脳卒中片麻痺の理学療法の進め方と考え方

 16, 2014 01:45
脳卒中後の片麻痺を有する患者さんに対する理学療法で何をしていくのか?という問題に関しては、その個人がもつ生活上の不自由をあらゆる方法を駆使して解消し、日常生活を送れるようにしていく事です。

そのあらゆる方法とは、ボバースや川平法、ブルンストローム法、PNF、CI療法など促通手技を用いてもいいですし、福祉用具や道具などで不足している機能を補う方法でもいいですし、デイケアや訪問リハビリなど社会資源を有効活用するよう指導してもいいですし、家族の協力が得られれば介入していただくよう指導する(自主訓練や介助方法など)のもいいですし、つまり理学療法で行っていくこととは、患者さんが生活できるような手助けをしていくことにあるのです。

そのためには、まずは脳卒中後の麻痺の機能の回復を考えていくことになると思いますが、麻痺の回復だけに固執するのではなく、基本動作の実行可能性を最優先に考えていくことが大切です。

これより、運動療法の優先順位は、

①抗重力位姿勢への変換

②筋収縮を伴う運動

③筋収縮を伴わない運動

④基本動作訓練

⑤ADL訓練

となり、これを基本に医学的許容範囲や重症度を考慮しながら対処していくこととなります。

◎抗重力位への変換

抗重力位とは、座位、立位、歩行のいずれかの姿勢となりますが、ベッドサイドで臥床にある方は座位保持、状況に応じて立位保持へ、リハビリ室で行える方は立位・歩行へと進めていきます。どの姿勢を取るかは医学的許容範囲や重症度を考慮しながら実施していきます。

抗重力位姿勢の実行を阻害する因子はさまざまありますが、斜面台や補装具や人的介助を用いて血圧調節機能への刺激、非麻痺側下肢使用による廃用症候群の回避という目的で抗重力位にしていくことが重要です。

重症な片麻痺患者さんの場合、抗重力位への変換は重力負荷を加えることであり、起立性低血圧などの循環機能不全というリスクを伴います。実施する際にはバイタルサイン(脈拍、血圧、呼吸状態、自覚症状、顔色など)の反応を確認しながら進めていきます。

◎筋収縮を伴う運動

いわゆる筋トレのプログラムとなります。

片麻痺の患者さん全てにおいて非麻痺側、麻痺側のどちらも筋力トレーニングの適応となります。

非麻痺側の場合は、トレーニング基礎理論が当てはまり、負荷量、頻度の組み合わせで、筋力・持久性・運動協調性への効果をもたらします。

麻痺側の場合は、麻痺の重症度、随意性の有無、中枢性麻痺に伴う症状などが関与します。健常筋とは異なっており、神経再教育という目的で神経生理学的アプローチファシリテーションテクニックを適応する場合があります。

◎筋収縮を伴わない運動

いわゆる関節可動域訓練になります。

片麻痺者の関節可動域制限は筋緊張亢進による筋短縮であるために、伸張反射を抑制する持続的伸張が有効です。

◎基本動作(起居移動動作)訓練

まずは安全な病棟での生活を実現していくために必要不可欠な練習となります。特にベッド周囲での立ち上がりや移乗では転倒のリスクが高く、介助量の負担も大きくなりやすいために、安全で確実な動作の獲得をしていく必要があります。

◎ADL訓練

理学療法において「できるADL」を最大限に能力を引き出し、病棟生活の中では安全に行える「しているADL」を設定していきます。

例えば、ADL動作で多い静的立位や動的立位の安定性を評価し、日常生活でどのくらい行えるかをセラピストが判断し、病棟スタッフに確認しながら、ADL拡大をしていくことが望ましいと思います。

◎補装具の検討と活用

補装具は患者の能力に応じて適切に選択します。立位や歩行を補助するためのものです。

(細田多穂:中枢神経障害理学療法学テキスト (シンプル理学療法学シリーズ):2014)


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