かれています。

薬剤や論文検索、家屋調査、実習指導者とのコミュニケーションの取り方・・・こんな事もあるのかと改めて気付かされます。

知っている事から、知らない事までマンガを交えながら、実習開始までにイメージを膨らませやすい一冊です。

○症例レポートの書き方の参考になる本



PT症例レポート赤ペン添削 ビフォー&アフター:2016

症例を担当する事になったが、どのようにレポートを書いていいか分からない!どんな風にまとめていくかイメージがつかない!

そんな学生には最適な一冊だと思います。ビフォーアフターでどのような所を注意して書かないといけないのか、どのようにしたらレポート見る側が分かりやすくなるかが詳細に書いてあります。

レポートの書き方も学べますが、考え方や疾患の理解にもなるので、実習中は手元にあると役立つ事間違いなしですね。

実習で出会うであろう症例が一通り載っています。

○基本的な考え方が非常に分かりやすく記されている本



PT・OTのための 臨床実習で役立つリハビリテーション基本実技 PT版:2016

まずこの本は読みやすいです。実習中、基本的な実技に入る前に、本当にこれで良かったかなとこの本を見直してみてください。

意外と知らなかった事もたくさん書いてあります。

イラスト付きで読むのに全く苦労はしません。分かりやすく書いてあります。

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歩行分析・動作分析・姿勢分析のためのオススメ参考書

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天気と痛み ブログ用

臨床の現場で良く耳にする訴えとして、「天気が悪くなると痛みが強くなる」という訴えや、「雨が降るとなんとなく調子が悪い」という訴えがあります。

実際には、雨が降っている最中よりも、雨が降る前に、特に調子が悪くなる傾向にあります。

これには気圧の変化が影響しているのです。

低気圧が近づくと、気圧が徐々に下がってきて、雨が降ります。この時に気圧が下がった際に、耳の中にある内耳のセンサーがそれを感知し、視床下部を通じて交感神経活動が亢進します。

交感神経の活動の亢進によって、神経末端からノルアドレナリンと呼ばれる物質が血中に放出され、痛みを感じる神経や、一部の侵害受容器を刺激します。

さらに、ノルアドレナリンは血管収縮に関わったり、血液中のマクロファージや肥満細胞を活性化させ、ヒスタミンやTNFαと呼ばれる物質を放出し、痛みを感じる神経を刺激します。

また、副腎皮質の活動を亢進させ、アドレナリンを分泌することによって痛みを感じる神経を刺激します。

こういった以上のメカニズムによって、天気が悪くなる時に痛みの程度が強くなる方がおられます。

(伊藤 和憲:図解入門 よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ (How‐nual Visual Guide Book):2011)

大殿筋 1

大殿筋は臨床上、非常に重要な役割を果たし、抗重力筋として姿勢保持にも作用するとともに、萎縮の起こりやすい筋の一つでもあります。今一度、大殿筋の機能とその促通方法まで記したいと思います。

起始:仙骨後面側方、腸骨翼後殿筋線の後方、胸腰筋膜と仙結節靱帯

停止:殿筋粗面、腸脛靱帯

神経支配:下殿神経

作用:股関節伸展と外旋、上部筋束は股関節外転、下部筋束は股関節内転に作用する

と教科書的には記されています。

実際に超音波にて大殿筋の収縮動態を確認すると、次の様な事が分かりました。

○大殿筋上部線維は、股関節伸展・外転運動に伴い、内側に移動する。

○大殿筋中部線維は、股関節伸展運動に伴い外側へ移動する。

○大殿筋下部線維は、股関節伸展・内転運動に伴い、上方に移動する。

では、この収縮動態をもとに、運動療法はどのようにしていくのが良いかというと・・・

大殿筋全体的に賦活したい場合は、単純に股関節伸展運動で良いかとは思いますが、特に大殿筋上部線維の場合は、股関節伸展・外転運動を行い、それに伴い徒手的に筋腹を内側にアシストすることで、さらに収縮を強調できます。また、大殿筋下部線維の場合は、股関節伸展・内転運動に加え、徒手的に筋腹を上方にアシストすることでさらに収縮を強調することができます。

(工藤 慎太郎:運動療法の「なぜ?」がわかる超音波解剖 [Web動画付]:2014)


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Functional Reach(FR):機能的上肢到達検査は、現在臨床の場面で多用されていると思われます。バランスを計測するパフォーマンスに基づく検査として開発されました。

