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運動失調って何?〜小脳性運動失調に対するアプローチまで

 28, 2017 17:20


運動失調とは何なのでしょうか?

運動失調とはどのような状態の事を言うかというと、「運動麻痺が無いにも関わらず、筋が協調的に働かないがために、円滑に姿勢保持や運動・動作が遂行できない状態」を言います。

具体的に、臨床ではどのような状態の事かというと、

水が入ったコップを持って飲もうとすると、腕がガクガク震えて水をこぼしてしまった。

文字を書こうとしても、ペンはしっかり握れているのにミミズが這ったように震えた字になってしまう。

歩行器で歩いていると、気をつけているつもりだが足を歩行器にぶつけてしまう。

下肢の筋力はしっかりあるが、独歩で歩くとフラフラしていつ倒れるか自分でも分からない感じがする。

左手で味噌汁の椀を持っていたが、食事しながらずっと支えておく事が出来ずこぼしてしまった。

階段を登る時に、つま先が階段に不意にぶつかって引っかかり前のめりに転倒しそうになるため、手すりを離す事が出来ない。

以上の現象は運動失調患者さんの一例です。運動失調の程度にもよりますが、このような症状が続くとADLが著しく障害される事が分かります。

こんな事が続くと考えただけでもイライラしそうですね。

運動失調を評価する前にまず大切なことは、不全片麻痺によって動かしにくいのか、運動失調によって動かしにくいのか判別していくことです。

ポイントとして運動失調だけでは無いかもしれないと言う所です。

脳血管障害の患者さんなどで放線冠、内包、視床、大脳基底核、橋などの病変では運動失調不全片麻痺(AH)と言って不全片麻痺と運動失調が同時に見られる事があります。

視床出血や橋梗塞の患者さんで、麻痺に加えて失調が生じるケースは非常に多いです。

この時、片麻痺が重度な場合は運動失調の症状はマスクされてしまうため、最初の評価では失調様の症状が少なかった印象なのに、片麻痺が改善してくる過程でだんだん失調様の症状が表面化してきてくる事があります。

理学療法のアプローチを行う際には、何の原因に対してアプローチするのか(運動麻痺に対してなのか、運動失調に対してなのか)が変わってくるので、患者さんが動作遂行しにくい原因をセラピストがまず考察していかなければなりません。

まずは、運動麻痺の評価です。

そして運動失調がメインだなと判断したら、今度は何性の運動失調かを考えていきます。

運動失調は大きく4つに分類されます。

①小脳性運動失調

<評価>
・深部感覚障害:陰性
・ロンベルグ兆候:陰性
・測定障害:陽性
・振戦:陽性(企図振戦)
・眼振:陽性
・深部腱反射:軽度低下
・歩行障害:酩酊歩行
・言語障害:陽性


<原因>
小脳や脳幹の血管性障害、小脳腫瘍、脊髄小脳変性症

②感覚性運動失調(脊髄後索性運動失調)

<評価>
・深部感覚障害:陽性
・ロンベルグ兆候:陽性
・測定障害:陽性
・振戦:陽性(粗大振戦)
・眼振:陰性
・深部腱反射:低下
・歩行障害:膝を高く パタンパタン
・言語障害:陰性


<原因>
脊髄腫瘍、変形性頚椎症、脊髄空洞症、多発性硬化症、末梢神経疾患、その他(代謝性疾患・感染及び変性疾患・中毒疾患)

③前庭迷路性運動失調

<評価>
・深部感覚障害:陰性
・ロンベルグ兆候:陽性〜±
・測定障害:陰性
・振戦:陰性
・眼振:陽性
・深部腱反射:正常
・歩行障害:ワイドベース、slow
・言語障害:陰性


<原因>
末梢前庭または前庭神経障害(前庭神経炎・メニエール病・感染性髄膜炎・膠原病・中毒など)、中枢神経系障害(多発性硬化症・脳幹梗塞・脳幹部腫瘍・小脳腫瘍・脳動脈瘤・高血圧性橋出血など)

④大脳性運動失調

<評価>
・深部感覚障害:陰性
・ロンベルグ兆候:陰性
・測定障害:陽性
・振戦:陽性
・眼振:陽性
・深部腱反射:一側亢進、病的出現反射
・歩行障害:動揺性歩行
・言語障害:脳局在による


<原因>
脳血管障害、脳萎縮、外傷、脳腫瘍、ピック病

以上のように評価と情報収集から、何性の運動失調なのかを見極めていきます。

そして今回は、臨床的にも多いと思われる小脳性運動失調に対するアプローチを記していきます。

◎小脳性運動失調に対するアプローチ

○従来から継承されている代表的な運動療法は実施してみて、効果があれば継続の価値あり

運動失調に対するリハビリテーションでは、従来から「重錘負荷・弾力包帯による圧迫・フレンケル体操・PNF・立ち上がりや立位の荷重負荷練習・視覚誘導によるバランス練習」が効果があると言われています。基本的には十分な評価の上、問題点を明確にして実施し、円滑な動作につながるようであれば良いと思われます。

ただ、注意する点はこの運動療法ばっかりを行うと、過剰なほどの代償や、過剰な練習量により疲労困憊にまで陥り、同時収縮が過多になり筋緊張が上がり、円滑な動作が逆に妨げられる場面もあるので、やりすぎには注意です。

