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正常歩行時にはどのくらい関節の可動域が必要でしょうか?臨床では理学療法士は必要に応じて、関節可動域制限に対してどこまで治療が必要なのかを根拠をもとに判断していきます。歩行を行う上で、どこまで可動域が必要なのかは、当たり前のように知っておく必要があります。

歩行 画像

今回は、正常歩行での関節の運動の軌跡を見直していきます。

○足関節

・足関節の底屈と背屈は歩行周期の間、交互に2回ずつ起こります。

・踵接地から底屈に動き、LR(荷重応答期)にて底屈は5°でピークを迎え、背屈方向に運動していきます。

・MSt~TSt(立脚中期~立脚終期)にかけて背屈は続き、TSt(立脚終期)で背屈は10°のピーク迎え、その後底屈方向に運動が変化します。

・PSw(前遊脚期)において背屈10°から底屈15°まで底屈方向へ変化します。

・ISw~MSw(遊脚初期~遊脚中期)にかけて背屈の動きで足部が持ち上げられます。背屈2°まで背屈していきます。

・以上より、正常歩行を行う際には足関節は背屈10°~底屈15°まで必要です。

○膝関節

・膝関節の屈曲と伸展は歩行周期で、交互に2回ずつ生じます。

・踵接地時は膝関節は平均5°屈曲位で、そこからLR(荷重応答期)では20°程度まで膝関節は屈曲していきます。

・MSt~TSt(立脚中期~立脚終期)では、屈曲20°の状態から伸展方向に運動し、平均伸展5°でピークを迎え、そこから屈曲方向へ動いていきます。

・PSw~ISw(前遊脚期~遊脚初期)において膝関節は急激に屈曲していき、ISw(遊脚初期)にて屈曲60~70°のピークを迎えます。

・MSw~TSw(遊脚中期~遊脚終期)においては、膝関節は伸展していき、TSw(遊脚終期)にて完全伸展位(0°)となります。

・以上より、正常歩行で必要な膝関節の可動域は、伸展0°~屈曲60°となります。

○股関節

・踵接地時は股関節はおよそ屈曲30°で、そこからMSt~TSt(立脚中期~立脚終期)にかけて伸展していきます。

・TSt(立脚終期)からPSw(前遊脚期)の移行期に股関節伸展10°のピークを迎え、そこから屈曲方向へ運動していきます。

・ISw~MSw(遊脚初期~遊脚中期)では股関節は屈曲し続け、MSw(遊脚中期)にて屈曲30°にてピークを迎えます。

・以上より、正常歩行にて必要な股関節の可動域は、屈曲30°~伸展10°となります。

○上肢

・肩関節は最大伸展24°~最大屈曲8°まで運動します。歩行速度が速くなると、肩関節伸展角度が増大し、最大伸展31°まで上昇します。最大屈曲には変化ありません。

(Perry,Jacquelin:ペリー 歩行分析―正常歩行と異常歩行:医歯薬出版:2012)


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臨床では、関節リウマチ(RA)を呈している患者さんは多いです。関節リウマチにより、人工関節をしておられる方や、まだ症状の軽度の方までおられます。関節リウマチを呈している方の運動療法は、実際にどのようなことに注意して実施していけば良いのでしょうか?

リハビリイラスト

まず、関節リウマチの患者さんになぜ運動療法を行うかとういう事についてですが、目的は以下の通りです。

・関節痛の軽減
・関節破壊の予防
・関節可動域や筋力の改善
・身体活動、ADL動作の改善

また、リハビリテーションを実施する前にリスク管理として注意して見ておく項目は、以下の項目です。

・X線画像検査、MRI検査、関節エコー検査、骨塩定量などの画像診断
・血液検査(赤沈値、CRP、リウマトイド因子、MMP-3、ヘモグロビンなど)
・薬物療法の治癒過程やその副作用