Functional Reachの基準値については以下の通りです。

年齢:20~40   男性:42.4±4.8cm、女性:37.1±5.6cm
年齢:41~69   男性:37.8±5.6cm、女性:35.1±5.6cm
年齢:70~97   男性:33.5±4.1cm、女性:26.7±8.9cm

以上のように報告されています。

また、カットオフ値として、到達距離が15.3cm未満で転倒の危険が高くなるとされています。

(内山 靖:臨床評価指標入門―適用と解釈のポイント:2003)



また、Functional Reachの測定結果と歩行能力の関連として以下の報告もあります。

functional+reachと歩行能力 ブログ用

(望月 久:Functional Reach Testと前後方向重心移動能力および歩行能力との関連性:東京都衛星局学会誌:2000)



FRTの年齢別の基準値としては、以下のように言われています。

年齢:20~40歳  基準値:35~43cm
年齢:41~69歳  基準値:33~40cm
年齢:70~87歳  基準値:25~33cm

(田口 孝行:理学療法 (Vol.29 No.4) 特集 バランス障害の理学療法 2012 年 4 月号:メディカルプレス:2012)

トップダウン評価 ブログ用

上図は、左片麻痺の患者様におけるトップダウンでの評価時の関連図の例です。

患者様の個々の病態像は異なるため、様々な関連図の描き方があると思われますが、「屋内歩行実用性の低下」が挙げられるとすると、そこからimpairmentレベルまで落としこんでいきます。

(大沼 俊博、藤本 将志、赤松 圭介、渡邊 裕文、鈴木 俊明:感覚検査における臨床的観点からのひと工夫:関西理学療法:2012)

ストレッチショートニングサイクル(stretch shortening cycle:SSC:伸張-短縮サイクル)とはよく聞きますが、一体何なのでしょうか?

ストレッチショートニングサイクルとは、強くかつ速く伸張された筋(腱)がその弾性エネルギーと筋内の受容器である筋紡錘の伸張反射作用により、直後に強くかつ早く短縮される機能であるとされます。

分かりやすく言うと、立位で膝を伸ばしたままジャンプしたり、膝は曲げて静止した状態でジャンプするよりも、膝を伸ばした状態から、素早く曲げて反動をつけてジャンプした方が高く跳べますよね?

これは、跳ぶ直前にしゃがみ込んで膝を曲げる事によって、ヒラメ筋や大腿四頭筋が引き伸ばされます。それと同時に筋が引き伸ばされる事に耐えようとするため、両端の腱が引き伸ばされて弾性エネルギーとして力を蓄えます。そして、しゃがみ込みから跳び上がる瞬間に筋の収縮力に加えて、腱の弾性エネルギーが解放されることで、全体として大きな力を得る事ができ、より高く跳ぶことができるのです。

脳から筋出力の指令が出てから、最大の筋力を発揮するまでにはわずかではありますが、時間がかかります。必要な動作場面において筋発揮が間に合わない状態になってしまいます。その点、SSCは動作を始める段階ですでに筋収縮が始まっていますので、しっかりと必要な場面で筋発揮ができるようになるのです。

日常的な場面においても、こういったSSCのメカニズムが発揮されるのに必要な場面があるのではないかと考えられます。例えば、電話が鳴って急いで駆け足で電話の所へ行ったり、横断歩道で赤になりそうなので、小走りになるとか、急ぎの用事があり駆け足で階段を上る場面など、速度変化に応じて我々はこのSSCの機能を用いているのではないかと思います。

歩行時において、歩行速度が上がってきた際にはストレッチショートニングサイクル(SSC)が、ターミナルスタンス(Tst)での足関節背屈運動により、下腿三頭筋-アキレス腱に弾性エネルギーが蓄積され、プレスイング(Psw)で解放されることによって発揮されます。

臨床の場面において、ただ単に筋力を上げる事で安定性を上げていくのではなく、SSCの機能も発揮できるように速度変化に対応できる動作能力の向上も、実用性獲得に重要なのではと考えられます。

ストレッチショートニングサイクル(SSC)を利用したトレーニングをプライオメトリクスと呼びます。

プライオメトリクスの例としては、下肢のエクササイズではジャンプ動作や、片脚ホッピング、ラテラルバウンドなど連続した反動をつける運動となります。上肢のエクササイズでは、ボールを用いたチェストパスや、壁を用いたバウンド、四つ這いでのバウンドの運動などがあります。必要に応じて難易度を上げていきます。

