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脳卒中リハビリテーションの理論と治療方向性

 28, 2014 17:37
今日の脳卒中リハビリテーションは、明確化されてきているエビデンスを根拠とした治療理論をもとに、臨床へ導入するよう求められるようになってきました。

脳卒中のリハビリテーションを行うにおいて、この時期にこういう事をしなければならない、この時期にはこれをしてはならないという最新の知見をセラピストは常に頭に入れておかなければなりません。

今回紹介する最新の必須の知見は、以下の3つです。

①critical time windowの概念
②運動麻痺回復のステージ理論
③運動麻痺の回復を阻害するワーラー変性と痙縮

今日、脳卒中発症後早期からのリハビリテーション介入が運動麻痺の改善を左右することがよく言われています。

Wagenaarらによると、発症後1週間以内に、1.5倍量のリハビリテーションの介入群に運動麻痺の改善が有意に優れ、その効果が12カ月持続することが明らかになっています。

特に、上肢の機能改善では早期介入と強度だけでなく、どのようなリハビリテーションプログラムを実施していくかによって機能回復の程度が変わってきます。

例としては、虚血性脳梗塞を生じたリスザルの実験で、発症後特別な訓練を実施しなければ、1ヶ月後には手指の運動野支配領域は50%以上減少したが、健側手を拘束して患側手の使用を促す方法(CI療法)を実施したリスザルは手の支配領域の減少を阻止しうることが明らかにされています。

このことから、急性期よりどのようなリハビリテーションプログラムを実施するかが問われてくる時代となりました。

①critical time windowの概念

動物の虚血モデルの実験において、リハビリテーションの介入時期が早いほど、シナプスや樹状突起の再生などが有意に認められています。脳梗塞発症後の数週間以内では損傷部位で組織的な修復がされており、この時期の介入は運動麻痺回復に向けて効果的だと言われています。

反面、発症1カ月以後からの遅延リハビリテーション介入では、手指の運動野支配領域の萎縮を取り戻せないことが明らかになっています。

このことから、脳梗塞発症の初期の2週間から3週間以内の期間が、運動麻痺の回復の予後を左右する時期だとして、critical time windowと言われています。

多少の個人差は認められますが、critical time windowの時期に効果的なリハビリテーション介入の必要性があり、この時の逸した介入は運動麻痺回復を最大限に引き出すことを不可能にしてしまいます。

②運動麻痺回復のステージ理論

運動麻痺回復のステージ理論(Swayne:2008)は脳卒中後の機能回復のメカニズムを、3つのステージに分類して説明したものです。

運動麻痺回復のステージとメカニズム ブログ用

まず、脳卒中直後の急性期に始まる皮質脊髄路を刺激しその興奮性を高めることで麻痺の回復を促進する時期(1st stage recovery)です。

これは急速に減退して3カ月までには消失してしまいます。原因は損傷皮質脊髄路に進行するワーラー変性です。これについては後述します。

この1st stage recoveryの時期には、皮質脊髄路の興奮性を効率的に刺激するリハビリテーションを行う事が良いとされています。

例としては、ミラーセラピーがあります。ミラーセラピーとは健側肢をミラーに写し、そのイメージを視覚的に学習し、患側肢の運動イメージとして知覚して麻痺肢の随意性を取り戻すというものです。この治療は患側一次運動野からの皮質脊髄路を刺激することが明らかにされており、発症から3カ月以内の期間は皮質脊髄路の興奮性を高める事が期待されます。逆に、4カ月以降は理論上では効果はあんまり期待できません。

他にも、1st stage recoveryの時期には、電気刺激が有効とされています。電気刺激によって残存する皮質脊髄路の刺激と、体性感覚入力の増加が期待できます。電気刺激の施行時間は30分と60分で有意差はありませんが、最低30分主要な麻痺側上下肢に実施するよう勧められています。

そして、次の回復のステージは、皮質間の新しいネットワークの興奮性に依拠する時期(2nd stage recovery)で、3カ月をピークに再構築されます。この時期は皮質間の抑制が解除されることで機能します。ただ、この抑制の解除も6カ月までに消失してしまうために、それまでに2nd stage recoveryでは皮質間の再組織化を促すリハビリテーションプログラムが必要になってきます。

最後の回復ステージは、シナプス伝達が効率化されることによって、出力ネットワークが一層強化される時期(3rd stage recovery)です。これは6カ月以降も持続して徐々に強化される機能です。

この時期には、出力ネットワークの再構築がされるようなリハビリテーションプログラムが必要となります。

この3rd stage recoveryの時期に有効なリハビリテーションとして、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いた集中リハビリテーションがあります。健側大脳半球運動野に対して、経頭蓋磁気刺激にて抑制を行う事で、運動機能の可塑性を引き出すpriming効果を生じさせた所に、集中的なリハビリテーションを行うというものです。臨床の場面では、このような機器がある施設は限られてくるので、実施は難しいですが、東京慈恵医科大学では慢性期患者の機能改善に効果を確認しています。

③運動麻痺の回復を阻害するワーラー変性と痙縮

急性期からの運動麻痺回復の過程において、2つの阻害因子が明らかにされています。

一つは、病変部位から下降する皮質脊髄路に生じるワーラー変性で、皮質脊髄路の興奮性が急性期から3ヶ月で消失してしまうのも、ワーラー変性の進行によるものと考えられています。しかし、現在それに対するリハビリテーションの介入を含めた検討の報告はありません。

二つ目は、麻痺肢に生じる痙縮の発現です。

痙縮のメカニズムとは、発症後の麻痺肢は筋が短縮位でのポジショニングがなされ、その状態での不動化によってさらに筋線維の短縮が助長され、筋線維は結合組織と脂肪組織への置換が生じてきます。その結果、骨格筋の粘弾性は失われて、筋紡錘の興奮性が増大します。そのために、深部腱反射の亢進が具現し、筋の過活動状態である痙縮をつくりだしてしまいます。

痙縮に伴い、骨格筋の変性、麻痺肢の不使用、不動化も生じてくると、拘縮へと伸展します。

これは避けなければいけません。

こうならないために、麻痺肢における深部腱反射の亢進を初期のwarning signと考え、急性期の段階からモビライゼーション、麻痺肢を短縮位にしない肢位、可能であれば電気刺激や、ボツリヌス治療など痙縮に対する介入が必要になってきます。

(原 寛美,吉尾 雅春:脳卒中理学療法の理論と技術:2013)


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