さらに、リウマチを呈している関節を実際に視診・触診し、関節の炎症所見がどの程度のものか確認して、痛みの原因が、①関節包内の軟部組織性、②骨性、③周囲筋の筋スパズムなのかを特定し、治療プログラムを立案していきます。骨性だと理学療法介入できませんが・・・

治療プログラムの立案の際に気をつけるポイントとしては、以下の項目があります。

①蜂窩織炎や毛細血管の弱化などが隠れている事があるため、皮膚の疼痛や発赤、内出血などに配慮していく
②関節包内か、周囲筋かにターゲットを絞ったアプローチを実施する
③アライメント不良が常に生じやすい事を想定し、リウマチの症状を呈している関節だけでなく、隣接する周囲の関節にも負担が生じていないかなど考慮したアプローチを実施する

治療内容としては、以下の3つが運動療法の3本柱になると思われます。

①関節・筋に対する治療(関節可動域制限や、異常な筋緊張に対してのアプローチ)
②筋力に対しての治療(筋力を向上していくアプローチ)
③ADL動作における負荷量の指導や体力的側面に対する治療

以上の方針で、リハビリテーション介入を行っていきます。

○関節可動域(ROM)訓練の実際

・関節リウマチの患者さんは、関節の炎症や疼痛が生じている事が多いために、関節内圧が高まる動きは疼痛が発生してしまうため、できるだけ関節内圧が変化しないような安楽肢位を自然ととるようになり、これが関節の不動につながり関節可動域制限を生じさせてしまいます。また、筋スパズムなどの持続的な筋収縮状態によっても、関節可動域制限を生じてしまいます。

・関節包内運動を実施する際、急性炎症期や不安定性、ムチランス変形のある関節は行わないほうがよいでしょう。

・筋スパズムに対して、罹患関節や周囲の隣接関節に対して、ストレッチなど筋緊張軽減を目的に実施します。

・物理療法なども併用するとよいでしょう。

環軸関節前方亜脱臼を考慮すると、頚椎に対するROMは行わないほうがよいでしょう。

○筋力訓練の実際

・MMTにて筋力を評価する際に、疼痛が強い場合はその周囲関節の筋力は出力抑制され、MMTにてちゃんとした評価ができない可能性があることも考慮し、疼痛検査を十分に評価する必要もあります。

・CRPや赤沈値が高く、全身状態が不良の場合や、ヘモグロビンなどの数値低下が見られ重度の貧血状態である場合は、筋力強化が期待できない場合が多く、低活動に伴う廃用症候群予防のための非荷重での等尺性収縮中心の介入が重要と考えられます。

・罹患関節が急性炎症期である場合は関節破壊を助長してしまうため、筋力訓練は中止します。

・炎症期では、等尺性収縮を中心とし、慢性期で骨破壊が見られない場合では等尺性収縮に加え、等張性収縮や荷重位でのCKCの筋力訓練などを取り入れていきます。

・立ち上がり動作やスクワットなど生活動作に反映できる運動や、筋の同時収縮を促す運動が効果的ですが、過負荷になると関節破壊を助長してしまうので、その日の夜か、次の日に疲労が残らないような回数・強度設定を行います。

・薬物の効果が現れる時間帯や、時期に実施できるような工夫も必要です。

・自主訓練として筋力訓練を指導する際は、回数を増やすというよりも収縮の強度を上げるように指導していくのがよいでしょう。

(佐浦 隆一、八木 範彦:関節リウマチ (リハ実践テクニック):メジカルビュー社:2014)

TKA(人工膝関節全置換術)の患者さんでは、TKAの種類は大きく「PS型」「CR型」の2種類のデザインに分けられます。他にも「CS型」などありますが、大きくはこの2つだと思われます。

CR型:後十字靱帯(PCL)温存型
PS型:後十字靱帯(PCL)切除型

人工膝関節において、脛骨コンポーネントを挿入するためには、前十字靱帯(ACL)は必ず切除しないといけないのですが、PCLを温存するか、しないかがCR型とPS型の違いです。