(市橋 則明:運動療法学―障害別アプローチの理論と実際:2014)


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臨床において、端座位で側方重心移動(ウエイトシフト)が十分に行える事は、動作獲得において重要な要素と言えます。端座位でのリーチ動作においても、重心移動に伴う腹部や股関節周囲の筋機能を評価し、それに対するアプローチを考える事は、理学療法士としては必要な事だと思われます。

まず、側方重心移動における股関節周囲の筋活動ですが、以下の図のような活動変化を呈します。

端座位でのウエイトシフトの筋活動・股関節周囲 ブログ用

重心の側方移動に伴い、骨盤は側方傾斜を生じます。この側方傾斜を生じさせるのには、移動側の骨盤の下制を促す働きが必要であり、下制を促すためには移動側の股関節の内旋・外転を有する、移動側中殿筋および大腿筋膜張筋と、股関節外転作用を有する移動側大殿筋上部線維の筋活動が重要であると考えられています。

高齢者の場合、股関節に内旋の可動域制限や、体幹の可動域制限があり、そういった機能障害を有する患者様の場合は骨盤傾斜の程度にも影響が出てくるため、チェックが必要です。

重心移動を始めると、移動側の骨盤下制を生じさせるために、股関節内旋の作用をもつ中殿筋・大腿筋膜張筋が求心的に働きます。この活動が移動側の荷重量85%まで徐々に増加していきますが、荷重量90%以降では中殿筋・大腿筋膜張筋の活動は低下していきます。これは、坐骨結節によって構成される支持基底面(BOS)が側方の重心移動により、保持が限界となって、大腿骨の外側部に支持基底面を広げ、そのことによって自律的な骨盤下制が生じるために、股関節内旋の働きが必要なくなったためだと考えられます。

骨盤の側方傾斜を生じさせるために股関節の外転の作用という事に関しても、中殿筋・大腿筋膜張筋・大殿筋上部線維も重要です。

そもそも、大殿筋といえば外旋作用じゃないか!と思いますが、端座位姿勢は股関節90°屈曲した姿勢であり、この肢位での大殿筋上部線維は股関節内旋の作用があるのです。

以上の事を踏まえて、側方へ重心移動をする際には股関節周囲においては中殿筋・大腿筋膜張筋・大殿筋上部線維の筋活動が生じており、中殿筋・大腿筋膜張筋の働きを促すためには荷重量85%までの所で側方体重移動保持をしていく課題の方が効果的なのではないかと考慮しながら、運動療法を行っていくことが重要だと思われます。

(池田 幸司、大沼 俊博、渡邊 裕文、藤本 将志、赤松 圭介、鈴木 俊明:端座位での側方体重移動時における移動側中殿筋・大腿筋膜張筋・大殿筋上部線維の筋電図積分値:理学療法科学:2014)



(関西理学療法学会:The Center of the Body -体幹機能の謎を探る- 第4版:2013)


活動時のエネルギー消費の指標には酸素摂取量が用いられますが、測定機器はトレッドミルや自転車エルゴメーターを用いなくてはならず、室内での測定に限られます。そのために、小児や歩行障害のある方には測定が難しいために、1979年に、MacGregorが日常生活に準じた状態での、身体活動に伴う生理的なコストを測定する方法として、PCIを提唱しました。

この評価の対象者としては、持続した歩行が可能で、心拍数の測定ができる方であれば、誰でも適応です。

PCIの算出方法は、以下の式です。

PCI算出 ブログ用

PCIの明確な基準値は示されておりませんが、MacGregorの報告では、健常成人の場合、0.11~0.51(beats/m)であったとしています。

以下の表は、年齢区分によるPCIの報告値です。

PCI基準値 ブログ用

PCIの情報特性として、PCIが低いほど単位歩行距離あたりのエネルギー消費が低い事を示し、このことはエネルギー消費の側面からみた歩行の効率が高い事を意味します。

求める方法として、MacGregorの方法では、8の字の歩行路を200m歩く事によって求めていますが、実際の諸家の報告では、あらかじめ設定した時間を歩いて距離を求める方法が多く、そのほとんどが3~5分を採用しています。

測定にあたって注意すべきポイントとしては、心拍数は自律神経系の影響を受けるので、精神的な緊張や、室温の程度、薬剤投与などによる影響も考慮します。また、初めての歩行路では、慣れていないという面もありますので、あらかじめ練習をしてからが望ましいと思われます。

