固有感覚は運動により良くなるのか?

 21, 2013 01:08
我々は視覚情報なしに、どの程度足が曲がっているか、どの位置にあるのかを認知できます。これは、筋・腱・関節の固有受容器からの情報によって位置や運動速度、筋力などを感知する「固有感覚」によるためです。

臨床のリハビリテーションの場面で、固有感覚に対するアプローチとして、不安定板やバランスマットなど感覚情報に集中しながら姿勢を制御するトレーニングが行われています。

ただ、こういった練習を行う事によって固有感覚は改善するのでしょうか?

固有感覚の改善の可能性としては、末梢の受容器の変化と、それを処理する脳の中枢性の変化の2つが考えられます。

横紋筋の内部にある筋紡錘は、筋の伸張を感知する器官です。筋紡錘は固有受容器の中で感度を調節できる唯一の受容器であり、指で細かいものをつまもうとする時など、感覚情報に注意が向けられると、一時的に感度を高くして感覚情報を増やそうとします。このために、訓練によって感度を高めることができる可能性がありますが、残念ながら、練習前後で感度が変化したとの報告はありません。筋紡錘の密度に関しても、トップアスリートと一般の人との間で差はないとされており、末梢の変化に対しては否定的な意見が多いのが現状です。

末梢で検知された固有感覚は大脳や小脳に伝えられます。固有感覚の識別課題を繰り返すと、大脳皮質の感覚野での支配領域が2.5倍~3倍に大きくなることが知られています。よって、固有感覚の改善は大脳皮質の可塑性変化による可能性が高いと思われます。

実際に、高齢者を対象としたバランストレーニングの報告では、固有感覚を関節の動き、位置、速度の3つの課題の中で速度の識別課題のみ改善が見られたとのことです。このことから、動作の中で姿勢を制御するバランストレーニングでは、関節の速度の識別能力が向上すると考えられます。

ただ、大脳皮質レベルで感覚が改善されても、日常的な運動下における外乱に対しての反応としては遅すぎるため、皮質下(脊髄・脳幹・中脳)の反射による制御が必要になってきます。

固有感覚訓練によって運動パフォーマンスが改善するのは、入力された感覚から適切な情報を選び出し、運動を素早く選択する処理を皮質下で行うようになるからです。

以上のことから、報告から見ると、固有感覚の改善の原因としては大脳の可塑性変化が考えられますが、臨床においては、大脳皮質レベルでの意識的な訓練のみでは、(素早い動きが要求されるような)運動パフォーマンスには反映されないはずなので、その点を考慮しながらリハビリテーションのプログラムを計画していく必要があるのです。

(市橋則明、小田伸午:ヒトの動き百話―スポーツの視点からリハビリテーションの視点まで;2011)

COMMENT 2

Fri
2015.05.08
02:36

Westwind #h7Ayo7CU

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見逃していることがあるのでは?

まず中枢神経系のみのトレーニングということは物理的に不可能であり存在し得ないこと、つぎにフィードフォワード機能の重要性、この二つを見落としているから上記のような結論になるのだと考えられます。

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Sun
2015.05.10
23:24

FC2USER443754VEG #-

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Re: 見逃していることがあるのでは?

コメント有難うございます。

感覚へのアプローチに関しては非常に複雑で、一つの側面からでは考察できない所もあるかとは思います。

こういった貴重な意見も頂き、何に考慮していく必要があるかをさらに検討していけたらと思います。

ご指摘有難うございました。

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