古典的な運動療法の再検討-下肢末梢循環障害に対するバージャー体操

 23, 2016 23:54
末梢動脈疾患(PAD)は手足などの末梢の動脈に何らかの原因(糖尿病、高血圧、高脂血症など)によって動脈内の血行不良が生じる病態です。

PADの内で、動脈硬化を基盤とした閉塞性動脈硬化症(ASO)という概念があります。現在では下肢の詰まりとしては動脈硬化症がほとんどを占めているので、PADとASOはほぼ同義の概念と捉える事が多いです。

臨床においても、高齢者を中心に下肢の血行不良を呈する患者さんは多いと思われます。初期には無症候性の場合が多いですが、動脈の詰まりが進行してくると痺れや歩行時の足の痛みなど、動作障害につながることもあります。足に傷ができた時は、足の傷が治りにくくなるため、注意が必要です。

そもそも、バージャー体操というのは、アメリカの内科医バージャー(Buerger)により、末梢循環障害に対する運動療法の1方法として考案されました。下肢の挙上と下垂を繰り返して反射性充血を促し、側副血行路形成の目的の体操です。

昔からこのバージャー体操は知られていますが、臨床の現場においてこの体操を実施されている方はどのくらいおられるのでしょうか?

教科書では以前から記載されており、国家試験にも出題されるこの体操ですが、臨床的な効果は実際にどれくらいのものなのでしょうか?適応の方には試してみて、効果を再検証してみても良いのではないでしょうか?

以下の図の3つの種類の体操を繰り返します。

バージャー体操 ブログ用

バージャー体操の手順

①背臥位にて下肢を1~3分間、60~90°の高さに挙上させ静脈血を下降させる。
⇒障害が重度であれば足部が蒼白になる事が多いようです。

②座位で下肢を下垂して3~5分間、反射的充血・発赤が十分に生じるまで待つ。
⇒端座位のままじっと待っても良いですが、この時に足関節の底屈・背屈の運動など(バージャー-アレン体操)を行っても良いそうです。

③背臥位(水平位)で3~5分間保持する。
⇒この状態で、下肢をホットパックなどで温めると良いそうです。

①~③を1セットとして行い、1回に10セット、1日に数回行うと良いとされています。

結構、やっていると時間がかかりますが、これだけやると下肢の血流が良くなりそうな感じはありますね。

エビデンスに関しては以下の通りです。

○末梢循環改善因子

・1884年にThomaが側副血行路の形成とその発達、成熟の存在を証明した。

・Abransonらは、健常者の場合には自動運動、抵抗運動は使用筋の血流を増加させ、運動後もしばらく増加し続けていると報告しています。

○バージャー体操の効果

・Wishamらは、健常者でも末梢循環障害のある患者でも、バージャー体操を行っている間および運動後の筋血流の増加は見られなかったものの、患者によっては、一連の肢位の違いによる血流の違いが血管反応性を高めるために、バージャー体操が有効だったという報告がある。

効果として明確な作用機序については確定はしていないため、断定はできませんが、患者さんによってはいい方向に転じる可能性がありますね。実際に試してみる価値はありそうです。

(植松 光俊、大川 祐行:運動療法学テキスト (シンプル理学療法学シリーズ):南江堂:2015)


※関連記事
関連:糖尿病(DM)に対する理学療法の考え方
関連:ホームエクササイズ・自主訓練の指導においてオススメの参考書

COMMENT 0

WHAT'S NEW?