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THA術後脱臼のリスクファクター

 22, 2016 23:00
脱臼リスク

THA(Total Hip Arthroplasty)は人工股関節全置換術であり、特に臨床でリハビリテーションを進めていく上で術後脱臼は予防していかなければなりません。

THA後の術後脱臼は、近年では1%前後(前側方進入0.7%、側方0.43%、後側方1.01%)と報告されています。

では、脱臼しやすいとはどのような状態なのか考察します。

そもそも術後脱臼の因子としては、手術因子術後因子に分けられます。理学療法士が関与が可能であるのは術後因子ですが、脱臼のリスクファクターを考える上では理学療法士も手術因子の影響も知っておかなければなりません。

整形Dr.との相談も重要になるため、そのための知識としては必要となってきます。

◎脱臼のリスクファクター

○オシレーションアングルとインピンジメント

オシレーションアングル(oscillation angle)とは、人工股関節のカップ内縁とネックのインピンジメント(衝突)が生じるまでの可動域の事です。

以下の図の角度の事です。最近の人工関節のデザインはオシレーションアングルを増大させるために改良されてきています。

オシレーションアングル

しかし、人工関節の可動域は限度があるため、オシレーションアングルを超えて可動域を求めると脱臼肢位である「屈曲・内転・内旋」、「伸展・外旋」でインピンジメントが生じて脱臼しやすくなります。

THAは側方進入の術式では「屈曲・内転・内旋」、前方進入の術式では「伸展・外旋」の複合運動で脱臼が生じやすいとされていた。しかし、どちらの術式においても前述の2つの複合運動でインピンジメントが生じる可能性があり、脱臼のリスクは生じます。

また、インピンジメントはネックがカップ内縁に「カチッ」と当たり生じるインピンジメントと、骨突出部とネックのインピンジメントがあります。骨棘が残っている場合は、脱臼予防の指導は慎重に行います。

○カップの設置角度

カップの設置角度で前方開角が大きすぎる場合は脱臼のリスクが増加します。

カップの実際の角度は、姿勢の影響を強く受けるので動作中に骨盤(カップ)と大腿骨(ステム)の相対的な位置関係がどのように変化するのかをイメージする事が大切です。

○骨盤アライメント

脊柱後弯・骨盤後傾が生じている高齢者の場合は特に注意が必要となります。骨盤後傾位では、カップのヘッドに対する前外側の被覆率が低減し、後方でのインピンジメントが生じやすくなります。

また逆に、骨盤前傾が生じている場合は前方でのインピンジメントが生じやすくなります。

○股関節外転筋力

股関節外転筋を中心とした軟部組織の緊張は、カップに対してヘッドを求心位に保つように働き、こういった筋の緊張が低い患者さんの場合は脱臼の危険性が高くなります。

○ヘッド径とJumping distance

大きなヘッド径を使用した場合は、小さなヘッド径のものと比べてヘッドがカップを乗り越えるまでの距離(Jumping distance)が大きくなるので脱臼のリスクが軽減します。

(杉本 和隆、美﨑 定也、相澤 純也:人工関節のリハビリテーション 術前・周術期・術後のガイドブック:三輪書店:2015)



また、脱臼の時期についてもこのように言われています。

術後3カ月以内に生じるものを早期脱臼、3カ月以降に生じるものを晩期脱臼と呼びます。

股関節は「関節包」という強固な袋に普段は守られていますが、手術の際にはこの関節包を除去するため、再生するまでの間の3カ月は特に注意が必要です。この時に「側臥位(体位交換)中に患肢が落ちる」「不用意に上半身の捻じれが生じる」と言った不用意にとりやすい危険肢位を避けなければいけません。

一定期間(6~12カ月)経つと、関節を保護・安定化させる関節包が再生されて脱臼のリスクが大きく軽減されます。

(中川 法一:トータル・ヒップ・ケア 股関節 チームで支える人工股関節全置換術:三輪書店:2015)



時期に関してはこのようにも言われています。

THAの初回脱臼の半数は術後6週以内に起こる。1年以上経過後の新規脱臼率は低い。

早期脱臼の約1/3は習慣性脱臼となる。

(Berr DJ et al.JBJS Am 2005)



また、手術因子に関してステムとカップの位置についてこのように言われています。

ステムの前捻30°では、カップの外転角は40~45°、カップの前捻角15°程度が望ましい。

いずれもradiografic definition(X線評価)で

(Miki H Clin Biomech 26 2011)



