Photo Gallery

脳卒中による中枢神経の障害後の回復の過程では、どのような現象が起こっているのでしょうか?

脳卒中後の機能回復がプラトーに達するのは一般的には180日と言われています。

片麻痺の回復過程 ブログ用

脳組織の回復と機能回復 ブログ用

(奈良 勲、土山 裕之、松尾 善美:脳卒中理学療法ベスト・プラクティス―科学としての理学療法実践の立場から:文光堂:2014)



○急性期における回復機序

数日間
①脳浮腫改善(脳の細胞に水分がたまる、いわゆる脳のむくみが改善してきます。)
②出血吸収(脳出血の場合、血腫が溶けて自然に吸収されていきます。)
③脳循環改善
④脳血管攣縮改善(くも膜下出血後の場合、脳血管攣縮という血管が縮んで細くなる事がありますが、それが改善されます。)

数週間
①diaschisisからの改善(diaschisisとは、障害部位から遠隔にある解剖学的に正常な部位が、障害部位と関連して、一時的に代謝や生理機能低下を起こす事です。)
②シナプスのunmasking(アンマスキング)

○回復期における回復機序

数ヶ月以降
①代償法の学習
②シナプスからの発芽(sprouting)
・再生側芽:軸索の切断後に、中枢側から再生が認められるもの
・側副側芽:周囲の正常な神経細胞から脱神経領域に発芽してシナプスを形成するもの
③残存シナプスのモジュレーション
④神経軸索再生
⑤神経再構築
・非交差性皮質脊髄路の動員
・感覚運動野の活動中心の後方変位
・隠蔽回路の開発(unmasking:アンマスキング)
・錐体路の代償神経路として脳幹網様体脊髄路の非交差的制御
・広範な運動ネットワーク構築

脳卒中後の神経可塑性 ブログ用

(福井 圀彦:脳卒中最前線―急性期の診断からリハビリテーションまで:医歯薬出版:2009)


※関連記事
関連:脳卒中リハビリテーションの理論と治療方向性

関連:10分でわかる脳の構造と機能-畿央大学
疲労 ブログ用

運動した後に、患者さんから「疲れました」という訴えは、臨床上よく聞かれる訴えの一つです。

ただ単に疲労といっても、原因の違いから、中枢性疲労末梢性疲労に分類されます。

セラピストは疲労の起こしている原因を把握し、何が問題であるかを理解しておく必要があります。

○中枢性疲労
運動単位の動員数が低下した状態

○末梢性疲労
酸素不足・筋のエネルギー源(グリコーゲン)の消耗・乳酸や代謝産物の蓄積した状態

以上のように定義されます。

(柳澤 健:運動療法学 改訂第2版:金原出版:2011)



また、以下のようにも定義されています。

○中枢性疲労
・神経駆動の減弱(運動意識実行力の減弱)

○末梢性疲労
・筋張力発生の減弱(神経-筋伝達機能低下)
1.ATP供給速度の減少
2.筋線維膜へのエネルギー供給不足
a)張力低下と筋線維膜活動電位の伝導減少
b)筋小胞体のCa2+ポンプ機能低下
3.蓄積物質
a)細胞内H+
 PFKとリン酸酵素発生の抑制
 Ca2+活性アクトミオシンの機能減少
b)細胞外K+
 筋小胞体の活動電位と伝導減少
 興奮-収縮連関の効率低下
 T管系の活動電位の減少

(眞野 行生:筋疲労について:リハビリテーション医学 Vol.31 No.9:1994)



○中枢性疲労
≪誘因≫
テンポが遅い長時間の運動
大脳の機能低下
シナプス神経接合部の疲労
・神経インパルスの頻度不全
・運動単位の動員不全

≪イメージ≫
精神的疲労

○末梢性疲労
≪誘因≫
高強度運動
筋内でのエネルギー源の枯渇
・ATP再合成の低下
神経筋接合部のアセチルコリン減少
筋小胞体でのCa2+の取り込み低下

≪イメージ≫
肉体的疲労

(斉藤 秀之、加藤 浩:筋緊張に挑む―筋緊張を深く理解し、治療技術をアップする! (臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス):文光堂:2015)

座っていく動作である着座動作は、臨床的にも重要な基本動作の一つであり、立ち上がりと比べると制御の難しい動作と言えます。

着座

着座の困難な患者さんでは、重心の後方移動が速すぎるために、後方に転倒しながら着座するいわゆる「ドッスン座り」が臨床上よく見られます。

こうならないためには、着座の瞬間まで、足部でつくられる支持基底面の中に身体重心を保持し続けながら、ゆっくり身体重心を下ろしていかなくてはいけません。これが可能となるためには、身体重心は支持基底面の後方ギリギリの所で保持しながら、体幹を前傾させて、膝を屈曲していかなければなりません。

まずは、着座動作のシークエンスから見ていきます。

①着座動作の第1相(重心の前方移動期)