それぞれが、それぞれのメリット・デメリットを持ち、理学療法士である我々が治療を考える上で、その特徴やバイオメカニクスを理解しておく必要があります。

≪CR型≫
・PCLを温存する事により、PCLが荷重伝達を行い応力が低減するという利点がある。
・後方安定性に寄与する。(後方脱臼を防ぐ)
・PCLによるロールバック(roll back)運動を誘発する。
・レバーアームが長くなり、伸展筋力の効率が向上する。
・PCLが関節の固有位置覚に寄与する。

≪PS型≫
・膝関節を屈曲するにつれて大腿骨コンポーネントのカム(cam)がインサートのポスト(post)と接触し、カムがポストに誘導されて、人工的なロールバック(roll back)運動が誘発される。
・手術手技の依存が少なく、関節可動域も安定していると言われる。
・PS型に特徴的な合併症として、patella clunk syndromeや、ポストの摩耗、破損が報告されています。

※patella clunk syndrome:膝蓋骨周辺に生じた瘢痕組織が大腿骨コンポーネントの顆間のboxに入り込み、屈曲時に軋轢音、ロッキングを発生する。

(杉本 和隆、美﨑 定也、相澤 純也:人工関節のリハビリテーション 術前・周術期・術後のガイドブック:三輪書店:2015)



以上のような特徴が挙げられます。

また、Rakuya(2008)によると以下のような報告もされています。

・多くのPCL温存膝が不規則な異常運動を示す。TKAはACL不全の状態であり、PCL温存により正常運動が再現される事は期待できない。

・PS型ではポストカム機構により再現性の良い運動パターンが得られている。

・可動域についてはPS型の方が良好である。

・優れた長期成績が報告されているのはPS型であり、温存膝の長期成績が優れているというデータは無い。

・PS型でポストカム機構の破損や摩耗例の報告も散見される。特に回旋ストレスに対する対策が重要である。

また、Akagi(2008)によると次のようにも言われています。

・CR型では屈曲早期の大腿骨の脛骨上での前方滑りが観察され、術後PCL機能不全の存在が指摘されている。

・PS型ではカム機構とFT関節面デザインによりキネマティクスがコントロールされるため再現性の高い運動をする。

・PS型におけるカム部分の摩耗が新たなweardebrisの源として指摘されており、骨溶解との関連も報告されている。

・最近のPS型では軸回旋を含めて、カム機構を摺動面として考え設計がなされている。しかし、PS型において荷垂下深屈曲時のカム機構に加わる負荷は非常に大きく、長期成績への影響が指摘されている。

また、京都下鴨病院の小野志操先生は、以下のように述べておられます。

≪CR型≫

<メリット>
・PCLを残す事で、正常膝に近いキネマティクスが維持されると期待されていた。
(PCLの変性により温存したPCLが必ずしも機能せず、roll backが再現されない事もある)


<デメリット>
・PCLの緊張は軟部組織バランスに大きな影響を及ぼし、屈曲ギャップを減少させる重要な因子。PCLの拘縮があればPS型が望ましい。

<適応>
・PCL、側副靱帯がほぼ正常である事。
・術前の屈曲角度が良好で、その角度を維持して生活する患者(120°以上の屈曲が可能な場合ではPCL温存も選択)

≪PS型≫

<メリット>
・PCLを切離すると屈曲ギャップが増大するため、術後に良好な屈曲可動域が期待できる。
・前後方向での安定性はポストカム機構にゆだねられ、再現性のよいroll backが得られる。後方でのインピンジの防止し接触面が確保される。

<デメリット>
・接触圧が狭いと耐久性に影響する(postが破損する)。「ひざまずき動作」は良くない。
・postの高い位置でcamが接触するようだと、少しの緩みで脱臼やpostの摩耗、脛骨コンポーネントの緩みにつながる。
・PS型ではpostの脱臼の危険があり、140°以上は禁忌。