○適切な感覚入力と、患者さんが課題に対してどこに注意を向けているかに気をつける

覚醒注意は感覚入力の調節や知覚に重要です。患者さんが適切な覚醒水準で能動的に課題に取り組む事がまず大事になってきます。患者さんをベッドに寝かせ、半分寝ている状態でセラピストが何をやっているか分からないような状態で足をひたすら動かしても何の感覚入力にもなりませんし、運動学習にも繋がりません。

例えば、大殿筋を賦活する目的でブリッジ運動を行なう際に、素早く動作を反復し、広背筋を始めとした同時収縮がバリバリの状態で重心がグラグラしながらのブリッジ運動をひたすら行なっても何の改善もありません。ただ患者さんは揺れを止めようと他の筋を動員するだけで疲れるだけです。

そこで、「骨盤と下肢が動揺しないように保持しながら、ゆっくりお尻を上げてください。ただその時は踵に体重がずっとかかったままです。」と言った課題を例えば与えた場合はどうでしょうか?患者さんは床と足底との摩擦の感じや、左右の下肢の荷重分配、どうやったら動揺しないように保持できるか目的の感覚に注意を払う事ができます。

大事なのは運動課題の設定は運動学的な要素だけではなく、運動の誤差情報の知覚と修正の観点からも工夫していく必要があります。

○適切な環境設定

立位時や、歩行時にグラグラして転倒のリスクのある患者さんは、何とかコケまいと同時収縮を強め、恐怖感を伴う代償固定を行います。過剰な代償動作をそのままにしておくと二次的な障害を生じてしまうこともありますので、環境設定により難易度を下げて動作しやすくしていくのも手段の一つです。

例えば、転倒のリスクがあれば歩行器や杖などレベルに応じて使用したり、ベッド周囲の環境もすぐつかまえることのできる家具を置いたり、手すりを設置したりします。

○運動課題の難易度に注意する

特に重度の運動失調患者さんでは、誤差の大きい課題からの運動学習は困難と言われています。運動課題の難易度設定は誤差が生じにくい簡単な課題から開始し、段階的に設定していく事が重要です。軽度の運動失調患者さんの場合は、当初大きな誤差が見られても、即時的に課題の難易度の適切な判断をするのではなく、ある程度の経過でパフォーマンスの改善度によって判断する事が良いとされています。

運動療法の原則としては以下の通りです。

1)運動のスピード:ゆっくり⇨徐々に早く
2)運動のパターン:平面的(単純)⇨立体的(複雑)
3)支持基底面:広い⇨狭い
4)運動の方向:単一方向⇨多方向
5)運動の範囲:小さい⇨大きい
6)重心の高さ:低い⇨高い


運動課題は徐々に難しくしていきましょう。

例えば、立位訓練も普通に立つ訓練から、徐々に足の幅を狭めた状態で立ってみたり、立位の状態で重心移動を前後左右にしてみたり、そこから上肢の運動を入れてみたり、いろんな方向にリーチしてみたり、ステップを出してみたりしながら歩行訓練につなげていけたら良いのではないでしょうか。

○近位関節への体性感覚入力も有効

グラグラ動揺が出現する時というのは、上下肢の遠位を動かす際に近位関節で過剰固定を強める場面が多いです。

こういった時に股関節や肩関節などに直接軽い接触刺激を与えた状態で、その箇所を意識的にリズミカルに動作させると、遠位部分の操作が円滑になり、近位関節での過剰固定を減弱させる事ができると言われています。

こういった体性感覚入力により動揺が軽減する場合もあるので、試してみる価値はあります。

○フィードバックからフィードフォワードへコントロールするための反復練習

フィードバック機構による運動学習(フィードバック誤差学習)を繰り返すことにより、フィードフォワード機構の再構築化を図る事ができます。動作を繰り返すことで動きを円滑化させ、日常生活が安定して行えるようにしていくことが大切です。

ある動作においての運動課題を、一連の動作として遂行できない場合は、運動をいくつかの動作に分けて行い、最終的に連続した運動として行えるように練習していくと良いとされています。

例えば、椅子からの立ち上がりにおいて、失調が強く立ち上がりの一連の動作ができない患者さんにおいては、椅子座位で足を後方に引く動作・体を前に倒す動作と分節化し、それぞれを繰り返し行い、徐々に一連の動作として行えるようにしていくと良いと思われます。

○どの部分がどのように、どのような時に不安定になるか評価し、その部分にアプローチする

運動失調といえど患者さん全員が同じような失調症状となるわけではなく、生じた「動揺」がどの方向に・どのくらいかなどを患者さん個別で十分に評価しなければなりません。

立位バランスでもちゃんと足関節戦略・股関節戦略・ステッピング戦略が生じているのか、左右前後の支持基底面内での重心移動の中でどの方向に不安定性が生じているのか十分に評価します。

倒れやすい方向や、バランスのとりにくい場面があればそれがその患者さんの転倒のリスクとなり、そこが治療介入のポイントになると思います。

○エアロバイクやトレッドミルなどの機器の使用


(斉藤 秀之、加藤 浩、金子 文成:感覚入力で挑む―感覚・運動機能回復のための理学療法アプローチ (臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス):文光堂:2016)



(小林 純也:脳卒中患者だった理学療法士が伝えたい、本当のこと三輪書店:2017)



(解良 武士:運動療法学 (15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト):中山書店:2014)



(潮見 泰蔵:脳卒中に対する標準的理学療法介入―何を考え、どう進めるか?:文光堂:2017)



(後藤 淳:運動失調に対するアプローチ:関西理学療法:2014)

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Fri
2018.07.13
20:24

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