測定後のPCIの結果をもとに、数値の変化をみる事で、経過や治療効果を判断できる点があります。また、屋外歩行の実用群と非実用群を判別する因子としても有用性が高いことが報告されています。

(内山 靖、小林 武、潮見 泰蔵:臨床評価指標入門―適用と解釈のポイント:2003)

脳

脳卒中後の患者様で、パソコンあるいはシャーカステンを用い、情報収集した際、CTあるいはMRIなどで確認すると出血、梗塞部位が前頭葉に及んでいる場合、臨床上でどのようなケアの仕方を心掛ければ良いのでしょうか?

前頭葉症状に対するケアの実践は、看護師や介護士だけの仕事ではなく、理学療法士をはじめとするリハビリテーションスタッフも常に念頭におき、臨床にて実践していかなければなりません。

そもそも、前頭葉は外側面、内側面、底面から成り立ち、右半球、左半球、両側の組み合わせから把握していくことが大切です。

まず、CT、MRI上などで前頭葉の病巣が確認できた場合には、まずその方が、全体的に自分から行おうとする意欲が低下し、外に向かって働きかける力が弱まった状態になっている事を想定します。

つまり、自発性の低下や、発動性の低下です。

一方で、脳外傷などで底面の損傷がある場合は、逆に抑制が外れた状態となります。これは、感情やコントロールの低下によって病棟をウロウロ歩き回る、些細なことで怒りやすくなったり、場合によっては暴力をふるうような状態です。

次に、右と左の違いですが、左脳の前頭葉の障害では言葉の表出が、また、右脳の前頭葉の障害では自ら進んで行為や動作を表出することが苦手になります。

以上を踏まえ、一般的に前頭葉に病巣がある患者様のケアを行う場合は、まずは自発性の低下や発動性の低下の問題を念頭に置き、その自発性・発動性をなんとかアップするような働きかけが必要となります。そのためには、その基盤である情動系への刺激が必要になります。

一方で、抑制が外れた患者様の場合は、声のトーンを小さくしたり、患者様との距離をとったりと刺激量を考慮していきます。

次に、症状別の具体的なケアについてです。

○無動無言症

特に、両側の前頭葉内側の急性期の病巣においては、自らの発語がほとんどなく、目を見開いたままじっとしており、呼びかけに対しても反応が乏しい「お地蔵さん」のような状態です。

こういった方は、前頭葉の抑制によって情動系に強いブレーキがかかっている状態であり、ケアのポイントとしては本人の感情・行動を引き出してあげる事となります。例えば、家族からの情報を元に、昔の懐かしい時代に関連した写真や音楽を提示してあげたり、親しい人の声や映像の録音など、情動系に働きかける物を早期から提示して、患者様の抑制を外していく作業が大切となります。

こうすることによって、患者様が自分の言葉、行為、感情を表出できるようになります。

○自発性の欠如

右や左の前頭葉(特に内側)の病巣においては、自発性が低下する症状が見られます。以前は元気ですごくおしゃべりだったという情報があるのに、脳卒中後は覇気がなくなり、自分から積極的に話したり行動することがなくなった場合、この症状です。

こういった方は、用事のある時でも自分でナースコールを押すことがなく、訴えの表出に気付きにくい事が多くなります。

ケアのポイントとしては、気づきにくい訴えの1つ1つに目を向け、何を思っているのか、何がしたいのかを注意深く観察していくことが重要となります。

例えば病棟でも、ベッド上で座位になっているとか、柵を外そうとしている行動などから、トイレの訴えなのか、喉の渇きの訴えなのか、家族に関する事であるのか、行動の1つ1つに注意を向けていきます。こういった事で問題点を解決し、転倒・転落を防いでいく必要があります。

○強制把握

左および右の前頭葉の病巣(とくに急性期)においては、麻痺側の手に物が触れたとともに、手でつかんで離さないという現象を目にします。

ケアのポイントとして、つかんだ手を無理やり取ろうとしても、余計につかまれるので、力ずくにやるのではなく、つかんでいない方の手をつかんでいる手にそっと持っていき、つかんでいる手から別の手に注意を向けさせることで、つかんでいる手を緩ませます。

臨床においては、車椅子移乗の際にベッド柵をつかんで、その手を離さない様な例を見かけます。こういった時も無理やりつかんだ手を離すのではなく、もう一方の手に注意を向けさせることで、ゆっくり離して頂きます。