骨頭経については以下のように言われています。

骨頭径が大きくなるとJumping distanceが大きくなり、脱臼しにくくなります。

ライナー径28mm<よりも36mm以上では10年通算脱臼率が1/4~1/2となる。

(Impingement with Total Hip Replacement 2007)



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COMMENT - 3

Sat
2016.12.31
21:47

 #

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Edit | Reply | 
Mon
2017.03.06
01:13

kerry #lyaUAlzc

URL

こんにちは、理学療法士をしておりますkerryです。
THA後の脱臼肢位について、相談できればと思い、書き込みさせていただきます。
後方進入で屈曲・内転・内旋の複合動作が禁忌であることはどの参考書にも書かれておりますが、中には複合動作であることが明言されていないものもあります。
これらの複合運動で脱臼してしまう原因としては、ブログに書かれておられるように円靭帯や関節包の切除、それらをベースにしたインピンジメントによるジャンピングだと思います。
そもそも、それぞれ個別の運動で脱臼してしまうのであれば日常生活など送れませんよね。
さて、相談内容ですが、後方進入によるTHA術後の方で、内転制限が強くデュシェンヌ歩行が出ており、内転ROMの拡大操作をしようとしたところ、「前の病院でお医者さんからその動き(内転)はダメって言われたんだけど」と言われました。
「複合運動になると危ないですけど、単独の動きであれば大丈夫ですよ」と伝えたものの、はて、文献的には内転のみなら「よい」と書かれているものも見当たらず、円靭帯が無い状態を考えると内転のみも問題になるか?と疑問を抱きました。
実際、ある文献では(前側方進入ですが)術後3日目までは側臥位は外転枕を使ってのみ許容されており、その理由としては脱臼防止であることが書かれていました。(布施 好恵ほか:変形性股関節症患者に対する人工股関節置換術の術前術後の看護:Mb Med Reha No.123:57-64,2010

これは、内転のみの動作でも術後すぐの軟部組織が修復されていない状態であれば脱臼しうる、ということでしょうか?

さらに話が少し飛躍してしまうのですが、近年のTHAは耐用年数の延長から以前よりも若年の方のオペも増えております。
したがって就業中の方も多く居られ、中には深屈曲やしゃがみ動作が必要な方も多くいらっしゃいます。
そのような方に対し、深屈曲やしゃがみ動作は許容されるのでしょうか?
屈曲・内転・内旋による脱臼とは、AIISや腸恥隆起あたりでのジャンピングによるものと推測しています。
そのため屈曲・外転・外旋によるいわゆる頸部軸の運動であればインピンジする物理的要素は特段無いと思われ、実際ドクターからも「内旋じゃなかったら大丈夫だよ」と言われてはいるのですが、文献的に「大丈夫」と書かれたものは知らず、自信を持って「しゃがむの大丈夫ですよ」とはなかなか言えないのが現状です。

先生の知見から、意見をいただければ幸いです。

あと、関節包が再生するという話は初めて聞きました。
当該文献は当院には置いておらず、確認できないのですが、関節包の再生というのは切離した関節包がくっつくということでしょうか?あるいは完全に一度失われた関節包が再生するということでしょうか?
後者であれば驚きですね。

Edit | Reply | 
Sun
2017.04.16
16:09

FC2USER443754VEG #-

URL

Re: 大変遅くなりました

大変返事が遅くなり、申し訳ございませんでした。最近ブログの方を確認しておりませんで、ようやく確認いたしました。

まず、脱臼肢位についてですが、円靭帯が無いという影響の他に、もしかしたら患者さんの個別の問題となる関節唇や骨頭径などの問題により、前病院のDr.から内転のみの運動でも制限が出ているのでは無いかと思いました。

通常のTHAであれば、単独の動きでそうそう脱臼することは少ないと思われますが、患者さんによっては股関節周囲の筋が著しく萎縮しており、筋による安定性が失われている人だったりすると、内転のみの運動でも脱臼することは考えられると思います。

また特に、術後すぐでは脱臼のリスクはかなり高いものと考えれますが・・・

あと、術後に当初の予定より、カップの外転角度が違った場合に、特に禁忌肢位に注意しなければならないこともあるかとは思います。執刀医に相談できると一番早いのですが・・・

あと、どこまで曲げていいかという事に関しては難しい問題と考えております。

短外旋筋群を温存するかどうかでまた脱臼率は変わると思いますし、手術様式などによっても大分変わってくると思われますので、若いから曲げてもいいという風に一概に言えないような気がいたします。このような答えしか出せず、申し訳ありません。

関節包の再生に関してはこちらの文献にそのように記されておりましたので、明記させていただきました。詳しくメカニズムまで説明できずすみません。

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