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転倒における内的因子と外的因子

転倒の危険因子には、対象者自身の特性である内的因子(intrinsic factors)と、環境や課題などの外的因子(extrinsic factors)があります。

○内的因子

身体的な物
・平衡機能(バランス能力)
・協調性
・筋力
・持久力
・柔軟性
・姿勢
・疾患
・感覚(視覚、体性感覚、前庭感覚など)

認知・心理・行動的な物
・注意
・意識状態
・高次脳機能(失認、失行、失語など)
・身体イメージ
・興奮状態
・抑うつ状態
・転倒恐怖感
・運動習慣
・性格

○外的因子

環境的な物
・床や路面の状態
・障害物
・段差や階段
・照明
・靴
・歩行自助具
・衣類
・薬物(精神安定剤、鎮痛薬、降圧剤)

課題や動作による物
・バランス能力の必要な課題(平均台など)
・大きな筋力の必要な課題(重量物の運搬など)
・スピードの必要な課題(急な呼び出しなど)
・二重課題(お盆を持って歩くなど)
・不慣れな動作(後ろ歩きなど)
・不意な外乱(電車の急停車など)
・感覚遮断(閉眼での作業など)

以上の因子が1つでも問題があれば転倒の危険性が生じ、危険因子が増えれば増えるほど転倒のリスクは上がります。

理学療法士が患者さんに対してできる事は、転倒の危険因子がどの程度あって、パフォーマンスや身体機能または精神機能への関わり、あるいは環境や動作課題の設定など個人に合ったアプローチをしていくことが大切だと思われます。

理学療法 第27巻第5号:メディカルプラス:2010)



または、こういう事も言われています。

○内的因子

基本的属性:年齢(80歳以上)、女性

身体機能:筋力低下、バランス機能低下、歩行能力の障害、視力障害、排尿・排便障害

医学的問題:脳卒中後遺症、パーキンソン症候群、関節疾患、起立性低血圧、高血圧、不整脈

認知・心理機能:認知障害、抑うつや不安、転倒恐怖

薬剤:睡眠薬、鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬、降圧薬、薬剤の数、薬剤感受性の変化

○外的因子

段差:敷居、戸口の踏み台

床の状況:カーペットの端・めくれ・ほころび・ずべりやすい床、床面の凸凹

照明:暗い照明、急速な照明変化

履物・衣類:不適切な履物(スリッパ・サンダルなど)、足が引っ掛かりやすい衣服

障害物:電気のコード、通り道の障害物

ベッドルーム:ベッドの不適切な高さ、ベッド周囲の家具の不適切な配置

(市橋 則明:運動療法学―障害別アプローチの理論と実際:文光堂:2014)


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筋痛

「なぜ筋肉痛になるのですか?」と聞かれた時には皆さんはなんと答えていますか?

今回はなぜ筋肉痛になるのかを考えていきます。

まず筋肉痛には「即発性筋痛」「遅発性筋痛」の2種類があります。

○即発性筋痛

即発性筋痛は運動後のすぐに生じるものです。

原因は2つ考えられます。筋膜の断裂の様な障害の時と、疲労物質が溜まる事によっておこる障害がありますが、ほとんどが後者の疲労物質によるものです。


疲労物質は何かというと、乳酸と一緒に作られる水素イオンです。水素イオンが多くなり、筋肉が極度に酸性になると「痛い」「重い」「だるい」という感覚が生じるのです。

ここで誤解しないようにしないといけないのですが、乳酸そのものは疲労物質ではありません。疲労物質が作られる際に一緒にできてしまう物なのです。

○遅発性筋痛

遅発性筋痛は、運動した翌日や翌々日に痛くなるというもので、一般的に良く言われる筋肉痛はこれに当たります。

どうして痛くなるのかというと、運動によって筋細胞の中にミクロの傷がつき、そこで炎症反応が起きます。炎症が生じると、外傷や毒素などで活性化するヒスタミンなどがたくさん作られます。その中に痛みやかゆみを引き起こす物質があるので、炎症とともに筋肉が腫れ、熱っぽくなったり、力を入れると痛くなったりという状態になるのです。

