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筋緊張に影響する因子

 20, 2015 22:49
筋緊張の因子 ブログ用

我々はこの地球上で、「重力」という力に抗して直立二足で立って歩いたり、手を伸ばしたり、様々な動きをします。そのためには、人間は中枢神経系にて姿勢・動作時の筋緊張をコントロールしながら、動作を円滑に安定して行う事ができているのです。

座った姿勢で手を伸ばして物をとる時も、体幹の筋活動を上げて体幹が崩れないように反応しながら手を伸ばし、それでも目標物に手が届かない場合は、体幹の筋活動をもっと上げてさらに遠くへ手を伸ばすための安定性を得るために、体幹筋の筋緊張をコントロールしているのです。

こういった筋活動はMMTでは表現できませんが、臨床においては、姿勢時・動作時の筋緊張は適切に評価していかなければいけません。

中枢神経系における筋緊張のコントロールは、大脳皮質、基底核、小脳、脳幹、脊髄などのそれぞれのレベルが働いており、状況や環境に応じてコントロールされています。

臨床においては、「あれ、この患者さん先週より、筋緊張が上がってきてしまっているぞ。」とか、「先日より、低緊張が増してきているな、何故だろう。」あるいは、「こういう風にすると筋緊張が落ちてくるな」などという場合があります。セラピストは筋緊張に影響を与えている因子について検討していかなくてはいけません。

○筋緊張に影響を与える因子

①固有感覚制御
②覚醒・注意・意識
③フィードバック・フィードフォワード
④視覚刺激・聴覚刺激
⑤味覚・嗅覚
⑥知覚・認知
⑦精神症状(認知症)・記憶(想起)
⑧温度覚(体温・室温など)、痛覚
⑨自律神経症状
⑩支持面の状況
⑪筋の粘弾性・速筋・遅筋
⑫軟部組織の短縮(廃用・不動)
⑬バイオメカニクス
⑭加齢・成長・体重
⑮性差
⑯表現型
⑰既往症
⑱感情・情緒

以上の因子が考えられます。

②覚醒・注意・意識についてですが、特に、脳幹網様体にある上行性賦活系の働きにより、筋緊張はコントロールされています。

③フィードバック・フィードフォワードについてですが、反応的動きをフィードバックコントロールと言い、予測的動きをフィードフォワードコントロールと言い、環境や課題に応じて準備的に筋緊張を変化させます。また、末梢からの感覚情報を元に筋緊張を変更していきます。例えば、目の前に物があり、それに対してリーチして持ち上げるという課題があるとすると、準備的に下肢・体幹・肩甲帯の筋緊張を物の重さに対して活動を上げていきます。どのような課題(task)を与えるかによって筋緊張は変化するため、効率よく予測的なフィードフォワードコントロールを促すには、その患者さんの職業で行っていた動作や記憶にある課題を行う事が良いと思われます。

⑩支持面の状況についてですが、支持面とは人と外部環境との接触面の外縁を結んだ面の事です。支持面が広ければ広いほど筋緊張の働きはわずかでよく、支持面が狭いと筋緊張が高まりやすくなります。つまり、支持面を変化させることにより、筋緊張を変化させることができるのです。

⑯表現型についてですが、姿勢・動作パターンは長年行ってきた職業や、生活習慣、環境に影響されてきます。その人が取りやすい姿勢や、行いやすい動作によって、高まりやすい筋群が筋緊張の高くなる部位となります。脳血管障害となると高まりやすい筋群の表現型がさらに強調され、筋緊張が高まりやすくなります。

⑰既往症についてですが、以前患った病気が現在の姿勢・動作パターンに影響している事です。例えば、足部の外傷などによって、足関節背屈制限が出現したとします。そうすると歩行パターンは立脚期で下腿を前に出すことができないので、股関節屈筋で振り出しを代償するようになりやすくなります。そういった既往を持つ方が、脳血管障害となり片麻痺となると、過剰努力となっていた股関節屈筋の要素が筋緊張として現れやすくなります。

⑱感情・情緒についてですが、大脳辺縁系が情動をつかさどっていますが、筋緊張との関連があります。学校の授業でもつまらない話し方の先生の授業は退屈で、姿勢も不良姿勢になりがちですが、自分の不得意な授業でも面白く、分かりやすく説明される先生の授業では、生徒の姿勢も良く、熱心に耳を傾ける傾向にあると思います。これと同じように、我々セラピストの声掛けや、基本的態度の程度が患者さんの筋緊張に影響する事があります。

(斉藤 秀之、加藤 浩:筋緊張に挑む―筋緊張を深く理解し、治療技術をアップする! (臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス):文光堂:2015)


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