・過度の屈曲位設置はPS型では前方インピンジメントの原因となり、postの破損が危惧される。(過伸展位となる)

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皆さんは今までにお腹が痛くなった時、無意識にお腹をさすっていて、痛いのが少しまぎれて、軽減した経験はありませんか?これはゲートコントロールによるものです。

痛いところの周辺を「さする」事で痛みが軽減する現象は、実際には脳の中の注意がそれるとかそういう事ではなくて、脊髄レベルでの痛みの抑制システムが働いてるという事なのです。

そもそもこのゲートコントロール説は、1965年にMelzackとWallが最初に発表しました。

ゲートコントロール 昔 ブログ用

上図がそのモデルですが、脊髄後角には痛みの門番としてゲートを守る膠様質細胞(SG)と中枢に情報を伝えるT細胞があります。

痛みを伝えるAδ線維C線維などの細い神経線維が興奮すると、門番であるSG細胞が抑制されるためにゲートが開き、T細胞を介して痛みがダイレクトに脳に伝わります。

しかし、触覚などを伝える太い神経線維であるAβ線維が興奮すると、門番であるSG細胞を興奮させてゲートを閉じ、T細胞に情報が伝わらないようにする仕組みが発動します。これによって痛みを脳に伝えなくさせるというのが当時のゲートコントロール説でした。

現在の考え方は、下図のようにSG細胞の抑制を行う場所がシナプス前抑制ではなく、T細胞そのものを抑制する事が分かってきました。

ゲートコントロール ブログ用

以上のメカニズムにより、脊髄レベルでの鎮痛が生じているのです。実際に痛いところの周囲をさする患者さんは多いですが、気持ちの問題とかではなく、ちゃんと意味のある事なんですね。

(伊藤 和憲:図解入門 よくわかる痛み・鎮痛の基本としくみ (How‐nual Visual Guide Book):秀和システム:2011)

外反母趾を呈している患者さんは、臨床においても多いと思われます。外反母趾とは、「母趾の外反と、第1中足骨の内反」を伴った変形の事を言います。

外反母趾は10:1で女性に圧倒的に多い変形です。外的要因として、ハイヒールなどの靴の影響によるものと、内的要因としては扁平足などが挙げられます。

実際、外反母趾でも無症候性の場合も多く、変形自体が問題と言うよりも、変形する事によって「痛み」が出現する事が問題であり、理学療法士はそれに対してアプローチしなければなりません。

そのためには、外反母趾によって何が生じているのかを知る必要があります。

まず、外反母趾というのは外反母趾角(第1中足骨と母趾のなす角度)が20°以上になっている場合、外反母趾と判断できます。

外反母趾角 ブログ用

そして、中足骨底面には種子骨があり、内側には内側種子骨、外側には外側種子骨が位置しています。

内側種子骨に付着する筋は、母趾基節骨に停止する母趾外転筋と、短母趾屈筋内側頭です。
外側種子骨に付着する筋は、母趾基節骨に付着する母趾内転筋と、短母趾屈筋外側頭です。

○足根中足関節の安定性低下が原因で生じる外反母趾

そもそも、第1中足骨は遠位端において、第1中足趾節関節(MTP関節)を構成し、近位端では足根中足関節を構成しています。足根中足関節は中足骨間靱帯や前脛骨筋や長腓骨筋の腱によって安定性が得られていますが、女性に特に多い関節弛緩性(ラキシティ:laxity)などによって関節の安定性が低下してしまいます。

解剖学的に、足根中足関節は関節面が傾斜しているために、第1中足骨は内反しやすくなります。

第1中足骨が内反してしまうと、内側種子骨に付着する母趾外転筋は短縮位となり、一方で外側種子骨に付着する母趾内転筋は伸張位となり、外側種子骨を外側へ引く力が高まり、母趾が外反に変形します。