筋肉痛が生じやすい運動は、筋に負担がかかる遠心性収縮です。

筋の傷つきやすさも筋の状態に依存しており、普段運動習慣のない人が運動するとすぐ筋は傷ついてしまいます。高齢の方が筋肉痛が起こりやすいのも、普段の運動レベルが低い事が原因と思われます。

筋肉痛が生じると、白血球が集まって活性酸素を作り、細菌などの病原体を殺したり、傷ついた所をクリーニングしたりします。その際にオーバーリアクションとなり、必要以上になると筋肉痛がひどくなったり、長引いたりするのです。若い時は活性酸素に対する抵抗力は強いですが、年をとると抵抗力は次第に落ちてきます。これが、高齢になるほど筋肉痛が長引きやすくなる原因です。

(石井 直方:石井直方の筋肉まるわかり大事典:ベースボール・マガジン社:2008)


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脳卒中の発症

脳梗塞とは文字通り、脳の血管の一部が詰まり血流が途絶える事によって、脳細胞が壊死してしまう病気です。

脳への血流が途絶えてしまう事で、酸素と栄養(グルコース)の供給ができなくなってしまう事により脳細胞が壊死してしまうのです。

血流が途絶えてしまった部分の血流に対してさらなる障害悪化とならないように、脳梗塞後の脳血流維持のために考えるべき3つのポイントがあります。

「ペナンブラ」と「脳循環自動調節能」と「脳浮腫」の3つです。

○ペナンブラ

ペナンブラ

学校で習ったことはあると思いますが、「ペナンブラ」とは正常脳細胞と壊死した脳細胞の境界領域の事を言います。

この領域がなぜ大事かというと、ペナンブラ領域の血流がケアにより復活もしくは維持される事によって、神経機能の回復が再開される領域だからです。この部分の血流がストップしてしまうと、たちまち脳細胞の壊死が拡大してしまいます。そうならないように脳血流が十分に保たれるようにアプローチしていく必要があります。

○脳循環自動調節能

ペナンブラ領域の血流を救う為に重要な考え方として、「脳循環自動調節能」があります。

脳循環自動調節能

脳循環自動調節能とは、血圧が上昇したり低下したりして変動しても、脳の血管はそれに合わせて収縮や拡張によって変化し脳血流量を一定に保とうという働きがあります。この働きを脳循環自動調節能(autoregulation:オートレギュレーション)と言います。

正常な人では上のグラフのように、横軸が血圧ですが平均血圧60~160mmHgの範囲では脳血流は一定に保たれています。高血圧の人は自動調節能のグラフは右にシフトします。

それに対し、脳梗塞の発症後は自動調節能が破綻しており、血圧の変動によって脳血流量が変化してしまいます。特に発症後は、離床による血圧低下によってペナンブラ領域への血流量が低下していないか注意が必要です。

特に急性期は安易に積極的離床を進めず、離床の段階をチームで検討しなくてはなりません。

一般的な脳梗塞後の脳循環自動調節能の破綻期間は以下に示します。こういった期間を過ぎると脳循環の自動調節能は回復してきます。障害のタイプにより期間は異なっています。

脳梗塞の自動調節能の破綻期間

○脳浮腫

脳浮腫とはいわゆる脳がむくんでいる状態の事であり、脳の細胞内・細胞間質に液体がたまっている状態の事を言います。

脳浮腫は脳圧を亢進させ、脳ヘルニアの引き金になるため、注意が必要です。

脳圧とは頭蓋内圧とも言い、通常は60~180mmH₂Oで保たれています。

脳圧を決定する因子は脳実質、脳脊髄液、血液の3つですが、通常頭蓋内での割合は8:1:1(脳実質:脳脊髄液:血液)です。このバランスが崩れると脳圧が亢進します。

そもそもなぜ脳浮腫が起こるかというと、脳出血や脳梗塞後は、血液脳関門(BBB)という有害物質の侵入を阻止する警備員の様な働きをするシステムが破綻します。そうなると、普段は通過できないナトリウムイオンアルブミンなどが通過してしまいます。

