血液生化学データから見る離床への影響

 17, 2016 19:15
検査結果に悩むドクター

急性期のみならず、回復期においてもリスク管理に注意して離床を考えていかなければなりません。今回は、血液データに焦点を当てて、実際に離床に影響する病態の指標となる検査項目や安全に離床を進めていくための留意点・対処法を考えていきます。

ただ、実際は血液データだけにとらわれず総合的に判断し、医師と連携を取りながら離床を進める必要があります。

①貧血

貧血であるという事は、全身に酸素を運ぶ役割をする赤血球の数量の減少や、形や成分が低下している事です。指標となる検査項目は、赤血球数、ヘモグロビン値、赤色素量などです。

離床などによる運動負荷により、全身の酸素需要が高まりますが、貧血の状態だと十分に全身に酸素が供給できず酸素不足になる可能性があります。

貧血の症状を呈している時は、患者さんはリハビリに対し意欲的に行う事ができず、拒否的言動を示す事があります。患者さんの貧血時の症状(息切れ・唇や爪の色・冷や汗・動悸・めまい・頭痛)を観察し、症状がみられた場合は離床を中止し、医師や看護師に報告・相談します。

また、貧血の症状がある時は、たとえ症状が安定していても医療処置・清潔行為・食事・排泄などの直後に離床を行わない方が望ましいです。

②炎症

指標となる検査項目は、白血球数、CRPなどです。

離床によって、栄養や酸素を消費しすぎると、患者さんの防御機構に負担がかかり、体力消耗によって離床への気力が減退してしまう可能性があります。

38℃を超える発熱の場合は、休憩し栄養・水分・酸素を十分に補給する必要があります。

③出血傾向

指標となる検査項目は、血小板数、フィブリン、プロトロンビン時間、活性化部分、トロンボプラスチン時間(APTT)、FDPなどです。

出血傾向にあると、少しの刺激でも出血・内出血が生じやすくなるため、介助やポジショニングで注意が必要です。

特に臥位時あるいはギャッジアップ時の仙骨部や殿部の摩擦やズレや、体重が1箇所に集中しないように注意する必要があります。

④栄養不良

指標となる検査項目は、TP、Albなどです。

カロリー不足が生じると、自分の体内のたんぱく質や脂肪を分解してそれをカロリーとして使用しますが、離床によりカロリー消費が増えるため、栄養状態が悪化してしまいます。

栄養不足による症状としては、疲労、冷え、浮腫、筋力低下、気力低下・無表情などです。

⑤肝機能の異常

指標となる検査項目は、TB、HB、GOT、GPT、LDHなどです。

肝機能障害がある場合は、老廃物の蓄積、エネルギー貯蔵や配給能の低下から、倦怠感、脱力感、かゆみ、嘔気、体重減少、消化管出血、浮腫などが起こります。

肝臓の血流は、座位や立位よりも臥位の方が増加します。よって離床によって肝臓への血流は低下してしまうので、肝細胞回復の支障となる可能性があります。しかし、慢性期や代償期の肝機能障害では無理のない範囲で運動する事が進められています。

よって、離床の際には肝臓の血流を円滑にさせるため、食事・経腸栄養摂取後1~2時間程度は安静臥床を優先し、離床を避ける必要があります。運動負荷も自覚症状に注意し、患者さんが心地よい負荷量となるよう調節します。

⑥血糖値の異常

膵臓から分泌される「インスリン」が不足すると血糖値が上昇しますが、指標となる検査項目は、血糖値のほかHbA1cなどです。

離床などによる運動負荷によって、エネルギー消費が増加すると血糖値の変化が生じてくる可能性があります。

低血糖の症状として、冷や汗、手の震え、めまい、目がチカチカする、動悸、あくび、脱力感などがあり、さらに症状が進行すると、思考力の低下、異常行動、痙攣、意識障害、昏睡の状態になります。

低血糖の症状が出た場合は、離床を中止して医師や看護師に相談します。

⑦腎機能の異常

指標となる検査項目は、BUN、Cr、電解質の乱れ(ナトリウム、カルシウムの低下、カリウムの上昇)などです。

離床などの運動負荷によって、新陳代謝が活発となり老廃物の産生が増加しますが、腎機能が低下して濾過機能が低下していると血液中の老廃物が体内に溜まり、疲労感・嘔気・広い範囲の皮膚のかゆみ・浮腫・不整脈などの症状が出現します。

腎不全であっても腎機能が安定していれば日常生活動作において特に問題は無いと言われていますが、急激に腎機能が低下した場合は離床を中止する場合があります。

腎機能低下による自覚症状(倦怠感、疲労感など)が生じますが、患者さんによっては無理をされる場合がありますので、活動の範囲に注意していきます。

⑧電解質異常

指標となる検査項目は、Na、Cl、K、Ca、Mgなどです。これらは主な電解質ですが、神経や筋肉の機能を含む体の細胞が正常に機能するために必要です。

電解質のバランスが崩れると、倦怠感、疲労感、しびれ、脱力感、筋力低下、嘔気、不整脈、錯乱、意識障害、浮腫などの症状を呈します。

電解質異常の原因としては、手術や感染による身体侵襲期、絶食や臓器障害による摂取量と排泄量のバランス不良、循環障害による水分バランスの調節不良、薬剤の効果などがあります。

離床そのものが電解質の異常の悪化となる可能性は低いですが、電解質異常が進んだ場合、急変を生じるかもしれないという予測のもとに関わる必要がありそうです。

(曷川 元:実践!早期離床完全マニュアル―新しい呼吸ケアの考え方 (Early Ambulation Mook):日本離床研究会:2007)


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