足底の筋 ブログ用

こういったメカニズムで外反母趾が起こると、力学的不均等が生じて、さらに外反母趾が悪化してしまいます。どういう事かというと以下の通りです。

外反母趾となると、外側種子骨を外方に引く力が強くなります。それによって、第1中足骨が回内し、内側種子骨は外側の方へ変位します。そうなると、母趾外転筋の停止部が底側に移動し、母趾が十分に外転の筋力を発揮できなくなります。この事から、母趾は外反をより強めてしまいます。

また、第1中足骨頭関節面には傾斜角度があり、第1中足骨が回内すると母趾が外反位を取りやすくなる形状になっています。

となると、どうも問題なのは、この第1中足骨が内反・回内してしまう事が負の連鎖を生じさせている問題のように感じられます。

○外反母趾によってなぜ痛みが生じてくるのか?

まず、原因として大きいのが靴の原因ですが、女性特有のハイヒールを履くことによってMTP関節に特に体重がかかりやすくなる事と、ハイヒールのつま先の部分は先が狭い形をしているため、母趾は外反強制され、MTP関節の内側の関節包は伸張され、MTP関節内側部に腱膜瘤(バニオン)が生じ、これが痛みを生じます。

また、外反母趾となると第1中足骨は回内した状態となり、その状態で荷重する事になります。内側種子骨の内側には固有底側趾神経があるため、荷重時にはその神経を圧迫する事となります。そのため、荷重時に痛みを生じる場合もあります。

○外反母趾に対する運動療法

では、われわれ理学療法士はどのような運動療法を展開していけば良いのでしょうか?

外反母趾に対しては、靴の適切な処方や、足底挿板、テーピングなどの方法がありますが、ここでは筋に対するアプローチを述べます。

①母趾内転筋の筋力強化:第1中足骨の内反を制動する筋として筋力強化が重要となります。

②母趾外転筋の伸張性の獲得:母趾外転筋の伸張性が低下すると、第1中足骨が回内・外反位を取るため。

③背側骨間筋の筋力強化:背側骨間筋は、足根中足関節の安定に関わる中足骨間靱帯からも起始を持っているため、足根中足関節の安定のためには筋力強化が必要となります。タオルギャザーなどで促していくのが良いでしょう。

④前脛骨筋の筋力強化:前脛骨筋は第1中足骨の回外作用を有するため筋力強化が重要となります。

(工藤 慎太郎:運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学:医学書院:2012)

糖尿病はここ近年の食生活の変化や、ライフスタイルの乱れにより、患者数が急増していると言われています。

臨床においても、糖尿病を患っている方は多く、それに伴い合併症が出現し、ADLが低下している患者さんは多く見られます。

われわれ理学療法士は「糖尿病」に対してどのような方針で、患者さんにどう説明し、どういったアプローチをしていけば良いのでしょうか?

まず、糖尿病には大きく1型糖尿病2型糖尿病がありますね。

○1型糖尿病に対する理学療法の考え方

1型糖尿病は、インスリンを合成・分泌する膵臓のランゲルハンス島のβ細胞によって、血液中のインスリンが不足し、絶対的な欠乏状態になる事です。これに対して、高血糖となり糖尿病性ケトアシドーシスにならないように患者さんの保護のため、インスリン注射が必要になります。

こういった方に理学療法では運動療法を行いますが、運動療法によって筋量の維持・増大を図り、インスリンの利きを良くするとともに、心肺持久性も向上させ、ADLが快適に行えるという効果があります。

「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」においても、1型糖尿病患者における運動療法は、「進行合併症が無く血糖コントロールが良好な場合、インスリン療法や捕食でいかなる運動も可能であり、長期的血糖コントロールは不明だが、心血管系疾患の危険因子を低下させ、生活の質を改善させる」として強く勧められています。