細胞間質にナトリウムイオンやアルブミンが流れ込む事で、浸透圧による濃度勾配が起き、血漿中の水分が細胞間質に流れ込み、脳浮腫が生じます。

こういった脳浮腫が生じ、脳圧が亢進すると脳圧亢進症状(頭痛、悪心、嘔吐、うっ血乳頭、意識障害、瞳孔不同、対光反射の減弱、消失、呼吸の変化、クッシング現象)が出現します。

(飯田 祥、黒田 智也、久松 正樹、野々村 雅文、曷川 元:離床への不安を自信に変える脳卒中急性期における看護ケアとリハビリテーション完全ガイド (Early Mobilization Mook):慧文社:2015)


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検査結果に悩むドクター

急性期のみならず、回復期においてもリスク管理に注意して離床を考えていかなければなりません。今回は、血液データに焦点を当てて、実際に離床に影響する病態の指標となる検査項目や安全に離床を進めていくための留意点・対処法を考えていきます。

ただ、実際は血液データだけにとらわれず総合的に判断し、医師と連携を取りながら離床を進める必要があります。

①貧血

貧血であるという事は、全身に酸素を運ぶ役割をする赤血球の数量の減少や、形や成分が低下している事です。指標となる検査項目は、赤血球数、ヘモグロビン値、赤色素量などです。

離床などによる運動負荷により、全身の酸素需要が高まりますが、貧血の状態だと十分に全身に酸素が供給できず酸素不足になる可能性があります。

貧血の症状を呈している時は、患者さんはリハビリに対し意欲的に行う事ができず、拒否的言動を示す事があります。患者さんの貧血時の症状(息切れ・唇や爪の色・冷や汗・動悸・めまい・頭痛)を観察し、症状がみられた場合は離床を中止し、医師や看護師に報告・相談します。

また、貧血の症状がある時は、たとえ症状が安定していても医療処置・清潔行為・食事・排泄などの直後に離床を行わない方が望ましいです。

②炎症

指標となる検査項目は、白血球数、CRPなどです。

離床によって、栄養や酸素を消費しすぎると、患者さんの防御機構に負担がかかり、体力消耗によって離床への気力が減退してしまう可能性があります。

38℃を超える発熱の場合は、休憩し栄養・水分・酸素を十分に補給する必要があります。

③出血傾向

指標となる検査項目は、血小板数、フィブリン、プロトロンビン時間、活性化部分、トロンボプラスチン時間(APTT)、FDPなどです。

出血傾向にあると、少しの刺激でも出血・内出血が生じやすくなるため、介助やポジショニングで注意が必要です。

特に臥位時あるいはギャッジアップ時の仙骨部や殿部の摩擦やズレや、体重が1箇所に集中しないように注意する必要があります。

④栄養不良

指標となる検査項目は、TP、Albなどです。

カロリー不足が生じると、自分の体内のたんぱく質や脂肪を分解してそれをカロリーとして使用しますが、離床によりカロリー消費が増えるため、栄養状態が悪化してしまいます。

栄養不足による症状としては、疲労、冷え、浮腫、筋力低下、気力低下・無表情などです。

⑤肝機能の異常

指標となる検査項目は、TB、HB、GOT、GPT、LDHなどです。

肝機能障害がある場合は、老廃物の蓄積、エネルギー貯蔵や配給能の低下から、倦怠感、脱力感、かゆみ、嘔気、体重減少、消化管出血、浮腫などが起こります。

肝臓の血流は、座位や立位よりも臥位の方が増加します。よって離床によって肝臓への血流は低下してしまうので、肝細胞回復の支障となる可能性があります。しかし、慢性期や代償期の肝機能障害では無理のない範囲で運動する事が進められています。

