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APAという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

APAとは「先行随伴性姿勢調節」の事で、来るべき運動に伴って生じるであろう身体動揺・外乱を見越して、それらを最小限に抑える運動に先行する姿勢調節のための筋活動の事です。

例えば、リカちゃん人形を立たせたまま腕を上げようとすると、上肢の重みでリカちゃん人形は前に倒れてしまいます。これは上肢の重みを体幹や下肢で支える事ができないので前に転倒してしまいますが、我々はそうはなりません。

上の写真の女の子は、上肢を前方にリーチしていますが、上肢を挙上するほんの少し前に体幹などの姿勢保持に関わる筋の活動が生じます。

つまり、「上肢を挙上する」という課題に対して、上肢を挙上する外乱においてどのくらいの姿勢調節のための活動が必要なのかを無意識的に見積もり、運動による不安定性に備えているのです。このフィードフォワード・システムこそがAPAです。

APAには、pAPAaAPAの2つの構成要素からなります。

pAPAは、主運動から0.1秒以上も前から活動を開始して、運動にて生じる不安定性に備えるAPAです。

aAPAは、主運動開始0.1秒前から0.05秒後の間のAPAです。このAPAは運動自体からのフィードバックを受けません。

こういったシステムが我々の日常生活で無意識に機能しているのですが、APAはある要件を満たしてしまうとその機能が減弱して、運動パフォーマンスが低下してしまいます。

APAのシステムを減弱させてしまう要素は以下の4つです。

①外部の固定されたバーを握ったりした堅固な姿勢

手すりなどにしっかりつかまって運動する場合、その手すりが安定性の拠点となってしまいます。こうなると外乱を補償するフィードフォワード・システムは必要なくなるため、APAは減弱します。

これは、平行棒やベッド柵、車椅子のアームレストをつかんで運動する事でも同じことが言えます。

②細い梁の上など、極めて不安定な状態で運動した場合

不安定な状態で運動する、すなわちCOGの真下にCOPを入れ込むという作業です。運動というより姿勢保持がその主目的となりますが、COGとCOPの一致感覚がAPAのダウン・レギュレーションの感覚になると考えられています。

③上肢活動を伴わない、静的座位

車椅子の背もたれに寄りかかった姿勢や、椅子の背もたれによりかかった姿勢では、体幹の筋活動はほとんど生じず、APAシステムは減弱してしまいます。ただ、そのような姿勢の中でも上肢を動かした場合はそれが外乱となるので、補償的にAPAは賦活します。

つまり、背もたれに寄りかかり上肢を動かさないでいると、APAが減弱してしまいます。

④身体内部において、努力的過剰筋活動による固定部位がある場合

グローバル筋や末梢部位を過剰に使う事によって、相反的にローカル筋が抑制される事になってしまいます。この状態では腹内側系のシステムが抑制されている状態であり、APAも抑制されている事を示します。

APAを賦活するためにも上記の①~④にならないように、課題設定や環境設定をしていく必要がありますね。

(丹波 真一、山岸 茂則:運動の成り立ちとは何か―理学療法・作業療法のためのBiNI Approach:文光堂:2014)


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Stop Standing

ボバースセラピストが用いる手技の一つに「Stop Standing(ストップスタンディング)」があります。

立っている状態で静止する練習ではありません。「立つ事を止める」すなわち、着座の動作(立位→端座位)においての体幹・骨盤のコントロールを促していく手技です。

動き始めとしては、股関節のストラテジーではなく、足関節のストラテジー(足関節背屈の動き)を使うようにして、両足部の支持面の安定・コアスタビリティの向上・対称性の再獲得・下腿三頭筋やハムストリングス、広背筋等の短縮の改善を目的とした手技です。

なので、動きはじめは体幹の屈曲を入れるのではなく、体幹は伸展位をキープしたまま着座への運動を開始していきます。

脳卒中片麻痺患者さんの場合は、屈曲パターン優位な事が多いため体幹屈曲が先行し、麻痺側股関節が後退する代償をとりやすい状態となっています。

こういった場合は、セラピストがPKP(Proximal key point:近位部のキーポイント)である骨盤をキーポイントにして操作し、できるだけ屈曲パターンを使わせずに足関節ストラテジーを強調させるように誘導していきます。

そして殿部を下げていき、より座位に近い姿勢でセラピストはPKPをキーポイントに骨盤の前後傾を促し、その肢位でコアコントロールを促通していきます。

この骨盤の前後傾の動きをだす事によって、広背筋の短縮を改善させ、下肢の同時活動も高めていきます。

ストップスタンディングの操作により、橋網様体脊髄路系のフィードフォワードの作用による、コア・コントロールの機能を回復させる事につながってきます。

(古澤 正道:脳卒中後遺症者へのボバースアプローチ〜基礎編〜 (運動と医学の出版社の臨床家シリーズ):運動と医学の出版社:2015)


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