○2型糖尿病に対する理学療法の考え方

対して2型糖尿病は、生活習慣の乱れや環境因子などが影響する事により発症します。現代人に多いのはこちらで、日本の糖尿病の全体の9割を占めるともいわれています。

インスリンの分泌の低下インスリンの感受性低下が原因となります。

こういった場合の理学療法は、糖尿病発症前の耐糖能障害(IGT)の場合は、糖尿病の発症予防として、また、発症してしまった場合は合併症予防として適切な運動療法を実施します。

合併症を発症してしまった場合には、病態に合わせて運動療法、物理療法、補装具療法やADL指導が行われます。最終的には症状の進行を遅らせ、運動機能を十分に維持させていくことを目的とします。血糖コントロールに関してのみ理学療法介入するのではなく、日常生活全般に治療介入していく必要があります。

「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」においても、2型糖尿病患者における運動療法について、「運動により心肺機能、血糖コントロール、脂質代謝の改善、低血圧やインスリン感受性の増加が認められ、食事療法と組み合わせるとさらに高い効果が期待できる」と強く推奨されています。

以上がそれぞれの理学療法の考え方となります。

では、実際に予防として、どのような運動療法が良いのでしょうか?

運動の要素としては、心肺持久力を向上させる有酸素運動、筋力・筋持久力を向上させるレジスタンストレーニング、柔軟性を改善させる体操やストレッチングなどの3つの要素をバランスよく組み合わせて、個別にその比率を調節しながら実施していくことが望ましいとされています。

運動前後には3分以上の準備運動と整理運動を行います。

運動の内容は、患者さんが「いつでも・どこでも・一人でも」できる運動を選択し、実施しやすいものを指導します。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準」(2013)においては、「運動」や「生活活動」の活動量として3METS以上の活動を行う事が推奨されています。

以下の表は糖尿病のコントロールの基準ですが、この基準を参考に運動プログラムの立案や、継続の判断に反映させていきます。こういった指標により運動療法を考えていきます。

糖尿病のコントロール基準と運動の効果 ブログ用

(南條 輝志男、大平 雅美、野村 卓生、石黒 友康:糖尿病の理学療法:メジカルビュー社:2015)

読書 画像 ブログ用

カラー版 カパンジー機能解剖学 I (1) 上肢 原著第6版
カラー版 カパンジー機能解剖学 II (2) 下肢 原著第6版
カラー版 カパンジー機能解剖学  III (3) 脊椎・体幹・頭部 原著第6版

    

言うまでもなくセラピストであれば、一度は必ず読んだことのあるカパンジーシリーズです。どのセラピストに聞いても必ずオススメされる運動学の参考書であると思われます。

アダルベール・カパンジーはフランスの整形外科医で、専門は手です。カパンジー先生は骨学を基盤としたニュートラルポジションを定義しており、本書はイラストにて最も分かりやすく示してあります。

例えば、臨床においてscrew home movementを考える前に、脛骨は大腿骨に対してどこがニュートラルポジションなのでしょうか?どこからどこまで脛骨は普通外旋するのでしょうか?こういった疑問に対して、本書に帰り、screw home movementをどのように誘導するかの治療を考えていきます。実際、膝の最終伸展域でグイグイ外旋させる訳ではないですもんね。