よって、離床の際には肝臓の血流を円滑にさせるため、食事・経腸栄養摂取後1~2時間程度は安静臥床を優先し、離床を避ける必要があります。運動負荷も自覚症状に注意し、患者さんが心地よい負荷量となるよう調節します。

⑥血糖値の異常

膵臓から分泌される「インスリン」が不足すると血糖値が上昇しますが、指標となる検査項目は、血糖値のほかHbA1cなどです。

離床などによる運動負荷によって、エネルギー消費が増加すると血糖値の変化が生じてくる可能性があります。

低血糖の症状として、冷や汗、手の震え、めまい、目がチカチカする、動悸、あくび、脱力感などがあり、さらに症状が進行すると、思考力の低下、異常行動、痙攣、意識障害、昏睡の状態になります。

低血糖の症状が出た場合は、離床を中止して医師や看護師に相談します。

⑦腎機能の異常

指標となる検査項目は、BUN、Cr、電解質の乱れ(ナトリウム、カルシウムの低下、カリウムの上昇)などです。

離床などの運動負荷によって、新陳代謝が活発となり老廃物の産生が増加しますが、腎機能が低下して濾過機能が低下していると血液中の老廃物が体内に溜まり、疲労感・嘔気・広い範囲の皮膚のかゆみ・浮腫・不整脈などの症状が出現します。

腎不全であっても腎機能が安定していれば日常生活動作において特に問題は無いと言われていますが、急激に腎機能が低下した場合は離床を中止する場合があります。

腎機能低下による自覚症状(倦怠感、疲労感など)が生じますが、患者さんによっては無理をされる場合がありますので、活動の範囲に注意していきます。

⑧電解質異常

指標となる検査項目は、Na、Cl、K、Ca、Mgなどです。これらは主な電解質ですが、神経や筋肉の機能を含む体の細胞が正常に機能するために必要です。

電解質のバランスが崩れると、倦怠感、疲労感、しびれ、脱力感、筋力低下、嘔気、不整脈、錯乱、意識障害、浮腫などの症状を呈します。

電解質異常の原因としては、手術や感染による身体侵襲期、絶食や臓器障害による摂取量と排泄量のバランス不良、循環障害による水分バランスの調節不良、薬剤の効果などがあります。

離床そのものが電解質の異常の悪化となる可能性は低いですが、電解質異常が進んだ場合、急変を生じるかもしれないという予測のもとに関わる必要がありそうです。

(曷川 元:実践!早期離床完全マニュアル―新しい呼吸ケアの考え方 (Early Ambulation Mook):日本離床研究会:2007)


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高齢者 後ろ姿

高齢者は動作の敏捷性が低下しており、転倒のリスクが高くなっています。

敏捷能力には①反応時間、②運動の切り替えの素早さ、③筋の収縮速度の3つの要因が含まれています。

これらは加齢により低下してきますが、この3つの要因により高齢者は素早く動作する事ができなくなっています。

主な原因としては、収縮速度が速いtypeⅡ線維(速筋線維)が優位に萎縮してしまう事、拮抗筋の共収縮(co-activation)増加により強調的な関節運動が阻害されている事にあります。

こういった敏捷能力の低下に加え、筋パワーが低下する事で高齢者は転倒を起こしてしまいます。

こういった場合、敏捷性向上のためのトレーニングとしては、遅い筋収縮速度のトレーニングよりも速い筋収縮速度でのトレーニングが有効となります。

実際に筋力トレーニングをする際は、速筋線維(typeⅡ線維)に対して筋肥大を目的に負荷をかけていく場合、強い負荷が必要となってきますが、高齢者で行う際には筋骨格系障害のリスクが高くなったり、モチベーションの低下などあまり強い負荷はお勧めできません。

