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血糖が持続することは血管の内壁を傷つけ、動脈硬化などの良くないことを引き起こし、狭心症や心筋梗塞、脳卒中の原因を作る可能性があります。

運動療法によって血糖値の上昇を抑える介入をするはずが、逆に運動によって血糖値を上げてしまったなんてこともあります。それはどんなときなのでしょうか?セラピストはそういう場合もあることを気をつけなければいけません。

3つの場合が考えられます。

①適切な血中インスリン濃度がないと、骨格筋での糖利用よりも肝臓での糖新生が上回り、血糖が上昇する。

健常者では肝臓からの糖放出と末梢組織での糖利用が等しく、血糖値は食事や運動の影響を受けずに狭い範囲でコントロールされています。しかし、糖尿病患者では病態としてのインスリン分泌不全やインスリン抵抗性のために、①肝臓の糖放出の抑制不全、②食事由来のブドウ糖の肝糖取り込み低下、③末梢組織での糖取り込み低下によって高血糖が生じます。

空腹時血糖値が250mg/dL以上の血糖コントロール不良患者では、運動療法は勧められません。

⇨安易に運動を開始するのではなく、このような状況下では運動は控えた方がいいということを頭に入れておいた方が良さそうですね。

②高強度の運動により、インスリン拮抗ホルモンの過剰な分泌が起こり血糖は上昇する。

インスリン拮抗ホルモンにはグルカゴン糖質コルチコイド、カテコラミン、成長ホルモンなどがあり、これらの過度の分泌は肝臓の糖放出の亢進、末梢組織でのインスリン抵抗性の増悪を介して血糖を上昇させます。インスリン拮抗ホルモンの分泌は運動強度と相関して増加し、嫌気性代謝閾値(AT)を越えると顕著になると言われています。したがって高強度の運動では血糖が高くなる可能性があります。

⇨こう考えると、やはり強い運動処方は良くないなということが分かります。

強い運動負荷をかけて血糖値を余計に上げないように、担当の理学療法士は注意しておく必要がありますし、患者さんが自主的に運動する際はこのことを念頭にして運動をして頂くことが重要かと思います。

③心理的要因、外的環境により血糖上昇を招く。

心理的ストレスや運動中の痛みは、インスリン拮抗ホルモンを増加させて血糖が高くなる可能性があります。また、30度以上の高温下の運動でも交感神経系の活動が活発になり、血糖の上昇を招きます。

⇨交感神経系が過活動になるような状況も血糖値を上昇させてしまうのですね。患者さんには出来るだけストレスの無いようにリハビリテーションを実施し、あまり暑く無い最適な温度の部屋でリラックスして行うことが理想ですね。

(:ここで差がつく“背景疾患別”理学療法Q&A (理学療法NAVI):医学書院:2016)

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歩行時の腕の振りは、誰しもが歩行をすると自然と出てきます。ただ、なぜ上肢を振る必要があるのか答えられますか?

また、脳卒中後の患者さんや、パーキンソン病の患者さんは一様に上肢の振りが少なく、体幹固定で歩いているような印象です。何故なんでしょうか?

言われる事としては、、、

「ヒトが上肢を振って歩く理由は、主に歩行時のエネルギー消費を抑えるためと、歩行時の安定性を保つためと考えられている。」

「同じ速度での歩行において、自然な上肢の振りをした場合は、上肢を振らずに歩いた場合に比べて約8%エネルギー消費量が減少する。」

とあります。

実際に上肢を振って歩くのと、振らずに歩くのでは振って歩いた方が確かに楽に歩けるような気がします。

どういうことが起こっているかというと、、、

「自然歩行では左右交互に振り出される下肢の動きによって、身体の鉛直軸周りに回転運動が生じる。それに対して上肢は、下肢の動きとは拮抗する方向に左右交互に振られ、身体全体の角運動量を限りなくゼロに近づけている。それにより、余分な筋力の発生が抑えられ、エネルギー消費も抑えられる。」

とあります。

つまり「でんでん太鼓」みたいなイメージですよね。

バイオメカニクス的には、下肢・体幹の回旋の動きをキャンセルする役目が上肢の振りにはあると言われていますが、まさにその通りであると言えますね。

実際に、上肢を振っている時の上肢の筋活動はどうなのかというと、、、

「上肢の振りは主に肩関節屈伸で行われているが、肩関節周囲筋の収縮はほとんど認められないか、三角筋や広背筋、僧帽筋にわずかに認められるのみである。したがって歩行時の上肢の振りは、肩甲帯の回旋や慣性力、重力などの作用により主に受動的に行われている。」