強制把握の手に直接バイブレーターなどによる振動刺激を与える方法で、筋緊張を低下させる方法もあります。

○保続

左や右の前頭葉の障害の急性期においては、ある行為や発話を始めると、同じ言動や行為をずっと繰り返すような現象が見られたりします。

ケアのポイントとして、こういった症状は脳がいっぱいいっぱいな状態であり、ある意味では脳に疲労がたまった状態で、少し休憩をはさんでから、次の行為の指示を与えるようにすることが望ましいと考えられています。

○ブローカ失語

画像上において、左の前頭葉の下前頭回後部を中心とした広範囲な病巣では、理解は保たれていますが、発語はたどたどしく、なかなか上手く言葉が出にくい症状である、ブローカ失語が見られる場合があります。

こういった方のケアのポイントとしては、「体に関すること」「睡眠に関すること」「食事に関すること」「排泄に関すること」などの領域を提示し、「はい」「いいえ」で答えながら、話の内容を徐々に絞っていく工夫が必要になります。

○発語失行

左の前頭葉(とくに中心前回や中心後回の下部)の病巣においては、発語失行が見られることがあります。

発音の症状としては、「おはようございます」が「おぎゃぎょうおあいあう」のように歪んだ発音になります。

この症状は単独で現れる事もありますが、ブローカ失語に合併することもあります。

ケアのポイントとしては、この症状が単独で現れている場合、理解力に問題ありませんので、落ち着いて聞き取ってみます。発話が分かりにくい場合は、筆談も有効です。

○遂行機能障害

左や右の前頭葉の外側面の病巣においては、我々が日常的に行っている「計画-実行-反省-修正-再実行」のサイクルが行えない症状が出てくることがあります。

ケアのポイントしては、言語の障害がない場合は、自分が行おうとする行動は言葉に出し、繰り返し言わせることが重要です。リハビリ時間や、入浴時間、食事、検査、診察などのスケジュール表を作成して、ベッドサイドの目の届くところに置くと良いです。また、服薬の自己管理が難しい場合がありますので、看護師が症状の程度によって、必要に応じて管理します。

○運動維持困難

右の前頭葉の病巣において、「目を閉じたままでいてください」とか、「口を開けたままでいてください」という口頭指示に対しても動作を維持することができずに、すぐ目を開いたり、口を閉じたりしてしまう症状です。

臨床上見逃しやすいですが、右の中大脳動脈領域の梗塞においては、約2/3で出現すると言われています。

ケアのポイントしては、看護師・介護士が剃毛や爪切りの時に怪我させないように気をつけることと、動作指示の与え方として、一つの動作に対して一つにするなど、複雑にしないように心がけることです。

○作業記憶の障害

左や右の前頭葉(とくに外側面)の病巣においては、必要な情報を記憶として一時的に保持し、再利用する事ができなくなる症状があります。いわゆるワーキングメモリーです。

ケアのポイントとしては、口頭指示の出し方も同時に2つ以上の指示は避け、1つの指示をだし、それが終わったら次の指示を出していくような工夫をします。

○尿失禁

まず、左や右の前頭葉の障害がある場合には、尿失禁がないか一度確認する必要があります。それは、前頭葉には排尿中枢の領域があるからです。

ケアのポイントしては、水分摂取の量と時間をチェックし、普段の排尿の時間間隔もチェックします。それによって、排尿時間をある程度予測し、排尿時間の少し前からトイレ誘導を行い、排尿リズムの習慣化につなげていきます。

一方で、服薬により症状の増悪をきたしている場合もありますので、主治医と相談も必要です。

○コルサコフ症状

前頭葉の底面の症状であり、前交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血後に起こる事が多いとされています。また、視床の病巣に加え、大脳辺縁系の病巣でも見られる事があります。

コルサコフ症状の特徴としては、記憶障害があり、作話症状見当識障害病識の欠如が見られます。

ケアのポイントして、「忘れる」という事に関しては、忘れる事を想定して、あらかじめ1日のスケジュール表を作成し、壁に貼って置いたり、道順を描いた絵を目に見える所に置いておくなどです。「作り話をする」事に関しては、無理に否定せずに、患者さんの話があたかも本当にあったかのように、賛同して会話してあげる事です。

(小宮 桂治、酒井 保治郎:よくわかる脳の障害とケア―解剖・病態・画像と症状がつながる!:2013)


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