高齢者に対して行う際には、自重を用いたトレーニングで主に立位中心のトレーニングが安全で簡便に行えます。

実際には、Borgスケール15「きつい」を超えない程度で徐々に負荷を上げていきます。

具体的なトレーニングメニューとしては、以下の通りです。

①椅子からの立ち上がり

→できるだけ素早く動作を行います。負荷を増やすには、椅子の座面を徐々に低い物にしていく事で増やしていきます。

②ステップ台の昇降運動

→できるだけ素早く登り降りします。これも、台の高さを徐々に上げていき難易度を高くしていきます。前方からの上り下りや、側方からの上り下りで下肢全体をトレーニングします。

③交互足踏みトレーニング

→できるだけ立位で速く足踏みを行いますが、立位バランス不安定な患者さんは手すりなど支持しながらの足踏みから開始していきます。できるようになれば、徐々に難易度を上げていき、不安定なバランスマット上での足踏みなどを行っていきます。

④ステッピングトレーニング

→前方・側方・後方へのステッピングの練習ですが、素早く足を踏み出していきます。一歩踏み出す大きさは徐々に大きくしていきます。

⑤クロスステッピングトレーニング

→前側方や後側方に一歩足を踏み出して戻す練習です。素早く足を踏み出していきます。できるようになってきたら、徐々にステップの速度を速くしていきます。

(武良 由雄、市橋 則明:理学療法プログラムデザイン〈2〉ケース別アプローチのポイントと実際:文光堂:2012)


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体幹筋

腹横筋はインナーマッスルの一つとして知られていますが、後方では胸腰筋膜に付着して、腹腔内圧に関与すると言われ、上肢・下肢の運動に先行して収縮するなどの特徴があります。

健常人はもちろん、運動器疾患、脳血管疾患の患者さんにも共通して言える事ですが、腹横筋の機能が向上する事で体幹・骨盤帯の安定性を向上する事ができ、四肢運動の安定化、日常生活活動やスポーツにおいてパフォーマンスの向上が期待できると言われています。

腹横筋研究は主に超音波診断装置をが使用されており、腹横筋の筋厚が増大する事は腹横筋収縮を意味しています。

まず、腹横筋の触診ですが、腹横筋は上前腸骨棘(ASIS)の2横指内側の部分が1番触診しやすい場所です。その場所を指で押さえ、深呼吸をしてもらうと奥の方でわずかに横にスライドするような感覚があると思いますが、それが腹横筋の収縮です。大きく手前に張りだすような筋の張力の高まりは内腹斜筋の緊張なので、間違えないように注意します。

腹横筋を単独で収縮させる場合は、骨盤底筋群を収縮させると良いです。コマンドとしては、男性の場合は「精巣挙筋を上にあげる様な感じ」、女性の場合は「腟を上に引き上げる様な感じ」で収縮を入れると、筋連結により腹横筋を単独で収縮させることができます。ただ、この方法は収縮感覚が分かりにくいので高齢者などには難しいと思われます。

そして、腹横筋の収縮が確認できたら、次に骨盤帯が十分に固定(stability)できているかを評価します。

下図のようにSLR(下肢挙上運動)を行い、下肢がどの程度上げられるのかと、下肢挙上時の骨盤の後方回旋が生じているのかの評価をします。

骨盤帯固定性の評価

例えば、右下肢挙上をした際に右の骨盤後方回旋が生じているが、左下肢を挙上した際よりも後方回旋が強い場合は、左の腹横筋の機能低下と判断します。

これは、一側下肢の挙上で反対側の腹横筋が働くためです。

この評価により、左右どちらかの腹横筋の機能低下が生じている場合、その腹横筋に対してエクササイズをしていきます。

(福井 勉:ブラッシュアップ理学療法―88の知が生み出す臨床技術:三輪書店:2012)


