アフォーダンス

 17, 2016 09:53
アフォーダンス 椅子

アフォーダンスという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

アフォーダンスとは「環境から人に提供される意味」の事であり、アメリカの心理学者Gibsonが造った造語で、「与える・提供する」という意味を持つ動詞「afford」に、「状態・性質」という意味を持つ名詞語尾「ance」を組み合わせたものです。

アフォーダンス理論においては、人を取り巻く環境の中に行為を変化させうる状況(良い物と悪い物の両方)が存在しており、人は目的に応じてその情報を取捨選択しながら行為をしていると考えられています。

ちょっと何の事か分かりにくいのですが、例えば、上の写真は椅子ですが、たいていの人はこの椅子は座るものだと認識しており、何も考えなくても目の前にあれば座ろうとすると思います。

それは行為者の今までの経験と、行為者とその椅子の関係が、「座れる」というアフォーダンスになったからです。

これが、椅子に座れないくらい小さな子供や、座ると壊れてしまそうなくらい大きな力士にとっては、この椅子と行為者の間には「座れる」というアフォーダンスはありません。

また、手に持った荷物をどこかに置きたいという状況でこの椅子をみた場合、この椅子との関係性は「荷物置き」というアフォーダンスになりますし、何か手が届かない所の物を取りたい場合は椅子との関係性は「踏み台」になるかもしれません。

つまりアフォーダンスは、行為のいろいろな可能性の予見情報を我々が直接に知覚し、その時の事物が与えてくれる行為可能性の予見情報であると言えます。

椅子は本当はいろいろな使い方があるかもしれません。「座る」「踏み台にする」「荷物を置く」「地震がきた時には下に隠れる」「倒れそうになった時につかまる」「振り回して遊ぶ」「2つならべてベッドにする」・・・・・など。こういった様々な情報の中から、環境下に応じて知覚者が最適な情報をピックアップするのです。

Gibsonは人を環境に対して能動的に探求する存在と位置づけ、動くために知覚を利用して、知覚するために動くという人と環境との相互作用が常に行われ、自分がおかれた環境の中で得られた情報をもとに予測的・無意識的に行動していると言っています。

これまた難しく感じますが、例えば、左片麻痺の患者さんで、歩行が非常に不安定であり、車椅子自走レベルの方が、居室でベッドから起きて洗面台に水を飲もうとした時の場合です。普段はふらつきが著明でとても歩いて洗面台まではいけませんが、ある日、テレビ台につかまって歩いて洗面台まで行ってしまっていたという事が起こりました。

患者さんとしては、その時はベッドから手が届くテレビ台につかまれば歩いていけると思ったとの事でした。この場合、ベッドと洗面ヂの間のテレビ台が「歩いていくことができる」というアフォーダンスを提供し、それを患者さんが選択した事にあります。

病棟内での転倒のリスク、患者さんが一人で行動しないようにという事を考えた時に、環境下としてはどのような配置が安全だったのかを考えさせられる現象ですね。

(地神 裕史、斉藤 秀之:上肢の理学療法-局所機能と全身運動を結びつけるインタラクティブ・アプローチ:三輪書店:2016)


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