第一相は、立位の状態から股関節の屈曲が開始されるまでの区間を指します。
直立立位の状態から、足関節がわずかに背屈し、それにともなって骨盤がわずかに後傾します。この足関節と骨盤のわずかな動きによって、大腿骨は床面に対して垂直の状態のまま、下腿は前傾を起こし、膝関節が前に出るように屈曲します。つまり、第一相においては、重心を前方に変位させながら、膝関節の屈曲と骨盤の後傾が起こる相となります。

②着座動作の第2相(身体重心下降期)

第二相は、股関節が屈曲を開始してから着座までの区間を指します。
今度は骨盤は前傾していき、体幹も前傾していきます。この時、体幹の前傾は骨盤の傾斜によって生じており、体幹内部では屈曲も伸展もほとんど起きていません。体幹前傾にともない、股関節と膝関節が屈曲して重心が徐々に下降していきます。足関節は身体重心の下降期の前半では背屈していきますが、途中から徐々に背屈の動きが止まり、やがて下腿の傾斜角度を一定に保持するようになります。下腿の傾斜角度が一定に保持される頃から、身体重心の後方移動が始まります。

③着座動作の第3相(座位姿勢完成期)

第三相は、殿部が座面に接触した状態から、体幹が床面に対して垂直に復元して座位姿勢が完成するまでの区間を指します。
殿部が座面に接触しますが、一番最初は坐骨結節から座面に接していきます。着座直後に足部の支持面と、殿部の支持面に荷重が分散されると同時に骨盤後傾し、体幹は鉛直位に復元されます。

以上が着座動作のシークエンスで、次に着座のどの部分が実際に困難になっているのかを観察していかなければなりません。その観察のチェックポイントを記します。

○第1相のチェックポイント

・立位の状態から最初に、足関節背屈とそれに伴う骨盤のわずかな後傾が生じているか?
・下腿の前方傾斜はどうか?重心の前方偏移のための、膝関節が前方に出るような屈曲をしているのか?
・左右の荷重の偏りはないか?
・上下肢の連合反応は生じてはいないか?
・骨盤の前方回旋・後方回旋は生じていないか?
・股関節は内外旋、内外転中間位をちゃんと保持しているのか?

○第2相のチェックポイント

・骨盤が前傾して体幹の前傾が生じているか?
・脊柱の過度な屈曲・伸展が生じていないか?
・荷重は左右均等で偏りはないか?
・着座動作はゆっくりおこなえているのか?
・上肢は何かにつかまったり、引っ張ったり、不自然な動きをしていないか?
・前額面から見て下腿は垂直に保持されているか?
・身体重心の下降期の前半で背屈した足関節が固定され、下腿の傾斜角度が一定に保持されているか?

○第3相のチェックポイント

・坐骨結節から最初に座面に接しているか?
・着座後、足部の支持基底面と殿部の支持基底面にそれぞれ均等に荷重がなされているか?
・着座後に骨盤後傾し、体幹が起きて鉛直位まで復元されているのか?

以上のポイントをチェックしながら、動作遂行が円滑に行えていない問題点はどこにあるのかをはっきりさせていきます。

(石井 慎一郎:動作分析 臨床活用講座―バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践:メジカルビュー社:2013)


※関連記事
関連:
立ち上がり動作のシークエンスと動作分析

関連:歩行分析・動作分析・姿勢分析のためのオススメ参考書
脳血管障害後の患者さんで注意障害を呈している方は非常に多く、どのようにしてリハビリテーションを進めていけば良いのか非常に悩むところではないかと思われます。

今回は、注意機能の構成要素と、注意障害の症状に対しての具体的な介入例をまとめてみました。

注意機能 ブログ用

注意機能は、上の図のような関係性によって保たれています。覚度が保たれている事で、初めて他の要素は能力を発揮できます。覚度が低下すると、全体的な注意機能の容量が低下してしまいます。

例えば、注意機能を車の運転で例えると、下の図のような関係性となります。

車の免許が取りたてで、車に乗り始めた当初は、車を動かす手順に注意の大半が向けられている状態です。(左図:注意の集中性が高い状態)こういった状態の時は、同乗者との会話や、危険察知の遅れ(配分性)に注意を向ける事が難しくなります。また、疲労を感じやすく、長時間の運転は難しい状態です。(持続性)

しかし、車の操作や手順が慣れてくると、(中図:持続性と配分性に注意が向けられるようになる状態)同乗者との会話もだんだんできてくるようになり、長距離の運転も可能になってきます。

ただ、疲労が残り、覚度が低い状態(右図:覚度の低下した状態)では、注意機能の容量が少なくなり、長時間の運転も困難となり、危険予測の能力も低下してしまいます。


注意機能の関係性 ブログ用


(國澤 佳恵:理学療法 2014年 5月号 (Vol.31 No.5) 特集 高次脳機能障害を有する患者への理学療法士の関わり:メディカルプレス:2014)