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アフォーダンス 椅子

アフォーダンスという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

アフォーダンスとは「環境から人に提供される意味」の事であり、アメリカの心理学者Gibsonが造った造語で、「与える・提供する」という意味を持つ動詞「afford」に、「状態・性質」という意味を持つ名詞語尾「ance」を組み合わせたものです。

アフォーダンス理論においては、人を取り巻く環境の中に行為を変化させうる状況(良い物と悪い物の両方)が存在しており、人は目的に応じてその情報を取捨選択しながら行為をしていると考えられています。

ちょっと何の事か分かりにくいのですが、例えば、上の写真は椅子ですが、たいていの人はこの椅子は座るものだと認識しており、何も考えなくても目の前にあれば座ろうとすると思います。

それは行為者の今までの経験と、行為者とその椅子の関係が、「座れる」というアフォーダンスになったからです。

これが、椅子に座れないくらい小さな子供や、座ると壊れてしまそうなくらい大きな力士にとっては、この椅子と行為者の間には「座れる」というアフォーダンスはありません。

また、手に持った荷物をどこかに置きたいという状況でこの椅子をみた場合、この椅子との関係性は「荷物置き」というアフォーダンスになりますし、何か手が届かない所の物を取りたい場合は椅子との関係性は「踏み台」になるかもしれません。

つまりアフォーダンスは、行為のいろいろな可能性の予見情報を我々が直接に知覚し、その時の事物が与えてくれる行為可能性の予見情報であると言えます。

椅子は本当はいろいろな使い方があるかもしれません。「座る」「踏み台にする」「荷物を置く」「地震がきた時には下に隠れる」「倒れそうになった時につかまる」「振り回して遊ぶ」「2つならべてベッドにする」・・・・・など。こういった様々な情報の中から、環境下に応じて知覚者が最適な情報をピックアップするのです。

Gibsonは人を環境に対して能動的に探求する存在と位置づけ、動くために知覚を利用して、知覚するために動くという人と環境との相互作用が常に行われ、自分がおかれた環境の中で得られた情報をもとに予測的・無意識的に行動していると言っています。

これまた難しく感じますが、例えば、左片麻痺の患者さんで、歩行が非常に不安定であり、車椅子自走レベルの方が、居室でベッドから起きて洗面台に水を飲もうとした時の場合です。普段はふらつきが著明でとても歩いて洗面台まではいけませんが、ある日、テレビ台につかまって歩いて洗面台まで行ってしまっていたという事が起こりました。

患者さんとしては、その時はベッドから手が届くテレビ台につかまれば歩いていけると思ったとの事でした。この場合、ベッドと洗面ヂの間のテレビ台が「歩いていくことができる」というアフォーダンスを提供し、それを患者さんが選択した事にあります。

病棟内での転倒のリスク、患者さんが一人で行動しないようにという事を考えた時に、環境下としてはどのような配置が安全だったのかを考えさせられる現象ですね。

(地神 裕史、斉藤 秀之:上肢の理学療法-局所機能と全身運動を結びつけるインタラクティブ・アプローチ:三輪書店:2016)


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APAという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

APAとは「先行随伴性姿勢調節」の事で、来るべき運動に伴って生じるであろう身体動揺・外乱を見越して、それらを最小限に抑える運動に先行する姿勢調節のための筋活動の事です。

例えば、リカちゃん人形を立たせたまま腕を上げようとすると、上肢の重みでリカちゃん人形は前に倒れてしまいます。これは上肢の重みを体幹や下肢で支える事ができないので前に転倒してしまいますが、我々はそうはなりません。

上の写真の女の子は、上肢を前方にリーチしていますが、上肢を挙上するほんの少し前に体幹などの姿勢保持に関わる筋の活動が生じます。

つまり、「上肢を挙上する」という課題に対して、上肢を挙上する外乱においてどのくらいの姿勢調節のための活動が必要なのかを無意識的に見積もり、運動による不安定性に備えているのです。このフィードフォワード・システムこそがAPAです。

