脳卒中後のうつ病

 24, 2014 10:12
脳卒中後のうつ病は比較的頻度の高い障害です。臨床の現場においても、脳血管障害にうつ病が合併し、リハビリテーションの進行の妨げになっている方も多いのではないかと思われます。

うつ症状は、患者さんの身体機能・認知機能・社会機能にマイナスの影響を与えるだけでなく、家族への負担の増加の影響もあります。

脳卒中後のうつ病の罹患率は、発症後10%程度から40%台と幅広い報告があります。

脳卒中後に自殺念慮を抱く患者さんは、脳卒中患者の7%にもおよぶという報告があります。脳血管障害後に自殺によって死亡する割合は、健常者と比較するとおよそ2倍になります。

脳卒中後うつ病の症候学的特徴としては、気分の落ち込み、不安、イライラ感、焦燥感を伴います。意欲は低下し、興味・性欲の減退、思考面では自責感、自信の喪失、思考力の低下、自殺念慮などが生じてきます。

身体的な面では、動悸、のぼせ、発汗などの自律神経症状、倦怠感、不定愁訴を訴え、不眠となることが多く、食欲減退、体重減少が認められることも多いです。午前中が症状としては、最も重くなるという日内変動を認めることも多いです。表情は暗く、外見は悲壮感が漂っています。

以上のような症状に、いち早くスタッフが気づき、対処していくことが重要となります。

まず、脳卒中後うつ病を判断する前に、うつ病アパシーを区別して鑑別していかなければなりません。

うつ病では、抑うつ気分を伴い、気力の低下や、イライラ感、焦燥感を伴い、考えすぎで脳が疲れきっている状態ですが、アパシーでは基本的に抑うつ気分を伴わず、イライラ感、気分の低下はなく、脳は疲れていない状態です。また、うつ病では自殺念慮を伴う事がありますが、アパシーの患者さんではありません。薬物の治療面では、うつ病に対して抗うつ薬での効果を認めることが多いですが、アパシーの場合は、効果は乏しくドパミン遊離促進薬にて効果を認める事があります。リハビリの場面においても、うつ病に対しては無理をさせないことが基本ですが、アパシーの患者さんに対しては積極的に動かしていくことが必要になります。

脳卒中後うつ病の治療としては、薬物療法十分な休養が基本です。リハビリテーションにおいては、患者さんとの関わり方が重要になってきます。

患者さんとの接し方に決まった方法はありませんが、リハビリテーション自体がうつ病を改善することもあれば、リハビリテーションで現実に直面したことで、うつ病発症のきっかけを与えてしまうこともあります。こういった場合は、患者さんに自信をつけさせるために課題のレベルを下げて行う事も一つになってきます。

病棟生活においても、頑張りすぎてしまう性格の人の場合は、無理しすぎないように指導していくことも大切です。必要に応じてリハビリを一時中止することも必要になってきますが、患者さんが不安にならないように、困った時に相談にのれる体制をつくっていくことが重要かと思われます。

自宅復帰後でも、社会との接点が狭まることがないように、社会との接点を保つことで孤独感、絶望感を和らげていくことをしていかなければなりません。

本人や家族においても、脳血管障害の後遺症はほとんどの場合はじめて経験するもので、うつ病が合併した場合、家族の負担や困惑は非常に大きくなります。神経内科、リハビリテーション医、精神科医、リハビリテーションスタッフ、看護師、家族がそれぞれ意見交換を行いながら、治療方針を一定の方向に決めていくことが大事になります。

(河村 満:急性期から取り組む高次脳機能障害リハビリテーション QOL向上のために今すぐできる日常生活援助:2010)


※関連記事
関連:10分でわかる脳の構造と機能-畿央大学

COMMENT 1

Tue
2014.09.02
18:04

 #

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Edit | Reply | 

WHAT'S NEW?