ということです。

イメージ通りで、上肢は自分で振ろうとして振っているわけではなく、受動的に上肢を振っている訳ですね。

ということは逆に言えば、下肢の振り出しが少なく、歩行時の体幹の回旋が少ない方は自然と上肢の振りが少なくなると言えますね。

また、

「歩行時の安定性については、自然歩行における腕の振りは限定的であるが、歩行時に外乱が加わった時などは上肢の動きを利用してバランスを回復する。そのため、腕を拘束した歩行では安定性が低下すると言える。」

とあります。

確かに、綱渡りをするように歩行するときはバランスを取るために、いつもより大きく上肢を動かして歩いていく印象です。安定性を取るための上肢の動きとして利用できる場合もあるということですね。

上肢は歩行中に振ることが出来て損はなく、安定性にも良いと言えますね。

(市橋 則明:身体運動学−関節の制御機構と筋機能:メジカルビュー社:2017)



脳卒中の患者さんに対して回復期においては、どうのようにリハビリを計画していけばいいのでしょうか?

回復期といえば急性期の不安定な身体状況から回復し、リハビリテーションに専念して機能回復をどんどん行っていく時期になりますが、結局色々なリハビリがある中でどのようなリハビリをしていけば、患者さんのADLを最大限まで引き出すことができるのでしょうか?

特に言われているのが、、、

「集中的な理学療法の実施時間を増やすこと。上肢のCI療法や下肢への課題反復型の練習が推奨される。また、有酸素運動能力や下肢筋力の増強を目指す介入、応用歩行能力に通じる二重課題を課した介入も推奨される。なお、行わない事が強く推奨される事項は無い。」

とにかく、麻痺の回復を促すためにも、ADL向上のためにも、どんどん反復して動かして訓練時間をしっかり多くとれという事に尽きますね。

「脳卒中による機能障害は運動機能であれば3ヶ月、動作能力であれば6ヶ月まで回復の幅が大きい」とあります。

⇨ステージ理論による脳卒中後の回復過程

ステージ理論においてもこのような経過をたどるため、発症3ヶ月を過ぎて6ヶ月になっても歩行時の下肢の振り出しでつま先が引っかかるのは足関節背屈が出ないからだと一生懸命それだけを訓練で頑張るのではなく、3ヶ月を過ぎる頃にはどちらかというと今ある残存機能を元にどうやって動作の効率を高めていくか、つまり動きやすく動くためにはどうやって工夫したらいいかを少しずつ考えていかねばいけないという事ですね。

具体的には、適切な下肢装具を処方したり、骨盤の引き上げによる代償をある程度許容する中で局所に負担のかかりにくいような動作の仕方を考えたり、ハムストリングスの強化により膝関節屈曲の代償をある程度許すようにしていったり、、、。

こうも言われています。

「回復期理学療法の治療効果は重症度によって異なり、最重症と軽症よりも中等症での変化の幅が大きい。機能的予後は脳画像の病巣部位と大きさから脳の機能的可塑性が予測され、ADL自立の予測のポイントは年齢、脳損傷の大きさ、神経症候や麻痺の重症度、病前ADLとなる。なお、疫学的に見ると機能的予後は脳梗塞の方が良い。」

臨床的にも、そうだよなあという感じがします。

発症直後から歩行が十分に可能で、手の動きも良い方は特に変化に乏しいですし、逆にあまり重症な脳卒中の患者さんが劇的に改善する例はほとんど見たことがありません。変化の率が一番大きいのはやはり中等症の方で、じっくり時間をかけてだんだん良くなっていくイメージですね。

機能的予後が良い人はやはり、脳画像を見ても錐体路を全体的に直撃しているような病巣の人は少ないですし、特に大きく予後を分けるのは、年齢と発症前ADLだと個人的は感じています。これはなんとなくですが、、、。

個人差はあると思いますが、脳梗塞の方が全体的には予後がいいんですね、、、。

これらの考えを元に現在推奨される治療・介入の方法をまとめていきます。

①介入時間の確保(推奨グレードB)
移動・セルフケア・嚥下・コミュニケーション・認知などの複数領域に障害が残存した例では、より専門的かつ集中的に行う回復期リハを実施することが推奨される。

⇨グレードBになっていますが、個人的にはかなり重要なことであると思っています。ただ、時間をかければいいかというとそうではなく、専門的な介入時間の絶対的な量を増やしていく必要はあるかと考えています。

リハビリ時間以外でもただ、食堂で車椅子に患者さんが座ったままになるのではなく、看護師などの介入によって担当セラピストが指導した自主訓練をして過ごすだけでも大分違うと思います。

②麻痺側上肢への課題反復(推奨グレードA〜B)
上肢に対する運動負荷を積極的に繰り返し、特定の動作の反復を行うことが大切で、CI療法、ミラーセラピー、手関節背屈に対する電気刺激、随意運動介助電気刺激、ロボット装置を使った感覚運動トレーニング、促通反復療法などが上肢機能向上に有効である。

⇨脳卒中後の肩の痛みに注意しながら、上肢もどんどんいろんな介入をしていくのがいいと思います。特定の治療に固執せず、様々な手段で患者さんに課題をチャレンジしていただくのが良いのではないでしょうか?

