lateropulsion(ラテロパルジョン)の臨床所見

 09, 2014 02:00
lateropulsion ブログ用

lateropulsion(ラテロパルジョン)という現象を聞いた事があるでしょうか?lateropulsionとは側方への突進現象の事をいい、不随意的に一側に身体が倒れてしまう現象の事を言います。

立位姿勢を観察すると一見、pusher症候群と区別がつきませんが、pusher症候群とは異なります。

pusher症候群と違うのは、pushingの場合、非麻痺側の上下肢が突っ張って押してしまったり、姿勢を正中位に他動的に修正した時に抵抗がありますが、lateropulsion(ラテロパルジョン)の場合は抵抗なく姿勢を正中位に修正できます。

臨床においては、あまり遭遇する場面がないと思われますが、lateropulsionは延髄外側部梗塞にて出現するWallenberg(ワレンベルグ)症候群の一つとしてよく知られています。学会での症例報告も見かけます。

延髄外側部梗塞では、Horner症候群(眼裂狭小、瞳孔縮小、発汗減少など)、損傷と同側の顔面と反対側の上下肢・体幹の感覚解離(温痛覚障害)、同側の小脳失調、構音障害、嚥下障害、嗄声、眼振、眩暈、嘔気などをきたすWallenberg症候群が出現します。またこの疾患においては、錐体路は延髄の腹側を通っているので、随意運動は障害されません。

lateropulsionの責任病巣としては、背側脊髄小脳路外側前庭脊髄路の障害が原因だと言われています。

背側脊髄小脳路は、同側の下肢と体幹からの無意識的な固有感覚の情報が伝達される経路です。

外側前庭脊髄路は、同側の体幹と下肢の伸筋群(抗重力筋)の活動を高め、筋トーヌスを亢進させる経路です。歩行時は特に、軸足になる方の下肢の大腿四頭筋の運動ニューロンの活動が高まります。

このメカニズムを考えると、障害側と同側に体が傾く理由も納得ができますね。

lateropulsionに対する理学療法としては、視覚情報入力を利用したアプローチが難しいため、体性感覚のうち、意識されない体性感覚でなく、意識される知覚(触覚、圧覚情報)を利用してアプローチしていくことが良いと考えられています。

感覚情報を強く意識させて、立位保持を獲得させてから、段階的に歩行訓練に展開していく事が望ましいと考えられます。

(原 寛美,吉尾 雅春:脳卒中理学療法の理論と技術:2013)

COMMENT 2

Tue
2016.08.23
08:20

yoshio #-

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感想

初めて拝見しました。千里リハビリテーション病院の吉尾雅春と言います。
とても分かりやすく、しかもしっかりした根拠に基づいてまとめていらっしゃると思います。臨床家たちが今の疑問を整理するだけでなく、このまとめを1冊の教科書にして卒前教育をなされれば、より良いセラピストが輩出されるのではないかと思います。
また、ときどき覗かせてください。

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Tue
2016.08.23
20:24

FC2USER443754VEG #-

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Re: 感想

有難うございます!まさか、吉尾先生が直々にコメントして頂けるとは思いませんでした!
有難いお言葉です。今後も臨床で困っている方、学生に対してもどう考えていったらいいか分からないという方にも少しでもヒントになるような、そんな架け橋のようなブログになればと思っています。また、よろしくお願いします。

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