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正常歩行時にはどのくらい関節の可動域が必要でしょうか?臨床では理学療法士は必要に応じて、関節可動域制限に対してどこまで治療が必要なのかを根拠をもとに判断していきます。歩行を行う上で、どこまで可動域が必要なのかは、当たり前のように知っておく必要があります。

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今回は、正常歩行での関節の運動の軌跡を見直していきます。

○足関節

・足関節の底屈と背屈は歩行周期の間、交互に2回ずつ起こります。

・踵接地から底屈に動き、LR(荷重応答期)にて底屈は5°でピークを迎え、背屈方向に運動していきます。

・MSt~TSt(立脚中期~立脚終期)にかけて背屈は続き、TSt(立脚終期)で背屈は10°のピーク迎え、その後底屈方向に運動が変化します。

・PSw(前遊脚期)において背屈10°から底屈15°まで底屈方向へ変化します。

・ISw~MSw(遊脚初期~遊脚中期)にかけて背屈の動きで足部が持ち上げられます。背屈2°まで背屈していきます。

・以上より、正常歩行を行う際には足関節は背屈10°~底屈15°まで必要です。

○膝関節

・膝関節の屈曲と伸展は歩行周期で、交互に2回ずつ生じます。

・踵接地時は膝関節は平均5°屈曲位で、そこからLR(荷重応答期)では20°程度まで膝関節は屈曲していきます。

・MSt~TSt(立脚中期~立脚終期)では、屈曲20°の状態から伸展方向に運動し、平均伸展5°でピークを迎え、そこから屈曲方向へ動いていきます。

・PSw~ISw(前遊脚期~遊脚初期)において膝関節は急激に屈曲していき、ISw(遊脚初期)にて屈曲60~70°のピークを迎えます。

・MSw~TSw(遊脚中期~遊脚終期)においては、膝関節は伸展していき、TSw(遊脚終期)にて完全伸展位(0°)となります。

・以上より、正常歩行で必要な膝関節の可動域は、伸展0°~屈曲60°となります。

○股関節

・踵接地時は股関節はおよそ屈曲30°で、そこからMSt~TSt(立脚中期~立脚終期)にかけて伸展していきます。

・TSt(立脚終期)からPSw(前遊脚期)の移行期に股関節伸展10°のピークを迎え、そこから屈曲方向へ運動していきます。

・ISw~MSw(遊脚初期~遊脚中期)では股関節は屈曲し続け、MSw(遊脚中期)にて屈曲30°にてピークを迎えます。

・以上より、正常歩行にて必要な股関節の可動域は、屈曲30°~伸展10°となります。

○上肢

・肩関節は最大伸展24°~最大屈曲8°まで運動します。歩行速度が速くなると、肩関節伸展角度が増大し、最大伸展31°まで上昇します。最大屈曲には変化ありません。

(Perry,Jacquelin:ペリー 歩行分析―正常歩行と異常歩行:医歯薬出版:2012)


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臨床では、関節リウマチ(RA)を呈している患者さんは多いです。関節リウマチにより、人工関節をしておられる方や、まだ症状の軽度の方までおられます。関節リウマチを呈している方の運動療法は、実際にどのようなことに注意して実施していけば良いのでしょうか?

リハビリイラスト

まず、関節リウマチの患者さんになぜ運動療法を行うかとういう事についてですが、目的は以下の通りです。

・関節痛の軽減
・関節破壊の予防
・関節可動域や筋力の改善
・身体活動、ADL動作の改善

また、リハビリテーションを実施する前にリスク管理として注意して見ておく項目は、以下の項目です。

・X線画像検査、MRI検査、関節エコー検査、骨塩定量などの画像診断
・血液検査(赤沈値、CRP、リウマトイド因子、MMP-3、ヘモグロビンなど)
・薬物療法の治癒過程やその副作用

さらに、リウマチを呈している関節を実際に視診・触診し、関節の炎症所見がどの程度のものか確認して、痛みの原因が、①関節包内の軟部組織性、②骨性、③周囲筋の筋スパズムなのかを特定し、治療プログラムを立案していきます。骨性だと理学療法介入できませんが・・・

治療プログラムの立案の際に気をつけるポイントとしては、以下の項目があります。

①蜂窩織炎や毛細血管の弱化などが隠れている事があるため、皮膚の疼痛や発赤、内出血などに配慮していく
②関節包内か、周囲筋かにターゲットを絞ったアプローチを実施する
③アライメント不良が常に生じやすい事を想定し、リウマチの症状を呈している関節だけでなく、隣接する周囲の関節にも負担が生じていないかなど考慮したアプローチを実施する

治療内容としては、以下の3つが運動療法の3本柱になると思われます。

①関節・筋に対する治療(関節可動域制限や、異常な筋緊張に対してのアプローチ)
②筋力に対しての治療(筋力を向上していくアプローチ)
③ADL動作における負荷量の指導や体力的側面に対する治療

以上の方針で、リハビリテーション介入を行っていきます。

○関節可動域(ROM)訓練の実際

・関節リウマチの患者さんは、関節の炎症や疼痛が生じている事が多いために、関節内圧が高まる動きは疼痛が発生してしまうため、できるだけ関節内圧が変化しないような安楽肢位を自然ととるようになり、これが関節の不動につながり関節可動域制限を生じさせてしまいます。また、筋スパズムなどの持続的な筋収縮状態によっても、関節可動域制限を生じてしまいます。

・関節包内運動を実施する際、急性炎症期や不安定性、ムチランス変形のある関節は行わないほうがよいでしょう。

・筋スパズムに対して、罹患関節や周囲の隣接関節に対して、ストレッチなど筋緊張軽減を目的に実施します。

・物理療法なども併用するとよいでしょう。

環軸関節前方亜脱臼を考慮すると、頚椎に対するROMは行わないほうがよいでしょう。

○筋力訓練の実際

・MMTにて筋力を評価する際に、疼痛が強い場合はその周囲関節の筋力は出力抑制され、MMTにてちゃんとした評価ができない可能性があることも考慮し、疼痛検査を十分に評価する必要もあります。

・CRPや赤沈値が高く、全身状態が不良の場合や、ヘモグロビンなどの数値低下が見られ重度の貧血状態である場合は、筋力強化が期待できない場合が多く、低活動に伴う廃用症候群予防のための非荷重での等尺性収縮中心の介入が重要と考えられます。

・罹患関節が急性炎症期である場合は関節破壊を助長してしまうため、筋力訓練は中止します。

・炎症期では、等尺性収縮を中心とし、慢性期で骨破壊が見られない場合では等尺性収縮に加え、等張性収縮や荷重位でのCKCの筋力訓練などを取り入れていきます。

・立ち上がり動作やスクワットなど生活動作に反映できる運動や、筋の同時収縮を促す運動が効果的ですが、過負荷になると関節破壊を助長してしまうので、その日の夜か、次の日に疲労が残らないような回数・強度設定を行います。

・薬物の効果が現れる時間帯や、時期に実施できるような工夫も必要です。

・自主訓練として筋力訓練を指導する際は、回数を増やすというよりも収縮の強度を上げるように指導していくのがよいでしょう。

(佐浦 隆一、八木 範彦:関節リウマチ (リハ実践テクニック):メジカルビュー社:2014)

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