③痙縮(推奨グレードA〜B)
痙縮による関節可動域制限に対してはボツリヌス療法が強く勧められ、高頻度の経皮的電気刺激も勧められる。

⇨やはり痙縮は悪です。リハビリを行う上で阻害因子になるので、しっかりと痙縮に対する介入も必要となってくると思います。

④麻痺側肩(推奨グレードB)
麻痺側肩の可動域制限に対する関節可動域運動や、亜脱臼に対する機能的電気刺激、肩痛の予防に対するスリングの使用も視野に入れる。

⇨脳卒中後の肩の管理については注意していく必要があると思います。

脳卒中後の合併症~肩関節の亜脱臼

⑤立位動作(推奨グレードA)
起立・着座や歩行練習の量を多くすることが強く推奨される。

⇨今の回復期病棟でのリハビリテーションでの運動量は十分に確保されているのか?という問題点に対し、警鐘を鳴らされている方もおられます。実際、起立・着座訓練、歩行訓練の量は思ったよりもまだ量的に少ないのではないでしょうか?もっとこういった訓練量をリハビリテーション時間でも病棟でも増やしていいのではないかと個人的には思います。(リスク管理はしながら)

ちょっとマッサージして筋緊張を是正して、感覚の訓練と可動域の訓練をして、最後の10分だけ歩行練習みたいな感じになっていませんか?できる人であれば、もっと負荷をかけていいと思います。

⑥歩行練習(推奨グレードB)
内反尖足に対する短下肢装具、筋電バイオフィードバック、免荷歩行器を使ったトレッドミル上での歩行練習、機能的電気刺激療法、歩行補助ロボットを使用した歩行練習、サーキットトレーニングが求められる。

⇨医療機器が揃っている施設・病院では積極的に取り組んでもらったらいいと思いますし、十分に機器の使用方法や効果を理解したスタッフがやっていただきたいと思います。

⑦ADL課題の練習(推奨グレードA)
ADL能力向上のために、集中的な理学療法や作業療法を行い、その時間を増やすことで課題反復型の練習が効果的で、強く勧められる。歩行課題では、屋外での歩行の推進につなげるために、様々な路面形状で必要距離を歩行する経験や、周辺環境に対処しながら歩行を遂行する二重課題処理能力がポイントとなる。

⇨運動療法で、大殿筋や大腿四頭筋、前脛骨筋の筋力が向上したら立ち上がれるようになるかといえば、そんなことはなく、立ち上がれるようになるためには立ち上がりの動作の練習をしっかりしないといけません。ADLにつなげていくには課題反復型の練習は必須です。また、歩くときも日常生活ではただ歩くだけでなく、話したり物を持ったり、周りの環境に注意したりといろんなことを考えながら歩かないといけないので、二重課題処理能力も重要です。

⑧体力の向上(推奨グレードA)
トレッドミルや自転車エルゴメーターでの有酸素運動と下肢筋力増強を組み合わせたプログラムで、最大酸素摂取量や歩行能力を優位に改善させることができる。

⇨脳卒中片麻痺患者さんは健常者に比べて、最大酸素摂取量や乳酸性作業域値などが低いと言われています。確かに、ちょっと杖歩行したら「疲れました」と言われますし、体力の低さを感じます。やはり、片麻痺になってからは、かなり健側の下肢での立位コントロールが求められますし、両側の体感機能が低下した状態で、感覚情報が入ってこないまま同時収縮を高めた歩き方は、ただただ疲れるイメージがします。自分でやってみたらよくわかります。

ベースの体力をしっかり向上させていくことは、日常生活自立のためにもかなり重要なことであるとも思います。

⑨低栄養の評価(推奨グレードA)
嚥下障害に関連した低栄養状態が多く認められ、他職種で連携することが勧められる。栄養は血清アルブミン値や、体重減少率から把握する。

⇨今盛んに言われている栄養の問題ですね。アルブミン値が低い方は結構おられると思います。どの時期の栄養状態を反映している数値なのか注意しながら、しっかり栄養管理もしていくことも大事だと思います。

⑩認知障害の把握(推奨グレードB)
半側空間無視、注意障害、遂行機能障害、情緒行動障害、うつ状態などについて評価を行うことが勧められる。

⇨これらについて把握することは、時によっては運動機能を見ることよりも優先される場合があります。運動機能は向上してきても、高次脳機能障害や、認知障害が原因でADLの自立が困難になることは臨床上非常に多く感じます。何ができて、何ができないのか。どういう時に注意しないといけないのか。詳細を把握し、対策・手段を考えていくことが重要になります。

(内山 靖:エビデンスに基づく理学療法 クイックリファレンス:医歯薬出版:2017)

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