本書は理学療法士のバイブル書です。これは手元に持っておくべきですね。

次世代へのメッセージ カパンジー生体力学の世界



カパンジー先生の第2作目です。「カパンジー機能解剖学」とはまた違う、身体の動きの仕組みを追及した本です。

内容としては生体力学や、そもそもなぜそうなったのかという起源に迫る内容であったりと、新しい着想や概念でトピックス化されています。

まったく新しい視点で見れる興味深い一冊です。

オーチスのキネシオロジー 身体運動の力学と病態力学 原著第2版



運動学の専門書ですが、本書も世界的に有名な本です。

本書の特徴は、バイオメカニクスに関しての記載があり、病態力学やエビデンスに基づく提示もされており、非常に面白い参考書です。

DVDも付いていて、関連トピックも分かりやすく紹介されています。全体的に読みやすく、本書は有名な理学療法士の先生もオススメされています。

他にはない良著なので、セラピストは一冊持っておくべきだと思います。

筋骨格系のキネシオロジー―カラー版



世界的なキネシオロジーの名著です。2012年に第2版が発行されました。

関節の「滑り運動」や「転がり運動」などが非常にキレイなイラストで描かれており、分かりやすい参考書です。

この本を参考にされているセラピストは非常に多いです。動作分析に根拠を示してくれます。

ビジュアル機能解剖―セラピストのための運動学と触知ガイド



2014年発行の機能解剖・運動学の専門書です。

本書は解剖学的な基礎知識から始まり、ランドマークを確認して骨や筋を体表からどのように触知できるかが記されています。

本書の一番興味深いのは、一つ一つの筋の機能について書かれており、各動作においてどの筋がどのようにして働いているのかが記されています。筋の役割を理解するのに非常に参考になりました。

読みやすく、個人的にはかなりお勧めです。

ブルンストローム臨床運動学 原著第6版



非常に歴史の長い運動学の参考書です。2013年に第6版となりました。

かの有名な、ブルンストロームという女性の理学療法士の方が、アメリカで1962年に最初に出版しました。

その後、世界的にテキストとして読まれています。

運動学の基礎知識から、臨床的な運動機能や日常生活活動のパフォーマンスまで非常に分かりやすく明解に書かれています。

特に、日常生活動作の身体運動学は参考にさせて頂いてます。レポート作成や治療計画に大いに役立てています。

図解 関節・運動器の機能解剖 (下肢巻)
図解 関節・運動器の機能解剖 (上肢・脊柱編)

  

昔からある、非常に有名な機能解剖・運動学の参考書です。1986年の初版です。

現在の30~40代のセラピスト、あるいはその上の世代の方は馴染み深く、かなり参考にされているのではないかと思います。

関節などの動きが簡潔なイラストによって、分かりやすくまとめられています。講習会や、授業などで必ず一度は目にされていると思います。

原著はフランスの方々で、世界的にも有名な臨床家向きの本です。

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ブリッジ活動テンタクル活動という言葉を聞いたことがあると思います。これは、クラインフォーゲルバッハのコンセプトで、力学的にどの筋活動が生じてくるのかを理解するための概念で、これを治療に結びつけていくことが大切だと思われます。

ブリッジ活動とテンタクル活動 ブログ用

○ブリッジ活動

ブリッジ活動とは、アーチをかけるように身体体節を持ちあげて保持する活動の事で、主動作筋は床に面した筋群になります。

四肢や頭部など支持基底面に接する身体部位は、支持点になるために移動はできません。

支持点間の距離が大きくなると負荷が増します。

ブリッジ活動を考える時には、下図のようにブリッジングを行った時にシナジーを形成する筋群の活動するタイミングを確認しなければいけません。例えば、脳卒中片麻痺の患者さんで、大殿筋の促通の目的でブリッジングを行った場合、骨盤が前傾する方へ動いてきたら殿筋で骨盤を持ちあげているのではなく、腰背筋と大腿直筋にて代償して持ちあげている事になり、これでは目的の筋群への促通ができてないばかりか、異常な筋活動のパターンを助長してしまう可能性があります。そのためにもまず、骨盤の動きから筋活動のパターンを確認しなければなりません。そうする事で、優位な筋活動のパターンを判断し、これを治療につなげていきます。

ブリッジ活動でのシナジー ブログ用

○テンタクル活動

テンタクルとは「触手」を意味しており、胴体からでた触手が動くような身体活動をテンタクル活動と呼びます。身体を釣りあげるように移動させることから、天井に面する筋群が主動作筋になります。

この活動においては、運動の支点に対する質量の影響がダイナミックに変化するために、移動をする身体部位の質量に対して、安定させる身体部位の質量は重く安定していなければいけません。

