視床が病巣の場合の方のケア

 05, 2014 18:03
脳

看護計画立案のためのケアの実践は看護師の役割ですが、病棟の中で看護師と共に臨床を行う中で、理学療法士をはじめとするリハビリスタッフが患者様の脳機能障害の症状に対する支援を考えて協力して行う事は必要不可欠だと思われます。

そのためには、脳の機能解剖を基礎に、脳画像で病巣を確認し、症状の予測やそれに対するケアを看護師とともにコミュニケーションをとりながら、実践していく必要があると思われます。

今回は、視床が病巣の場合の看護師が行う脳血管障害の患者さんに対するケアの方法ですが、視床の障害では、まず意識障害・注意障害の問題が発生する場合が多いです。また、記憶障害、保続、失語や構音障害、運動麻痺と感覚障害、また右の視床にて左半側空間無視が出現する場合もあります。

○意識障害

 左および右の視床の障害で、まず最初にチェックする項目として意識障害があります。というのも、意識障害からの早期の回復が予後に影響を与えます。それは、全身の感覚の中継点の役割があり、ここが障害されると大脳皮質が活性化されないためです。発症後早期はできるだけここを改善させるように介入し、こまめにJCS(ジャパンコーマスケール),GCS(グラスゴーコーマスケール)などで意識レベルを評価しましょう。

 この状態に対しては、視床の働きを上げるケアを行います。例えば、三叉神経の感覚を利用して視床の活動を上げる方法として、氷をガーゼで包んだもので目の周りの眼輪筋・顎関節のつけ根・顎の先端のオトガイ部(三叉神経の第1枝、第2枝、第3枝)にポンポンとタッピングをして刺激します。これにより、発症して初期の段階から覚醒を促進することが可能です。

○注意障害

 左および右の視床の障害の方で、意識障害が改善してきて、開眼してものが見れるようになってきたら、次に注意障害の問題を考えていく必要があります。まず、患者さんの前に物品を見せ、その物品を目で選択的に見ることができるか(選択的注意)、その出した物品を10秒以上見続けることができているか(持続性注意)、その物品を左右にパッと動かしてみて目でその物品を追う事ができているか(転導性注意)などを簡易的に評価します。

 被殻の病巣でも意識障害・注意障害は呈しますが、視床の障害は被殻に比べて注意障害が残存しやすいため、十分な注意の練習が求められます。具体的な練習としては、患者さんの目の前にボールを提示し、10秒以上じっと見てもらう練習を真中で、左側で、右側で、上側で、下側でといろんな方向で提示して見続けたり、見るだけでなく非麻痺側でボールに触れ、ボールを移動してからまた手で触れるようにしてという動作を最初はゆっくりから始め、だんだん速くしていきます。

○記憶障害

 左および右の視床の障害で病巣の大きさに関係なく、記憶障害を呈する患者さんは多いです。原因としては視床は記憶の回路(パペッツ回路・ヤコブレフ回路)を構成しているからです。つまり、視床の障害後の患者さんは物事を覚えるのが難しく、視床性の認知症も呈することもあり、判断力も鈍ってきます。

 この症状に対するケアとしては、意識障害→注意障害→記憶障害の順で介入していきます。患者さんに対して言葉による伝達だけでなくメモリーノートホワイトボードを使い覚えるように心がけると良いと思われます。携帯電話のアラーム機能を活用することでスケジュールを思い出す作業もよいです。

○半側空間無視

 右の視床出血の場合、本症状を呈することがあります。食事中にお皿の左半分の料理を残したり、歩行時や車椅子操作にて左側をぶつけることがあったりなどする場合には、左半側空間無視の症状の可能性があります。右視床出血が吸収されるにつれて症状は改善していく傾向にありますが、普段の生活でどの程度出ているかはチェックしていく必要があります。

 ケアの内容として、半側空間無視により、頸部が病巣側へ回旋してきますのでその程度を観察します。右に回旋している時に左の胸鎖乳突筋が過剰収縮していますので、左の胸鎖乳突筋にアイスマッサージを行う事によって、緊張を緩め頸部の左回旋を促します。頸部がそれほど右に回旋していない場合は、左の体に注意を向けるエクササイズを行う事が中心となりますが、具体例としては、右手にボールを持たせて、その手を右空間から左の空間へゆっくりと移動させます。

○失語様症状

 左の視床出血の場合、失語様の症状が出現する可能性があります。程度には個人差がありますが、錯語(意図したものと別の言葉になる)、喚語困難(言葉がなかなか出てこない)、保続(同じ言葉や行為を繰り返す)などの症状が見られます。基本的には視床出血後の失語様症状は出血の吸収に伴い改善していく傾向にあります。

○運動麻痺や感覚障害

 リハビリスタッフ(特に理学療法士)は特に治療対象となる症状かと思われますが、左および右の視床の障害があれば、視床の障害側の反対の上下肢の運動・感覚の評価を行ってください。病巣の大きさにもよりますが運動麻痺が改善されても感覚障害が残存する場合がありますので、経過とともに感覚障害の程度もチェックしてください。深部感覚が障害されている場合は、運動失調も生じてきます。

 感覚障害に対するケアとしては、温かい・冷たい・ざらざら・つるつる・硬い・柔らかい・重い・軽いなど様々な感覚の違いを患者さんの手足で感じていただき、いろいろな刺激を加えていくことです。意識障害のある患者さんにも行えますので、発症早期から実践できます。非障害側の感じと比べてみたり、目をつぶって感覚に集中するように行ったりしていきます。

 病棟内での患者さんの生活でもできるだけ刺激を加える様な工夫が必要かと思われます。

○構音障害

 左の視床出血の急性期の症状として、言語の発音が不明瞭となり発音そのものが聞き取りにくくなります。この症状は一過性であり、意識障害や注意障害が軽減してくると多くは徐々に改善していく傾向にあります。まずは、意識障害や注意障害に対してケアを行い、改善を確認しながら必要に応じて構音の練習を行う必要があります。

 構音の練習としては、下顎の開閉や舌の運動、パ行・タ行・カ行音やそれらを組み合わせた協調音の復唱などがよいかと思われます。空き時間で患者さんと一緒に実践していくとよいかと思われます。

○発声障害

 これも左の視床出血の急性期の症状として、一過性に声がでないであるとか、声がでてもささやかな声やかすれ声のようなとても小さな声といった障害が出現する場合があります。この症状は徐々に軽減する場合が多いので、他の症状に対するケアを優先すると良いでしょう。

 しかし、発声障害が持続するケースの場合、前頭葉症状としての自発性低下が背景に生じている場合がありますので、前頭葉に対するケアの必要があります。これは視床と前頭葉の線維連絡があるために、前頭葉も機能低下を生じるためです。

(小宮桂治、酒井保治郎:よくわかる脳の障害とケア―解剖・病態・画像と症状がつながる!:2013)


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関連:10分でわかる脳の構造と機能-畿央大学

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Wed
2017.06.28
12:08

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