慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する日常生活動作指導のポイント

 06, 2017 00:28


慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者さんで動作後の息切れが生じる方は知らず知らずのうちに運動量が多すぎて息切れにより疲労感が強かったり、動作によっては酸素消費量が多くないのにも関わらず、息切れを生じさせてしまう事があります。

なぜ、息切れが生じてしまうのかを理学療法士が患者さんにちゃんと説明していく事が重要となります。

息切れを生じさせてしまう大きな原因としては4つあります。

①上肢挙上動作

⇨そんな事で息切れが生じるのですか?と思いたくなりますが、上肢挙上により息切れが生じるのは、上肢を挙上する事で胸郭の動きが制限される事が原因となるためです。上の方の竿に洗濯物を干したり、浴室で髪を洗ったり、上着の着脱、冷蔵庫の上のものを取るときなど意外とちょっとの時間の動きでも息が切れたりします。

②腹部圧迫動作

⇨これも知らず知らずの間にやって、なんで息がきれるのだろうと思う方は多いのではないかと思います。前傾姿勢を取る事で腹部が圧迫され、横隔膜の動きが制限される事が原因です。具体的には、下着・靴下・ズボンを履く際に前傾姿勢になる動作、床のものを拾おうとして前かがみになる動作などがあります。

③息止めの動作

⇨これも無意識にやってしまう事があるのではないでしょうか。息を止める事で、酸素を取り込めなくなる事が原因です。具体的には、排便時のいきみ、食事・洗顔・会話時です。

④反復動作

⇨つい一生懸命になるとやってしまいがちなのがこれです。力を入れ続ける事で動作が早くなりやすく、酸素消費量が増加する事が原因です。具体的には歯磨き・掃除機をかける・洗体・風呂掃除などです。

以上の①〜④の動作が生じないように、日常生活動作を行うように患者さんに指導していく必要があります。

ではどうゆうふうに工夫して動作をしていけばいいかと言うと、、、

○ゆっくり動く
○連続動作を避け、動作と動作の間に休憩を入れる
○呼気時に動く
○労作時に必要な指示量の酸素吸入を正しく行う事


となります。

ただ、患者さんは運動学や生理学の知識が無いので、どのようにして気をつけて良いのか分からない状態です。

具体的にどのような日常生活動作の指導の工夫をしていけば良いか紹介させていただきます。

①洗面でのポイント

・歯ブラシは電動のものを利用する
・肘を洗面台にのせて歯磨きを行う
・椅子に座って洗面する
・うがいの水は手ですくわず、コップを使う
・鼻カニューラをつけたまま洗顔する
・呼気に合わせて洗顔する


⇨患者さんは上肢を上げたままだと辛くなるので、自然と肘をテーブルの上に置いたりされます。そう考えると、テーブルの高さを適切な位置に設定すると患者さんも使いやすいかと思われます。

②排泄時のポイント

・息を止めずに、ゆっくりと息を吐きながら徐々に腹圧をかける
・便を柔らかめにコントロールするために、緩下剤を使用・調整する
・温水洗浄便座を利用する


⇨排泄時はやはり、いきまないように注意する事が大切です。普段から意識しておくように指導しましょう。

③更衣時のポイント

・前開きの衣服を選ぶ
・椅子に座って更衣する
・被り物の服を着るときは先に腕を通しておき、呼気に合わせて頭から被り、呼吸が整ってから鼻カニューラを付け直す
・下着を履いたり、ズボンの足先を通したり、靴下を履くときは、足を膝の上に乗せて履く
・衣服をあらかじめ重ねておく


⇨着圧のきつい靴下などは特に息切れが強く出現します。弾性ストッキングなどが必要であれば、それは他の方につけていただく方が良いかもしれません。

④入浴時のポイント

・脱衣所に座面の高い椅子を設置し、更衣や休憩に利用する
・シャワーを利用する
・浴室内では座面の高い椅子を利用し、洗面器や必要なものは台の上に載せる
・長めのタオルを利用し、腕をできるだけ挙上せず、下げたままで背中を洗う
・足を洗うときは、台の上に載せて洗う
・シャンプーハットを利用して洗髪する
・顔より高い位置でシャワーヘッドを固定して頭を流す
・洗髪・洗体の日を分ける
・半身浴を行い、体を冷やさないように乾いたタオルを肩にかけておく
・バスローブなどで体を保温して、椅子で休憩した後に体を拭いたり、着衣に取り掛かる


⇨日常生活の中で特に息切れを生じやすい入浴動作ですが、一気に動作を行わないように気をつけることと、頭を洗っている時に息を止めないように気をつける事が大切ですね。

⑤家事全般

・物干し竿の高さを低くする
・洗濯物、洗濯かごなどは下に置かず、台の上に載せる
・あらかじめ、座ったままハンガーなどに洗濯物を通しておく
・細かいもの(小さいハンカチ・靴下・下着など)は洗濯ネットにまとめて洗濯し、洗濯機から取り出しやすいようにする
・掃除は日にちを分けて行う。(今日はリビング、明日は寝室など)
・浴室掃除は長い柄のついたスポンジを利用する
・椅子に座りながら、食事の下ごしらえや調理を行う
・よく使う調理器具、食器、食品などはできるだけ低いところや高いところに保管しない
・食器洗い機を利用する


以上の①〜⑤が特に気をつけるべきポイントかと思われます。非常に参考になりますね。

しかし、息切れの症状の強い時など、動作が困難な場合は無理せず家族の方の協力を得たり、ヘルパーなどのサービス利用を駆使していくことも大切です。

本人が自分でできると思い込み、勝手に行ってしまい、動作後の息切れが強く出現したりと指導も難しい場面にも遭遇すると思いますが、一つ一つ動作指導を丁寧に行っていく事が重要かと思われます。

(桑原田 真弓、石原 英樹、竹川 幸恵:酸素療法まるごとブック: 救急から在宅までとことん使える! (呼吸器ケア2016年冬季増刊):メディカ出版:2016)

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