脳梗塞の離床で考えるべき「ペナンブラ」と「脳循環自動調節能」と「脳浮腫」

 23, 2016 17:30
脳卒中の発症

脳梗塞とは文字通り、脳の血管の一部が詰まり血流が途絶える事によって、脳細胞が壊死してしまう病気です。

脳への血流が途絶えてしまう事で、酸素と栄養(グルコース)の供給ができなくなってしまう事により脳細胞が壊死してしまうのです。

血流が途絶えてしまった部分の血流に対してさらなる障害悪化とならないように、脳梗塞後の脳血流維持のために考えるべき3つのポイントがあります。

「ペナンブラ」と「脳循環自動調節能」と「脳浮腫」の3つです。

○ペナンブラ

ペナンブラ

学校で習ったことはあると思いますが、「ペナンブラ」とは正常脳細胞と壊死した脳細胞の境界領域の事を言います。

この領域がなぜ大事かというと、ペナンブラ領域の血流がケアにより復活もしくは維持される事によって、神経機能の回復が再開される領域だからです。この部分の血流がストップしてしまうと、たちまち脳細胞の壊死が拡大してしまいます。そうならないように脳血流が十分に保たれるようにアプローチしていく必要があります。

○脳循環自動調節能

ペナンブラ領域の血流を救う為に重要な考え方として、「脳循環自動調節能」があります。

脳循環自動調節能

脳循環自動調節能とは、血圧が上昇したり低下したりして変動しても、脳の血管はそれに合わせて収縮や拡張によって変化し脳血流量を一定に保とうという働きがあります。この働きを脳循環自動調節能(autoregulation:オートレギュレーション)と言います。

正常な人では上のグラフのように、横軸が血圧ですが平均血圧60~160mmHgの範囲では脳血流は一定に保たれています。高血圧の人は自動調節能のグラフは右にシフトします。

それに対し、脳梗塞の発症後は自動調節能が破綻しており、血圧の変動によって脳血流量が変化してしまいます。特に発症後は、離床による血圧低下によってペナンブラ領域への血流量が低下していないか注意が必要です。

特に急性期は安易に積極的離床を進めず、離床の段階をチームで検討しなくてはなりません。

一般的な脳梗塞後の脳循環自動調節能の破綻期間は以下に示します。こういった期間を過ぎると脳循環の自動調節能は回復してきます。障害のタイプにより期間は異なっています。

脳梗塞の自動調節能の破綻期間

○脳浮腫

脳浮腫とはいわゆる脳がむくんでいる状態の事であり、脳の細胞内・細胞間質に液体がたまっている状態の事を言います。

脳浮腫は脳圧を亢進させ、脳ヘルニアの引き金になるため、注意が必要です。

脳圧とは頭蓋内圧とも言い、通常は60~180mmH₂Oで保たれています。

脳圧を決定する因子は脳実質、脳脊髄液、血液の3つですが、通常頭蓋内での割合は8:1:1(脳実質:脳脊髄液:血液)です。このバランスが崩れると脳圧が亢進します。

そもそもなぜ脳浮腫が起こるかというと、脳出血や脳梗塞後は、血液脳関門(BBB)という有害物質の侵入を阻止する警備員の様な働きをするシステムが破綻します。そうなると、普段は通過できないナトリウムイオンアルブミンなどが通過してしまいます。

細胞間質にナトリウムイオンやアルブミンが流れ込む事で、浸透圧による濃度勾配が起き、血漿中の水分が細胞間質に流れ込み、脳浮腫が生じます。

こういった脳浮腫が生じ、脳圧が亢進すると脳圧亢進症状(頭痛、悪心、嘔吐、うっ血乳頭、意識障害、瞳孔不同、対光反射の減弱、消失、呼吸の変化、クッシング現象)が出現します。

(飯田 祥、黒田 智也、久松 正樹、野々村 雅文、曷川 元:離床への不安を自信に変える脳卒中急性期における看護ケアとリハビリテーション完全ガイド (Early Mobilization Mook):慧文社:2015)


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