○集中力がない(注意の維持)

・好きな課題や得意な課題を選択し、集中できる時間を延長させるという工夫。
・一つの課題を一気に行えない場合には、適度に休憩時間を取りながら行う。この時に、何分間の作業に対して何分間の休憩であれば疲労がたまらないかを分析する。

○話の途中で違う事をしたり、急に席を立ってしまい、じっとしていられない(注意の維持、欲求コントロールの低下など)

・SSTで人の話を最後まで聞く事や、席を立ちたくなった時は声をかけて席を離れるようにスキルを学習していく。
・易疲労性からくるものであれば、適度に休憩をとり疲労に対して対応していく。
・グループ活動を行いながら、集中できる時間を増やしていく。

○音がしたり、人が通ったりするとすぐにそちらに目が行き、気が散る(注意の選択)

・始めは個室などの気が散らない環境下で課題を行い、できるようになったら徐々に、大部屋や雑音のある環境に慣れさせていく。
・課題も動くものが目に入る窓際で行うのではなく、壁に向かう席で実施していく。

○大勢の中で自分が呼ばれている事が気づかない(注意の選択)

・グループ活動を行いながら、できるだけ自分への声掛けに気付くように訓練していく。

○ミスが多い(注意障害とその他の要因が混合)

・ミスの原因を分析していく
→疲労からくるのか、注意の選択・配分の問題か、遂行機能障害による手順の混乱が原因か
・ミスを防止する
→課題を行い、終了しようとする時に必ず見直す習慣をつけていく。
・ミスが起きた時の対処法を学ぶ
→ミスの起こりうる場面をリストアップする。問題点への対処法を一緒に考え、表にまとめ、思い出せなくなったときに確認する。

○一つの課題や仕事を素早く、正確にこなすことができない(注意障害とその他の要因の混同)

・作業の途中で話しかける事はやめ、周囲にもそれを伝えておく。
・課題や作業にかける時間を長めにとり、休憩時間と確認作業を十分に行う。

(平林 直次、廣實 真弓:Q&Aでひも解く高次脳機能障害:医歯薬出版:2013)



また、注意障害全般的に実施すべき対応法として以下の事も言われています。

・環境刺激を少なくする。(戸を閉めたり、人を少なくしたり、テレビを消したり)
・何かを口頭で伝える前には、必ず本人が自分の方を向いてるか確認する。
・本人への指示は7秒以内のキーワードで、単純明快に端的に伝える。
・話や課題が正確に理解できているのか、こまめに確認する。
・本人が以前から好きだったり、興味があるものを課題として選択する。
・話がぐるぐる回ってしまったら、話を元に戻してあげる。
・課題が完成するまで、ゆっくりと時間を与える。
・少しでもできたらなるべく褒める。
・情報量が多い時は、重要な箇所を目立たせる。

(橋本 圭司:生活を支える高次脳機能リハビリテーション:三輪書店:2008)

トイレ動作は特に、自立のニーズの高い動作です。患者本人にとっても、介助する家族にとっても、トイレ動作が自立して行えるようになる事は臨床上重要なポイントとなってきます。

では、実際にトイレ動作の中でのどのような動作が難しいのか?動作獲得のためにはどのような訓練からはじめていけば良いのか?段階的に動作学習を促すためにも、セラピストは動作の難易度を把握しておく必要があります。

今回は脳卒中患者の方のトイレ動作の場合の報告ですが、全体的には下図のように、上から順に難易度が高いと考えられました。

トイレ動作 難易度 ブログ用

左片麻痺と右片麻痺に分けた場合は、それぞれ下図のような順になります。

トイレ動作 片麻痺 動作難易度 ブログ用

全体的に難易度の高い動作としては、「下衣を上げる動作」であり、それに続いて「ドアの開閉」、「下衣を下げる動作」、「方向転換」が難しいとされる事が分かりました。

左右差で見ると、特に左片麻痺の場合は、「便座へのアプローチ」や、「フットレストへの下肢の上げ下ろし」などの周辺動作が難しく、右片麻痺ではトイレ動作そのものである「方向転換」、「立ち上がり」、「車椅子着座」などが反対側に比べて困難であることが分かりました。

臨床での患者さんにおいても、やはり、ズボンを下ろす時にはまだ何とか下ろせますが、ズボンを上げる時にはふらついて介助を要する時が多いですね。トイレ内での転倒においても方向転換時や、ドアの開閉時に転倒が多いのも納得できます。

非常に興味深い報告であり、こういった難易度を項目別に知ることによって、対応や訓練について早期に検討する事ができると思われます。

(坂田祥子ほか:総合リハビリテーション 2015年 3月号 特集 脳卒中リハビリテーションのエビデンス:2015)


※関連記事
関連:運動学・機能解剖のオススメ参考書
関連:アフォーダンス

WHAT'S NEW?