テンタクル活動においては、支持基底面との接触を失った部位では、テンタクル活動の運動連鎖が途切れやすくなります。テンタクル活動が困難となった場合に、ブリッジ活動での代償が出やすくなります。

(奈良 勲、土山 裕之、松尾 善美:脳卒中理学療法ベスト・プラクティス―科学としての理学療法実践の立場から:文光堂:2014)


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脳卒中患者歩行

脳卒中患者において歩行速度は、歩行実用性を決定する重要な因子であり、歩行速度を向上させることは歩行の効率を高め、日常生活における行動範囲を拡大する事につながります。

Perryによると、歩行速度により、歩行が生活場面でどのくらい行えるかという分類に以下のように分けています。

○屋内外ともに歩行で生活する者:10m歩行は、12.5秒以下である必要がある。
○屋内は歩行だが、屋外での長距離移動などでは車椅子などを利用する者:10m歩行が25秒以下である必要がある。
○屋内でしか歩行できない者:10m歩行が25秒以上の場合。

ある程度の目安なので、歩行速度だけで実用性は判断はできませんが、臨床では歩行速度を上げるトレーニングを行うと、代償動作が出現しやすくなる事にも注意します。

実際は、歩容やバランスを悪化させずに、歩行速度を上げていくトレーニング戦略が望ましいです。

そのためには、どのようなポイントで歩行速度を上げていけば良いのでしょうか?

①歩行時の下肢の対称性を高める事
②歩行パターンを効率の良いものに変更する事(3動作⇒2動作)
③両側下肢の筋力、特に足底屈筋ならびに股関節屈筋の強化を図る事
④非麻痺側下肢ならびに麻痺側を大きく振り出す事
⑤非麻痺側上肢を強く振るようにして推進力を得る事

以上のことに着眼点を置きながら、介入していく事が良いと思われます。

ただ、正常な歩行パターンに近づける事が、必ずしも歩行のスピードを高める事にはならない事に注意しなければなりません。

さらに、歩行速度を高めるためのポイントを記していきます。

○Dobkinらの試み

脳卒中片麻痺患者で、強制的に速く歩かせた群とそうでない群と比較すると、速く歩かせた群が歩行能力が改善されたと報告されています。

○杖を出すタイミング

歩行中の杖を出すタイミングを早くすることで、それがトリガーとなり歩行周期全体が速まる事が観察されています。また、杖を前に出すタイミングを早くすることは、下肢を大きく前に振り出して歩行速度を上げる場合とは異なり、歩行時のバランスや歩容を悪化させにくい利点があります。

○external cueの利用

外的な手がかりの事をcue(キュー:聴覚・視覚・体性感覚刺激)と言いますが、これを利用した課題は特にパーキンソン病患者に対して有効であるという報告が非常に多いですが、脳卒中患者に対しても有効ではないかと考えられています。

cueを利用した課題例は以下の通りです。

1)聴覚的手がかりを用いた歩行練習例
・杖をできるだけ速く出すように毎回声をかける
・メトロノームの音に合わせて杖を出す
・リズムをとるように患者の身体の一部(背中や肩)を軽くたたく(掛け声に合わせて)

2)視覚的手がかりを用いた歩行練習例
・床やトレッドミル上に引かれた直線や目印を次々と踏むようにして歩く
・セラピストは患者よりも前を速く歩き、患者はそれに追従する

3)フィードバックを用いた歩行練習例
・歩行中にパフォーマンスの知識(KP)を与える(例:「もっと早く足を出して!」「もっとスピードを上げて!」)
・歩行後に結果の知識(KR)を与える(例:「前回よりも3秒速くなっていますよ」「もっと速く歩けるはずです。今度は5秒短縮できるようにしましょうか」)
・KPとKRを同時に与える

○トレッドミルによる歩行トレーニング

(潮見 泰蔵:脳卒中患者に対する課題指向型トレーニング:文光堂:2015)


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