APAには、pAPAaAPAの2つの構成要素からなります。

pAPAは、主運動から0.1秒以上も前から活動を開始して、運動にて生じる不安定性に備えるAPAです。

aAPAは、主運動開始0.1秒前から0.05秒後の間のAPAです。このAPAは運動自体からのフィードバックを受けません。

こういったシステムが我々の日常生活で無意識に機能しているのですが、APAはある要件を満たしてしまうとその機能が減弱して、運動パフォーマンスが低下してしまいます。

APAのシステムを減弱させてしまう要素は以下の4つです。

①外部の固定されたバーを握ったりした堅固な姿勢

手すりなどにしっかりつかまって運動する場合、その手すりが安定性の拠点となってしまいます。こうなると外乱を補償するフィードフォワード・システムは必要なくなるため、APAは減弱します。

これは、平行棒やベッド柵、車椅子のアームレストをつかんで運動する事でも同じことが言えます。

②細い梁の上など、極めて不安定な状態で運動した場合

不安定な状態で運動する、すなわちCOGの真下にCOPを入れ込むという作業です。運動というより姿勢保持がその主目的となりますが、COGとCOPの一致感覚がAPAのダウン・レギュレーションの感覚になると考えられています。

③上肢活動を伴わない、静的座位

車椅子の背もたれに寄りかかった姿勢や、椅子の背もたれによりかかった姿勢では、体幹の筋活動はほとんど生じず、APAシステムは減弱してしまいます。ただ、そのような姿勢の中でも上肢を動かした場合はそれが外乱となるので、補償的にAPAは賦活します。

つまり、背もたれに寄りかかり上肢を動かさないでいると、APAが減弱してしまいます。

④身体内部において、努力的過剰筋活動による固定部位がある場合

グローバル筋や末梢部位を過剰に使う事によって、相反的にローカル筋が抑制される事になってしまいます。この状態では腹内側系のシステムが抑制されている状態であり、APAも抑制されている事を示します。

APAを賦活するためにも上記の①~④にならないように、課題設定や環境設定をしていく必要がありますね。

(丹波 真一、山岸 茂則:運動の成り立ちとは何か―理学療法・作業療法のためのBiNI Approach:文光堂:2014)


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Stop Standing

ボバースセラピストが用いる手技の一つに「Stop Standing(ストップスタンディング)」があります。

立っている状態で静止する練習ではありません。「立つ事を止める」すなわち、着座の動作(立位→端座位)においての体幹・骨盤のコントロールを促していく手技です。

動き始めとしては、股関節のストラテジーではなく、足関節のストラテジー(足関節背屈の動き)を使うようにして、両足部の支持面の安定・コアスタビリティの向上・対称性の再獲得・下腿三頭筋やハムストリングス、広背筋等の短縮の改善を目的とした手技です。

なので、動きはじめは体幹の屈曲を入れるのではなく、体幹は伸展位をキープしたまま着座への運動を開始していきます。

脳卒中片麻痺患者さんの場合は、屈曲パターン優位な事が多いため体幹屈曲が先行し、麻痺側股関節が後退する代償をとりやすい状態となっています。

こういった場合は、セラピストがPKP(Proximal key point:近位部のキーポイント)である骨盤をキーポイントにして操作し、できるだけ屈曲パターンを使わせずに足関節ストラテジーを強調させるように誘導していきます。

そして殿部を下げていき、より座位に近い姿勢でセラピストはPKPをキーポイントに骨盤の前後傾を促し、その肢位でコアコントロールを促通していきます。

この骨盤の前後傾の動きをだす事によって、広背筋の短縮を改善させ、下肢の同時活動も高めていきます。

ストップスタンディングの操作により、橋網様体脊髄路系のフィードフォワードの作用による、コア・コントロールの機能を回復させる事につながってきます。

(古澤 正道:脳卒中後遺症者へのボバースアプローチ〜基礎編〜 (運動と医学の出版社の臨床家シリーズ):運動と医学の出版社:2015)


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