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代償運動

みなさん「代償動作」に対してどう考えられていますか?「代償動作」があると何がいけないのでしょうか?臨床上問題となる代償動作とは一体何なのでしょう?

そもそも「代償動作(代償運動)」とは、目的とする運動の不全を補助するために代償して起こる運動の事を言います。

代償動作と一概に言っても、以下のような種類に分かれます。

代償動作の種類

①固定部位による代償

この代償は、運動時に本来固定作用として働くはずの部位が固定として作用せず、他の部位が補助のために過剰に働いてしまうという代償です。

例えば、上肢を外転する際に、肩甲骨の挙上を伴いながら外転したり、体幹を側屈させながら外転したりしてしまう状態の事です。

②固定部位不全を補う代償

②とは逆に固定部位の不全によって生じてしまう代償運動です。

例えば、臥位にてSLRの運動をする際に、通常であれば腹部が腹筋群にて固定された状態で下肢が挙上できるのですが、腹筋群の固定する力が無いために、背筋群が過剰に収縮して腰椎前弯を生じて下肢を挙上してしまう状態です。

③補助筋による代償

同じ作用を持つ筋で補助筋が主に活動してしまう状態の代償です。

例えば、側臥位で股関節外転を行う際に、中殿筋の筋力が弱いために大腿筋膜張筋の筋力を主に使用し、股関節屈曲位での外転の運動を生じてしまう状態です。

④身体重量配分による代償

これは例えば、歩行の立脚期においては股関節外転筋が作用しますが、中殿筋の機能不全が生じている場合、骨盤の安定性が保たれないために体幹を立脚側側に傾けてトレンデレンブルグ様の歩行をする事です。

すなわち、身体重量配分を変化させることによって、機能低下している部分を代償している状態です。

⑤補助動作による代償

例えば、立ち上がりの際に大腿四頭筋の筋力の低下があるため、自分の手で膝を押さえて立ち上がる動作の事です。

すなわち、身体機能の低下している部分を別の動作で補う為の代償と言えます。

⑥補助具使用による代償

これも同じく、立ち上がり動作で例えると、下肢の筋力低下の要因から、近くの台や柵につかまって立ち上がる事を言います。

つまり、身体機能の不足している部分を補助具を利用する事によって代償している状態です。

⑦その他の代償

その他の代償としては疼痛を回避するための代償や、拮抗筋の短縮、関節構造の問題を補う代償、生活環境に影響を受けた代償など様々あります。

以上のように代償動作は区分されます。さまざまな理由により代償動作は起こっていますね。まず、代償動作が何で起こっているかを考察する必要があります。

そして、「問題となる代償動作」なのか「問題とならない代償動作」なのかを判断していく必要があります。

例えば、肘掛椅子の肘掛けにいつも上肢を置いて踏ん張って立っている人がいるとしたとしても、それで動作が十分に行えており、習慣的にその動作を行っている「くせ」の様な状態でやっているのであれば問題になるとは言えません。あるいは心理状態が原因となって行っているかもしれません。

この肘掛けに上肢を置くという動作が、上肢の痛みを生じさせたり、動作の効率性が低下して逆に疲労が強く生じるなどの問題が生じるようであれば、その代償動作は問題と言えます。

問題となる代償運動の原因が明確であれば、その原因を解決する事が優先されます。運動療法によって、関節機能の低下なのか、筋力低下なのか評価によって明確にして治療を行っていきます。これらの問題が解決しないと代償運動は修正できません。

実際の臨床では、代償動作の原因が簡単に分かる場合もありますが、原因が何なのかが特定が難しい場合もあります。

例えば、歩行の立脚期において骨盤が後方回旋するという動作が確認できた時に、一目で原因はここと判断するのは難しいと思われます。それは股関節の伸展の筋力の問題かもしれないし、股関節の可動域の問題かもしれませんし、膝関節の伸展筋力の問題、足関節の背屈の可動域の制限かもしれません。あるいは反対側の下肢の問題の可能性もあります。

われわれ理学療法士は、こういった代償動作の原因がどこにあるのか評価をしながら追求し、その機能低下している部分にアプローチをしていきます。

(高橋 哲也:ここで差がつく“背景疾患別”理学療法Q&A (理学療法NAVI):医学書院:2016)


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半側空間無視

脳卒中患者さんで、半側空間無視が出現している方のリハビリテーションを行う際、この症状はどのくらい良くなって、いつまで回復が続くのか答えられますか?

半側空間無視に関しては、現時点では明確な発現メカニズムは解明されておらず、責任病巣も多様であり、プロトタイプな運動療法というのはなかなか設定できない状態かと思われます。

運動療法においてはそれぞれの患者さんにあったアプローチを設定されていると思われますが、予後は現在までにどのように言われているのでしょうか?

○半側空間無視の予後

・脳卒中発症後最初の数ヶ月で部分的な回復を示す。

・脳卒中発症後3.4週で29%が消失し、平均13.7週間の入院期間中に87%が消失する。

・半側空間無視が4週間以上続くと、障害として残りやすく様々なADL阻害因子となるとされる。

・被殻出血において、血腫量が20mlを超えると半側空間無視の出現リスクが増大し、40ml以上では残存する事が多いとされる。

・脳卒中の自然回復は発症後2~3カ月までに起こるものであるが、その時点でも視空間無視は患者の約1/3に残存し、慢性状態に陥る。

・視空間無視の回復曲線は12~14週でフラットになり、無視の神経学的自然回復は変化しなくなるとの報告がある。

・無視の回復に影響を与える因子としては、一般的に病巣の大きさと病巣と病巣周辺の血流量のほか年齢、病前知的能力(教育歴)などが報告されているが、症例差が大きいために予測が困難である。

以上となりますが、臨床的にみる半側空間無視の患者さんの状態に合っている様な気がします。

患者さんによって半側空間無視の回復を阻害する因子もいろいろあるのではないかと思いますが、大まかにこれくらいを目途にという予測を持ちながら、運動療法を進めていくことが重要になってくるのではないかと思われます。

(阿部 浩明:高次脳機能障害に対する理学療法:文光堂:2016)


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